「みどり香るまちづくり 企画コンテスト」みどり香るまちの現場

平成27(2015)年度

入賞

京都ゆかりの花と香りを広げる梅小路公園花壇

企画者:公益財団法人 京都市都市緑化協会

場所:京都府京都市

訪問日時

2020年2月13日午後

訪問先

『梅小路公園 花壇』(京都府京都市京都市下京区観喜寺町56-3梅小路公園敷地内)

 京都市都市緑化協会 佐藤正吾氏

企画の概要

 1995年に開園した梅小路公園。2012年に京都水族館が開業し、2016年春には京都鉄道博物館も開業。来園者を暖かく迎えるため、京都の生活文化に関わりがある花木、香草フジバカマなど「和の花」を植栽しました。子ども自然観察会での活用や公園ボランティアによる手入れを行っています。 約140 本の「梅林」、園芸療法の視点で運営する「セラピーガーデン」、花畑の風景をつくる「花の丘」、蝶を呼び込む「バタフライガーデン(みどり花壇)」などがあります。復元型ビオトープ「いのちの森」と日本庭園「朱雀の庭」(有料区域)では、稀少な「和の花」の生息域外保全に取り組みはじめています。

 開園時の植栽は、整備等により年々変わり、利用過多の悪影響も。また、公園全体としては、生物多様性への配慮ができていません。今後どのような「花と緑」とし、それにより、いかに来園者を迎えるかが大きな課題です。

 来園者には、①無料の区域で香りのする季節の花に触れ、ほっとしていただきたい、また、②京都の生活文化と切り離せない「和の花」を子どもたちやその家族などに知っていただきたい、と考えています。

ヒアリング内容

 「京都ゆかりの花と香りを広げる梅小路花壇」企画者の京都市都市緑化協会の佐藤さんにご案内いただきました。

 梅小路公園は、平安遷都1200年を記念して平成7(1995)年に開園した面積約13.7haの都市公園です。2019年3月に開業した梅小路京都西駅(京都駅から1駅、約2分)のおかげで、さらに行きやすくなりました。来園者も3割ほど増えたそうです(2018年と2019年11月時調査)。2012年に京都水族館、2016年に京都鉄道博物館がオープン、2019年冬には野外スケートリンクも誕生。梅小路公園へ向かう道の途中、いくつものクレーン車が見えて、佐藤さんにうかがうと「大きなホテルが4つ建設中です」とのこと。


 公園内は、芝生広場、朱雀の庭(有料)、復元型ビオトープ“いのちの森”、約140本の“梅林”、園芸療法の視点で運営する“セラピーガーデン”、京都市電として初めて導入された車両が走る“チンチン電車”、レストランや貸室がある“緑の館”など、さまざまな緑と花で憩うことができます。企画地の「京都ゆかりの花と香りを広げる梅小路花壇」は、子どもたちで賑わう“すざくゆめ広場”と日本庭園のある“朱雀の庭”の間のメイン園路沿いの植栽帯。公園を訪れるだれもが楽しめる場所につくられました。


 公園の維持管理は、京都市都市緑化協会が指定管理者として担っていますが、ボランティアの方々(梅小路公園花と緑のサポーターの会、京都みどりクラブの方々)や園芸セルフケア教室の生徒さんたちと協力して梅小路花壇の香りを広げる活動をすすめています。香りの花壇を拡げて、京都市内各地の緑のボランティアの方々との交流会と植栽実習も予定しているそうです。(「コロナウイルスの影響で2020年は残念ながら中止になってしまった」と佐藤さんより連絡がありました)

 「“和の花を大事にしよう”と、公園の植栽の工夫を考えはじめていたころに、コンテストの話があったのです。今後は、お客さまが増えるという予想もありました」と佐藤さん。応募の時のコンセプトである「香りのする季節の花に触れ、ほっとしていただきたい」「京都の生活文化と切り離せない“和の花”を子どもたちやその家族などに知っていただきたい」との思いを実現し継続しています。

 受賞プレートの横には、京都ゆかりの花がわかりやすくまとめられているパネルが設置してありました。このパネルを見ながら、香りの花や樹木について話すお客さまの姿を時折見かけるとのこと。


 例えば、藤袴(フジバカマ)。令和の典拠『万葉集』の梅花の歌の序に出てきます。


 時に、初春の令月にして、

 気淑く風和ぎ、

 梅は鏡前の粉を披き、

 蘭は珮後の香を薫らす

  (『万葉集』梅花の歌三十二首の序)

 藤袴、古くは“蘭”と呼ばれていたそうで、花にほとんど香りはなく、茎や葉を香り袋などに使用していたそうです。この藤袴も環境省のレッドデータのリストに準絶滅危惧として登録されています。こうした「和の花」の中に、希少植物が多く、佐藤さんは、「残していかなければ」とさまざまな取り組みをされています。


 最近は、公共事業でも地域性種苗を使用しなさい、あるいは、企業でもCSRの観点から、地域性の種苗をということも増えてきて、そういった相談を受けることも多いそうです。


 今後のことをうかがうと「CO2削減も生物多様性もそうですが、人と自然との関係が希薄になっています。自然を利用しないがために両方の問題が起きてきているのではないでしょうか。とすると、香りも含めて、普段の生活でいかに植物と一緒に生きていくか、あるいは農林業を見直すとか、この企画もそういうことの一助になればと思います。」

 「植物と生活で使う製品との関係に気がついていない方が多いなとも感じていて、生活文化と関係が深い植物や香りももっと知っていただきたいですし、紹介していきたいです。」と静かに力強く話してくださいました。


 平成27年、京都市は「梅小路花壇」の他にもう1企画「京の駅前庭園としての四季の彩り・香りに満ちた駅前広場」も受賞しています。また、他の年度でも「京都」と地名のついた受賞企画が多くあります。

 今後の京都の香りの拡がりが楽しみです。

京の花と香りを紹介するパネルです。

京の花と香りを紹介するわかりやすいパネル。コンテスト入賞についても記入していただいています

黄色い小さな花が枝に咲いています。

ロウバイの花は、ロウを塗ったようなツヤと、甘い香りでお出迎えしてくれました

白い花で、中心部は黄色です。

以前はあちらこちらで目にした日本水仙。花の大きい立派なスイセンが多くなりましたが、今ではこの日本水仙が貴重です

公園の花壇に草や木、花が植えられています。いくつかの種類の植物を見ることが出来ます。

香りの花壇

現地での説明の様子です。

ご案内くださった京都市都市緑化協会の佐藤さん

TOP