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活動レポート

里なびミニシンポジウム&研修会 報告4
アカガエル調査と生物の里づくり

日時 2008年2月16日(土) 集合9:00 解散15:00
場所 三重県いなべ市藤原町古田

 第4回目は、山村留学と集落営農の先進地として全国的に著名な三重県いなべ市藤原町古田地区で、里地里山の生物多様性を把握し、ビオトープや水田の生物多様性を考える指標としてのアカガエル卵塊調査についてのミニシンポジウムと研修会を行いました。

 いなべ市藤原町古田地区には、「体験交流」の取り組みと地域の里地里山づくりを推進するため地元有志により設立された活動団体「ほうすけクラブ」があります。また、以前から農家組合を母体にした水田耕作の引き受けやグリーンツーリズムなどのコミュニティービジネスが行われており、里地里山保全と地域づくりの取り組みが盛んです。ほうすけクラブでは、田んぼの学校やビオトープづくり、都市から訪れた人が楽しめるような散策道づくり、小学校の環境学習への協力、森林整備や炭焼窯の設置等を行っています。
 古田地区では今年度より、農林水産省の農地・水・環境保全向上対策に取り組んでおり、生物多様性の指標となる生物調査の手法を学びたいという希望もありました。住民自身が地域の生態系、生物多様性の状況を把握し保全管理していくための知識や手法を学ぶために今回のミニシンポジウム&研修会を行いました。

 参加者は、地区住民、農業者、教員のほか、地域の小学生などの参加もありました。ミニシンポジウムでは、福井県越前市でアベサンショウウオの里の保全再生を指導し、環境省希少野生動植物種保全推進委員、両生爬虫類学会福井支部代表の長谷川巌さんが講義を行いました。

 講義では、アカガエルの卵塊は、生態系の総量を測る指標となることや、アカガエルは生態系ピラミッドの中間にあり、大型鳥類やヘビなど多くの生物のエサになるとともに、田んぼの害虫などを食べること、カエルが少なければ生態系の総量も少ないと考えてよいこと、さらに、農村に生物が多いことは安全安心な作物の指標となることが説明されました。
 その上で、アカガエルの卵塊調査など、カエルについて調査する意義について、カエルは、昆虫や植物と比べて種類が少なく覚えやすいので調査しやすいことから、研究者ではなくても調査の意義が高いとのことです。もちろん、科学的な調査とするには、定量的に把握する必要があり、例えばカエルの成体であれば、畔を歩いて飛び出すカエルの種と数を数え、100mあたりの数を出しておくといった方法があります。
 アカガエルの卵塊調査は手法が簡単で、専門家でなくとも科学的なデータを得ることができる調査手法です。アカガエルはメス1匹が1季節にひとつの卵塊しか産まないので、卵塊数からそこに来るカエルの数がおよそわかります。そして、同じ方法での調査を続けることで、地域の生態系変化、生物多様性がよくなったか悪くなったかなどがわかります。
 質疑の中で、アカガエルを増やすための水管理の方法や、卵塊数の標準値はどれくらいか、外来種問題やカエルツボカビ病などの問題がある中での自然観察の進め方などについて意見が交わされました。
 アカガエルの標準的な面積あたりの卵塊数などのデータは少なく、現地の環境によって大きく異なります。それぞれの地域で、このような取り組みを通じて自分たちの活動や保全活動のあり方を考えていくことが大切です。

 研修会は、ほうすけクラブが管理している休耕田ビオトープでアカガエルの卵塊調査を行いました。現地は、谷津の奥の5枚の休耕田を復田し山から沢水を入れた水田です。前日大雪だったため30cmほどの積雪があり、水面には厚さ5mmほどの氷が張っていましたが、その下にアカガエルの卵塊を確認することができました。
 最初の産卵場所で長谷川さんから、卵塊の見分け方、産卵場所の特徴、調べ方の指導を受け、卵塊を手にとって観察しました。その後、班ごとにに分かれて他の休耕田についても卵塊を探し、合計36個が確認されました。中には成育が進んでいるものや、鳥につつかれ卵塊が散逸しているものも見られました。
 現地確認のあと、記録の整理を行いました。

<調査と記録の方法>
 調査時に準備するものは、調査地の位置が分かる地区全体の地図、田んぼ1枚ずつの形が分かる地図または図面、記録用紙、卵塊にさす目印のカヤなどです。
 調査は、まず地図で位置を特定し、畦を歩きながら数を数えます。地図または図面に、どのあたりに何個の卵塊があったかを書き込みます。周辺の土地利用や植生についても確認して色塗りし、目についた動植物もメモします。このようにしておけば、周辺の環境とアカガエルの生息状況との関係が一目でわかり、今後の保全活動などに役立てることができます。
 産卵は2カ月ほど続くため、重複カウントを避けるために、一度数えたものには目印を付け、調査を2週間に1度程度、2回か3回行い、その年の産卵数を集計します。

ミニシンポジウム
ミニシンポジウム
アカガエルの卵塊です
アカガエルの卵塊です
研修会では、氷の張った田んぼに入っての調査をしました
研修会では、氷の張った田んぼに入っての調査をしました
今後の継続調査で重複カウントを避けるためカヤを差します
今後の継続調査で重複カウントを避けるためカヤを差します

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