環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第4節 放射性物質に汚染された廃棄物の処理

第4節 放射性物質に汚染された廃棄物の処理

1 対策地域内廃棄物の処理

福島県の11市町村にまたがる地域が汚染廃棄物対策地域として定められています。当初は、避難されている方々の円滑な帰還を積極的に推進する観点から、避難指示解除準備区域及び居住制限区域において、帰還の妨げとなる廃棄物を速やかに撤去し、仮置場に搬入することを優先目標としてきました。こうした取組により、2015年度末までに、帰還困難区域を除いて、帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入を完了しました。また、地域住民の方々のご理解と地方公共団体との緊密な連携によって、2019年3月末までに、226万トンの廃棄物の仮置場への搬入が完了しました(図4-4-1)。仮置場に搬入した可燃性の災害廃棄物等は、仮設焼却施設でその減容化を図っています。

図4-4-1 対策地域内の災害廃棄物の仮置場への搬入済量

この仮設焼却施設については、計9市町村で10施設を設置することとしています。2018年度には双葉町で着工したほか、富岡町では撤去が始まり、2019年3月末時点では10施設うち5施設が稼働中、1施設が建設中であり、4施設では処理を完了しています(表4-4-1)。事業を実施している仮設焼却施設においては、排ガス中の放射能濃度、敷地内・敷地周辺における空間線量率のモニタリングを行って安全に減容化できていることを確認し、その結果を公表しています。

表4-4-1 稼働中及び建設工事中の仮設焼却施設

2 指定廃棄物の処理

2019年3月末時点で、11都県において、焼却灰や下水汚泥、農林業系副産物(稲わら、堆肥等)等の廃棄物計約23万トンが環境大臣による指定を受けています(表4-4-2)。政府は、指定廃棄物の処理に関して、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針(2011年11月閣議決定)で「当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行う」としています。

表4-4-2 指定廃棄物の数量(2019年3月末時点)

指定廃棄物は、国に引き渡されるまでの間、各都県のごみ焼却施設や下水処理施設、農地等において、各施設等の管理者等が国のガイドラインに沿って、遮水シート等で厳重に覆って飛散・流出を防ぐとともに、空間線量率を測定して周辺への影響がないことを確認するなどにより、適切に一時保管されています。

ただし、こうした一時保管場所における保管は、国による処理方針が確立するまでの間、やむを得ず一時的に負担をお願いしている措置であることから、災害等に備え、長期にわたる確実な管理体制を早期に構築することが必要です。

なお、8,000ベクレル/kg以下に減衰した指定廃棄物については、放射性物質汚染対処特措法施行規則第14条の2の規定に基づき、当該指定廃棄物の指定の解除が可能です。また、指定解除後の廃棄物の処理について、国は技術的支援のほか、指定解除後の廃棄物の処理に必要な経費を補助する財政的支援を行うこととしています。

(1)福島県内での処理

福島県内の指定廃棄物及び対策地域内廃棄物について、10万ベクレル/kg以下のものは既存の管理型処分場に搬入し、10万ベクレル/kgを超えるものは中間貯蔵施設に搬入する計画としています。

農林業系廃棄物や下水汚泥等の可燃性の指定廃棄物については、搬入の前に焼却等の処理によって処分量を削減し、性状の安定化を図る減容化事業を地元の協力と理解を得ながら進めています。これまでに、3件の減容化処理事業について焼却等処理を完了しました。2018年11月に飯舘村蕨平(わらびだいら)地区の仮設焼却施設において、飯舘村の周辺5市町の可燃性廃棄物を焼却処理する広域処理が完了しました。加えて、田村市・川内村において、県中・県南等の24市町村の農林業系廃棄物を焼却処理する仮設焼却施設が稼働しているほか、安達地方の3市村の農林業系廃棄物等の減容化事業についても、準備を進めています。

既存の管理型処分場(旧フクシマエコテッククリーンセンター)の活用については、2015年12月に福島県、富岡町及び楢葉町から当該処分場の活用を容認いただき、2016年4月に施設を国有化しました。同年6月には、国と県及び2町の間で安全協定を締結し、必要な準備工事を行った上で、2017年11月から施設への廃棄物の搬入を開始しました(写真4-4-1)。引き続き、安全確保を大前提として適切に事業を進めるとともに、2018年8月に運営を開始した特定廃棄物埋立情報館「リプルンふくしま」を通じた情報発信に努めております。

写真4-4-1 管理型処分場の様子
(2)福島県外での処理

環境省では、宮城県、栃木県、千葉県、茨城県、群馬県において、有識者会議を開催し、長期管理施設の安全性を適切に確保するための対策や候補地の選定手順等について、科学的・技術的な観点からの検討を実施し、2013年10月に長期管理施設の候補地を各県で選定するためのベースとなる案を取りまとめました。その後、それぞれの県における市町村長会議の開催を通じて長期管理施設の安全性や候補地の選定手法等に関する共通理解の醸成に努めた結果、宮城県、栃木県及び千葉県においては、各県の実情を反映した選定手法が確定しました。

これらの選定方法に基づき、環境省は、宮城県においては2014年1月に3か所、栃木県においては2014年7月に1か所、千葉県においては2015年4月に1か所、詳細調査の候補地を公表しました。詳細調査候補地の公表後には、それぞれの県において、地元の理解を得られるよう各県の関係者の協力を得ながら取り組んでいるところですが、いずれの県においても詳細調査は実施できていません。

その一方で、各県ごとの課題に応じた段階的な対応も進めています。

宮城県においては、県の主導のもと各市町が8,000ベクレル/kg以下の汚染廃棄物の処理に取り組むこととされ、環境省はこれを財政的・技術的に支援することとしています。その一環として、2018年3月から汚染廃棄物の試験焼却が順次開始されました。2019年3月末時点で、大崎圏域では引き続き試験焼却が行われており、仙南圏域及び黒川圏域では試験焼却、石巻圏域では本焼却が終了しています。

栃木県においては、指定廃棄物を保管する農家の負担軽減を図るため、2018年11月、指定廃棄物を一時保管している農家等が所在する市町の首長が集まる会議を開催し、国から栃木県及び保管市町に対し、市町単位での暫定的な減容化・集約化の方針を提案し、合意が得られました。現在、当該方針に基づく集約化の実施に向けて、県・保管市町と調整を行っています。

千葉県においては、2016年7月に全国で初めて8,000ベクレル/kg以下に減衰した指定廃棄物の指定を解除しました。

茨城県においては2016年2月、群馬県においては同年12月に、「現地保管継続・段階的処理」の方針を決定しました。この方針を踏まえ、必要に応じた保管場所の補修や強化等を実施しつつ、8,000ベクレル/kg以下となったものについては、段階的に既存の処分場等で処理することを目指しています。