上巻P151「精神健康と放射線の健康影響に関するリスク認知の関係」で示したように、福島県が実施している県民健康調査では、毎年放射線の健康影響(晩発影響と次世代影響)に関するリスク認知について調査をしています。二つの質問とも、年々徐々にではありますが、そうした可能性が高いと答える被災者の割合は減っています。ただし懸念されるのは、毎年、晩発の身体疾患への影響を心配する人よりも、次世代影響を心配する人のほうが多いことです。図は、その次世代影響に関する質問結果の経年変化を表しています。徐々に次世代影響を心配する人の割合は減少しているものの、2021年度時点でなお3割近くがその可能性を心配しています。
このような放射線の次世代影響への不安は、結婚や妊娠ができるのかといった差別や偏見につながりやすくなります。被災者自身がこのように感じていれば、すなわちセルフ・スティグマ(自己への偏見)を有していれば、被災者の自信やアイデンティティ(同一性)は大きく揺らぐかもしれませんし、被災者自身の将来的な計画にも影響を与えかねません。こうした不安や偏見が被災者にとって敏感な問題であることに留意する必要があります(上巻P143「放射線事故と健康不安」)。
本資料への収録日:2018年2月28日
改訂日:2024年3月31日