化学物質環境汚染実態調査の結果(1995年度)

有機スズ化合物環境調査

環境庁が行った「化学物質環境安全性総点検調査」の結果、有機スズ化合物による全国的な環境汚染が明らかとなり、トリブチルスズ化合物については1985年度から、トリフェニルスズ化合物については1989年度から生物(魚介類、鳥類)を指標とした環境汚染の経年監視(生物モニタリング)を実施しています。
また、1988年度からは水質・底質についても指定化学物質等検討調査において継続的な監視を実施しています。

そして、これらの調査結果等を踏まえ、1988年度にトリブチルスズ化合物13物質、トリフェニルスズ化合物7物質が化審法の指定化学物質に指定されました。
なお、現在はトリブチルスズ化合物の一種であるビス(トリブチルスズ)=オキシド(TBTO)が化審法の第一種特定化学物質に(1990.1指定)、トリフェニルスズ化合物7物質(1990.1指定)とTBTOを除くトリブチルスズ化合物13物質(1990.9指定)は第二種特定化学物質に指定されています。

1995年度 生物モニタリング結果(有機スズ化合物関連部分)の概要
    経緯
      トリブチルスズ化合物 .... 1984年度の化学物質環境調査の結果、広範囲にわたる
          地点の底質及び魚類から比較的高い濃度で検出されたため、翌1985年度から生
          物モニタリングにおいて経年的監視を開始しました。
      トリフェニルスズ化合物 .... 1988年度の化学物質環境調査の結果、広範囲にわた
          る地点から検出があり、高濃度の検出が底質では一部の地点(港内)で、魚類に
          ついては河口、内湾を中心に多くの地点で頻出したため、翌1989年度から生物
          モニタリングにおいて経年的監視を開始しました。

    調査対象生物及び調査地点 .... 魚類8種、貝類2種、鳥類2種の計12種を全国21地点
          (生物種別では、魚類14地点、貝類6地点、鳥類2地点の延べ22地点)
        ※生物モニタリングと同一地点です。→図はこちら    地点一覧表はこちら(St9503.txt)

    分析方法、データ処理、調査結果の概略

    調査結果  トリブチルスズ化合物(TBT)  1995年度(OT9501.txt)
                                         1985-1995年度(OT9503.txt)
            トリフェニルスズ化合物(TPT)  1995年度(OT9502.txt)
                                         1985-1995年度(OT9504.txt)

1995年度 指定化学物質等検討調査結果(有機スズ化合物関連部分)の概要
    経緯
      環境残留性調査
        トリブチルスズ化合物 .... 1988年度から水質, 底質について調査を実施
        トリフェニルスズ化合物 .. 1989年度から     〃   〃

      暴露経路調査
        トリブチルスズ化合物 .... 1990-1994年度、食事について調査を実施
        トリフェニルスズ化合物 ..     〃       〃     〃

        ※両化合物とも食事からの暴露量は非常に低い傾向にあることが判明したため、
          1995年度は調査を行いませんでした。

    調査媒体及び調査地点
      水質, 底質 .... 全国35地点(11河川、4湖沼、20海域)
      食事       .... 1995年度は未実施
        ※指定化学物質等検討調査と同一地点です。→図はこちら    地点一覧表はこちら(St9505.txt)

    分析方法、データ処理、調査結果の概略

    調査結果  トリブチルスズ化合物(TBT)  1990-1995年度(OT9505.txt)
            トリフェニルスズ化合物(TPT)      〃   年度(OT9506.txt)

調査結果の評価(1996年12月14日中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会

(トリブチルスズ化合物)
 トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、生物及び
底質においては概ね横ばい傾向であり、水質においては改善ないし横ばいの状況にある。
 現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、一部地点で高濃度での
検出がみられ、水生生物への生態影響の可能性もあることから、引続き、環境汚染対策を
推進するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。

(トリフェニルスズ化合物)
  トリフェニルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しているが、水質、底質、生物とも改
善の傾向にある。その汚染レベルは、生物については一部地点で高濃度の検出がみられる
ものの、生物及び底質においては概ね横ばい、水質においては改善の傾向が続いている。
なお、水質については平成7年度、本調査開始以来初めて全地点で不検出となった。
  現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されて
いくことが期待されるが、今後も引続き、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状
況を監視していく必要がある。