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里なび

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活動レポート

里なび研修会 in 沖縄県大宜味村
【ツバキの里山を拠点とした保全型ツーリズムの構築】

日時 平成23年12月3日(土) 9:00~16:00
場所 道の駅おおぎみ 大宜味村立高齢者等活性化センター(沖縄県大宜味村)

■概要
かつて薪炭や用材を供給し、作物を栽培していた大宜味村の山々は、やがて人の手を離れ、森に被われていった。今、この大宜味村のやんばるの森では、自生するツバキの群生地の発見を機会に、人里の自然の保護と再生の活動が進められている。
この森の植物や動物、ヤマシシ垣や散策道、周りを囲むシークヮーサー畑や集落のたたずまいなど、地域の自然・歴史・文化を活かし、楽しい交流の輪を内外に広げる保全型ツーリズムを、やんばるの新たな観光の形として展開する方策を考えた。

■講演

(1)テーマ:「沖縄の里山的環境について」
講演者:千木良芳範(沖縄県立博物館 副館長)

 やんばるのことならば何でも積極的に取り組みたいという思いから、日ごろ調査で山の中を歩く中で考えていることを紹介してみたい。

1)沖縄の「さとやま」環境について-本土と異なる成り立ち-
 これまで沖縄では里山は成立しないというのが一般的な感覚ではなかったかと思う。通常の里山のイメージには水田の風景がある。水田を中心に背後に水を供給する山がある。この水系と山という感覚の中に里山があるのではないだろうか。一方で沖縄では、かつては水田があったが、今はきび畑などになっており、水環境が変化してしまっている。しかし、沖縄の山を調査するなかで、沖縄的な視点から里山を再考できるのではという思いを抱くようになった。

2)嘉津宇岳の調査から-ミカン畑と生物多様性―
 本部半島南部に位置する嘉津宇岳は石灰岩質でできており水系の発達が悪い山である。動物にとっては生息場所が制限される厳しい環境で、通常は生物多様性が低いとされる場所である。また、植生面では特殊な環境に生育する植物が中心となる。通常石灰岩地のヤブニッケイ型と非石灰岩地のシイ型に分類されるが、本部層の石灰岩地にはイタジイが生えており、モザイク状に入り組んで生育している。農業という観点からすると畑ができるところが制限され、農法や作物の種類も限られてくる。こうした環境的な制限の中で、暮らしの維持向上を目指すためには自然と共生する知恵と工夫が求められる。
 嘉津宇岳を中心に勝山地区周辺のミカン畑(※沖縄ではシークヮーサーのことをミカンと呼ぶ)に至るまで35地点の両生類や爬虫類を中心とする生息調査を行った。
 その結果、生物が多いところは、人の手の加わっていない山間地よりも、ミカン畑を中心とする耕作地であることが分かった。人の手が加わらない山間地と耕作地とでは生物の多様性や数の多さで約2倍近い開きがあった。勝山地区のミカン畑は、嘉津宇岳中腹まで広がっている。密植状態で、農薬等を撒くことができず、機械による大規模な草刈りも行えないことから、手作業による適度な管理がなされてきた。また、灌漑水用のタンクがあちこちに設置され、水源として活用されている。こうしたことが生き物たちに隠れ場所や水源を提供することとなり両生類や爬虫類にとって生息に適した環境を作り出していると考えられる。
人間が生業のために行ったことが、結果として自然の生物多様性の向上に寄与しているのである。また人間にとっては、こうした山岳林と一体となったミカン畑の生態系の安定は、害虫などの発生を抑制する効果をもたらしており、苦労して農薬をまかなくてもよいなどの恩恵を与えていると言える。

3)「さとやま」再考-新たな人と自然の関係を見据えて-
 広義の解釈では、「さとやま」(※ここでは広義の里山のことを指す)とは人と自然の相互作用でできあがる空間であり、あまり水田と関係のないところでも成立するのではないかと思う。生物多様性が創出されるだけでなく、人にとっても見返りをもたらす。経済性だけでなく、精神的なゆとりやレクリエーションの提供もある。例えばそこを歩くことで元気になり、明日からの仕事を頑張れるといったように、自然と人の関係が構築されているところは「さとやま」と呼んでもよいのではないかと考えている。

4)ヤンバルの森の保全に向けて-「さとやま」と奥山の現代的意義を見出すために-
沖縄で「さとやま」を考えるにあたり次の条件が重要だ。ア)人の暮らしがある。イ)生き物たちのくらしがある。ウ)生き物の供給源として奥山がある。この点は重要で生き物たちは奥山と「里やま」を行き来する。奥山の破壊は「里やま」の崩壊につながる。
 かつては、「ひと」の暮らしは農耕だった。耕作地の背後の山林は、生活に必要な物資の調達地であり、そのほとんどは生き物だったと言える。こうした人と生き物の組み合わせが「さとやま」環境を作ってきた。しかし、今は、必ずしもこうしたことが人の生活スタイルと合致していない。したがって、現在の人の生活様式と合致する必要性を見出していかないと「さとやま」は将来的に存続できないということになるだろう。

5)大宜味村における里山的環境 -ネクマチヂ岳一帯の調査から考察―
大宜味村では、集落の背後にミカン畑があり、その背後に「ネクマチヂ岳」という山がある。そしてその背後に本島脊梁山地(奥山)が位置している。ネクマチヂはかつては奥山と人の暮らしをつなぐ里山と呼ぶにふさわしい山だったと考えられる。しかし、今は生活と直結する活用をしていない。そのため、良い感じで自然が保全され奥山化している面も指摘できる。今ネクマチヂはミカン畑の後背林(里山)と奥山の2面性を持った山だと言えるだろう。
過去と今では生活様式が異なるため、どのように今の生活様式の中で利用していくことができるのかを考えないとうまく生かしていることができない。「今の私たちにとって、どのようにネクマチヂが必要なのか」を考えること、それが管理の在り方を考える基礎になると思う。

(2)テーマ:「やんばる地域の自然環境と環境省の取組について」
講演者:加藤麻理子(環境省やんばる野生生物保護センター自然保護官)

1)やんばる地域の特色-豊かな生物多様性と暮らしの文化がもたらす森の魅力-
 沖縄本島北部に広がるやんばる地域は、イタジイを中心とする亜熱帯の照葉樹林で、そこには固有の生物種も含め数多くの生き物たちが生息している。自然海岸、カルスト地形やサンゴ礁地形、点在する滝など、特徴的な地形景観がみられ、また伝統的な集落のたたずまいとそこに伝わる祭祀などの文化も存在し、大変魅力的な地域である。やんばるの生物多様性は単位面積当たりの密度が濃く、国土のわずか0.1%以下の面積であるにもかかわらず驚くほど多様な生物が生息していることがわかっている。
生物多様性は今や世界の問題だ。1992年に採択された生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が2010年には日本で開催されている。日本では「生物多様性国家戦略」を策定し、5年ごとに見直しをしながら生物多様性の保全に取り組んでいる。自然の恵みを活かした産業や暮らしのあり方をどのように考えつなげていくのかということとも関係する事案であり環境省を中心に関係省庁とも連携しながら進めているところである。
やんばるは世界的に数少ない亜熱帯の照葉樹林として、生物多様性の観点からも大変重要な地域と言える。

2)やんばるの課題と地域資源を活かした取り組みの必要性
 生物多様性を保全していくためには、社会全体にもっと知ってもらい、地域ごとに人と自然の関係を見直し新たな仕組みを作っていくことが大切だ。それは単に昔に戻るということではなく、今の生活様式の中で新たに工夫を凝らして活用していくということである。生物多様性を保持する環境とは、これまでの人の暮らしの中になじんで内包されていることからこの潜在性に着目することが重要である。また産業化の中で分断されてきてしまった森、里、川、海のつながりを確保することも大切だ。
 今やんばるでは、法的保護の措置が十分ではない。国立公園や世界遺産といったことも視野に入れた保護策が必要ではないかと考えられる。特定の種や地域だけでなく森から川、そして海へのつながりも含めた広域での生態系保護が大切だと考えられる。また、マングースやノイヌ、ノネコといった外来種対策や希少動植物の捕獲・採取対策も求められる。
 こうした課題を踏まえながら、やんばるの生物多様性について地域内外の皆さんにもっと知ってもらい一緒になって取り組んでいくことが重要だと考えている。

3)環境省やんばる野生生物保護センター「ウフギ―自然館」の活動
 やんばる地域の自然環境に関する調査研究と普及啓発業務を行っている。近頃展示のリニューアルを行い、沖縄の言葉で「大木」を意味する愛称が公募によって付けられた。展示については、地元の方や子どもたちも楽しく気軽に利用でき、生き物の世界だけでなく人の暮らしとのかかわりなど自然と文化のつながりを紹介できるように心掛けた。
 写真展が行われたり地域の学校が授業で活用するなど利用が広がりつつある。今後さまざまな主体と連携しやんばるの魅力を発信し保全活動へへとつなげていきたいと考えている。

4)「3村たまて箱」の活動と今後のねらい-地域間連携の促進による活動の深化-
 地元の国頭村、大宜味村、東村のやんばる地域3村の自然資源をどのように保全し活用していくことが良いのか、考える人を増やすことを目的に企画された。参加者も企画運営者もどちらもやんばる3村内の人であることが特徴だ。隣接する村民がお互いに知りあいふれあうことを通じて、楽しく地域についての知見を深めていくことをねらいとしている。
 取り組みの中では地元3村の住民からみても身近で知らないところもあり、そこに魅力があることに気がつくことがある。体験型のプログラムを入れて活動を展開し、地域の魅力や資源を次の世代に残すためにはどうしたらよいかを考えている。具体的には、平成21年度はマングローブカヌー体験と自然観察、滝沢登りや森のネイチャーゲームなどを行った。平成22年度は石灰岩の森歩きやノグチゲラのすむ森観察、座学としてやんばるの生物多様性についての講座などをウフギー自然館で行った。
 地域のことは地域の人がよく知っている。農林漁業との連携を深めながら、地元の考え方や願いをしっかりとらえ取り組んでいくことが大切だ。地域の方々と連携することで、自然との付き合い方やその恵みをどう使うかといった暮らしの知恵や工夫を残していくことができる。このことが結果として多様な生き物のつながり全体を保護することに結びついていくのではないかと考えている。

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■事例報告

(1)「大宜味村の宝探し・エコミュージアム」
報告者:宮城良治(大宜味村自然文化交流推進協会 代表)

1)生活の場作りを目指して-働く場、暮らしの場、交流の場づくり
 大宜味村には豊かな自然と芭蕉布に代表される工芸や行事などの文化がある。一方で、近年若者や働き手の流出、雇用の減少、高齢化、児童の減少と小学校の統合問題など課題も多く抱えている。
当協議会は、大宜味の自然と人のかかわりから地域の誇りを見出し、生活の場作りを行っていくことを目的に結成された。働く場、暮らしの場、交流の場の3つの場作りを行うことを目指し活動している。

2)エコミュージアムに向けた取り組みと持続可能な観光地づくり
 地域資源を活かすためにエコミュージアムという発想で、地域全体の活動を生きた博物館として捉えてつなげていくことで地域活性化へと導こうとしている。村の観光振興基本計画においても「健康保養・環境保全型観光」による「持続可能な観光地づくり」が掲げられており、理念を共有している。
会としては、植物群落やサンゴの海、そして猪垣や伝統行事などの地域素材を活用し、自然環境を保全しながら維持できる経済活動をすることで地域の活性化を進めていきたいと考えている。

3)塩谷湾の取り組み事例-ハーリー大会を契機とした自然文化に対する意識向上-
 村内の塩谷湾では、かつてくり船を利用して湾奥の大保川上流域へ田畑の仕事や薪や木材の調達をしていた。またウンガミ(海神)などの地域儀式でもクリ舟が使われ、集落間での船漕ぎ競争などが行われた。このように船を漕ぐことは地域にとって伝統的な農耕文化として捉えることができるものだった。一方、近年の石油に依存した生活様式によって山から薪や木材を運ぶ必要がなくなり、農耕で舟を利用することもなくなった。このことは、生活の中から地域環境を学ぶ手段を失ったということも意味していると考えている。
 そこで、忘れ去られた船を漕ぐということが人間と自然をつなぐ村の宝の一つになるのではと考え、地域の水辺環境を利用してハーリー大会を企画し実施した。ハーリーとは爬竜船を漕いで競争し、豊穣・豊漁を祈願する沖縄の伝統行事だ。その結果年配の方々が昔の舟を漕いでいたころのことを話してくれるようになったり、参加した子どもたちが関心を寄せるようなった。自然や文化に対する地域の関心が高まったように感じられる。

4)多様な主体の連携と交流を活かして
ハーリー事業の他、地域の宝を再発見するため、大保川で野鳥観察を行ったり、やんばる森のトラストや辺土名高校とともに最上流部から塩屋湾まで生物や水質調査、流域の昔に関する聞き取り調査なども行っている。その成果を地域の自然を体験的に学べる教材作りにつなげたいと考えている。塩屋小学校では、地元の植物学者ややんばる森のトラストの指導のもと、総合学習の場でも自然観察を行っている。
 また、取材受け入れによる映像支援も行っており、大宜味村の自然や文化に注目した国内外のメディアや研究者が村を訪れるようになってきている。地域の良いところを見出し記録として残していくことが交流人口の拡大につながればと考えている。
様々な人々とのつながりを持った事業を通じて地域資源を活用した地域活性化と持続可能な観光地作りを目指していきたい。

(2)「石灰岩の山と森とのふれあい」
報告者:宮城弘(NPO法人 大宜味つばきの会 副理事長)

1)活動概要とフィールド特性-「森で遊ぼう」という意識と里山活動-
 大宜味村の背後には石灰岩質の森が6kmにわたって山脈上に連なっている。標高は300mほどで、200mぐらいのところまでミカン畑が入っている。10集落ほどがこの山中に介在し、山稜4kmにわたってかつての猪垣が伸びている。大宜味村の特徴的な山と言えるが、その周囲にはいろんな宝物が眠っている。いかにしてこの場所で遊ぼうかと考えたのが「大宜味つばきの会」である。会員60名で毎週水曜日に集まる中心メンバーは7,8名。10年間活動を続けている。
 会では10年前散策道にツバキの群生を見つけ保護と普及に取り組み始めた。森を生き生きと持続的に活用できるような状況を目指している。また、地域の理解と参加を基本にした森とのふれあいを進めようとしており、次の3つのことに力を入れている。
・訪れる人を案内して人里の森の自然を称揚し愛護の心を育む。
・里の生活や文化を体験することで交流を深め連携を広げる。
・地域で苗づくりに取り組み「つばきの里づくり」をめざす。

2)ツバキに取り組む意味-村づくり4つのキーワードと観光とのかかわり-
 沖縄には日本に自生するツバキ4種の内3種が生息している。ヤブツバキ、サザンカ、ヒメサザンカでヒメサザンカは琉球列島の固有種だ。ツバキは花姿がよく、ツバキ油や木炭や用材などに有用であり防風林にもなる。このようなツバキの特性を活用して地域の景観を作り、人を招き、産業を育てるといった地域活性化につなげることができないかと考えている。
 大宜味村は村づくりの方針として4つのキーワードを掲げている。長寿の里(日本一長寿の村)、芭蕉布の里(国の指定重要無形文化財)、シークヮーサーの里(村の特産物)、ぶながやの里(大宜味の森に棲む妖精でふれあいを求めて時々出てくるとされる)だ。自然豊かで人情も厚い村の良さを売り出していきたい、そのことがツバキの森をどう守るかということとつながっている。

3)保全・保護活動の内容
 村には年間15~20万人ほどが訪れているといわれ、山歩きや川遊び、カヌー、農と食の体験など山里のふれあいを進めている。会の散策道を利用する人も増えてきた。ツバキの他にもナガミボチョウジやオキナワスズムシソウ、サクララン、リュウキュウハナイカダなどの植物や、ケナガネズミやオリイオオコウモリ、ノグチゲラ、リュウキュウアカショウビンなどの生き物が生息しており、森の魅力を高めている。
 会としては具体的に次の活動に取り組んでいる。
ア)調査・保護活動 
森の調査と母樹調査、実生の調査(ヒメサザンカ)、開花調査と形質記録、専門家による生き物調査などを実施している。
イ)栽培
 森の木立や畑の防風林からツバキの実を採取し、種を取り出し選別。ポットに植え付けミズゴケで包むことで発芽率を高めている。育苗施設にミスト(自動噴霧)を設置したり、穂木や培養土作りを行い、採取地・母樹毎に区別して植え付けしている。会員参加で苗作りを行い、自動灌水、施肥、鉢替えなどを行って3年苗に育てている。いろいろな苗作りをして村内の植樹に役立てようとしている。
また油を絞って利用することも試みている。目標は重量の3割である。
ウ)様々な人たちとの苗作り
 ツバキの活動を地元でも見つめ直してもらうという趣旨で地域の人たちと苗作りに取り組んでもらうようになった。また交流という意味も含め人手が必要な作業では、常には来れない都市に住んでいる人たちにも手伝ってもらい、ツバキの活動を理解してもらうようにしている。
エ)見本園の設置と植樹・育樹活動
 森の中にツバキを返そうという試み。このように植えていけば立派なツバキの森になるということを示すために見本園を作っている。地形や環境を選ぶツバキの特性を勘案しいろいろな保護策を講じながら進めている。
 また、ダムの造成などにより緑が不足しているというところが村内でもあちこちに見られるので、育成したツバキの苗を提供し、植樹と育樹の促進に努めている。

4)交流、人材育成、普及広報
 会では地域の宝をどうすれば活かせるのか考え取り組むことを重要視している。その一環として芭蕉布をはじめ地域資源を活かした体験活動を行い、都市の子どもたちとの交流も行っているところだ。
最近はマスコミなどでも紹介をされるようになってきた。一方で会の高齢化も進んでおり、後継者やガイドを育成していくための養成活動や普及広報活動をますます行っていく必要があると考えている。

5)今後の展望-多様な人々が集える場作りを目指して-
 ツバキを通して地域の様々な資源を産業に結びつけたり、地域の意識を高めたりしていければと思っている。来年度の平成25年2月には沖縄でツバキの全国サミットが行われる。それに向けてツバキに対する見方がより一層広まるように「おおぎみ椿まつり」という手作りイベントの運営にも取り組んでいる。
様々な人々の関心を高め、会の拠点が交流の拠点となるとともに、ツバキを通じて森だけでなく海も含めて村全体が元気になる楽しい活動を進めていきたい。

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■ディスカッション
テーマ:「地域連携保全活動計画を見据えた地域の保全と活用策について」
パネラー: 千木良芳範、加藤麻理子、宮城良治、宮城弘
コーディネーター:竹田純一(里地ネットワーク事務局長)

 はじめに地域連携保全活動計画の策定を見据えて大宜味村におけるキーワードの確認を行った。暮らしや農業などの生業と自然環境のかかわり、森里川海といった空間のつながり、地域で大切にしてきた中で共通して大事にしてきた地域資源、若者が活躍できる場作りと地域活性化、交流とツーリズムの促進などについて活発な意見が交わされた。
千木良氏からは、外部の専門家と地域で頑張っている人々とタッグを組むのことは大切だが、何よりも「おおぎみ椿まつり」など小さな努力と地道な活動を続けていくことが一番重要だとの指摘があった。また、やんばる地域3村内の相互の連携も重要だが、沖縄の自然の中でやんばるがどう位置づけられるかというより広域的な視点も持つ必要があるのではないかという提言があった。
加藤氏からは、地元の活動によってデータや写真などの蓄積が進められつつある。地域だからこそわかるという視点を大事にしたい。情報共有と発信を進め関係者間のネットワークを広げていくことが国立公園から世界遺産の指定まで視野に入れた取り組みにつながるのではないかとの発言があった。また、奄美や八重山などの他の進んでいる地域との連携や情報交換の必要性についても提言された。
宮城良治氏からは、若い人たちを村に戻していくための原動力となりたいという地元若手世代からの強い思いを語っていただいた。
宮城弘氏からは、昔は用材でしかなかったツバキが持つ美しさや楽しみ等、様々な可能性について触れていただき、そこから現代人のニーズに対応した価値を生み出していきたいとの考えをいただいた。
フロアーからは「さとやま」という言葉が沖縄においてしっくりこないという感想があり、民俗的なことも勘案しながら沖縄なりの表現や活動特性について考えをさらに深めていければといった意見が出された。
パネラーや参加者の議論を受けて、村の行政担当者からは、里山的背景を持ったツバキの活動の他、地域の様々な活動を踏まえながら、ネットワークを広げることで地域連携保全活動促進計画の策定を行っていきたいとする方針が伝えられた。

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■まとめ
 里地里山の環境は地域によって多様な特性を持ちうる。保全や活用をめぐる連携や目指す方向性についても地域特性への視点が重要なものとなる。
 今回の研修会では、沖縄という本土とは大きく異なる自然環境を事例に様々なレベルから議論を深めることができた。自然と文化・暮らしのかかわり、地元活動団体・専門家・行政という多様な主体の連携、若手世代の役割と期待、地元と都市部など外部者との協働、経済的効果や雇用創出などが視点として出された。
 地域の多様な要素と取り組みを行動計画に盛り込むための具体的観点について議論を深め確認することができた。

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