「みどり香るまちづくり 企画コンテスト」みどり香るまちの現場

平成25(2013)年度

環境大臣賞

中川ルネサンスプロジェクト

企画者:中川駅前中央遊歩道ルネサンスプロジェクト会/特定非営利活動法人I Love つづき/神奈川県横浜市

場所:神奈川県横浜市

訪問日時

2019年3月12日/2020年2月21日午後

訪問先

『中川ルネサンスプロジェクト』神奈川県横浜市

 NPO 法人ぐるっと緑道 塩入廣中氏

企画の概要

 駅前とはいっても、2 本の道筋違い、駅前との高低差10 メートル、道幅が12 メートルもあるいわゆる「商店街」のイメージからはほど遠い中川中央遊歩道。閉店する店が相次ぎ、人通りも少なくなり、魅力もなくなりつつあります。そこで遊歩道だけの緑化ではなく、近接する公園、緑道、緑地、駅前広場などすべてを包含したまちづくりを住民が発案しました。

 “ 中川には花と香りのすてきな場所がいくつもあるらしい、一度いってみよう” という人を増やして、にぎわいを取り戻し、中川らしい店舗を誘致し、まちのみんながお世話する花や緑を介して、コミュニティが豊かなものになることを夢見ています。


■緑道とつながる緑・花のラインをつくり、まちを巡る楽しさをつくりだし、人々が集まり・ふれあう交流広場をめざします。「まちの誰もが手入れやお世話できる」花壇やプランター、緑のスクリーン、ナーサリー(苗床)などを配し、まちへの愛着やまちを巡る楽しさをつくりだします。

■四季を通じて様々な活用が考えられるローズマリーやラベンダー、タイム等ハーブを中心とした花壇を配し、景観を損ねている空き地や駐車場のフェンス部分には、ハゴロモジャスミンなどツル性の植物を這わせ花と香りのスクリーンを育て花にかこまれた「みち」づくりをめざします。

■また、近隣の公園への結節点となるひろい歩行者専用道路には、フォーカルポイントとなるようなセイヨウボダイジュの高木をシンボルツリーとして配し、「リンデンバウム広場」として親しまれる空間づくりや、「リンデンフェスタ」といったようなハーブとしてのボダイジュを活用した新しいイベントづくりをめざします。

ヒアリング内容

 横浜市営地下鉄ブルーライン中川駅にて中川ルネサンスプロジェクト会会長の塩入さんと待ち合わせ。現地を1時間ほどご案内いただきました。大変な暑さ、そしてコロナ禍の中、ありがとうございました。平成30年度の実地調査でもお邪魔させていただいており、受賞後5年以上活動を継続されています。アンケートにも環境教育や小物販売にかおり植物を活用しているほか、まちづくりのモデルとして認知されている、住みたいまちの要因の一つになっているとの回答があり、あらためて訪問させていただきました。


 ニュータウン開発以降、一度は商店が増え、街は賑やかになりましたが、隣駅(センター北駅)に大型商業施設ができてから、閉店する店が相次ぎ、人通りも少なくなってきました。そんな中、“中川には花と香りのすてきな場所がいくつもあるらしい、一度いってみよう”という人を増やして賑わいを取り戻そう。中川らしい店舗を誘致し、まちのみんながお世話する花や緑を介して、コミュニティが豊かになるように、と住民が発案して始まった“中川ルネサンスプロジェクト”。遊歩道だけの緑化ではなく、近接する公園、緑道、緑地、駅前広場などすべてを包含したみどり香るまちづくり計画です。


 中川駅周辺の約50台の大型プランターとまちなか花壇の育成・管理を行っています。都筑区を横断する北ルート約6キロの緑道「くさぶえの道」の入り口にもあたる中川広場公園から中川駅前中央遊歩道、中川緑地におよぶ街区を約30名のメンバーで手入れを行っているそうです。ちょうど視察途中にも、水やりをされているボランティアの方々にお会いしました。「暑いのでお気をつけて」と声をかけてくださり、作業のほうがずっと大変だろうと思いましたが、来訪者への気づかいをありがたく感じました。

 近隣には、育苗エリアもあり、土づくりや苗づくりの作業ができるスペースもありました。会員で掘った井戸があり、実際にポンプを押して水を出してみたところ、この時期とても冷たくすばらしい。災害非常時等にも活用を考えられていると思いますが、それらの案内や地域の認知等について確認できればよかったです。

 コンポストも設けられており、活用されていないように見受けられ質問しました。落ち葉を集め土づくりも行って活用していたが、その土を使用したプランターに根切り虫(カブラヤガ・タマナヤガ等と思われる)が大量に発生し、コンポストでの土づくりはそれ以来やめてしまったとのこと。コンポスト場所に最適の環境なので、害虫等の駆除がうまくできればとよいと思います。


 塩入さんは、「花壇は、いつもきれいな状態でないとゴミ溜めになる」「以前と比べ、街の住民、商店街の協力が難しい」「住民の参加意識を高める、寄付金を集めるのがなかなか難しい」「住民意識が重要であるが、花壇やプランターを維持する意義を理解してもらうことが難しい」と、維持管理していくことの難しさをひしひしと感じているようでした。

 維持・管理を行っていくために、ボランティアメンバーの意識、行政の後押し、地域・商店街のバックアップ、イベントの取り組みなど、リーダーとしての責任、課題が多いのだと想像します。


 アンケートでも「『きれいにしてもらいありがとう』の言葉はよく聞くが、維持メンバーに加わる人が少ない」と回答されていました。一方で、「人手は高齢者が多いが、子供を巻き込んで若い人に参加してもらい、子どもの情操教育と大人のまちづくり参加、つながりづくりをしていきたい」と、未来への希望も語ってくださっていました。

 8月にも地域の子どもたちと一緒に植栽活動をされているとのこと。その様子がホームページにもアップされており、また、パンフレットの作成、案内表示の掲示、Facebookなども充実しています。広報誌は毎月3,500部を印刷し、近隣に各戸配布と回覧を行い、活動状況を伝えています。

 「中川ルネサンスプロジェクト」は、「みどり香るまちづくり」企画コンテスト以外にも、横浜市の「横浜人・デザイン賞」や国土交通省「月間まちづくり功労者国土交通大臣賞」なども受賞されています。

 季節がめぐり、また保育園の毎日のお散歩、子どもたちの遊び場、お年寄りの休憩・憩いの場としての活動が戻ってきますように。

 シンボルツリーのリンデンバウム(セイヨウボダイジュ)が塩入さんを応援しているかのように健気に佇んでいました。

案内板の写真です。

横浜市都筑区の特定非営利活動法人I Love つづきの活動スケジュール案内板が駅前商店街に何カ所かあり、その中にも「中川ルネサンスプロジェクト」の活動が案内されています。

作業スペースの写真です。

コンポストと作業スペース。奥に井戸

中央に古びた手押し井戸、奥にはコンポストがあります。全体的に草が生えています。

メンテナンススペース育苗エリアの井戸。後方はコンポスト

町中の広場の中央に花壇があり、真ん中には木が植えられています。

フォーカルポイント。花と憩いの広場とシンボル花壇

マンションの前の路地に木が一本植えられています。

シンボルツリーのリンデンバウム(セイヨウボダイジュ)

TOP