「みどり香るまちづくり 企画コンテスト」みどり香るまちの現場

平成25(2013)年度

入賞(震災復興部門)

香りの灯台 ~はじまりの花ひろば~

平成28(2016)年度

日本植木協会賞

おちゃっこ広場~香りでおがる人と地域~

平成25(2013)年度

企画者:寄木さくらの会/尚絅学院大学

平成28(2016)年度

企画者:尚絅学院大学 環境構想学科/寄木・韮の浜おちゃっこくらぶ/寄木さくらの会/仙台ゾウ・プロジェクト

場所:宮城県南三陸町

訪問日時

2020年2月10日(月)午後

訪問先

宮城県本吉郡南三陸町

 寄木さくらの会 高橋栄樹氏

 寄木さくらの会 畠山幸男氏

企画の概要

香りの灯台 ~はじまりの花ひろば~

 地域住民と大学生が震災復興を目指して香りの広場を作りました。現場の土質に合う植物選びや水はけの改良等苦労もありましたが、近隣の被災地域から提供されたハーブを植栽して地域間の繋がりもでき、広場が育ってきています。


おちゃっこ広場~香りでおがる人と地域~

 地域住民が、バラやハーブ等の香りの植物を植栽し、お茶や子供たちの草木遊び、小物づくりに利用して楽しめる広場に育てています。植物の香りが広がることで、新しいコミュニティの絆や他地域との交流にも繋がります。

ヒアリング内容

 宮城県の北東部に位置する南三陸町は、東は太平洋に面し、後の三方は標高300〜500メートルの山々。リアス式海岸特有の景観を有し、三陸復興国立公園の一角を形成しています。海岸沿いには漁業を営む集落が多く、寄木集落もその一つ。大漁と航海の安全を祈願して行われる250年もの歴史ある正月の行事『寄木ささよ』が今も伝わっています。


 東日本大震災の津波被害を受け、復興の中、当時、寄木地区の区長だった高橋さんを中心に、震災前から活動していた花好きの仲間が動き始めました。以前からつながりがあった仙台ゾウ・プロジェクトの方が寄木の復興に役に立ちたいと言ってくれて、尚絅学院大学しょうけいがくいんだいがくの先生や学生さんたち、多くの方々がこの場所に集まってきてくれました。その流れが今も続いています。


 平成25年度入賞の「香りの灯台 〜はじまりの花ひろば〜」は、寄木地区が元気になる新しいコミュニティの場として企画されました。人々が集まり、交流が広がり、さらに香りに誘われて遠方からも仲間が集まる場所。広場全体がまちの灯台となり、地域を照らし、寄木地区の人たちが元気に暮らせるはじまりの場所として計画しました。

 受賞プレート横の看板には、東京や、北海道から沖縄の方まで、たくさんの方々のお名前があります。ひろばに苗やハーブを寄贈してくださった方だそうです。ここに集う人々は、樹木のこと、ハーブのこと、香り、料理、お茶のことなど、それぞれの知識を持ち寄って交流しています。そして尚絅学院大学の先生や学生さんたちが、ボランティアでこの企画案や植栽計画の図面も描いてくれたそうです。維持管理もずっとみんなが手伝っていて、多いときは30人くらいで作業しますとのこと。こういう寒い時期だとあったかいお茶なんかを持ってきて、休憩時間に丸くなっておちゃっこして。そんなことが、平成28年の受賞企画“おちゃっこ広場 〜香りでおがる人と地域〜”につながりました


 おちゃっこ広場は、香りの灯台から車で5分ほど、震災復興で高台へ移転した新しい寄木・韮の浜地区内の広場にあります。地域の人たちが、香る植物を使ったお茶を気軽に楽しめる広場をつくろうという企画です。宮城の方言で「おちゃっこ」は「お茶をする」の意味です。「育(おが)る」とは「育つ」や「繁栄する」の意味。

 高台の造成が完成し、「寄木」と「韮の浜」2つの地区が一緒になり“寄木・韮の浜地区”での暮らしがはじまりました。「香りの灯台〜はじまりの花ひろば」で生まれた交流は、新しい“寄木・韮の浜”でも変わりません。生活が落ち着いてきたころ、地域内の緑地を交流の広場にしようと企画が立ち上がりました。「以前の自宅の庭のようにたくさんのお花を植えたい」「子どもたちに植物を使った遊びを教えたい」などみんなの想いが溢れ出ました。そして「香りに包まれながらおちゃっこしたいね」という声がきっかけで、お茶やサシェ(香袋)に加工できる香りの植物があげられました。こうしてみんなで意見交換しながら、「人と地域が香りでおがっていく場」を考えたそうです。


 私たちの訪問について、高橋さんと畠山さんは「もう少ししたら、このクロモジの花が咲き、真ん中はハーブで色も香りも良くなるのに。一番見頃な時期に来てくれれば良かった。」と。それでも、白いミツマタや、ロウバイの花が本当にろうそくの灯のように小さく咲いて、香っていました。何よりこの時期にお邪魔したことで、これから香る植物を丁寧にお手入れしている様子がよくわかりました。


 「受賞のときにいただいた赤いミツマタは枯れてしまったよ」と残念そうでしたが、「夏になるとグミの木の実をみんなで食べたり、カリンや、アップルミントを楽しんだりするのもいいですね。」「ここでつくったハーブを近隣の方々におすそ分けします」と香りの樹木・草花についての取り組みもお話しいただきました。

 園路に敷いてある木材チップは、震災の復興道路の工事のときに廃棄された木材をいただいたもの。花壇の土留めも、鹽(しお)竈(がま)神社(じんじゃ)の「神々の花灯り」で使われていた竹の灯籠を「捨てるというから、もったいない。もらってきて、ずっと使っていました」と。(灯籠の光の穴が蜂のすみかになってしまい、最近、急きょ丸太に変更しました)

 この場所は震災後がれき集積場だったので、まず土づくりから始まり、山から腐葉土を運んできたり、落ち葉や藁を集めて堆肥にしたり、地元で採れるウニの殻を肥料に使っていたり、寄木ならではの土をつくる工夫を重ねています。


 「香りの灯台」に続き、「おちゃっこ広場」もご案内いただき、寄木・韮の浜集会所で “おちゃっこ” いただきました。現在、「おちゃっこ広場」は、住民の方々がグランドゴルフをしたり、子どもたちの遊び場になったりしています。「大きな樹木があると日陰ができて良いのですが、せめて東屋とベンチは欲しいよね」「香りの灯台で育った苗をおちゃっこ広場へ持ってきたい」と高橋さんと畠山さん。移転先のこの地を、おがっていこうという思いにあふれています。

 ここでもロウバイが香っていました。香りの灯台とおちゃっこ広場をつなぐように。

木の枝に小さな白い花がついています。

ミツマタ

枝の先に、小さな黄色い花が下向きについています。

ロウバイ

地面の写真です。

おちゃっこ広場は高台移転した地。
山の切土で石も多く植物には厳しい

男性二人が、植えられた細い木を見ながらお話しになっています。

寄木地区元区長も高橋さんと現区長の畠山さん。ベストコンビ

広場を案内している様子です。

おちゃっこ広場をご案内いただく

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