

数十年先の課題を見通し
蛍光灯・太陽光パネルの
リサイクルに挑む
企業の未来戦略
大阪府にある株式会社浜田は、通常の産業廃棄物の処理だけでなく、
処理困難物とされる蛍光灯の処理や太陽光パネルのリユース・リサイクルなど、幅広く展開している会社です。2024年には環境省のエコ・ファースト制度※1の認定を受けています。
同社代表取締役である濵田篤介さんに、将来直面する大量廃棄など環境課題に挑戦する思いについてお聞きしました。※1 業界を牽引して環境保全に取り組む企業を環境大臣が認定する制度。
環境ソリューション企業として
顧客の課題を解決したい
浜田電気工業株式会社から分社化し、金属くずを扱うスクラップ事業専門の会社として1973年に濵田さんの父によって設立された株式会社浜田。“環境ソリューションのファーストコールカンパニーになる”という会社のビジョンを掲げ、産業廃棄物の処理だけでなく、蛍光灯の処理や、太陽光パネルなど幅広い分野のリユース・リサイクルを積極的に行っています。
「『浜田』に入社したのは30歳のときです。当時は、小さな会社でもあったためビジネスモデルは脆弱、設備もお金もない状況でした。そこで、事業の安定化を図るため、2トン車1台から産業廃棄物処理事業に参入しました。お客様の要望に応える形で産業廃棄物のリサイクルに取り組み、スクラップ事業と産廃事業の相乗効果で事業を拡大してきました。
40歳で社長に就任し、これから会社をどう発展させていこうかと考えていたとき、環境省が2003年に公表した環境ビジネスの市場規模と雇用規模について推計を行ったデータに出合いました。
日本の環境ビジネスが将来どれくらい成長するかを予測した試算によると、環境産業全体としては2000年から20年後にはほぼ2倍、省エネルギー・エネルギー管理の分野では10倍以上の成長が見込まれていました。一方、廃棄物処理装置の製造の分野では、2020年には成長予測がやや縮小していました。
廃棄物処理装置の製造の分野の市場規模が減少する要因は、リサイクルなどの技術向上や少子高齢化による人口減少などにより、ごみが減るということ。つまりこれからは、廃棄物処理の量や設備の拡充を追い求めるのではなく、“モノからサービス”といった顧客のニーズに応える視点を持って、廃棄物処理サービスに注力していく必要があると考えました。廃棄物問題の解決策をさまざまな企業に提供する“環境ソリューション企業”としてビジネスモデルを構築し、産業廃棄物の処理やリサイクルなどの分野で困ったことがあれば、最初に相談していただける“ファーストコールカンパニー”を目指そうと決意しました」
顧客のニーズに対応してきたことのひとつが、蛍光灯のリサイクルです。
「かつて、使用済み蛍光灯の多くが廃棄物として埋め立てられていましたが、蛍光灯には微量の水銀が含まれており、土壌や地下水に流出するといった環境汚染のリスクがありました。
当社は蛍光灯の処理を開始した1997年当時から適正な処理を行っており、近畿エリアの昇降機メーカーから、毎月約1万本の蛍光灯を回収して処分していましたが、顧客から『リサイクルしたい』という要望がありました。
そこで日本で唯一、水銀のリサイクルができる野村興産株式会社と連携し、蛍光灯破砕機を開発しました。蛍光灯に含まれる有害な水銀を回収しながら破砕処理を行って、リサイクルができる良質なガラスカレット※2にすることに成功しました」
※2 粉砕されたガラスくず。
破砕されてリサイクルされる蛍光灯。(写真提供:浜田)
工法を進化させて
太陽光パネルのリサイクルを実現
蛍光灯のリサイクルなど廃棄物における課題に取り組んできた浜田が次に着目したのは、太陽光パネルのリユース・リサイクルでした。経済産業省が2012年7月にスタートした固定価格買取制度(FIT)※3によって普及してきた太陽光パネルですが、一般的な耐用年数が25~30年程度といわれており、2030年代後半には大量に廃棄されることが予測されています。
※3 再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が国の定めた一定の価格で、一定期間必ず買い取ることを国が保障する制度。
「太陽光パネルの大量廃棄が将来的に社会問題になるというのは、2012年当初から感じていました。社内の若手社員らの事業提案もあり、FITができた3年後に太陽光パネルのリサイクルの事業化を決断しました。
太陽光パネルはリサイクルが難しいといわれています。それは20年以上、屋外で風雨にさらされても耐えられるよう、非常に強固に作られているためです。太陽光パネルは、アルミフレームの下に、カバーガラス、シリコンウエハーを薄くした基盤に銀の配線を通して発電するセルシート※4など複数の素材が重なり合い、熱で真空パックした構造になっていて、簡単には剥がれません。
そこで、2015年に国立研究開発法人『新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)』の『太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト』に参画し、太陽電池製造・検査装置メーカーの株式会社エヌ・ピー・シーと協業し、太陽光パネルを埋め立てに回さずに処理できるホットナイフ分離法を用いたガラス/EVA分離装置を共同開発しました。2017年から、この装置を当社の東京都での拠点である京浜島エコロジセンターに導入しました。
ホットナイフ分離法では、300℃に熱したナイフをカバーガラスとセルシートの間に差し込んで、分離していきます。しかし、樹脂などの一部の素材がガラスに付着したまま残っていると水平リサイクル※5ができないという課題がありました。そこで、高圧水を噴射して残存している素材をきれいに取り除く、ウォータージェット工法を開発しました。ガラスの水平リサイクルが可能になり、2025年には特許を取得しました」
※4 太陽電池の内部に雨や異物が侵入することを防ぎ、発電素子(セル)に衝撃が伝わることを和らげる役割を持つシート。※5 廃棄された製品を分解、選別、洗浄、溶融、抽出などの再生処理をして、新しく同じ種類の製品を製造すること。
下部はセルシートを剥がす前、中部はホットナイフ分離法によりセルシートを剥がした状態、そして上部はガラスの表面に残っていた樹脂などの素材もウォータージェット工法で取り除かれた状態(左)。上部に行くほど工程が進んできれいになっている様子がわかる(右)。(写真提供:浜田)
また、自然災害の発生によって太陽光パネルが破損し、廃棄されるケースが多くあり、そのリサイクルの必要性も高まりました。
「破損した太陽光パネルは、これまでの工程ではガラスとセルシートを分離することが難しく、リサイクル処理ができませんでした。そこで破損した太陽光パネルを処理できるPVリサイクルハンマーの設備を導入しました。破損した太陽光パネルはPVリサイクルハンマーで処理し、従来の割れていない太陽光パネルはホットナイフ分離法で対応し、2025年12月時点では1カ月に4000枚程度を処理できるほど、処理枚数が各段に増えています。
太陽光パネルを分解したあとは、カバーガラスは水平リサイクルに、セルシートは破砕して粒度の選別を行って精錬会社に販売し、銀や銅を抽出しています。その他のシート部分は道路の路盤材に再生するなど、リサイクルを最大限進めることで、太陽光パネルの大量廃棄という社会課題に挑戦しています」
ホットナイフ分離法とウォータージェット工法、PVリサイクルハンマーで水平リサイクルを実現した。(画像提供:浜田)
太陽光パネルのガラスを伝統工芸に!
アップサイクルで付加価値を生み出す
浜田では、太陽光パネルのリサイクルだけにとどまらず、太陽光パネルの約7割(重量比)を占めるガラスにも着目しています。分別したリサイクルガラスの材料をガラスメーカーへ提供するほか、太陽光パネル由来のリサイクルガラスの付加価値を通常の板ガラスより高めたアップサイクル製品の開発を行っています。
「ガラス工芸工房と協力して、工芸ガラスの製品化に取り組んでいます。太陽光パネルのアップサイクル製品を消費者に知っていただき、市場に流通することで、リサイクルガラスの価値を高めるのが狙いです。
太陽光パネルのリサイクルが普及しないのは、経済合理性が低いためです。太陽光パネルのカバーガラスをホットナイフ分離法で剥がして、ウォータージェット工法できれいに流して板ガラスに戻しても、1キロあたりの単価は十数円にしかならず、まったく採算が合いません。
板ガラスの単価がいまの十数円から数十円になるだけでもだいぶ違います。リサイクルガラスの価値を高めれば、ただ埋め立てて廃棄するよりも安い値段で、太陽光パネルをリサイクルできるかもしれない。
太陽光パネルをリサイクルしたほうが経済合理性があるという“仕組み”を作っていくのも、我々の役割だと感じています」
太陽光パネル由来のガラスをアップサイクルして制作した水差し(左)とペン立て(右)の試作品。
浜田の設立50周年を記念し、蛍光灯と太陽光パネルのリサイクルガラスを使って制作された風鈴。お椀型の「外見」には蛍光灯、内側の「舌(ぜつ)」と呼ばれる小片には太陽光パネルのリサイクルガラスが使用されている。
適正なリユース・リサイクルを促進し
ネットワークを作る
太陽光パネルの大量廃棄時代を見据え、太陽光発電業界全体の適正なリユース・リサイクルの普及促進にも尽力しています。
2022年には、濵田さんが代表理事を務める、一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会を設立しました。
「近年では最新機器に交換し、アップグレードする形での廃棄が増えています。まだ使用できる中古の太陽光パネルの多くは、アフリカなどに盛んに輸出されています。しかし、適切に梱包されずに出荷されることも多く、破損していてリユースできず、輸出先でそのまま埋め立て処分されているといった現状がありました。
輸出元である日本としてこの状況を改善するべく、環境省と経済産業省が連携してガイドラインを作成し、法整備を進めています。適切な検査を行い、使用済み太陽光パネルの適正なリユースを促進するために、行政のカウンターパートになりうる団体を目指して設立しました。会員数は84社(2025年5月時点)で、太陽光パネルメーカー、総合商社、発電事業者など太陽光パネルに関わるさまざまなステークホルダーが賛同し、参加しています」
協会の集まりで話をする濵田さん。(写真提供:浜田)
さらに2023年には、丸紅株式会社と共同でリクシア株式会社を設立しました。リクシアは、使用済み太陽光パネルのリユース・リサイクル手続きを一括して行うことができるワンストップサービスを提供するプラットフォームです。
「太陽光パネルの廃棄は、2030年代後半にはピークとなり、年間最大50万トンに達する見込みです。これほど大量に廃棄される太陽光パネルを1社では対応できません。最適な場所でリユース・リサイクルできるよう、関連する企業と広く連携してマッチングできるネットワーク構築を目指しています」
太陽光パネルを買いたい、売りたい、処分したい人をつなぐリクシアの理念図。(画像提供:浜田)
最後に、浜田はエコジン(エコロジー+人)としてどんな役割を担いたいと考えているのか、濵田さんに聞いてみました。
「環境課題に困っているお客様から最初にご相談をいただくファーストコールカンパニーであり続けたいと思っています。また、太陽光パネルリサイクルのフロントランナーとしてはもちろんのこと、環境課題を価値に変えていくビジネスをこれからも展開していきます。
2024年には環境省のエコ・ファースト企業にも認定され、社員もより襟を正して取り組んでいます。サステナビリティレポート(CSR報告書)も公開し、お客様からいろいろなご意見をいただくことで、取り組みの内容も充実してきている実感があります。また同年からは使用済み紙おむつのリサイクル実証実験も開始しており、不織布、パルプなどの分離方法の研究を、環境省の補助金を活用して行っています。未利用資源のリサイクルという新たな領域にも挑戦していきたいと思います」
原稿/脇本暁子