感想文
TEMM20ユースフォーラムに参加して
池田 文佳
早稲田大学政治経済学部2年
なぜ人々は経済発展に惹かれるのか
この度は、TEMM20ユースフォーラムにて貴重な経験を積ませて頂き、大変感謝しております。この感想文を読んでいる貴方も是非奮って応募して下さい。短い期間ながらも非常に有意義な時間を過ごせると思います。
私は、今回のユースフォーラムを通して、経済発展が人と社会、そして環境にどのように影響を与えるのかを改めて深く考えさせられました。私は小さい頃から年に一度は中国、特に北京に訪れる機会がありました。私が小学生の頃というと2000年代初めですが、中心街で物乞いをしている人々は、皮膚が全身火傷で爛れている人、手が片方無いのに民族楽器「二胡」を演奏している人、またあと少しで息絶えてしまうのではと感じたくらい疲弊している人など、インパクトが強く、未だ鮮明に覚えています。私が初めて目にした社会格差でした。この光景から約10年の間に、以前は何もなかったはずの場所、特に地方都市や郊外では次々と建設ラッシュが進み、街の様子は様変わりしていました。
今回、上海虹橋空港から蘇州に向かう高速道路から見える同一の高層マンションやビジネス街、また新幹線などを見て、”China’s economic miracle” という言葉をより深く理解できるようになりました。まさに、ミラクルに見えたのです。この急速な経済成長は、人々の生活を大きく変えたと実感しました。過去に見た貧困層のボーダーラインが上がった様にも見えます。富裕層が増え、街に高級外車が走っている光景も当たり前になっている事に驚きました。過去において、経済的成功は限られた人が手にするものでしたが、現在は成功者が身近に居ることで、以前より多くの人が自分の人生に希望や自信を持って暮らしているように思いました。「景気」の「気」は、人の気の持ち様を表しているというように、経済にブーストがかかると一斉に色々な事が回り始め、社会全体がポジティブに動き始める事を実感しました。なぜ授業で経済発展の仕組みを学ぶのか、自分の目で見られた事が嬉しかったです。
また反対に、ゲーテが「強い光には濃い影が付きまとう」と言う様に、急速な経済発展は今までに無い様々な社会問題を生んでもいます。この側面もわずかながら窺い知る事が出来たように思います。初日のフィールドワークでは、蘇州市民の環境意識調査をする為に、ショッピングモールでアンケートを行いました。その中で字を書けないと苦笑いを浮かべ、白紙の紙を持ってくるご年配の方々もいました。一方で、私たちが出会った中国のユース代表のように、高い教育を受けている若者もいるのも事実です。世代間での格差が激しく、社会的な矛盾を生んでいるとも受け止められました。あまりにも急速な経済発展に、人が追いついていないことの現れだと感じました。
そして特記するべきは、深刻な環境悪化です。私が小さい頃も、中国の大都市の空気は東京と比べるとあまり良くなかった記憶がありますが、現在は想像を遥かに超えた悪さでした。何もしなくてもキレイな空気が存在することを、私たちは当たり前の事だと捉えていますが、この「当たり前」の意識改革は、個人レベルで早急に取り組むべきであると強く感じました。人口が多いだけに、一人一人のアクションの違いが大きな影響をもたらすのも事実です。しかし、長期的な全体の利益を見据えて、環境に配慮して行動することが出来るのは、生活に余裕がある人々で、圧倒的多数は短期的な自己利益を追求します。この事をふまえて、普段取っている、あるいは取りたくなる行動や選択肢を、自動的に環境に優しいものにする事が一番望ましいと思いました。この仕組み作りをクリエイティブに考えることが、我々日中韓ユースの役割であると考えます。今回出会った仲間と今後もより議論を深め、アイディアを行動に移せるよう一層努力したいと思います。
稲岡 会連
慶應義塾大学法学部2年
「ユースの力」 発信力を味方に
皆さんが日常生活の中で最も大事にしているものって何でしょう。家族、仕事、お金、趣味などいろいろとあると思います。日々、いろいろなものを大事にしながら生活していく中で、環境のことを考える機会はどれくらいありますか。
何に価値を置いて何を優先して生きていくかは、人によって様々で、それは各人の自由だと思います。そしてその中で、環境への配慮が後回しにされやすいことは事実です。コーヒーショップでプラスチックストローを使うときに、海洋ごみ問題のことを意識していた人は果たしてどれほどいたのでしょうか。人々の環境意識を向上させることの難しさは、環境に関わる人々の誰もが感じていることだと思います。
人々の環境意識の向上を目標に、TEMM20ユースフォーラムでは、日中韓のユース代表それぞれが、「地球の未来のために今できること-より環境にやさしい社会の実現に向けたすべての人の取組とユースの役割-」というテーマで、各国の取り組み、そして私たちが共同してできることについて発表・話し合いを行いました。そこで驚いたのは、中国での取り組みです。中国ではユースが中心となってバイクシェアリングという画期的な取り組みを行っています。皆で共用の自転車をシェアし、その利用はアプリによって管理されるというものです。人々は自転車を新しく買う必要がなく、また交通渋滞は緩和され、排気ガス量も減るという一石三鳥とも呼べるシステムです。
ただ単に「環境に優しい取り組みをしよう!」と訴えてもなかなかうまくはいきません。誰もが環境を最優先事項にして生活を送っているわけではなく、むしろ長期的・全体的な目線からしかその害を予測できない環境問題は後回しにされやすいからです。便利な世の中に慣れた私たちにとって、「環境に優しい取り組み=不便なこと・我慢を強いること」というイメージが強いことも理由の一つだと思います。その中で、バイクシェアリングは人々に何も強制することなく、便利さのみを与えてくれます。このことから、他人に何かを要請するときに、インセンティブの存在はとても重要だと感じました。韓国のユースは、SNSを使った環境活動を紹介していました。その活動も、SNSというユースに人気のツールがインセンティブとなって続いているように感じました。
私たちが話し合いで出した答えは、ユースにはSNSを使って物事を広める力があるということです。環境意識の向上は簡単にできるものではありませんが、ネットワークの力を駆使し、そこに何かインセンティブをプラスすることで、大きな影響力を持たせることができます。TEMM20ユースフォーラム終了後に、私たち日本代表ユースは、海洋ごみ問題についてのユースの意識向上を目指し、三か国同時開催のBeach cleaning up projectを提案し、今年の日本の海の日の前日である7月15日(日)に行いました。それぞれの国で撮った写真をつなげてフォトコラージュにし、海洋ごみ問題の深刻さを世間に訴えるメッセージを込め発信するためです。SNSをフル活用し、少しでも多くの人に危機感を持ってほしいです。このイベントだけにとどまらず、これからもフォーラムで学んだことを自身の活動にも活かしていきます。
最後になりましたが、事前勉強会からフォーラム後のイベントまで細部にわたってサポートをしてくださった皆様、本当にありがとうございました。プレゼンテーション準備についての丁寧なフィードバック、フォーラム中の私たちの活動の支援、写真撮影、イベントの広報協力、その他多くの手厚いサポートに感謝しきれません。今回、数えきれないほど多くのことを学べました。このような機会を頂けたことへの感謝を忘れず、これからの活動に必ず繋げていきます。
乾 慈深
愛媛大学農学部2年
ユース間のGLOCALを感じたTEMM20
このフォーラムに応募したきっかけは、私がインターンシップやアルバイトを通して関わっているNPOの代表からお薦めいただいたことです。幸運にもTEMM20ユースフォーラム代表に選出していただき、参加することができました。私は、愛媛大学農学部で農業経営学を勉強しながら、えひめグローバルネットワークというNPOで、環境教育や平和教育、アフリカ・モザンビークでの活動に関わっています。大学の夏休み期間にはモザンビークに行き、団体が支援している村や愛媛大学と協定を結んでいる現地の大学で、楽しみながら活動しています。また、愛媛県内でもESDを柱とした活動に参加しています。今回のTEMM20ユースフォーラムは、環境活動に関わっているユースが日中韓から集まるということで、私の専門分野ではないので少し不安がありました。しかし、実際に参加者に会って話をしてみると、皆さん環境に限らない様々な活動をしていて、安心するとともに、このメンバーで何ができるのだろうかと、とても楽しみになりました。ただ、今回の日本代表メンバーは、私以外が東京在住ということもあって事前準備に積極的に参加できず、他のメンバーに任せることが多かったことは非常に反省しています。
私は、今回が初めての中国訪問でしたが、アフリカで1ヶ月生活した経験もあって、現地の雰囲気にはすぐに慣れました。というより、せかせかした日本よりもむしろ中国の方が私の性格にマッチしているようにも思いました。中国語は「ニーハオ」と「シェシェ」しか知りませんでしたが、ユースフォーラム期間中はほとんどの時間をユースメンバーと過ごしたこともあり、全く苦労はしませんでした。ただ、日本に帰ってきてから、もう少し蘇州の街を探検したかったなと後悔しています。また、毎回の食事が美味しいので、食べ過ぎてしまうことが唯一の悩みだったと思います。
ユースフォーラムでは、中韓のユース代表団とも積極的な意見交換ができました。お互いの名前を覚えることに、まずは苦労しましたが、国は違えど、顔も文化も似たようなもので、環境について何かしらのアクションを起こしたいという気持ちは同じなので、すぐに楽しく打ち解けました。発表やワークショップ、宣言文の作成など、一つ一つのアクティビティを振り返れば様々なことが思い出されますが、何よりもよかったのは、中韓にも環境問題に真面目なユースが少なくとも5人以上はいて、足元から世界を変えていこうとしていることを知ったこと、また日本のユースも様々な活動をしていると伝えられたことです。
今回の日本代表ユースは、メンバーを選考した方のセンスがすごいと思います。いろいろな分野で活動している、全く違う個性を持った5人が集まって、しかも上手くまとまって日本代表として一つの発表を作ることができました。この出会いを大切にして、これからも何かの機会があれば集まって活動したいと思っています。
TEMMという日中韓環境大臣会合の一角に参加できたことを、とても嬉しく思います。ここで得られた経験や自信を、これからの松山やアフリカでの活動でも積極的に活かしていきたいです。このような機会を与えてくださった皆様に感謝するとともに、今後のユース間交流の発展に向けて足元からできることに取り組んでいきたいと思います。
高橋 尚也
日本科学未来館 科学コミュニケーター
行動力とつながる力を感じて
T地理的にも近い中国と韓国の同世代は、どのような思いで環境問題に対して取り組んでいるのだろう、その現状を知りたい、と感じたことが私のTEMM20ユースフォーラムへの応募理由です。
今年のテーマは、「地球の未来のために今できること―より環境にやさしい社会の実現に向けたすべての人の取組とユースの役割―」でした。開催期間中、持続可能な社会の実現に対して「ユースになにができるのか?」、そもそも「なぜユースなのか?」という問いが常に頭から離れずにいました。ユースフォーラムでは、三カ国のユースがテーマに沿って発表を行いますが、それに向けた事前準備から日本チーム内で議論が絶えませんでした。
最終的に日本からは、環境教育の重要性に加え、ビーチクリーンアップ活動などの海洋ごみ問題への具体的なアクションについて発表を行いました。海でつながる三カ国にとって海洋ごみ問題は特別な問題と認識していました。近年、小さなプラスチック片であるマイクロプラスチックが、海の生物に与える影響が国際的に懸念されています。この問題解決には、プラスチック製品の消費の縮小に加え、環境中に露出してしまったプラスチック廃棄物の回収が重要になります。
また、中国や韓国のユースからは気候変動への具体的な取り組みや、SDGs(持続可能な開発目標)などが取り上げられました。これらの問題には企業や政府だけではなく、一人ひとりのアクションが重要になりますが、地球規模の大きな問題に対して、時に個人の活動は無力に感じてしまうことが課題の一つでもあります。
これらの問題に対してユースは何ができるのだろう。ユースならではの特徴を議論すると、オンラインツールで直ぐにつながることができることや、フットワークの軽さなどが挙げられました。そこで提案したのが、共通の問題ととらえている海洋ごみ問題に対して三カ国で同時期にビーチクリーンアップイベントを開催し、その写真をひとつに合わせるというプロジェクトです。その写真や活動成果を国内外に向けて発信することで、一人ひとりの力が国境さえも超えて合わさり、地球環境を改善できることを強調できるのではないかという思いがありました。
実際に、私たち日本チームが主導して帰国後に企画を行い、SNSを中心に募集を行うと、開催まで1週間という短い募集期間にも関わらず20名を超える応募者が集まりました。改めてオンラインツールの強さを実感したとともに、海洋ごみ問題への注目度の高さを感じました。参加者からの「これだけ様々な参加者が集まって、他の場所でも同じように活動している人がいると考えると、この大きな問題にも対処していけそうと感じた。」という感想が印象的でした。
三カ国のユースは自国の問題に加え、地球規模課題にも問題意識を持ち、取り組んでいることを知り、やろうと決めてからの第一歩を踏み出す行動力、つながる力を実感できたことは私にとって大きな刺激となりました。一人ではできないことでも、同じ思いを持つ仲間とつながり活動し、それがまた別の人へ影響を与える。TEMM20ユースフォーラムへの参加で感じたことを日々の活動でも活かして行きたいと思います。
末筆ながら、TEMM20ユースフォーラムという非常に貴重な機会をくださった環境省並びに日中韓の関係者のみなさまに、心より感謝申し上げます。
横野 薫
会社員
TEMM20ユースフォーラム参加を通じて学んだ事と今後の活動に向けて
私がTEMM20ユースフォーラムに応募した動機は、日中韓における環境問題に対する理解を深め、日中韓のユースが協力してできる事を話し合い、その話し合った結果を日本のユースにもフィードバックする事で、より持続的な社会づくりに貢献したいと考えたからです。TEMM20ユースフォーラムに参加した事で得た学びと、今後の活動にどのように活かしていくかについて、以下3点を述べます。
1点目として、「ユース」が持つ役割を深く考える重要性を学びました。私は環境問題の専門知識もなければ、世の中をすぐに動かすほどの力やネットワークを持っている訳でもありませんが、ユースは、環境問題専門家の方々とは違うアプローチで環境問題を考える必要があると考えます。TEMMを通じ、ユースが果たすべき役割は、環境問題専門家の方々に政策提言を行うことよりも、同世代のユースに環境問題に対する意識を広め、より多くの人が、日々の行動をより環境に優しくするように、拡散することだと考えるようになりました。そこで今後は、ユース世代が環境問題に対する共通意識を持てるよう、自分が関わっているNPO活動に活かしていきます。
2点目として、「三カ国」で環境問題について議論する重要性について学びました。環境問題は世界共通の課題である為、解決の方向性は一致するのですが、地理的条件や社会背景の違いから、三カ国が「一緒に」できることについて考えることは想像していたよりも容易ではありませんでした。TEMM20ユースフォーラム終了後、三カ国のユース共同企画の第1弾として、プラスチック海洋ごみ問題の意識を啓発する写真を三カ国共同で作成することにし、7月にビーチクリーニングイベントを実施しましたが、他にも三カ国のユースが共同で世界にメッセージを出す方法を引き続き話し合っていきたいと思います。
3点目として、「行動」に移す難しさと重要性について学びました。どのように多くの方に環境問題に対する意識を啓発することができるかを考え、実際に実現させることは、思ったほど容易ではありませんでした。今後は、より多くの方に環境問題について知ってもらえるよう、引き続き自分ができる「行動」について意識をしていきたいと思います。
このような貴重な機会を頂き有難うございました。感謝の気持ちを込め、社会に還元すべく引き続き精進致します。