[ 特集 ]

環境から考える、
花粉症との付き合い方

多くの人がつらい症状に悩まされる花粉症。
その背景には花粉量の増加、
環境やライフスタイルの変化など、
さまざまな要因があると考えられています。
花粉症のメカニズムや、
環境省による花粉症対策、
そして私たちにできる具体的な対策を紹介。
花粉症を正しく理解し、
効果的に防ぐことで、
花粉の飛散シーズンを乗り越えましょう。

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花粉症はなぜ増えている?

花粉症とは、体内に入った花粉に対して人間の身体が起こすアレルギー反応のことを指します。具体的には、体内に侵入した花粉を異物と認識し、この異物に対する抗体※1を作って、再度侵入した花粉を排除しようとする反応です。個人差はありますが、数年から数十年かけて花粉をくり返し浴び、抗体の量が増加すると、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみや充血などの症状が現れるようになります。日本で多い花粉症はスギ花粉症とヒノキ花粉症です。特にスギ花粉症は最も多く、花粉発生源となる樹齢20年を超えるスギ人工林は全国で429万ヘクタールにも及びます。ほかにはカバノキ科のシラカンバやハンノキ、イネ科のカモガヤ、キク科のブタクサなどが花粉症の原因となります。

※1 細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入したとき、攻撃したり体外に排除したりする役割を担うタンパク質のこと。

日本で多くの人を悩ませる花粉症のなかでも、最も多いのがスギ花粉症。
日本で多くの人を悩ませる花粉症のなかでも、最も多いのがスギ花粉症。

花粉症の有病率は年々増加傾向にあります。1998年、2008年、2019年と約10年おきに、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査が実施されていますが、それによると、花粉症の有病率は調査年ごとに約10%ずつ増加していることが分かりました。スギ花粉症の有病率についても同様の傾向で増加しており、2019年の調査結果によると、日本において約3人に1人がスギ花粉症と推定されています。

花粉症有病率

環境省・厚生労働省「花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること」より

なぜ花粉症の有病率は増えているのでしょう? その背景としては、戦後の拡大造林によってスギ・ヒノキ人工林が造成されたことが指摘されています。戦後、国土の復旧や経済成長によって高まった木材需要に応えるため、成長が早く、需要が見込まれるスギ・ヒノキなどの造林が進められました。スギは樹齢が25~30年になると花粉の生産量が多くなりますが、日本では現在、多くのスギ林がすでに樹齢30年以上になっています。

そのほかの要因としては食生活の変化(高タンパク・高脂質の食事が増えたこと)や、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)※2の変化などが指摘されています。また最近の研究では、花粉症の症状を悪化させる可能性があるものとして、空気中の汚染物質や喫煙、ストレスの影響、都市部における空気の乾燥などが考えられています。

※2 腸内の細菌が菌種ごとの塊となって腸の壁に貼り付いている状態のこと。腸内フローラとも呼ばれる。

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環境省による花粉症対策

花粉症問題の解決に向けては、さまざまな関係府省庁が協力しながら花粉症対策の3本柱である「発生源対策」=花粉の少ない品種の開発・普及や花粉の少ない森林への転換等の促進、「飛散対策」=民間事業者が行うスギ花粉飛散量予測の精度向上支援、「発症等対策」=花粉症の治療法の開発・研究や予防行動の周知などを進めています。環境省ではスギ花粉飛散予測の助けとなるスギ雄花花芽調査と、スギ・ヒノキ花粉の飛散開始日等を調査するスギ・ヒノキ花粉飛散量調査などを行っているほか、厚生労働省と共同で花粉症対策について分かりやすくまとめたリーフレットを作成し、花粉予防行動の普及啓発に努めています。

花粉症対策
環境省・厚生労働省「花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること」リーフレットの表紙

スギ雄花花芽調査は、平成16年度(2004年度)から毎年11〜12月に行っているものです。春に飛散するスギ花粉は、前年秋のスギ雄花の着花量(=花粉生産量)を確認することで予測することができます。そこで環境省では、観測に適したスギ林(林齢25~60年程度で40個体以上あるスギ林)を選定のうえ、その中から40個体のスギを無作為に選び、雄花の花芽の状況について双眼鏡を用いて観測し、その結果を林野庁の調査結果と合わせて公表しています。

また、毎年2~5月の間、医療機関や研究機関などの協力を得て、スギ・ヒノキ花粉飛散量調査を実施しています。スライドガラス(ガラス板)に付着した花粉を顕微鏡にて数える「ダーラム法」という観測方法を採用しています。2026年春は全国26地点で行われています。

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花粉を防ぐ&減らすには

花粉の飛散シーズン中は、日常生活で体内に侵入する花粉をいかに少なくするかが、花粉症対策の重要なカギとなります。主には「花粉を避ける」「花粉を室内に持ち込まない」のふたつの対策が有効です。詳しくは環境省が厚生労働省と共同で作成しているリーフレット「花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること」に記載されていますが、ここでも主な対策を紹介します。

花粉を避ける

花粉を避けるには、花粉の飛散量が多くなる日や時間帯を知っておくことが大切です。例えばスギ花粉は2〜4月頃に飛散します。昼前後と夕方に多く飛散し、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日は特に多くなります。このような時はなるべく外出を避けることが有効です。仕事についても、花粉の飛散シーズン中はテレワークを活用するなど、予防行動をとることを検討しましょう。

外出する際は、花粉が体内に入るのを防ぐためにマスクや眼鏡の着用が効果的です。日本医科大学耳鼻咽喉科が行った実験では、マスクをしない場合に比べ、通常のマスクでは約70%、花粉症用のマスクでは約84%の花粉を減少させる効果があることが分かりました。 また、眼鏡を使用しない場合に比べて眼に入る花粉量は通常の眼鏡で約40%、防御カバーの付いた花粉症用の眼鏡では約65%も減少します。

マスクと眼鏡の効果

環境省・厚生労働省「花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること」より

なお、花粉の飛散シーズン中にコンタクトレンズを使用すると、コンタクトレンズによる刺激が花粉によるアレルギー性結膜炎の症状を悪化させる可能性があるため、眼鏡に替えた方がよいと考えられています。

花粉を持ち込まない

屋内に花粉を持ち込まないことも、花粉症の症状を抑えるために大切です。花粉の飛散シーズン中は、洗濯物や布団を外に干さないようにしましょう。また、外出時に花粉が付着しやすいのは露出している頭、顔、手などです。頭と顔はつばの広い帽子をかぶることで、手は手袋を使うことで花粉の付着量を減らすことができます。さらに、帰宅時には手洗い、うがい、洗顔、洗髪で花粉を落とすようにしましょう。外出の際の服装選びもポイントになります。ウール製の衣類などは綿や化繊に比べて花粉が付着しやすく、花粉を屋内に持ち込みやすいので注意が必要です。

素材による花粉付着率

環境省・厚生労働省「花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること」より

屋内の換気をする際にも工夫するようにしましょう。窓を開ける幅を10cm程度にし、レースのカーテンをすると、屋内への流入花粉をある程度減らすことができます。流入した花粉は床やカーテンなどに多数残っているため、こまめに掃除し、カーテンは定期的に洗濯しましょう。

このほかにも、睡眠をよくとり、規則正しい生活習慣を身に付けることが、正常な免疫機能を保つための土台となります。風邪をひかないこと、飲酒や喫煙を控えることも鼻の粘膜を正常に保つために重要です。また、毎年花粉症の症状が出る人は、本格的な花粉飛散開始の1週間前までには、医療機関や薬局を活用して薬を準備し、使用を開始しましょう。飛散開始時期や症状がごく軽い時から薬の使用を開始することで、症状を抑えられることが分かっています。また、たとえまだ花粉症になっていなくても、花粉をできるだけ避け、将来の発症を遅らせることが大切です。

花粉症予防を心がける一方、花粉そのものを減らしていく取り組みにも目を向けていきたいものです。日本では、スギ人工林の伐採と花粉の少ないスギへの植替えや花粉の少ないスギ苗木の生産拡大とともに、そのような林業経営を支えるため、国産のスギ材の需要拡大にも取り組んでいます。需要拡大の取り組みのひとつとして、住宅の国産木材の使用量による国産木材活用レベルやスギの使用量を本数に換算して表示する「国産木材活用住宅ラベル」があります。そのほか、材料に国産スギを活用する家具メーカーなどもあり、そうした商品に注目してみるのもいいかもしれません。

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最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。花粉の飛散予測情報などを活用し、さまざまな対策を取りながら症状をなるべく抑え、花粉症と上手に付き合っていきましょう。

原稿/嶌 陽子
イラスト/鴨井 猛

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