第3節 大気環境の保全対策

1 光化学オキシダント対策

(1)光化学オキシダント緊急時対策

 都道府県では、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「大防法」という。)に基づき、光化学オキシダントの濃度が高くなり、被害が生ずる恐れがある場合に、光化学オキシダント注意報等を発令しています。その際には、ばい煙排出者に対する大気汚染物質排出量の削減及び自動車使用者に対する自動車の走行の自主的制限を要請するほか、住民に対する広報活動と保健対策を実施しています。また、スモッグ気象情報の提供地域を拡大し、昨年より9か所多い全国37か所の地方気象台等でスモッグ気象情報を随時発表し国民への周知を図りました。南関東では数値予報モデルを活用し詳細なスモッグ気象情報を発表しました。

 加えて、環境省では光化学オキシダントによる被害を未然防止するため、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」により、都道府県等が測定している光化学オキシダント注意報等発令情報をリアルタイムで収集し、これらのデータを地図情報などとして、インターネット等で一般に公開しています(http://soramame.taiki.go.jp/)。


(2)揮発性有機化合物排出抑制対策

 揮発性有機化合物は光化学オキシダントの主な原因物質の一つであり、その排出削減により、光化学オキシダントによる大気汚染の改善が期待できます。

 揮発性有機化合物の排出抑制対策については、平成22年度までに全国の揮発性有機化合物総排出量を平成12年度に比べて3割程度削減させることを目標に、大防法に基づく排出規制や事業者の自主的な取組を適切に組み合わせて実施しています。

 また、発生源対策に加え、オキシダント濃度の上昇要因等の検討会の中間報告(平成19年12月)において今後の課題として示された、オキシダントに関する調査研究やモニタリングも引き続き実施しています。


(3)国際的な取組

 東アジア地域においては、近年の経済成長等に伴い光化学オキシダント原因物質の排出量が増加しており、我が国の大気環境への影響が懸念されています。このため、平成19年12月に開催された「第9回日中韓三カ国環境大臣会合」において、我が国からの提案により光化学オキシダントに係る科学的な研究について協力することが合意されました。これを受け、20年9月には、光化学オキシダントに関する科学的知見の共有や今後の研究協力の検討を行うため、研究者及び政策担当者等を対象として「日中韓光化学オキシダント科学研究ワークショップ」を開催しました。

2 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

(1)固定発生源対策

 大防法に基づき、窒素酸化物、硫黄酸化物、ばいじん等のばい煙を発生する施設について排出基準による規制等を行っています。加えて、施設単位の排出基準では良好な大気環境の確保が困難な東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の地域においては、総量規制を実施しています。また、窒素酸化物対策として、大防法対象外の群小発生源からの排出量状況の把握及び優良品推奨水準としての窒素酸化物排出ガイドラインを改訂し、これに適合する小規模燃焼機器の普及を実施しています。


(2)移動発生源対策

 ア 自動車排出ガス対策

 (ア) 自動車単体対策と燃料対策

 自動車の排出ガス及び燃料については、大防法に基づき逐次規制を強化してきています。(図2-3-1、図2-3-2、図2-3-3)


図2-3-1 ガソリン・LPG乗用車規制強化の推移


図2-3-2 ディーゼル重量車(車両総重量3.5t超)規制強化の推移


図2-3-3 軽油中の硫黄分規制強化の推移

 中央環境審議会では、「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」が継続的に審議されており、平成20年1月29日に第九次の答申がなされました。その内容は、ディーゼル特殊自動車について、窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)ともに、現行の規制値より約9割削減するというものです。

 一方、トラック・バスを中心としたディーゼル車等の排出ガス規制の強化(09年規制)については、第八次答申を受け、関係法令の整備を行いました。この規制強化により2009年10月からディーゼル車から排出されるNOx及びPMを大幅に削減し、基本的にガソリン車と同レベルの排出ガス規制となり、ガソリン車については、PMの排出が懸念される一部車種に対し、ディーゼル車と同じレベルのPM規制が実施されることとなります(表2-3-1)。


表2-3-1 中央環境審議会での審議状況

 現在、第八次答申において指摘されている、ディーゼル重量車の窒素酸化物(NOx)排出量を09年規制(ポスト新長期規制)の約3分の1とする挑戦目標の検討を行っています。

 公道を走行しない特殊自動車に対する排出ガス規制を行う特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(平成17年法律第51号。以下「オフロード法」という。)に基づき、平成18年10月から原動機の燃料の種類と出力帯ごとに順次使用規制を開始する等排出ガス対策に取り組んでいます。

 (イ) 大都市地域における自動車排出ガス対策

 自動車交通量が多く交通渋滞が著しい大都市地域を中心とした、厳しい大気汚染状況に対応するため、関係機関が連携して総合的な取組を行っています。なかでも自動車NOx・PM法(図2-3-4)により関係8都府県が平成15年度に策定した「総量削減計画」に基づき、自動車からのNOx及びPMの排出量の削減に向けた施策を計画的に進めています。


図2-3-4 自動車NOx・PM法の概要

 また、14年10月から開始された、同法による車種規制の円滑な施行を図るため、排出基準不適合車を廃車して排出基準適合車を取得する際の自動車取得税の軽減措置を講じるとともに、担保要件の緩和を含む政府系金融機関による低利融資等の普及支援策を講じています。

 平成19年5月には、同年2月の中央環境審議会意見具申「今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について」を踏まえ、局地汚染対策及び流入車対策を柱とする自動車NOx・PM法の一部を改正する法律案が成立し、平成20年1月から施行されています。

 イ 低公害車の普及促進

 平成13年に策定された「低公害車開発普及アクションプラン」に基づき、実用段階にある低公害車の普及を目指すこととしています。20年9月末現在、全国の低公害車(軽自動車等を除く。)の普及台数は約1,744万台、燃料電池自動車の普及台数は53台です。

 低公害車の普及を促す施策として、自動車税のグリーン化、低公害車の取得に関する自動車取得税の軽減措置等の税制上の特例措置を講じました。また、地方公共団体や民間事業者等による低公害車導入に対し、各種補助を行いました。

 また、低公害車普及のためのインフラ整備については、国による設置費用の一部補助と燃料等供給設備に係る固定資産税の軽減措置を実施しました。

 ウ 交通流対策

 (ア) 交通流の分散・円滑化施策

 環状道路等幹線道路網の整備、交差点及び踏切道の改良を推進しました。ETCの普及を促進するとともに、道路交通情報通信システムVICS)の情報提供エリアの更なる拡大及び道路交通情報提供の内容・精度の改善・充実に努めたほか、信号機の高度化、公共車両優先システムPTPS)の整備、総合的な駐車対策等により、環境改善を図りました。環境ロードプライシング施策を試行し、住宅地域の沿道環境の改善を図りました。

 (イ) 交通量の抑制・低減施策

 交通に関わる多様な主体で構成される協議会による都市・地域総合交通戦略の策定及びそれに基づく公共交通機関の利用促進等への取組を支援しました。また、交通需要マネジメント施策の推進により、地域における自動車交通需要の調整を図りました。

 エ 船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策

 船舶からのNOx、SOx等大気汚染物質の排出抑制に向けた取組を海洋汚染防止法に基づき着実に進めており、国際海事機関IMO)における排出規制の強化の議論に積極的に参加するとともに革新的な環境負荷低減技術の開発を併せて行う総合的対策を実施しました。

 航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関ICAO)の排出基準を踏まえ、航空法(昭和27年法律第231号)により、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等について規制されています。

 建設機械のうち公道を走行しない特殊自動車については、オフロード法に基づき平成18年10月より順次使用規制を開始するとともに、「建設業に係る特定特殊自動車排出ガスの排出の抑制を図るための指針」に基づきNOx、PM等大気汚染物質の排出抑制に取り組んでいます(参照)。

 一方、オフロード法の対象外機種(発動発電機や小型の建設機械等)についても、オフロード法と同等の排出ガス基準値に基づき策定した「排出ガス対策型建設機械の普及促進に関する規程」等により、排出ガス対策型建設機械の使用を推進しました。また、これら建設機械の取得時の融資制度を措置しました。


(3)微小粒子状物質に関する検討

 微小粒子状物質PM2.5)については、PM2.5の健康影響に係る国内外の知見を基に、PM2.5の健康影響及びリスク評価手法に関する検討結果をとりまとめました。また、PM2.5の測定法については、標準とすべき測定法(フィルタ法)及びそれと等価な測定法(自動測定機)について検討し、その結果をとりまとめました。平成20年12月には微小粒子状物質に係る環境基準の設定について、中央環境審議会に諮問し、現在、同審議会大気環境部会において「微小粒子状物質環境基準専門委員会」及び「微小粒子状物質測定法専門委員会」が設置され検討が進められています。

 さらに、粒径がおおむね50nm以下の極微小粒子(環境ナノ粒子)についても、生体影響が懸念されていることから、動物実験等の調査を実施しました。

3 多様な有害物質による健康影響の防止

(1)有害大気汚染物質対策

 大気汚染防止法に基づき、地方公共団体と連携との連携の下に有害大気汚染物質による大気の汚染の状況を把握するための調査を行いました。また、有害大気汚染物質の人の健康に及ぼす影響に関する科学的知見の充実のため、有害性情報等の収集を実施しました。


(2)石綿対策

 大防法では、吹付け石綿や石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材を使用するすべての建築物その他の工作物の解体等作業について作業基準等を定め、石綿の大気環境への飛散防止対策に取り組んでいます。また、石綿製品等を製造する施設について排出規制等を行っていますが、平成19年度末までに全て廃止の届出がなされました。

4 地域の生活環境に係る問題への対策

(1)騒音・振動対策

 ア 工場・事業場及び建設作業による騒音・振動対策

 騒音規制法(昭和43年法律第98号)及び振動規制法(昭和51年法律第64号)では、騒音・振動を防止することにより生活環境を保全すべき地域(指定地域)内における法で定める工場・事業場(特定工場等)及び建設作業(特定建設作業)の騒音・振動を規制しています。指定地域内の特定工場等の総数は、平成19年度末現在で騒音規制法、振動規制法それぞれ213,032件、126,996件で、19年度には、苦情に基づく行政指導がそれぞれ1,069件、173件でした。また、騒音規制法に基づく改善勧告が2件行われ、改善命令は行われませんでした。19年度に行われた特定建設作業に係る実施の届出件数はそれぞれ71,077件、34,807件で、19年度には、苦情に基づく行政指導がそれぞれ1,757件、671件行われました。建設作業の騒音・振動については、適切な規制の在り方を検討するため、建設作業場から発生する騒音・振動について実態調査を行いました。また、公共事業を中心に騒音・振動対策を施した低騒音型・低振動型建設機械の使用、適切な予測手法を確立する調査、検討を推進する等、建設作業の低騒音・低振動化に取り組みました。

 イ 自動車交通騒音・振動対策

 自動車交通騒音・振動問題を抜本的に解決するため、自動車単体の構造の改善による騒音の低減等の発生源対策、道路構造対策、交通流対策、沿道環境対策等の諸施策を総合的に推進しました(表2-3-2)。


表2-3-2 道路交通騒音対策の状況

 自動車単体から発生する騒音を減らすため加速走行騒音、定常走行騒音、近接排気騒音の3種類について規制を実施しています。また、道路交通法(昭和35年法律第105号)等に基づく消音器不備、空ぶかし運転、不正改造車両の取締りを強化する等、暴走族による爆音暴走の防止対策に取り組んでいます。

 しかし、幹線道路の沿道地域を中心に環境基準の達成率は依然として低く、一層の騒音低減が必要なため、平成17年に「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について」中央環境審議会に諮問し、平成20年12月18日に中間答申がなされたところであり、早急に実施すべき使用過程車の騒音軽減対策としてマフラーの事前認証制度を導入するとともに、今後、騒音規制手法の抜本的な見直しに着手することとしました。さらに、自動車から発生する騒音の許容限度を環境大臣が定め、市町村長が都道府県の公安委員会に対して道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置を要請することができる要請限度制度に基づき、自動車騒音について、平成19年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した89地点のうち、要請限度値を超過したのは11地点で、同様に、道路交通振動については、測定を実施した90地点のうち、要請限度値を超過した地点はありませんでした。また、自動車騒音、道路交通振動に関して、19年度に市町村長が都道府県公安委員会に対しての要請や道路管理者に対して意見陳述を行った件数はありませんでした(表2-3-3)。


表2-3-3 「騒音規制法」に基づく自動車騒音に係る要請及び意見陳述の状況(平成14年度~19年度)

 ウ 航空機騒音対策

 「航空機騒音に係る環境基準について」(昭和48年12月環境庁告示第154号)の一部改正が平成19年12月17日付けで告示され、近年の騒音測定機器の技術的進歩及び国際的動向に即して新たな評価指標が採用され、平成25年4月1日に施行されることになりました。

 耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度による騒音基準に適合しない航空機の運航を禁止するとともに、緊急時等を除き、成田国際空港では夜間の航空機の発着を禁止し、大阪国際空港等では発着数の制限を行っています。

 発生源対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行いました。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際、大阪国際、福岡等14空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備、テレビ受信料の助成等を行いました(表2-3-4)。また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された(独)空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業等を実施しました。


表2-3-4 空港周辺対策事業一覧表(平成18年度~20年度)

 自衛隊等の使用する飛行場等に係る周辺対策としては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)等に基づき、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転補償、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策を行っています(表2-3-5)。平成19年度末現在30施設周辺について区域指定がされています。また、住宅の外郭防音工事等新たな施策の充実に努めているところです。また、在日米軍における音源対策、運航対策については、日米合同委員会等の場を通じて協力を要請しており、厚木、横田、嘉手納及び普天間の各飛行場における航空機の騒音規制措置について合意しています。


表2-3-5 防衛施設周辺騒音対策関係事業一覧表(平成18年度~20年度)

 また、防衛省において開発中の次期固定翼哨戒機(XP-1)についても、低騒音化に積極的に取り組んでいます。XP-1は、国際民間航空機関ICAO)が規定する騒音に関する最新の基準を十分満たす見込みであり、現有固定翼哨戒機(P-3C)の騒音レベルを下回るものと見積もっています。

 エ 鉄道騒音・振動対策

 東海道、山陽、東北及び上越新幹線については、環境基準達成のために、鉄道事業者が各種の騒音・振動対策を実施した結果、第1次から第3次までの75デシベル対策に係るすべての対策区間において75デシベル以下となっていることが確認されています。しかし、一部で達成していない地域が残されていることから、ポスト75デシベル対策として、引き続き住宅の立地状況、鉄道事業者の取組状況等を勘案しつつ、音源対策が計画的に推進されるよう関係機関に要請しました。

 オ 近隣騒音対策(良好な音環境の保全)

 近年、営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等のいわゆる近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約20%を占めています。近隣騒音対策は、各人のマナーやモラルに期待するところが大きいことから、「近隣騒音防止ポスターデザイン」を一般公募して普及啓発活動を行いました。また、各地方公共団体においても取組が進められており、平成19年度末現在、深夜営業騒音は141の都道府県、指定都市、中核市、特例市及び特別区で、拡声機騒音は147の都道府県、指定都市、中核市、特例市及び特別区で条例により規制されています。

 カ 低周波音対策

 低周波音問題への対応に資するため、全国の地方公共団体における低周波音に関する苦情対応についての事例を集めた低周波音対応事例集を取りまとめました。また、地方公共団体職員を対象として、低周波音問題に対応するための知識・技術の習得を目的とした低周波音測定評価方法講習を行いました。


(2)悪臭対策

 ア 悪臭防止法による措置

 悪臭対策については、悪臭防止法(昭和46年法律第91号)に基づき、工場・事業場から排出される悪臭原因物の規制等を実施しています。同法では、都道府県知事等が規制地域の指定及び規制基準の設定を行うこととしており、平成19年度末現在、全国の72.0%に当たる1,307市区町村(725市、504町、55村、23特別区)で規制地域が指定されています。19年度は、同法に基づく改善勧告は5件、改善命令は0件でした。これらの措置のほか、規制地域内の悪臭発生事業場に対して1,948件の行政指導が行われました。

 同法は、複合臭問題等への対策強化を目的として、人間の嗅覚に基づいた臭気指数規制を導入しており、平成20年度も、地方公共団体職員を対象とした講習会、嗅覚測定技術の研修等、地方公共団体における臭気指数規制の一層の導入促進に向けた取組を行いました。また、臭気指数等の測定を行う臭気測定業務従事者についての国家資格を認定する臭気判定士試験を実施しました。

 イ 嗅覚測定法の国際化の推進

 国際的な嗅覚測定法の標準規格化の動きなど嗅覚測定法の国際化に対応するため、我が国で用いられている嗅覚測定法(三点比較式臭袋法)について、測定法の実演などを海外で実施し、諸外国への周知を図りました。

 ウ 良好なかおり環境の保全・創出

 まちづくりに「かおり」の要素を取り込むことで、良好なかおり環境を創出しようとする地域の取組を支援することを目指し、「かおりの樹木・草花」を用いた「みどり香るまちづくり」企画コンテストを実施しました。


(3)ヒートアイランド対策

 ヒートアイランド対策大綱に基づき、[1]人工排熱の低減、[2]地表面被覆の改善、[3]都市形態の改善、[4]ライフスタイルの改善の4つを柱とするヒートアイランド対策の推進を図りました。また、ヒートアイランド対策関係府省連絡会議において、同大綱に盛り込まれた対策等の進ちょく状況に関する点検を実施した結果、大綱に示された施策については全般にわたって進展が見られました。さらに、同連絡会議において、ヒートアイランド対策大綱の見直しに着手しました。

 関連する調査研究として、ヒートアイランド現象の実態や環境への影響に関する調査・観測や、熱中症の予防情報の提供とモニタリングを継続的に実施しました。また、皇居等における都市内の緑地の調査・観測、大気との接触水面の拡大や地下湧水・地下熱の利用等環境技術を活用したヒートアイランド対策の検証を実施しました。さらに、地方自治体等がヒートアイランド対策を実施するにあたり、参考となるガイドラインを策定しました。

 このほか、ヒートアイランド現象の顕著な街区において、CO2削減効果を兼ね備えた施設緑化や保水性建材、高反射性塗料、地中熱ヒートポンプ等複数のヒートアイランド対策技術を組み合わせて一体的に実施する事業に対して補助を行いました。これにより、都市部にクールスポットを創出し、ヒートアイランド現象の緩和等が図られます。


(4)光害(ひかりがい)対策等

 光害については、光害対策ガイドライン(平成18年度改訂)、地域照明環境計画策定マニュアル及び光害防止制度に係るガイドブック等を活用して、地方公共団体における良好な照明環境の実現を図る取組を支援しました。また、肉眼や双眼鏡・カメラを使用して星空観察を行う全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)事業(http://www.env.go.jp/kids/star.html)や、良好な大気環境・光環境の保全等を目的とした「星空の街・あおぞらの街」全国協議会が開催する全国大会(愛知県豊田市)を支援しました。

5 大気環境の監視・観測体制の整備

(1)国設大気測定網

 大気汚染の状況を全国的な視野で把握するとともに、大気保全施策の推進等に必要な基礎資料を得るため、国設大気環境測定所(9か所)及び国設自動車交通環境測定所(10か所)を設置し、測定を行っています。これらの測定所は、地方公共団体が設置する大気環境常時監視測定局の基準局、大気環境の常時監視に係る試験局、国として測定すべき物質等(有害大気汚染物質)の測定局、大気汚染物質のバックグラウンド測定局としての機能を有しています。

 加えて、国内における酸性雨や越境汚染の長期的な影響を把握することを目的として、「酸性雨長期モニタリング計画(平成14年3月策定)」に基づくモニタリングを離島など遠隔地域を中心に全国31か所で実施しています。

 また、環境放射線等モニタリング調査として、離島等(全国12か所)の人による影響の少ない地域において大気中の放射線等のモニタリングを実施しており、その調査結果を、ホームページ「環境放射線等モニタリングデータ公開システムhttp://housyasen.taiki.go.jp/)」で情報提供しています。


(2)地方公共団体の大気汚染監視体制

 都道府県等では、一般局及び自排局において、大防法に基づく大気の汚染状況を常時監視しています。

 また、都道府県等が測定している大気常時監視データ(速報値)は、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」によりリアルタイムで収集され、インターネット及び携帯電話用サイトで情報提供しています。


(3)地方公共団体自動車騒音常時監視体制

 騒音規制法に基づき規定される全国の176地方公共団体においては、自動車騒音常時監視を実施しています。この状況は、インターネット上の「環境GIS全国自動車交通騒音マップ」において、地図とともに情報提供しています。



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