ページトップ
環境省自然環境・生物多様性里なび活動レポート > 研修会・シンポジウム報告

里なび

ここから本文

活動レポート

里なび研修会 in 栃木県宇都宮市
【ふくろうの里づくりを始めよう 参加・交流・協働の計画を考える研修会】

日時 平成23年10月29日(土) 9:00~16:00
場所 上場所 田原コミュニティプラザ(栃木県宇都宮市)

■概要
農村生態系の頂点に位置するフクロウの生息環境は、餌となる小動物や巣になる樹洞のある大木の減少から危機的状況にある。企業、地域、団体、個人の協力の下で樹洞の代わりになる巣箱の設置を行った取り組みを通じて、生物多様性の保全の方法とフクロウの里づくりについて、理解を深めた。

■講演
テーマ:「ふくろうと営巣環境」
講演者:長縄充之(NPO法人グランドワーク西鬼怒フクロウ営巣ネットワークプロジェクト 理事・プロジェクトリーダー)※プレゼンテーション資料提供
山口千代(フクロウ営巣ネットワークプロジェクト奈良支部長)
飯塚悦男(フクロウ営巣ネットワークプロジェクト足利支部長)
八坂郁雄(フクロウ営巣ネットワークプロジェクト南那須支部長)

1)フクロウの生活史と森の関係
フクロウの基本的な生態について最初に確認したい。フクロウは人里近くの森の林縁部に営巣する。自分で巣を作ることができず大木などに空いた穴(樹洞)を使って子どもを育てる。また森の中段を飛翔し狩などを行う。したがって整備された森でかつ樹洞のある巨木が残っているということが必要だが、こうした森が近年の林地開発や枯死・倒木により少なくなってきており繁殖の妨げになっている。
子育てについては、一度に3、4個ほどの卵を産み、1か月ほどで巣立つ。メスが面倒を見て、オスがエサを運ぶ。雛は巣立つ前に一度地面に降りて他の木を登る性質があり、地面に降りた際に人の手で保護しようと勘違いし、持ち去ることのないよう注意が必要。雛の段階で他の動物に襲われることも多く繁殖率の悪い鳥であると言える。

2)農業の益鳥としてのフクロウ
フクロウは夜に狩りをするが、主な場所は人里近くの林を中心にそれに続く野原などである。獲物は主に畑を荒らす野ネズミやモグラであり、農家にとっては益鳥である。フクロウが生息できるよう管理された場所は、緩衝帯にもなりイノシシなどの獣が人里に出没することも防ぐ。

3)フクロウの営巣促進ための各地の取り組み事例

ア)奈良支部の取り組み
以前から巣箱の設置を行ってきたが、長縄氏のフクロウ営巣ネットワークの情報を新聞で知り、本格的な活動を始めるようになった。現在、東大寺に3個、高取村に3個、桜井市等に7個設置している。地主の許可等をきちんと受けて設置するようにしているが、困難も伴う。特に東大寺では、観光客や僧侶の関係があり様々条件があって難しかった。しかしハトやアライグマから寺を保護するためにも効用がある等のメリットを提示するなどして設置することができた。
巣箱設置の結果、実際にフクロウが入り営巣してくれるものもあるが、ムササビが入ってしまったりしてうまく営巣できないものもあり、試行錯誤が続いている。今後は現地からの要望もあり三重県や京都府など他県にも設置する予定をしている。

イ)足利支部の取り組み
 長縄氏の活動を新聞で知り、自分達の地域にもフクロウがいるのではと考え巣箱作りを始めた。実際5年前から自宅近くの天然木を観察してみると営巣が確認でき、毎年2個ずつ卵も発見している。
現在足利地区では12個の巣箱を設置している。佐野市のみかも山公園など行政とやり取りを行って設置することができたところもある。しかし人が多いためかなかなか営巣に至らなかった。昨年ようやく巣箱にフクロウが入り繁殖することができた。
関連活動として生き物調査会を年1回実施しており、そこではフクロウやカワセミなどの鳥のことも一緒に話し、関心を持ってもらうようにしている。

ウ)南那須支部の取り組み
田んぼの学校活動の中で参加者からフクロウの巣箱のことを知って取り組みを始めた。巣箱は地元の小学校の学校林に1個、高校(保安林)で2か所、その他各会員の所有地に設置しており、計12個ぐらいとなっている。
どういうところが営巣につながるかということはなかなかはっきりとしない。巣箱同士の距離が500mぐらいでも営巣することがあるし、逆にひと山越えて10km以上離れているところなどもあり、試行錯誤が続いている。比較的近辺で営巣が確認される傾向があるのではと感じている。

4)営巣効果を上げるための技術的工夫と今後の課題
巣箱の設置箇所のポイントは、巣箱の設置木がある程度広い空間に面していて、巣箱よりも少し離れたところに一時的にフクロウが留まれる枝などがあること。フクロウは巣箱の近傍の枝に一旦止まり、そのあと巣箱に入るという習性がある。また、雛への餌の与え方は、オスが餌を持ってきてメスに渡し、メスが与えるという行動をとる。オスは動くものを食べる習性があるため間違えて雛を食べないようするためで、メスは雄を近づけない。設置に際してはこうした習性に配慮する必要がある。
 フクロウの巣箱は10月ごろ設置し、3月ごろ卵が生まれ、5月に巣立つというサイクルとなっている。そのため手助けとして巣箱の継続的な点検とメンテナンスが必要であり、向きを変えるなどの工夫をしている。
しかしまだまだ試行錯誤が続いておりなかなかうまくいかないというのが実情。今後全国的に調べていくことが重要だと考えている。しかし、餌環境や巣箱の設置場所、森の状態、そして何より周囲の人の理解ということが大切な要件であると感じている。フクロウは猛禽類なので観察時にはヘルメットを着用するなど注意点もあるが、一方で割と人懐っこい習性も見え隠れする鳥である。さまざまなしぐさはおもしろく、かわいらしい。人間がちゃんと管理していたら答えてくれるのではないかと思いながら楽しく取り組みを続けているところである。

ページトップへ

■事例報告

(1)「下ヶ橋地区自然環境整備事業の取り組み」
報告者:加藤幸雄(NPO法人グランドワーク西鬼怒(代理)

1)下ヶ橋地区の原風景とその特徴
 宇都宮市街地から10km程の距離にある海抜140~150mの平坦な里山環境に位置し、古地図で確認してみると鬼怒川の旧河川敷、両岸が河岸段丘になっている。ここに1本の用水を引き込み有効利用することで水田と集落を形成された。
当地区は沖積地であることから米作りに適しており食味80以上のおいしい米が収穫できることで定評がある。一方で山林についてはまとまった森林は段丘縁に筋状に残っているに過ぎない。このようなところでも条件を整えることでフクロウが営巣できることに驚かされる。

2)土地改良事業の規模とその特徴
 約200haの対象面積の内138haが集団化している。水田は集積された2ha以上の圃場が108haあり、1ha以上の区画が50haある。この様に大規模に生産団地がまとめられているところは全国的にも珍しい。

3)自然環境整備事業の端緒
 宇都宮大学による現地調査の結果、ホトケドジョウやバイカモ、ミズニラ等の希少な生き物などが発見された。またヤマメが自然繁殖する貴重な環境であることも確認された。調査結果から、営農だけでなくこれら貴重な環境をどのようにしていくかということを考え「エコビレッジ推進委員会」が結成された。地区内を流れる谷川を中心に活動を展開しており水辺保全の他、隣接する森にフクロウの巣箱などを掛けるなどの取り組みを行っている。

4)水のネットワーク作り
 地区には鬼怒川を中心にいくつかの水路がある。土地改良事業によって従来の蛇行していた流れが直線化されたり、排水効率を高めるために段差ができてしまうことで生態系に悪影響を及ぼすことが危惧された。そこで水路勾配を落とし波型側溝を入れることで魚が登れるようにしたりするなど、水路改修したところすべてに魚類等の生き物に対する配慮を行うこととした。また、ニホンアカガエルが森と田んぼを往復する際に障壁となるU字溝すべてに蓋をするなどの整備も行った。

5)緑のネットワーク作りとフクロウの営巣促進
 鳥類にとっては土地改良事業によって、河岸段丘面の森、屋敷林、平地林のネットワークが切れてしまうことが危惧される。このため区域のあちこちに植栽を行ったり、斜面林、雑木林、平地林などを残したりするなど緑のネットワークが途切れないよう配慮した。
 こうした保全活動の一環でフクロウの巣箱をNPO法人グランドワーク西鬼怒が中心になって設置している。2kmのエリアに7カ所設置しており、毎年どこかの巣箱に営巣している。ハクビシン等の天敵にやられることもあるが1番多い年には2カ所も入ったことがあり、設置効果がみられる。フクロウの他カワセミも生息が確認されている。

6)活動センターと農村公園の整備と活用
 グランドワーク活動の拠点として活動センターと農村公園を県助言を受けて整備した。こうした建物と敷地は、農村体験、味噌の加工、煮物作りなど田舎ならではの取り組みに対応しており、大きな行事の際に重宝している。

7)人のネットワークが生み出す力
 自然を見つめなおす活動が盛んになるにつれて、人のネットワーク作りの大切さに気付かされている。200haの農地を守っていくのは住民だけでは大変なこともあり、大学や学校の子ども達、NPO法人グランドワーク西鬼怒会員など外部の人たちの参加は大きな力だ。参加者に対する食事提供など地賄いでは地元女性団体が活躍しており、多くの人たちの協力のもとで取り組みが成り立っている。
環境活動を契機に「どじょっ娘米」など生き物をシンボルに米のブランド化を図りPRするといった営農面での活性化にも取り組むようになっている。

(2)「逆面エコ・アグリの里の取り組み」
報告者:藤井伸一(逆面エコ・アグリの里 事務局)

1)フクロウをシンボルにした取り組みの概要
 逆面エコ・アグリの里というのは農地・水・環境保全向上対策事業の団体。化学肥料や農薬を半分ぐらいに減らすことに地域全体で取り組んでおり、面的に生き物の生息環境を守る基礎作りを行っている。
こうした活動の一環でフクロウを活用している。地域内にフクロウをモチーフにした様々な看板や陶芸の置物を設置している。地区内すべての家に陶芸家でもある長縄氏制作のフクロウ像が配られ8割ぐらいの家では道路から見えるところにシンボルとして飾っている。
保護活動として地区の半分ぐらいの面積で500mくらいの間隔で巣箱を設置しており、営巣・産卵の実績もある。フクロウは田んぼ周りの生態系の頂点に位置するということで着目している。フクロウには、単に生態系が豊かであるだけでなく、生き物と農村が共存していくというイメージがある。減農薬での環境保全の見返りとしてフクロウをシンボルにした米のブランド化を図ることができるのではと考えている。
フクロウの他にもホトケドジョウやタガメなど他の生き物もシンボルとして活用している。ビオトープを造成したりカエル蓋を設置するなど農村景観と生態系を守る取り組みを推進している。

2)活動の経緯-フクロウ営巣ネットワーク活動と農地水環境保全向上対策事業との連携-
 平成17年度からNPO法人グランドワーク西鬼怒のフクロウ営巣ネットワーク活動により地区内で6カ所で巣箱が設置されたのを皮切りに平成21年度までに25カ所の巣箱が設置された。
平成19年からは農地・水・環境保全向上対策事業の逆面エコ・アグリの里も連携して活動を開始。農村生態系保全の理解を深めながら、フクロウをシンボルにした取り組みを展開するようになった。活動の中で米のブランド化を図り平成22年には「育む里のフクロウ米」が商標登録されるに至っている。

3)多様な主体との連携活動
 現在、NPO法人グランドワーク西鬼怒をはじめとして行政や学校、大学、まちづくり団体など多様な主体と連携をして、保全活動や観察会、都市と農村の交流、大学の演習フィールドの提供などを行っている。連携することにより他人の知恵と知識を生かすことができると考えている。
やり方としては、最初から地域全員の合意形成を図るのは難しいため、外部の力も借りながら「見試し的」に取り組みを始め、うまくいきそうであれば「順応的」に地域に広げていくようにしている。

4)取り組みの今後を見据えて
 今後は、都市と農村の交流による地域活性化を考えている。例えば、宇都宮市観光交流課と連携し、都市住民に農作業や農村の生活を体験してもらう交流事業に参画したり、フクロウ米のパッケージデザインによる食と地域の交流、近隣の菓子工房と連携した商品開発と販売等を取り組み始めている。フクロウ米を使った焼酎づくりも予定している。その他に、そば祭り、田植え体験、食の体験、そして近年選定された「とちぎのふるさと田園景観百選」など、地域の様々な取り組みにフクロウのイメージを取り入れて活動を展開し、地域活性化につなげようとしている。

(3)「企業におけるCSR活動とフクロウの営巣」
報告者:佐久間正(ニッカウヰスキー株式会社栃木工場長)

1)企業としての環境基本理念
 当社が属するアサヒグループは地域の水資源を中心とする恵みを生かした産業であることから、いくつかの行動指針の中に環境と安全への配慮を定めており、「美しい地球の保全と人にやさしく」を掲げている。2010年3月環境ビジョン2020を策定し、低炭素社会への貢献、循環型社会への貢献とともに、生物多様性の保全活動、自然の恵みの啓発活動をテーマに取り組んでいる。

2)環境行動指針と具体的な取り組み
 アサヒグループの「生物多様性宣言」では、生き物たちの住む自然を守る、自然の恵みを大切に生かす、世界中の人々と一緒に取り組む、といった指針を定めている。具体的には人工林の造林・保育や天然林の保護等の生態系保全活動、水源地の森保全活動、工場でのビオトープ造成、ヤマメの放流、地域清掃活動、環境イベント、地域向け環境プログラムなどに取り組んでいる。

3)ニッカウヰスキーの環境配慮活動
 ニッカウヰスキーでは、貯蔵樽をホワイトオーク、いわゆるドングリの木を用いており、また貯蔵後も水で割る作業があることから、森と水は企業活動において大変重要な資源となっている。そこで環境配慮活動として、ごみの資源化100%、3年間で二酸化炭素排出量を3,000トン減らす等に取り組んでいる。

4)栃木工場におけるフクロウの営巣ネットワーク活動
ニッカウヰスキー(株)栃木工場の敷地23haの約7割は森林である。フクロウの営巣ネットワークの取り組みとしてフクロウの巣箱設置を2006年から行っているが、2009年から11年まで連続して巣立つという成果を上げている。また、フクロウだけでなくウスバシロチョウやアオハダトンボなど水のきれいなところに生息する希少な生き物もいる。こうした自然の良さを見つめなおし楽しみながら、より良い環境作りを目指していきたいと考えている。

(4)「JTBの考える着地型のツーリズム」
報告者:塩田容孝(株式会社 JTB法人東京)

1)都市農村交流を生かすためのJTBの基本的な視点
 JTB東京では魅力的な資源を持つ地域に首都圏を中心とする人々が来訪することで地域活性化につながればということを考えている。近年里地里山では農林漁業資源を生かした体験活動が盛んになっている。地元の子どもたちを対象にした活動だけでなく、昨今では都市農村交流の取り組みも展開されるようになってきた。これを活用できないかということがJTBの考えで「着地型ツーリズム」は重要な視点である。

2)着地型ツーリズムとは
 今、少子高齢化や農林漁業の低迷を背景にして地域経済の活性化策として従来の行政主導のハード事業から効果的・効率的なソフト事業への転換が進んでいる。その中で最も有効だとされるのが観光振興であると考えており、そこには経済波及効果において定住人口の減少を交流人口でまかなっていくという発想である。
着地型ツーリズムは地域住民が主体となって資源を発掘し、観光事業につなげていくという旅行業の形態だが、地元の方々と連携し魅力ある商品を造成し販売できるかどうかが鍵となる。

3)着地型ツーリズムの進め方-観光地マーケティングの基本フレームについて-
 着地型ツーリズムを進めるにあたっては、まず観光地マーケティングが必要だ。分析フレームとしては、a.強み(自地域の資源や地勢等の強みを把握)、b.弱み(自地域の観光振興における弱みを分析)、c.機会(観光振興においてプラスとなる外部要因を分析)、d.脅威(観光振興において傷害となる外部要因を分析)があげられる。そのうえで、消費者のニーズを把握し、例えば首都圏に近いなどの特性を持つ宇都宮にあったターゲットを選定していく。最近では例えば山ガールや島ガールなどの都会女性の志向性もあるのでそういったことも生かせると考えている。JTBでは以上のような分析を行いつつ、商品と価格の設定、流通とプロモーション等、商品作りから販売計画まで行っている。
 最近の旅行トレンドは、従来のような旅行施設だけをめぐるような画一的な中身のマスツーリズムから変更しつつある。地域との出会いが重視され農村の暮らしを体験するなどの農家民宿などが注目されている。また物見遊山からテーマ性のある旅が求められている。これからはいわゆる「オンリーワン」の地域づくり、そして訪日外国人でも受け入れられる取り組みが求められている。

4)具体的な商品作りのヒント-諏訪地方の観光振興の取り組み事例から-
 長野県諏訪地方は観光地・温泉地として成熟しているものの最近は観光客がじり貧状態にあるという課題を抱えていた。地元諏訪大社を中心に開催される「御柱祭」は奇祭として有名だが、7年目ごとの開催であり集客ピークも1カ月に留まっている。また年間ベースでの観光客は夏季に集中し通年型観光の目玉がない。
 そこで、御柱祭開催年以外の集客と通年型観光に向けた地域資源開発を図ろうと着地型ツーリズムの発想から商品開発に取り組んだ。地域に目を向けてみると小さな神社だけではなく小さい規模の神社「小宮」がたくさんあることが分かってきた。そこで様々な小宮の逸話や御利益、自然環境の優れたところを調べて選定。これに食や体験プログラムなどを組み合わせたり、自転車や車を利用したプログラムなどを設定し、20個ほどのプラン作成を実現した。ポイントは地元情報、消費者ニーズ、そしてトレンド・話題性といった3つの要素を組み合わせることである。

5)流通プロモーションと人材育成の重要性
 観光商品を開発しても流通にどう乗せるかということが、特に着地型ツーリズムでは課題だ。地元発着型はリーズナムルなので旅行業者としても他の商品と比べてなかなか資金をかけられない。そこで、一定の規模を確保することや、飲食・物販業など他業種を含めた総合的な取り組みを視野に入れていく必要があると考えている。
 また体験交流のためにはボランティアガイドやネイチャーガイドなどの人材活用が重要。誇りを持って取り組めるような人材育成が今後ますます重要になると考えている。

ページトップへ

■ディスカッション
テーマ:「下ヶ橋地区~逆面地区現地視察『ふくろうの里づくり』でディスカッション」
パネラー: 山口千代、飯塚悦男、八坂郁雄、加藤幸雄、藤井伸一
コーディネーター:竹田純一(里地ネットワーク事務局長)

 事例報告者の解説を交えて下ヶ橋地区と逆面地区の2つの活動地域の視察を実施した。
 下ヶ橋地区では、農村自然環境整備事業の実施地を巡り、高低
差を軽減した水路、生き物の移動に配慮した道路整備、畔への植栽、水辺周辺の自然保全区、フクロウの巣箱設置個所など諸施設を確認するとともに、それらの維持管理や活用を行う住民や外部参加者の取り組みについて説明を受けた。逆面地区では、フクロウのモニュメントや看板が各所に配置され、集落のシンボルとしてPRされている現状を見学した。地名の由来など伝説や歴史とマッチングさせた発信方法など、地元資源と結びつけた取り組みの一端が紹介された。
 参加者からは、ホタル、ヤマメ、ホトケドジョウ、タイコウチ、タガメ等、地域で見ることができる生き物の豊かさについて評価する声や、活動の推進体制について理解ある住民の取り組みの蓄積が成果につながっているとの感想が聞かれた。また、民泊を含む農村体験と米の販売促進の強化などに関する地域振興策についても行政をはじめとする参加者から意見が出された。

ページトップへ

■まとめ
里地里山における生態系豊かな環境づくりは、理解ある地域住民の活動を基礎としながら、いかに外部の協力主体を引きこめるかということが重要となる。
本研修会では、環境保全型の農村づくりに取り組む地域が、フクロウを営農活動のシンボルに活用しながら生物多様性を高めている現状を確認することができた。また、観光や食産業など他の多様な分野との連携を深めることで都市農村交流を活性化させ、里地里山保全を展開していくなど、今後の里地里山保全活用の具体的な方向性についても議論を深めることができた。

ページトップへ