図は、チェルノブイリ原発事故後に発生した甲状腺がんの事故当時年齢別の頻度と東京電力福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)後の3年間で診断された甲状腺がんの18歳以下における事故当時年齢別頻度を比較したものです。(図中の%は「その地域での発生数全体のうち、各年齢の発生数が全体の何%を占めているか」という年齢別割合です。全年齢を合計すると100%となります。)チェルノブイリでは福島のように統一された甲状腺検査が実施されていないこと、また対象人数や観察期間が示されていないことなどから、正確に頻度を比較することはできませんが、年齢分布には明らかな違いがあることがわかります。
一般的に放射線で誘発される甲状腺がんは、被ばく時年齢が低いほど(特に5歳以下)高リスクであることが知られています(上巻P121「被ばく時年齢別発がんリスク」)。チェルノブイリでは被ばく時年齢がより低いほど、甲状腺がん頻度の高い傾向が見られました。一方、福島では事故後の3年間において、低年齢層では甲状腺がん頻度の上昇は見られず、年齢の上昇に伴う頻度の上昇が認められました。これは通常の甲状腺がんの罹患率の上昇パターンと同じです(上巻P129「甲状腺がんの特徴」)。
Williamsによると日本はチェルノブイリ周辺地域と比べてヨウ素の日常的な食事摂取量が多いこと、また、子供の甲状腺被ばく推定線量の最大値がチェルノブイリとは大きく違うこと(福島:66ミリグレイ、チェルノブイリ:5,000ミリグレイ)からも、福島原発事故後の3年間で見つかった甲状腺がんは、原発事故の放射線の影響によるものではないと示唆されています。
(関連ページ:上巻P139「チェルノブイリ原子力発電所事故と東京電力福島第一原子力発電所事故との比較(甲状腺線量)」)
本資料への収録日:2017年3月31日