平成30(2018)年度
入賞
香りの道は地域をつなぐプラットフォーム
企画者:兵庫県立淡路景観園芸学校
場所:兵庫県淡路市
訪問日時
2020年2月14日午後
訪問先
『淡路市一宮事務所』(兵庫県淡路市郡家170-1)
兵庫県立淡路景観園芸学校 豊田正博氏
企画の概要
ヒアリング内容
淡路市一宮事務所は、一宮町の地区のセンター機能を担う場所。この一宮町は、まさに香りの町です。線香の生産(日本一)で、「一宮町の線香づくり」は、平成13(2001)年10月にかおり風景100選にも選ばれています(現在は「淡路市の線香づくり」で選ばれています)。
また、一宮事務所のすぐ近くには、日本神話の国産み・神産みに登場する伊弉諾尊と伊弉冉尊が祀られている伊弉諾神宮があり、日本最古の神社とも言われています。
平成30(2018)年度日本アロマ環境協会賞受賞企画“香りの道は地域をつなぐプラッフォホーム”を企画し、実現されている兵庫県立淡路景観園芸学校の豊田正博先生を訪ねました。淡路市一宮事務所をご案内いただいたあと、2019年6月に開催された第26回全国ハーブサミットの会場であった淡路市立香りの公園もご案内いただき、さらに、豊田先生の学校までお邪魔いたしまして、研究室でお話をうかがいました。
この一宮事務所の前の花壇と周辺の植樹帯を利用して“香りの道”をつくりました。“地域をつなぐプラットフォーム”として、こころと身体・社会における健康をキーワードに、事務所と隣接するこども園、障がい者作業所、近隣の小学校、香りを愛でるボランティア団体、香りのテーマパーク、住民らが持続的・有機的につながるようにと企画しました。ノウハウ支援を兵庫県立淡路景観園芸学校園芸療法課程、兵庫県園芸療法士が担っています。
事務所入口付近には、カツラ、沈丁花など伝統ある香りのまちにふさわしい和の香りの木を植栽。立体花壇はこども園園児、作業所利用者、市民がハーブ収穫、精油原料として利用できるようにと計画しています。
一宮地域の県道にローズマリーと風に香るクレべランドセージを植える。グランドカバーのクリーピングタイムと合わせて地域のハーブ植栽モデルとして見せています。維持管理は、一宮事務所職員が随時行ってくださっており、淡路市立香りの公園を愛でる会メンバーや、兵庫県園芸療法士などもそれに協力しています。
「“香りの道”は、障がいのある人も含んだ地域の子ども・大人・高齢者の3世代をつなぐプラットフォームとして機能し、コミュニティ機能の向上が期待できます、と地域の課題も含めてみんなで一緒に取り組める、そんな企画になるように考えましたが、なかなか難しいことも多いですね。」
「自動潅水装置をつけたところ水道代が増えた」、「植えたばかりの苗をいたずらで抜かれてしまった」「一緒に企画したときの担当の方々がみんな異動になってしまった」などご苦労されている様子もお話ししてくださいました。
地区においても高齢化や人口減少によるコミュニティ機能の低下が懸念されています。「植栽地である一宮事務所と、管理を担当していただく香りの公園を愛でる会、そして淡路景観園芸学校の3者の連携を深めたい」と豊田先生。
豊田先生は、園芸療法や、セラピューティック・ガーデン、緑を活用したストレス軽減などの研究もされています。訪問日の前日も熊本で講演をされてきたとのこと。
「僕は農福連携というのもやっていまして、それで熊本のJAさんに呼ばれたのです。農福連携というのは、園芸療法を活用した障がい者の就労支援です。
きちんと能力を持っている障がいのある方と仕事の難易度をうまく合わせていかないと『仕事あるよ』『誰かいるよ』というだけのマッチングは、もう限界なんです。そのためには、その作業の分析の仕方が必要で、それぞれの障がい者の方に合ったお仕事、支援の仕方があります、その能力の分析も含めて。そんなお話をしてきました。
つい最近、兵庫県から農福連携のハンドブックを出しまして、県庁のホームページで見ることができます。それを熊本の方が見つけられて、わざわざ電話をかけてきてくださり、お話することになったんです。」
私たちの訪問についても視察のルートや香りのまちの取り組み、そして先生のご専門の研究についてのお話など、丁寧に教えてくださいました。
植栽地の淡路市一宮事務所前花壇・植樹帯を利用した“ 香りの道” をつくる。これをプラットフォームに、こころと身体・社会における健康をキーワードとして事務所と隣接するこども園、障がい者作業所、近隣の小学校、本地区で香りを愛でるボランティア団体、香りのテーマパーク、住民らによる持続的・有機的つながりをつくる。ノウハウ支援を兵庫県立淡路景観園芸学校園芸療法課程、兵庫県園芸療法士が担う。
淡路市一宮地区は、嘉永年間から線香づくりが続き、線香生産全国一の“香りのまち”。地区のセンター機能を担う一宮事務所前に計画する“香りの道” は市のマスタープランで謳う“快適な生活環境形成” にも合致すると考え応募。
地域環境とのつながり
①立体花壇はこども園園児、作業所利用者、市民がハーブ収穫、精油原料として利用
②事務所入口付近に、カツラ、沈丁花など伝統ある香りのまちにふさわしい和の香りの木を植栽
③植樹帯には、一宮地域の県道に植栽されるローズマリーと風に香るクレべランドセージを植える。
グランドカバーのクリーピングタイムと合わせて地域のハーブ植栽モデルとして見せる。