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活動レポート

里なびミニシンポジウム&研修会 報告10
小菅の里の生き物と暮らしのワークショップ

日時 2008年3月29日(土) 集合9:00 解散15:00
場所 長野県飯山市

 映画「阿弥陀堂だより」の舞台ともなった、長野県飯山市瑞穂の小菅神社とその周辺の集落は、北竜湖が近くにあり、棚田と里山の美しい景観が広がっています。この地区では、「小菅の里保護委員会」をつくって、様々な里地里山保全などの活動を行っています。
 里なび第10回目のミニシンポジウム&研修会は、雪の残る早春の小菅地区で行いました。

 ミニシンポジウムでは、まず、小菅の里保護委員会委員長の鷲尾恒久さんが小菅の里の自然と暮らし、里地里山保全をふくめたこれまでの取り組みと手法を紹介しました。
 小菅の里は、1300年以上前に小菅山の開山が記録されており、歴史ある町です。古くからの祭りや食文化も継承されており、人口が減っていく中でも、これらの歴史と文化を継承したいということから平成2年に小菅むらづくり委員会が誕生し(その後小菅の里保護委員会となる)、平成4年に「歴史と自然が織りなす日本のふるさと…小菅の里」として整備基本計画を自分たちでつくり、その後、祭りの資料館を造ったり、木道整備、里山保全や集落の計画整備のための作業などを行い始めました。その後、外部のボランティアなどの参加を入れて、草刈りや下草刈りなども行っています。
 地域自らが、地域の自然、文化、歴史、生活を守るために計画を作り、それぞれの活動を広げていく過程は、まさしく里なびの目的である里地里山保全活動の広がりと重なります。
 これを受けて、環境省希少野生動植物種保存推進員の長谷川巌さんが「アカガエル調査と地域の生物多様性」として、生物多様性と農業を中心に里地里山の営みについての話をしました。アカガエルの卵塊調査を子どもから大人まで参加できる調査として勧めている理由として、両生類は陸の環境と水の環境の両方が生息に適していなければならないため総合的な指標になること、とくに棚田や水田と里山との境界や水田と水路の境界が接続している必要があるため、里地里山の保全再生を考える上でもわかりやすいこと、卵塊と親のカエルの数の相関があるため卵塊調査だけで親ガエルの増減の状況も分かることなどを上げ、里地里山保全を考え、地域の生物多様性を把握する上で、アカガエルの調査は誰でも参加できることを強調しました。
 次に、里地ネットワーク事務局長の竹田純一が自然環境調査としての地元学手法を紹介し、アカガエル調査とともに、地域の自然環境調査を行い、里地里山保全計画づくりに役立てることを紹介しました。

 研修会は、あいにくのみぞれ交じりの天気でしたが、全員で小菅の里から小菅神社の参道入り口まで、主に水場を中心に、地元学手法による自然環境調査とアカガエル調査を行いました。
 参加者のうち、地元の方が案内人となり回りましたが、「こんなに雪が残っている中ではカエルは出てこないでしょう」と話をしていましたが、小菅の里保護委員会が整備したビオトープの上流部、棚田跡の石垣の下の水場にアカガエルの卵塊が20近く密集していました。また、別の場所では交尾中のアカガエルを確認することができました。
「これがアカガエルの卵ですか。はじめて見ました」「この時期、田んぼを見回ることがないから気がつきませんでした」という地元や周辺からの参加者。
 長谷川さんからは、「この地区は、雪解け水で水量が多く、流れが速いので、ビオトープや棚田に少し止水環境をつくることでアカガエルがもっと増えることは間違いありません。今は、産む場所が限られています」と、アドバイスをしました。
 また、第7回の里なびミニシンポジウム&研修会での活動団体、「角川里の自然環境学校」からは、事務局長の出川真也さんと、山形県戸沢村の高校生2人が研修会に参加し、角川の里地里山保全や地域づくりの手法説明を行い、参加者と意見交換を行いました。

 今回は、平成19年度最後の研修会であり、山形から四国までの参加者があり、研修を通じて地元での活動に生かしたいとの感想が述べられました。

ミニシンポジウム
ミニシンポジウム
小菅の里保護委員会委員長の鷲尾恒久さん
小菅の里保護委員会委員長の鷲尾恒久さん
環境省希少野生動植物種保存推進員の長谷川巌さん
環境省希少野生動植物種保存推進員の長谷川巌さん
雨の中の研修会
雨の中の研修会
アカガエルの卵を発見
アカガエルの卵を発見
調査カードを書き込む
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グループで調査結果をまとめる
グループで調査結果をまとめる

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