2 地球温暖化対策
(1)地球温暖化問題をめぐる動き
平成4年5月に気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることをその究極的な目的とした気候変動枠組条約*が採択され、平成6年3月に同条約は発効しました。
平成9年12月には、京都においてCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が開かれ、京都議定書が採択されました。本議定書では、先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数量化された約束を設定するとともに、約束達成のための柔軟な国際的仕組みとして京都メカニズムを導入することなどが規定されています。
わが国では、平成13年11月のCOP7(気候変動枠組条約第7回締約国会議)において京都議定書の運用に関する細目を定めた「マラケシュ合意」が採択されたのを受けて、政府は同月開催された地球温暖化対策推進本部において京都議定書締結に向けた準備を本格的に開始することを決定しました。平成14年3月には、京都議定書の6%削減約束の達成に向けて、100種類を超える対策・施策を取りまとめた新しい地球温暖化対策推進大綱が決定され、5月には、京都議定書の締結に必要な国内担保法として、地球温暖化対策の推進に関する法律*(平成10年法律第117号)が改正され、京都議定書目標達成計画の策定や、地域レベルでの地球温暖化対策の取組を推進するため、地方公共団体、事業者、住民等からなる地球温暖化対策地域協議会の設置などが盛り込まれました。この担保法の成立及び京都議定書締結の国会承認を受けて、わが国は6月に京都議定書を締結しました。
さらに、平成14年8月から9月にかけて南アフリカのヨハネスブルグにおいて開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議や、10月から11月にかけてインドのニューデリーで開催されたCOP8(気候変動枠組条約第8回締約国会議)において、京都議定書の未締約国に対する締結の働きかけの必要性を訴え、一日も早い京都議定書の発効に全力を挙げるとともに、米国や開発途上国を含むすべての国が参加する共通のルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けています。
(2)地球温暖化対策
二酸化炭素は、人間活動のあらゆる局面から生じるものであり、その排出の抑制・削減に当たっては、従来の公害対策とは異なった対応を要します。また、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)についても、それぞれの排出実態を踏まえた対策を実施していく必要があります。このため、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠です。また、地球温暖化対策を推進するに当たっては、環境と経済の両立に資する仕組みを整備・構築していく必要があります。地球温暖化のもたらす大きな影響とともに、その対策の困難性から、地球温暖化問題は現在の環境行政の最重要課題の一つとなっています。
わが国では、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、地球温暖化対策の推進に関する法律及び同法に基づく地球温暖化対策に関する基本方針*並びに、地球温暖化対策推進大綱に沿って各種の対策を推進しました。平成14年度において、政府が国内で講じた主な施策は次のとおりです。
1) 地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画を7月に閣議決定しました。この計画は政府自らが率先して、温室効果ガス削減に取り組むことで、地球温暖化への取組姿勢をアピールするものであり、同計画において、政府は自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスを平成18年度までに平成13年度比で7%削減することを目標としています(詳細は第2章第2節6参照)。
2) 平成14年5月に地球温暖化対策の推進に関する法律が改正されたことを受けて、12月に、同法施行令を改正し、同法施行令で定められた温室効果ガスの総排出量の算定方法の変更等を行うとともに、算定に用いる排出係数を定めました。
3) クリーンエネルギー自動車を含む低公害車の開発・普及の促進を図るため、民間事業者等に対する購入補助を実施したほか、自動車税のグリーン化、低公害車を取得した場合の自動車取得税の軽減措置等の支援を実施するなど、「低公害車開発普及アクションプラン」における「実用段階にある低公害車を2010年度までのできるだけ早い時期に1000万台以上」という普及目標に向け、各種施策を実施しました。交通流対策としては、高度道路交通システム(ITS)の推進等を行いました。
また、物流の効率化については、環境負荷の少ない大量輸送機関である鉄道貨物輸送・内航海運を活用するモーダルシフト等を推進しました。
その他、公共交通機関の利用促進のため、鉄道新線・新交通システムの整備等を図りました。
4) 産業界における省エネルギー・二酸化炭素排出削減のための行動計画の実施状況について、関係審議会においてその内容の聴取を行いました。また、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)については、平成10年2月の「産業界によるHFC等の排出抑制に係る指針」(通商産業大臣告示)を受けて、産業界は、平成10年4月、行動計画を策定。以降毎年、産業構造審議会において産業界の行動計画の進捗状況のフォローアップを行っています(現在12分野21事業者団体)。また、新規代替物質の研究開発等を行いました。さらに、特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法 平成10年法律第97号)が平成13年4月より施行となり、同年6月には特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法 平成13年法律第64号)が制定され、フロン類の回収・破壊の制度が整備されています。
5) 温室効果ガス排出の少ないエネルギー供給構造を形成するため、安全性の確保を前提とした原子力の開発利用や水力、地熱の利用、コンバインドサイクル発電、太陽光発電等の新エネルギーの導入等を引き続き推進しました。
6) 廃棄物の減量・再資源化、ごみ焼却余熱・下水排熱等の有効利用を図るため、新世代下水道支援事業制度リサイクル推進事業未利用エネルギー活用型及びごみ固形燃料(RDF)等発電焼却施設整備事業に対し引き続き国庫補助等を行いました。
7) 地球温暖化対策を地域において推進していくため、地方公共団体、事業者、住民等で組織される地球温暖化対策地域協議会が行う温暖化対策診断や地域の自然特性、社会特性に則した温室効果ガスの排出抑制等の事業を平成14年度モデル事業として実施しました。
8) 温室効果ガスの排出抑制のためのより高度な新エネルギー技術や省エネルギー技術、二酸化炭素の固定化・有効利用等の革新的技術開発について、引き続き積極的に推進しました。
9) 地球温暖化に係る不確実性を低減させ、科学的知見を踏まえた一層適切な対策を講じるため、引き続き、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究、温室効果ガスの観測並びに人工衛星等を用いた観測技術の開発を実施しました。また、地球環境研究総合推進費等を活用し、これら調査研究等の推進を図りました。
10) 地球環境にやさしいライフスタイルを実現するため「地球環境と夏時間を考える国民会議」報告書を踏まえ、世論調査による最近の国民意識の把握や各種普及啓発を実施しました。また、国民一人ひとりの生活を見直していく取組の一環として、各界のオピニオン・リーダーの方々からなる「環の国くらし会議」を平成14年8月(第2回)、12月(第3回)に開催し、国民一人ひとりの自発的な取組を促し、応援するメッセージを発信するとともに、第3回においては、「京都宣言」を採択し、広く取組を呼びかけました。また、関係府省の協力の下、分科会を開催し、今後推進すべき効果的な取組方法について検討を行い、その成果として、「私の環のくらしハンドブック」と「温暖化防止のための環境学習DVD教材」を作成、配付しました。
11) 地球温暖化対策を周知・普及するため、12月の地球温暖化防止月間に集中的に広報活動を展開しました。また、地球温暖化防止活動環境大臣表彰の実施やパンフレット等の作成、各種会議を通じた周知のほか、関係省庁だけでなく地方公共団体や民間団体による啓発などが幅広く実施されました。さらに、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づいて環境大臣が指定した全国地球温暖化防止活動推進センターにおいて、国民の地球温暖化防止に向けた取組を支援しました。
12) 温室効果ガス吸収源対策の推進を図るため、二酸化炭素吸収源である森林の適切な整備・保全等を推進しました。また、地球温暖化対策推進大綱で目標とされた森林による吸収量3.9%の達成を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進、国民参加の森林づくり等の総合的な取組を内容とする「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を策定しました。
13) 2008年以降国際排出量取引が実施されることを踏まえ、産業界の排出量取引に関する理解の増進と、経験を蓄積することを主目的として、環境省と三重県が共同して「排出量取引シミュレーション事業」を実施しました。