チェルノブイリ原発事故では、爆発によって放射性物質が大量に飛び広がりました。その中で健康被害をもたらしたのは、主には放射性ヨウ素であったといわれています。
地上に降り注いだ放射性ヨウ素を吸入したり、食物連鎖によって汚染した野菜や牛乳、肉を食べた子供たちの中で、小児甲状腺がんが発生しました。特に、牛乳に含まれていたヨウ素131による内部被ばくに由来するところが大きかったといわれています。
ベラルーシやウクライナでは、事故後4~5年ごろから小児甲状腺がんが発生し始め、 15才未満の甲状腺がん罹患率は、1986~1990年の5年間に比べ、1991~1994年は5~10倍に増加しました。
なお、ベラルーシとウクライナは全国の小児10万人当たりの甲状腺がんの発生数であるのに対し、ロシアは汚染が高い特定の地域のみの小児10万人当たりの甲状腺がんの発生数となっています1。またUNSCEAR はチェルノブイリ事故後の小児及び青年で観察された甲状腺がん症例について、最も影響を受けた3つの国(ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)が提供した最新情報から、過剰相対リスクを相対リスクで割った値(上巻P99「相対リスクと寄与リスク」)を算出し、事故によって最も汚染された地域の事故当時小児および青年の集団に発症した甲状腺がん症例のうち、放射線被ばくに起因する割合を、0.25程度(25%)と推定しました2。
(関連ページ:上巻P127「甲状腺について」、上巻P137「避難集団の被ばく-チェルノブイリ原発事故-」)
出典
1. UNSCEAR2000年報告書附属書
2. UNSCEAR「Chernobyl 2018 White Paper」
本資料への収録日:2013年3月31日
改訂日:2021年3月31日