「みどり香るまちづくり 企画コンテスト」みどり香るまちの現場

平成29(2017)年度

環境大臣賞

香って食べて元気を育む七ヶ浜ファームガーデン

企画者:認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード/近藤哲雄建築設計事務所/株式会社グリーン・ワイズ

場所:宮城県七ヶ浜町

訪問日時

2020年2月11日(火)午前

訪問先

『七々浜みんなの家きずなハウス』(宮城県宮城郡七々浜町吉田浜字野山5-9生涯学習センター敷地内)

 認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード 石木田裕子氏

 認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード 横田順広氏

企画の概要

コンセプト1 香りがもたらす地域の活力

  被災地の子ども達や町民の憩いの場『七々浜みんなの家きずなハウス』の庭に、優しい香りで心を癒す草花と、生命のエネルギー溢れる樹木や野菜でコミュニティファームガーデンを創り、復興半ばの町民の活力回復に貢献しています。

コンセプト2

 「植物を育て、香りを楽しみ、食べる」という経験の中から、子ども達が町民とともに、生きる力を学び、喜びを分かち合う拠点としてこの場所を活かし、環境に優しく災害にも強い人づくり、町づくりを進めます。

ヒアリング内容

 7つの浜に囲まれた町、宮城県七ヶ浜町。仙台市街から東に約20km、車で約30分。松島湾の南西に突き出した七ヶ浜半島にあり、三方を海に囲まれています。日本三景松島の一角をなし、自然環境や景観に恵まれた地域。大規模な大木囲貝塚、松島四大観の一つとされる多聞山、七ヶ浜国際村など見どころ多い町です。

 みんなの家きずなハウス(通称:きずなハウス)のファームガーデンは、町の総合スポーツセンターや、生涯学習センター・老人福祉センターが集まる丘の上の一角にあります。


 2013年の12月、NPO法人レスキューストックヤード(以下、RSY)が、仮設商店街の一角に駄菓子屋さんを兼ねた「きずなハウス」をオープンしました。2015年、仮設商店街の閉鎖が決まったとき、子どもたちが「きずなハウスを残してほしい!」と署名を集めて町長に届けたそうです。それから、NPO法人HOME-FOR-ALLをはじめ民間企業や多くの方々からの協力を得て、2017年7月に“七ヶ浜みんなの家きずなハウス”がリニューアルオープンしました。町との協定のもと、RSYが運営を担っています。

 お話をうかがっている間も、石木田さんのまわりに子どもたちが集まってきます。もともとも石木田さんは保育園や幼稚園の先生だったそうです。

 「私がRSYに入ったのは、ちょうどリニューアルのきずなハウスの模型ができたころです。RSYは震災後すぐにこちらに入り、5年後をメドに撤退を考えていたのです。災害支援のNPOなので、RSYとしても、このようなハウスの維持管理はここが初めてだと思います。代表の栗田さんは、RSYにとってはチャレンジだといっています。まして、私はお庭のことについてはまったくの素人で、それもまたチャレンジでした。それでも、建物やお庭全体のことは近藤先生に、植物のことは共同企画者のグリーンワイズの先生方に何でも報告、相談しながらやっています。」と石木田さん。日々のお庭の手入れは、町のグリーンサポーターズ(個人17名、団体4つ)の方たちと一緒にされているとのこと。


 「今はファームガーデンも任されていますが、最初は、あまり興味がなかったんです。畑のものを食べる方は得意ですが、育てるというのは。けれども、自分が小さいころは、たしか、どこの家にも柿の木や実のなる木がありましたね。そういうのをイメージしながら、干し柿づくりやジャムづくり、ハーブを摘んでティーパーティを開いたりしています。そのときにグリーンサポーターズの方が、ケーキやクッキーを振る舞ってくれたりもします。 “いざという時は、ここの野草を食べて生き延びよう”というワークショップで、子どもたちとここの野草たちを試食したりもしました」と日々の取り組みを楽しそうに教えてくださいました。


 せっかく植えた苗木が台風で倒れてしまった、元々が砂地のため思うように植物が育たない、来年は震災から10年、町のみんなは本当に復興しているのか、気になることもたくさんあるそうです。


 「今回は、サテライト花壇として、町の2つの地区にプランターを置いてもらうお願いしました。私が、車で水も一緒に積んで行きます。すると地区の方は「大変でしょ、お水やっとくよー」と言ってくれるのですが、足繁く通って、信頼関係というか、何でも言えるような関係があると先に進むのかなと。なかなかこのファームガーデンまで来るのが大変な方もいますし、外に出ない方もいます。その方たちが、お花の香りに気づいて喜んでくれるかな、なんて淡い期待を抱いています。」

 ファームガーデンも町の方たちとのつながりも、「RSYの支援を受け継ぐ」という気持ちで取り組んでいるそうです。「お庭も支援も学ぶことは多いです」という石木田さんが、香りも絆もつないでいるように思いました。

 もうひとつ、子どもたちがこのきずなハウスに集まる理由は、駄菓子屋さんでもあるからです。ハウスの中で買い物をして、香りの植物に囲まれた庭で食べるのが楽しくておいしい。駄菓子屋さんと香りのファームガーデン。

奥に建物が見えます。手前には色とりどりの花や木を見ることが出来ます。

2019年6月のきずなハウス。
横田さんが後日送ってくださいました。

奥には建物が見えます。中央部にはハンモックがあり、周囲には樹木が植えられています。

子どもたちが香りの樹木の横のハンモックでくつろぐ

雨水タンクの写真です。

お庭の水には、基本的にこの雨水タンクの水を利用しています

コンポストの写真です。雪も積もっています。

手作りコンポスト。
落ち葉を集めて作っています

建物の中に、2羽のセキレイがいます。

きずなハウスに訪れたセキレイの親子

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