環境省保健・化学物質対策国際的動向と我が国の取組POPsPOPs対策検討会

POPs対策検討会(第2回)議事要旨


1 日時
平成14年3月14日(木)10:00~12:00
2 開催場所
開催場所 合同庁舎5号館22階 環境省第1会議室
3 出席委員・事務局
出席委員
森田委員(座長)
酒井委員
柴田委員
鈴木委員
高月委員
田辺委員
中杉委員
細見委員
事務局
安達環境安全課長
小沢企画課長
鈴木リスク評価室長
権藤産業廃棄物課課長補佐
森下環境安全課課長補佐
相澤技官 他
4 議題
4.1 国内実施計画について
(1) POPs条約の締結について国会の承認を求める件について
参考資料1にもとづいて、条約締結について国会承認を求めることが事務局より報告された。
(2) 国内実施計画について
事務局より資料1、2に基づいて説明。質疑応答は次の通り。
  • 資料1に記載のリソースキットについては内容についての議論がほとんど進んでいないと思われるが、項目7の汚染されたサイトの「汚染」の定義については現段階で何か情報があるか。
    →国内実施計画というよりもむしろ条約本体に関係する問題だが、今までの条約自身や政府間交渉会議では汚染の定義は明確にはされていない。
  • どの程度の汚染があれば汚染サイトと考えるのかについては、今後グローバルスタンダードができるのか。
    →グローバルな合意は難しいと考えている。各国がそれぞれ独自に解釈していく部分が残っていくと考えている。
  • 6条、附属書Aの関連については国内実施計画に当然盛り込まれると考えていたが、そのような理解でよいのか。
    →一部についてはリソースキットにも既に入っている。リソースキットの中に書いてある事項は途上国向けの最小限の内容なので、日本に当てはめると非常に小さな内容になってしまう。さらに追加すべき事項について議論していただきたい。
  • 6条関係には難しい点がたくさんあるが、可能なものから計画に盛り込んでいくということになるだろう。
  • 参考としてEU、米国のアプローチが紹介されているが、既に具体的に動いているのか。
    →米国EPAではPBT物質全体の管理計画を進めている。紹介した計画は何れも現段階ではドラフトであり、まさに今、動きのあるところと理解している。
(3) 国内実施計画に記載する事項の課題について
事務局より資料3に基づいて説明。質疑応答は次の通り。
  • 汚染サイトの特定について、グローバルな基準は決まらないという説明があったが、そうすると日本での定義を作っていかなければならない。埋設農薬のマニュアルは暫定的な管理のためのものなので、きちんとしたものをどこでどう作るか検討していく必要がある。
  • 資料2でEU、米国EPAの計画を見ると、計画の中で健康影響がレビューされているが、国内の対策のところで生態影響を含めて、これまで検討されていなかった健康影響をレビューしていく必要はないのか。
    →POPsの健康影響については、世界的に有害性の評価は概ね確定してきていると考えている。国内外の評価を整理して書き込んでいくことが必要だと考えている。
  • 海外でレビューされている数字のどれを国内で採用するか決めていく必要がある。
  • 「基本的考え方」を入れるべきかどうかについては、入れる方が望ましいと考える。ただし、この検討会だけで決められる問題ではないと思われるので、他所で検討されている化学物質全体についての日本の基本的な考え方を念頭におく必要がある。
  • 基本的考え方がなくて、計画だけというのも違和感があるので、基本的考え方はやはり必要だろう。
    →この検討会は、基本的には技術的な側面を中心に見ていくという立場であるが、この検討会での議論の内容は、当然、全般的な考え方にも反映される。
  • 意識啓発、情報交換についてPRTRが出てきているが、我が国のPRTRでは、ダイオキシンとPCBしか出てこないのではないか。実質的にはないかもしれないが、他のPOPsをPRTRで考える必要はないか。
    →我が国ではすでにPOPsを製造も使用もしていないので、現在のところ、PRTRにダイオキシン、PCBを除いて新たに取り入れる必要はないと考える。
  • 初期リスク評価の中で暴露情報も調べている。その当たりの情報や食品中の暴露情報をどのように入れていくのか。
    →POPsの暴露レベルについては、別途、設置しているモニタリング検討会で情報が収集できると考えている。現在、モニタリング手法のドラフトを作るところまで進んでいる。モニタリングを通じて情報を収集し、暴露を明らかにしていくことになるだろう。
  • ヘキサクロロベンゼンのインベントリー作成作業は進んでいるのか。
    →現在、環境管理局で検討している。まず、インベントリーを整備するための基礎情報を収集している。それを踏まえてインベントリーを作っていくことになるが、廃棄物・リサイクル対策部などと連携もしており、内部で協力して進めている。
  • 非意図的生成物のインベントリー整備については、中間体や製造過程での副生にも着目して、総合的な観点からまとめて欲しい。
  • 資料3のDDTの項目については、無害化処理する場合に労働安全衛生の基準等が関係してこないか。
    →リソースキットが意図しているのは、条約で規定されている製造・使用に係るDDTの行動計画である。これ以上は条約でも要求されていないが、実際には記載した方が良いことも考えられるので、まず、関係省庁との連携の必要があるか考えたい。
  • 途上国にとってこうした物質は先進国からもたらされたものという意識が強い。その物質を先進国にもって帰って欲しいという意見もあるが、これはPOPs条約の範囲外ということでよいのか。
    →そのように考えている。
4.2 POPsスクリーニング基準について
(1) POPs条約におけるスクリーニング基準について
事務局より資料4~7について説明。質疑応答は次の通り。
(森田座長)
  • ここで定義されている化学物質について、化審法で話題になるトリブチルスズのような混合物についてはどう扱うのか。
    →純粋な金属であれば除外されるが、金属との化合物については範囲に入いうると考えている。トリブチルスズについては、当初の政府間交渉会議では議題になったが、同時期にIMOにおいて条約の枠組みが議論されていたこともあって、POPs条約の対象からは外れたという経緯がある。
  • 有機スズについてはIMOで規制されているが、基本的に船に関する規制であり、それは一部にすぎない。網や発電所の取水口への使用や、トリフェニルスズについては農薬として登録されていたこともある。
  • POPs条約としては、国境を越える必要があるので、影響が国内だけにしか及ばない形態の有機スズの使用は含まれないのではないか。
  • このスクリーニング基準を見ると陸上中心の基準になっているという印象がある。水中の半減期といったときに陸水なのか海水なのかがわからない。また、毒性についてもコイのような淡水魚の試験結果のみで評価するのか。
  • 長距離移動の中にヘンリー定数が入っているのか。大気と水の分配についてのパラメーターは重要である。
    →ヘンリー定数については、環境運命の中に含まれると考えている。淡水か海水かについては条約の中には少なくとも入っていない。海棲ほ乳類の代謝系の違いなども検討する必要があるかもしれない。
(2) PBT基準の考え方について
事務局より、資料5~7、参考資料7、8について説明。主な議論は次の通り。
  • 基準に国際的な調和はもちろん必要であるが、国内的な調和も必要ではないか。化審法ではここまで明確に基準が決まっているわけではない。その点の整合性が必要ではないか。
    →化審法担当課室が欠席しており、ご説明ができないが、ご意見として検討させていただく。
  • 長距離移動性は、出るところと受けるところを明確に定義して行く必要がある。日本の場合、日本海側に出すのか太平洋側に出すのか、受ける側も同じであるが、ケース分けが必要である。
  • OSPAR条約では分解性をPOPs条約よりも小さいところで採用している。より狭い地域での状況や閉鎖系を考慮しているのではないか。
  • 粒子への吸着性を考える必要がある。海流で動く場合、かなりの部分が沈降していくことになるだろう。そういう意味では長距離移動は大気が中心ではないかと考える。
  • 半減期の2ヶ月、6ヶ月など条約に数値として出されているものは前提と考えて良いのか。それとも、本検討会で違った数値を技術的に検討する余地はあるのか。
    →条約で記載している値は、幾多の国際交渉を踏まえ、決まったものなので、それは前提となる。
  • POPs条約と農薬取締法との関係はどのようになっているのか。
  • 日本を含め、北西太平洋地域海行動計画があったように記憶しているが、関係するような動きがあれば紹介して欲しい。
    →農薬取締法との関係については、まだはっきりと決まっていないが検討している。農林水産省との間でも今後の対応について議論を進めている。
    →地域海行動計画については、後程、調べて紹介したい。
  • 12物質に関する情報収集はもちろん重要である。ただし、範囲をもっと広く考えていく必要があるのではないか。北米では地域の環境保全という視点から重金属も対象に含めて検討を進めている。海流を通じた有機スズの移動についても情報を集めておく必要がある。世界では既に12物質以外の検討も進んでいる。
    →この点については指摘を踏まえて検討したい。
  • 複雑な環境中での挙動を、どうモデルとして記述するかが技術的な課題。
  • ある物質が1,000km移動するとか10,000km移動するとか、絶対的な視点での評価は難しい。モデルの利用は、スクリーニングレベルでの評価には有効という意見が大勢であった。
4.3 その他
事務局より資料8について説明が行われた。主な質疑応答は次の通り。
  • 次回から本格的に国内実施計画を検討していくことになるが、他の省の取り組みについても他省の担当者に直接説明をしてもらいたい。
    →他省と調整してみたい。
次回検討会は、今年の夏、秋頃を予定しており、後日日程調整をすることとなった。また、事務局から各委員に前回の議事要旨について内容確認依頼があった。
以上