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〈参考1 地盤沈下対策の概要〉
 地盤沈下防止等を図るため、次のような対策が講じられている。
(1) 地下水採取の規制等
   「工業用水法」(環境省、経済産業省共管)及び「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」(環境省所管)によりそれぞれ10都府県、4都府県の一部が規制対象地域として指定され、工業の用に供する地下水または建築物の冷暖房設備等の用に供する地下水の採取規制が行われている。
 また、地方公共団体(平成9年現在、25都道府県、276市町村)では条例等に基づく地下水採取の規制等を行っている。
(2) 地盤沈下防止等対策要綱に基づく対策 
   地盤沈下防止等対策関係閣僚会議において、地域の実情に応じた総合的な対策を推進するために、濃尾平野、筑後・佐賀平野及び関東平野北部地域を対象として地盤沈下防止等対策要綱が策定され、各種の施策が国、地方公共団体等で実施されている。
(3) 監視及び調査研究
   地方公共団体等により、水準測量、地下水観測井による地盤沈下、地下水位の監視・測定が行われており、環境省では、こうした監視測定に対して一部補助を行っている。
 近年、頻発傾向が見られる渇水時には、地下水涵養量の減少から地下水位が低下しやすい傾向に加え、表流水の不足から地下水揚水量が増加し、急速に地下水位が低下することに起因して、地盤沈下が発生している。このため環境省では、地下水位の変動に着目した地下水管理による地盤沈下防止対策についての調査、検討を行い、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県の関東平野北部及び佐賀県筑後・佐賀平野においてテレメ-タ-システムを整備し、各地域において地下水位、地盤収縮量をリアルタイムに監視している。
(4) 地盤沈下対策事業
   国、地方公共団体等では表流水への水源転換のための代替水の確保及び供給事業を実施するとともに、地盤沈下により生じた被害の復旧事業、洪水・高潮・津波に対処するための防災対策事業を行っている。
(5) 情報提供による地盤沈下防止の意識の啓発
   環境省においては、地盤沈下の防止の意識の啓発を図ること及び国や地方公共団体の担当者の業務の一助とすることを目的として、地盤沈下や地下水位等の情報、地下水採取規制に関する条例等の情報等を整理した「全国地盤環境情報ディレクトリ」を環境省ホ-ムペ-ジに掲載している。
  http://www.env.go.jp/water/jiban/index.html
 
 
〈参考2 地盤沈下の機構〉
 地盤沈下は、図-3のように過剰な地下水の採取により、主として粘土層が収縮することにより生じる現象である。
 すなわち、地下水は雨水や河川水等の地下浸透により補給されているが、この補給にみあう以上のくみ上げによって、帯水層の水圧が低下(地下水位が低下)し、粘土層の間隙水が帯水層に排出されて、粘土層が収縮することによる。
 
 
〈参考3 地盤沈下の歴史〉
 地下水は生活用水源として古くから利用、開発されてきたが、その利用形態は地下水利用技術(さく井技術など)の進歩と経済の発達に伴う水需要の増大の二つを背景として、さまざまの変遷を経て現在に至っている。揚水技術が近代化する以前の地下水使用量は量的には少なく、自然の涵養量と平衡する程度のものであった。しかし、大正の初期から近代的なさく井技術によって深井戸がさく井され、自然の涵養量を上回る大量の地下水採取が行われるに及んで地盤沈下の現象が見られるようになった。
 東京都江東地区では大正の初期、大阪市西部では昭和の初期から地盤沈下現象が注目された。その後、急速に沈下が進むにつれて、不等沈下、抜け上がり等による建造物の損壊あるいは高潮等による被害が生じ、地盤沈下は大きな社会問題となった。これらの地域では、戦災を受けた昭和20年前後には地下水の採取量が減少したこともあって一時的に沈下が停止したが、昭和25年頃から経済の復興とともに地下水使用量が急増するにつれて再び沈下は激しくなり、沈下地域も拡大してきた。昭和30年以降には、地盤沈下は大都市ばかりでなく、新潟平野、濃尾平野、筑後・佐賀平野をはじめとして全国各地において認められるようになった。昭和40年代には、各地で年間20cmを超える沈下が認められ、著しい被害が発生するに至った(図-4)。
 このような状況から、地盤沈下防止のためには地下水採取規制措置を講ずる必要があることが広く一般に認識され、地下水の採取を規制することによる地盤沈下の防止を目的とした法制として、工業用地下水を対象とした「工業用水法」が昭和31年に、冷暖房用等の建築物用地下水を対象とした「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」が昭和37年に制定された。また、地方公共団体においても条例等により地下水採取制限が行われ、長期的には地盤沈下は沈静化の傾向をたどっている。
 
 近年、なお地盤沈下の生じている地域における主な地下水利用状況等を見ると、
1. 埼玉県関東平野、愛知県濃尾平野のように都市用水としての利用が多い地域
2. 佐賀県筑後・佐賀平野のようにかんがい期において農業用水としての利用が多い地域
3. 新潟県南魚沼、高田平野のように冬期の消融雪用としての利用が多い地域
4. 千葉県九十九里平野のようにほとんどが水溶性天然ガス溶存地下水である地域
 等であり、地下水採取規制や代替水源の確保等の措置が講じられている。
 このうち、広域に総合的対策を講ずべき、濃尾平野、筑後・佐賀平野及び関東平野北部地域については、昭和56年11月に地盤沈下防止等対策関係閣僚会議が設置され、それぞれの地域について地盤沈下防止等対策要綱が定められている。
 


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