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里なび

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活動レポート

里なび研修会 in 愛媛
瀬戸内の山里海の未来を探る

日時 2009年2月28日(土)~3月1日(日) 集合9:00
場所 愛媛大学ほか(愛媛県松山市)
活動団体 NPO法人自然と共に生きる会、えひめ千年の森をつくる会
石鎚ふれあいの里、NPO法人愛媛生態系保全管理
まつやまNPOサポートセンター 共催 愛媛大学瀬戸内海環境ESD

愛媛大学では、「瀬戸内環境ESD-山里海と人がつながる環境教育」を、現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)で実施しています。今回の里なび研修会は、この愛媛大学活動地のいくつかの拠点をめぐり、瀬戸内における「里地里山里海と限界集落」の現状を把握し、解決のための糸口を検討します。特に、生きもの、生業、食農、暮らし、水、景観、古民家、交通・エネルギーなどについて、地元の活動団体や各方面の専門家とともに、里地里山保全再生計画策定手法の研修を行いました。
今回の里なび研修会は、愛媛県内各地の里地里山をめぐりながら、管理手法、保全方法などについて現状の説明を受け、課題整理をするとともに、里地里山保全再生計画策定手法についての研修を行うというものでした。愛媛大学の「瀬戸内環境ESD-山里海と人がつながる環境教育」の関連で、生態学、農学、環境景観、民俗学など多彩な研究者も専門家として参加し、様々なアドバイスを受けることができました。

研修会風景
研修会風景

●東温市の里山保全
NPO法人自然と共に生きる会、えひめ千年の森をつくる会が活動している東温市の里山のうち、NPO法人自然と共に生きる会が自立持続可能な地域生態系生活のあり方を考えて取り組む「冒険夢の森」を視察しました。重信川の河川敷は、人通りはあったものの不法投棄等が発生しており、地域的な課題となっていました。そこで、地域の小学校や大学生ボランティアなどとともに地域自生種を中心に植林活動をはじめており、現在は、小学校の昆虫観察や野外活動の場となっています。
NPO代表の相原俊雄さんは、愛媛大学瀬戸内環境ESDを受講しており、そこでの人のつながりなどをふまえて、冒険夢の森を拠点として地域の子ども、住民、暮らしや農業のつながり=縁を取り戻そうとしています。
この取り組みを受けて、東京農業大学教授の進士五十八さんは、「地形に合った自然、風景になじむ形で自然に手を加えることが必要」と、植林の視点や手法、生物多様性確保についてアドバイスをされました。
また、鹿児島県のNPO法人くすのき自然館専務理事の浜本奈鼓さんは、「地域に山と農地があるので、そのもともとの利用のしかたを大切に樹種を選定したり、人間が食べるだけでなく小動物や鳥が食べる実なども意識して地域の樹種を選んでください」と、話をしました。

冒険夢の森と相原さん
冒険夢の森と相原さん
相原俊雄さん
相原俊雄さん

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●石鎚ふれあいの里(西条市)
石鎚ふれあいの里は、西条市の加茂川、黒瀬ダムよりもさらに上流部の大保木(おおふき)地域にあり、閉校した小学校の敷地や建物を利用して自然体験や環境学習を行う宿泊体験施設です。西条市所有し、地域の住民グループが運営しています。現在、若い元博物館学芸員の山本貴仁さんらが施設管理とともに自然体験活動や調査研究などを行っており、年間の宿泊者が4000人、プログラム体験者が年間800人ほどとなっています。体験活動では、「自然のしくみを知る」ために周辺の散策で野草を観察、食べられる野草を探したり、昆虫観察、水中の淡水魚観察、こんにゃく作り、草木染めなど、生活と農業、自然環境の関わりを含めて体験できるようなプログラム構成となっています。
ここでは、スタッフが、運営管理業務のほか、自然体験を、小学生、中学生、高校生、大学生、大人など年齢や経験にあわせながら身体で感じられ、理解できるようにするプログラム構成、地域の自治活動への参加など様々な役割や機能を発揮しており、地域の信頼とともに、魅力的なプログラムによって地域の拠点を生かしています。スタッフの技能、経験の重要性や地域と拠点施設の関わり方などを学びました。

山本貴仁さんと日鷹准教授
山本貴仁さんと日鷹准教授

石鎚ふれあいの里 [外部サイト]

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●里地里山保全再生計画策定研修と1日のまとめ
加茂川を河口に向かって下り、古民家再生や、昭和、平成の名水100選として親しまれる西条市中心部の湧水、水路、生きもの観察会の方法などを視察したあと、里地里山保全再生計画策定について、里地ネットワークの竹田純一より本日の視察地域の事例などを参照しながら計画策定までの考え方を研修しました。
今治市の元小学校校長より、小学校における環境教育の実践例についての報告をいただきました。学校給食での地場産、有機農産物使用、学校内での農業体験、バタフライガーデンづくりなどを行いながら、子どもたちに食と農業、生きものの関わりを通じて、子どもたち同士、地域や大人とのコミュニケーション能力を高めています。
この事例報告について、進士教授より、学校教育での環境教育充実が必要であり、報告のような専門的な指導者による取り組みが必要であるとともに、環境教育は楽しくて、おもしろいものであること、教育として生きものや食べもののことなどをコミュニケーションツールとして広がりをもたせることの重要性を解説されました。

進士教授
進士教授

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●赤穂根島での地域調査研修
2日目は、越智郡上島町で、しまなみ街道と接していない岩城島および岩城島隣のほぼ無人島となっている赤穂根島での研修会を行いました。
赤穂根島では、前日の里地里山保全再生計画策定研修の中から、地域調査手法の研修を行いました。5000分の1の地図を元に集水域をとらえ、水のゆくえを地域住民自身が確認し、地図を通じて地域の資源や「たからもの」などを調べてる方法と、地域住民と外部者が一緒に地域内を歩いて地域資源カードを作成していく方法についての研修を行いました。
岩城島では、農家の女性たちが、グリーンツーリズムの受け入れとして行っている農家レストランを視察しました。地場の魚介類や農産物、レモンを活用した産品開発、料理提供を通じて、環境保全型の農業や地域づくりに取り組んでいます。

島での調査研修
島での調査研修
島での調査研修2
島での調査研修2

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●まとめ(愛媛大学付属農場)
今回の里なび研修のまとめを、愛媛大学付属農場にて行いました。愛媛大学瀬戸内環境ESDは、今年度が最終年となりますが、愛媛大学では今後も様々な教育プログラムが予定されており、環境ESDについても今後の取り組みの方法を検討しています。
様々な専門家が参加し、愛媛県内の環境ESD関連フィールドを視察した中で、多様な意見やアドバイスが出されました。里地里山保全や里地里山の生物多様性には、環境教育をはじめとした人材育成が重要であり、指導者の育成と、体験活動の充実、地域とのコミュニケーション能力を高めることが必要であるといった意見が多く見られ、今後の課題として認識されました。

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