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里なび

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活動レポート

里なび研修会 in 岡山県真庭市
【企業と自治体が連携した複合的な里山再生の仕組みづくり】

日時 平成24年2月16日(木) 13:00~16:30
場所 真庭市勝山文化センター(岡山県真庭市)

■概要
 岡山県の最北端、旭川の源流に位置する津黒高原は、雑木林や湿地、小川や渓流など豊かな自然環境に、特別天然記念物のオオサンショウウオやモリアオガエル、ミツガシワやトンボソウ、ムカシヤンマ、ヒメシジミなどの多種多様な動植物が生息する地域である。 近年、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、森づくり等環境保全活動や地の地域貢献に取り組む企業が増えている。岡山市内に本社をもつ企業は上流域である津黒高原での里山整備活動を開始している。さらに、真庭市庁舎でバイオマスボイラーの使用により創出される国内クレジットを購入し、工場のカーボン・オフセットを実現している。地元観光連盟も里山保全活動をプログラムに入れたオフセットツアーを計画している。
研修会では真庭の里山を中心とした、流域圏の多様な主体で取組む里地里山の生物多様性保全計画とその仕組みを検討した。

真庭市における里地里山関連活動について
井手紘一郎真庭市長より次のあいさつをいただいた。
環境省主催の研修会をここ真庭市で開催していただいたことを関係の皆さんに感謝申し上げる。
21世紀は環境の世紀。今、環境というと身近な生活環境、生ごみの処理、不法投棄の問題などいろいろ発生している。一方で地球規模的では、とりわけ地球温暖化防止策として、CO2削減をどのように取り組んでいくかといった問題もある。こうした問題に対し森林は大きな役割を担っている。真庭市は8割近くが森林に囲まれている。
森林は環境に大きな影響を及ぼしている。森林が減ることで絶滅する種も多くなるだろう。また手入れを行わないことで森林の機能が低下したり生物多様性が乏しくなったりすることで、生態系が破壊される状況が起こることが懸念される。そして森林は木材生産だけでない多面的機能がある。
その中に生物多様性保全の機能がある。本日はこの問題を皆さんと研修するということだと思う。真庭市では、新聞報道もされたが岡山県の準絶滅危惧種のオオヒメゲンゴロウが見つかった。そのほかギフチョウ、サクラソウなど保全しなければならない動植物が点在している。
市としては、国の支援事業を活用しながら来年度予算に計上し生物多様性保全活動をおこなうための計画を作っていくことを予定している。また株式会社トンボと国内クレジット制度を活用した協定を結ぶなど、多様な主体と連携して里山再生の活動を行っていこうと取り組んでいる。今回、里なび研修会が開催されることは市にとって大変有意義なものであると考えており、今後の生物多様性の保全についての大きな前進となることを期待している。

■講演 テーマ:「岡山の自然環境と里地里山の生物多様性」
講演者:波田 善夫(岡山理科大学 学長)

 岡山の自然環境と森林利用の歴史、そして里地里山を考えるという視点から話したい。

1)岡山の植生自然度
 保護や保全、介入といった行為をするためには相手が何者だか知るということが必要となる。里地里山を知る上で手掛かりとなるのが植生図である。植生図から見ると岡山県は全国的にみると森林割合はそれほど高くなく、自然植生については全国最下位となっている。一方で二次林の植生自然度は全国平均よりも高い結果となっている。

2)火入れによって生み出された草原環境とその活用-安山岩質凝灰岩の地域‐
 県北部の蒜山高原は、約1万年前に火山の噴火で形成された安山岩質凝灰岩の地域である。ここは真っ黒で軟らかい「クロボク(黒色土)」と呼ばれる土に厚く覆われている。クロボクには大量の有機物が含まれているがこれは数千年にわたって人間が火入れをして草原を維持してきた歴史の結果だと考えられる。チッソが少なくリン酸吸収係数が大きいため、穀物生産には不向きだが、戦後牛馬の導入により重要な生活資源となった。こうした経緯が森が形成されず自然度が上がらなかった原因の一つであると言える。

3)たたら製鉄と鉄穴流しが生み出したユニークな生態系の形成-花崗岩地域-
 津黒高原などでは花崗岩質の地域が広がっている。花崗岩には3%の鉄が含まれており、それを集める方法としてたたら製鉄という方法が弥生時代後期から明治にかけて行われていた。鉄の採取方として用いられていた鉄穴流しと呼ばれる方法は、山を切り崩したり土砂貯め(沈砂池)を作ったりするため、深山における大規模な伐採と地形改変を起こしその跡地が湿原や水田となって今に至っている。広島や岡山の平野部もその際流出した土砂が堆積してできた地形だと考えられている。
 こうした地域では植林をしても貧弱な森しか育たないが、一方で湿田が形成されて面白い生態系ができている。たたら製鉄という人間の活動による里地里山への撹乱の結果、破壊されたところと回復するところがこの100年の間に組み合わされ入り混じって、他の地域では考えられないユニークな植生環境を生み出したといえる。

4)木材生産の堆積岩地域-焼き畑文化の名残-
 地形が急峻で平野の少ない堆積岩地域では、林業が盛んになっている。真庭市勝山や久世等では和紙の原料であるミツマタの生産も有名である。地力の高い土壌が形成されやすい堆積岩地域では長年焼き畑が継続されており、焼き畑が行われなくなった跡地利用策としてミツマタ栽培がおこなわれるようになったのではないかと考えられる。

5)薪炭から化石燃料への転換が起した課題
 薪炭が燃料であった時代、都市域における炊飯や暖房などの燃料、製塩燃料や備前焼などの窯業の燃料として、多量の薪炭が消費されていた。そのためコナラやアベマキなどの生育する雑木林やアカマツ林は薪炭供給の里山として管理されていた。
 しかし、家庭燃料が石油などの化石燃料に転換するに伴って、薪炭が売れなくなり、里山の雑木林は儲からないものとなった。また、焼き畑が衰退し定畑へ転換することで広い山林が不要となるとともに、高原地帯で行われていた放牧の衰退に伴い牧草地や採草地が不要になった。こうしたことが、農用林の里山や放牧地を植林地へと転換する拡大造林を促した。  
拡大造林の結果、台風や洪水が発生するなどの問題が起こるようになった。一方コナラなどの雑木林はあまり被害を受けていないことがある。今後は雑木林を作っていくということも必要なのではないかと考えている。

6)心安らぐ場としての里山
 火入れ採草地、二次林、若いアカマツ林、ヒノキの植林、さらには熊野古道の雑木林など、里山は人が伐採と手入れを行うことで再生し繰り返している。こうした自然は特有な生物の生息場所でありまた人間にとっては資源の供給場所でもある。また視覚的に安全を認知する動物である人間にとって、見通しのきく木漏れ日の雑木林の里山は人の心安らぐ場でもある。

7)里山を持続的に利用してきた日本の農業
少ない施肥で連作可能な日本の水田という耕作方法は、定住型で高度な農業を可能にした。こうしたことが日本人に地域の自然と連携する仕組みの構築を促してきたと考えられる。薪炭林を火熱エネルギー源に用い灰を肥料として耕作地に還元する、落ち葉を燃料や堆肥にして肥料にする、採草地の草は牛馬の飼料にし排泄物は肥料にする、次世代のためにスギやヒノキを植林する、雑木林や竹林の他深山から農業資材を必要に応じて調達するなど、例としてあげられる。

8)生産の森としての里山、多様な環境を持つ里山
 葉面積指数と生産性は相対的なもので、ある一定の葉量を維持することで生産性が最大になることが分かっている。こうした点でも里地里山は大きな収穫を得ることができるシステムであり、その生産量は人間だけでなく多くの生き物に分け前を提供していると言える。
また、雑木林、竹林、人工林、水田、畑など里地里山は土地利用がモザイク的でパッチワークが小さい。こうした多様な自然が多様な生き物を育むことにつながっている。
このように里地里山とは、人間活動によって特有の植物や関連する生物が生育生息する環境である。里地里山を放置することはその生産性を低下させてしまうことを意味している。

9)どのように里山を保全再生し維持できるか
 かつての生業と一体になって形成されてきた里地里山を今、ボランティアだけで保全再生し維持していくことは無理だと考えられる。
里山の保全再生と維持管理のためにも、バイオマス利用のシステム構築が求められる。それは輸送エネルギーや加工エネルギーを節約するために地域的な取り組みを必要とするものである。またバイオマス発電等の新たな活用方法も検討されていく必要があるだろう。
以上の取り組みを進めていくためには住民はもとより企業、行政、そして大学なども様々な側面からかかわっていくことが大切である。岡山理科大学としても今後地域とのかかわりをますます深めていきたいと考えている。

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■事例報告

(1)「真庭の森プロジェクトについて」
報告者:真庭市 真庭の森プロジェクトチーム

真庭市はバイオマス事業を中心にした取り組みが有名である。今後は国内クレジット制度の売却益を使って里地里山保全や生物多様性保全に取り組むといった特徴あるプロジェクトを展開していきたいと考えている。

1)バイオマスによる国内クレジット活用の取り組みと企業連携
 真庭市は合併により平成17年岡山県で最も大きな市として誕生した。合併当初からバイオマスに着目した施策を展開しており、全国的にも有名になっている。平成22年には新しい本庁舎の建築に伴いバイオマスボイラーを導入しペレット・チップを使用している。200トンの二酸化炭素削減効果があるとされており、これを国内クレジット制度により活用していくことにした。市と企業が共同で二酸化炭素削減計画を立て、第三者認証機関に計画申請し承認してもらい、バイオマスボイラーを使って減らした二酸化炭素量をクレジットとして企業へ入れ、市にはその購入代金が入るというものだ。
真庭市では、パートナー企業を公募するという全国初の試みを行った。その結果(株)トンボと(社)観光連盟が共同実施者に決定し、平成23年1月承認された。翌月には「未来につなぐ真庭の森づくり協定」を締結した。

2)未来につなぐ真庭の森づくり協定
 本協定では、売却益を活用して地球温暖化防止、森づくり、交流などを行っている。(株)トンボではカーボンオフセット商品、(社)真庭観光連盟では、オフセットツアーを検討している。これらを真庭の森づくり活動へつなげていこうと考えている。

3)トンボの里プロジェクト構想
 バイオマス利用から始まる一連の取り組みの結果出来上がったプロジェクトが「トンボの里プロジェクト」。トンボの森づくり」と「放棄水田を活用した生物多様性保全」を目指して、蒜山中和地域での実施を予定している。
 トンボの森づくりでは、(株)トンボ社員のCSR活動の一環として、トンボをはじめとする生き物との共生を目指した里地里山づくりを推進していく。樹林地と小川や湿地などの水辺を一体的に管理し、様々な生き物が生息できる環境を整えると共に、植物やキノコ類が生育できる環境を創出していく。山の幸を楽しんだり、除伐材を薪や薪炭に利用しバイオマス集積基地へ搬入してバイオマス利用を図ったりしていきたいと考えている。
 放棄水田を活用した生物多様性保全では、身近にある水田を利用することで、住民が参加しやすい取り組みを推進していきたいと考えている。
津黒生き物ふれあいの里、地域住民、(株)トンボ、(社)真庭観光連盟、大学、学校、行政など多様な主体が連携協働体制を作り、調査、モニタリング、維持管理、体験ツアー、環境教育、情報発信などを展開していきたいと考えている。

4)市における生物多様性保全の取り組み
 市においても生物多様性保全に向けた機運が高まっており、真庭市生物多様性地域連携保全計画(仮称)の策定を予定している。また全国134の自治体が参加する生物多様性自治体ネットワークにも加入をしている。他のセクターとの交流や意見交換を通じて、様々な情報収集を図り、活動に活かしていきたいと考えている。

(2)「津黒生きものふれあいの里活動報告」
報告者:古屋達規、渡部晃平(津黒いきものふれあいの里)

 「津黒生き物ふれあいの里」は、蒜山中和地区にある真庭市営の自然観察専門員が常駐する自然公園だ。真庭市の森をどのように保全していくかという話をしていきたい。

1)森林と放棄水田に取り組むことで生物多様性創出を目指す
 国内クレジット制度を活用して取り組もうとしている「トンボの里プロジェクト」では、林業というよりは生物多様性、水源地の保全、里山保全の方向で森づくりに取り組んでいこうとしている。さらに放棄水田も活用していくことを考えている。

2)森づくりの取り組み‐「トンボの森づくり」活動‐
 活動計画を立てるための作業時間や内容などを確認するとともに、取組によってどのような効果があるのかを確かめるため、津黒生き物ふれあいの里園内で試行実践を始めている。ボランティアとふれあいの里職員で下草刈りや一部低木の間伐、落ち葉かきなどを実施した。施業現場はかつてのたたら製鉄における鉄穴流し跡やアカマツ林で、取り組みの結果、湧水池が点在していることが発見され、絶滅危惧種であるカスミサンショウウオ等がいることが分かった。
 来年度以降はこれらを保全していくための学習ができる環境を作っていこうと計画している。企業CSR活動とタイアップした草刈、落ち葉かき、間伐などの取り組みを予定している。また発生する材をバイオマスや体験資材に活用するとともに落ち葉を堆肥や子どもたちのためのカブトムシ産卵場所づくりに活かしていこうと考えている。

3)放棄水田の取り組み‐「トンボの里づくり」活動‐
取り組みを生物多様性と関連付けていくためには住民の参加が重要だが、そのための空間として水田は身近な存在であり大変有効だと考えている。また希少種を守る保全を展開するという観点からも大切だ。
現在中和地区では、高齢化と放棄水田の問題を抱えている。そこで放棄水田を活用して集落ごとに特徴をもったビオトープを形成し、地区全体をエコミュージアムとしていきたいと考えている。来年度市所有の放棄水田で実際にモデル的な取り組みをして市民に見てもらい意見をもらうとともに、住民説明会を開き、作業工程を検討して進めていくことを予定している。

4)多様な主体の協働連携による今後の活動展開プロセス
 生物多様性保全の活動では、希少種保全の問題をはじめ地域の様々な課題が出てくる。専門家・研究者のアドバイス、人手、資金など様々な側面で必要なものが発生してくる。そのため、自立し持続的に活動を展開していくために多様な主体との協働と連携が不可欠であり、今後ますます各主体とつながりを深めながら取り組んでいきたい。

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■ディスカッション
テーマ:「多様な主体の連携による真庭の森プロジェクト・生物多様性保全活動の推進について」
パネラー: 小桐登((株)トンボ開発本部環境事業企画室)
中村美保子(アサヒビール(株)岡山支社業務担当課長)
真柴幸子((社)真庭観光連盟事務局次長)
アドバイザー:波田善夫
コーディネーター:吉野奈保子(NPO法人共存の森ネットワーク事務局長)

ディスカッションに先立ち各パネラーからの取り組みについて紹介いただいた。

1)(株)トンボ
 当社は本社と生産拠点が岡山にあり全国に事業展開している。環境分野では、1986年から取り組みをはじめ、トンボ絵画コンクールや学校ビオトープ作り支援、聞き書き甲子園の協賛などを行ってきた。2011年には真庭市とバイオマス推進協定を締結し、スポーツウエア生産工場でのカーボンオフセットに取り組んでいる。
 真庭市との協定では、社員も一緒に森づくりに関わる。初回の取り組みは、ボイラー集積基地の見学を行い、バイオマスについての理解を深めると共に、ササ狩りなどの作業のほか、ボイラーや集積基地の見学、森の中を歩くといったふれあい活動を行った。国際森林年の集いでは真庭市と共にトンボスケッチ会などに取り組んだ。
今後も社員参加を促しながら活動を展開させていきたい。

2)(株)アサヒビール
(株)アサヒビールでは、様々な側面から真庭市とかかわりを持たせていただいている。
 ビールは、麦と水とホップが基本原料でありまさに自然の恵みを利用して事業活動をしている。当社では環境配慮の取り組みに力を入れており、グリーンエネルギーで缶の製造を行うなどしている。また、ビールは大衆消費商品なので、地域経済が停滞すると売り上げ目標を達成できないという特徴を持っている。その意味からも飲食業や観光業と連携しながら、環境活動ともつながる地域共生活動を展開していきたいと考えている。
アサヒビールでは、企業活動そのものにCSRの考え方を取り入れ、持続可能な社会の発展に貢献することを経営理念や行動指針に位置付けている。岡山県では循環型社会の構築をテーマに「菜の花プロジェクト」に取り組んできた。生物多様性宣言もしており、西宮工場ではトンボ、名古屋工場ではメダカ、神奈川工場ではホタルなどのビオトープというように各エリアで生物多様性保全活動への寄付や協力活動を推進している。
地域共生活動として真庭市で行っている活動としては、ご当地グルメ「ひるぜん焼きそば」の応援活動を平成19年より行うことを通して町づくりを応援している。真庭市とアサヒビールのつながりを深めようと、当社ホームページにバイオマスツアー、ひるぜん焼きそば、町並み保存地区勝山など、真庭市を多面的に紹介するコンテンツを掲載している。
今後、隣県で行っている森づくり活動のノウハウを役立てるなどして真庭市での取り組みに貢献できるのではないかと考えている。

3)(社)真庭観光連盟
 当観光連盟では、ツアー運営を主にやっており、市内各地域の観光協会と連携を図りながら、PR団体として真庭市の観光地を全国に発信する事業を行っている。
 真庭市のバイオマスツアーは全国で唯一の存在であり、単なる工場視察等で終わらない、顔の見える魅力的なツアーづくりに取り組んできた。昨年5月からは視察コースと体験学習コースを開設し、行政や企業だけでなく学生や子どもたちの参加も多く見られるようになった。バイオマスツアーの経済効果はこの5年間で4億5千万円と試算されている。
 今後は、これまでの経験を踏まえながら、子どもたちへの環境学習や、里山や産業という分野を入り口にした地域ツアーへの展開に向けて普及啓発活動を行っていこうと思っている。既存の観光資源、ツアープログラム、特産品をつないで発信し活用していきたい。
 また、カーボンオフセットの取り組みとして、バイオマスツアーバス運行による排出量オフセット、バイオマスツアーで使用するパンフレットの印刷オフセット、真庭の森プロジェクトへの参加、一般観光バスツアーのバス運行による排出量オフセット、カーボンオフセット商品の開発を行っている。
今後は、バイオマスに限らず様々な環境学習ができる場として教育旅行整備を行うとともに、企業連携による発信活動を促進していきたいと考えている。

4)ディスカッション
 コーディネーターよりパネラーに対して、それぞれの活動状況と思い、今後の取り組みの方向性などについて問いかけがあった。
(株)トンボからは他の企業や多くの人が取り組みにいろいろな形でかかわることが重要だとの提案があった。また会社の本業の部分でも地域資源を利用した新たな素材開発なども検討できれば面白いのではとの話があった。
(株)アサヒビールからは、真庭市はバイオマスツアーやひるぜん焼きそばなど様々な意味で頑張っている地域だと思う。地域の子どもや若い人たちが地域に誇りを持っていることに感銘を受けており、今後も前向きにより一層何かお手伝いさせてもらえればとの話があった。
観光連盟からは、企業と連携しながら発信活動できることがうれしい。今後はより一層来訪客を住民とともに楽しく受け入れ活動していくといった目指す観光の姿を作り出していきたいとの意気込みを語っていただいた。
波田善夫氏からは、日本の自然は素晴らしく、経済的価値もある。しかし住民にとっては身近すぎて気付かないということもあり、どのようにその良さを浮き彫りにしていくか、その手法を検討していく必要がある。住民が里地里山の良さを楽しんでいこうというスタンスも必要なのかとも思っており、そのスタンスに企業もお手伝いをしていこうということなのだと思う。企業にとっては、地域社会が停滞すると企業活動も成立しないということがある。真庭市は希少種が残っていたり、バイオマスの取り組みを続けてきており、こうした分野を活用して、里山の元気さを創出していくという時期に来ているのではないか。小さな経済を回しながら、地域、企業、行政、そして大学も連携して取り組むといった方向性が見えてきたのではないかとの助言をいただいた。

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■まとめ
 里地里山保全活動では、国内クレジット等の制度を利用しながら企業とのつながりを作ったり、地域資源を活用し多様な主体をつなぐことで新たな産業を創出したりしていくなど、多面的側面からの地域作りの視点が重要である。
本研修会では、保全団体のほか、企業や観光連盟、行政などの各主体の参加をいただき、取り組みの現状を確認しながら今後の連携の仕組みや生物多様性保全の観点を含めた新たな活動の方向性について検討することができた。

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