環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第1章>第2節 地球温暖化に関する国内対策

第2節 地球温暖化に関する国内対策

 「パリ協定を踏まえた地球温暖化対策の取組方針(平成27年12月22日地球温暖化対策推進本部決定)」に基づき、2030年度(平成42年度)の温室効果ガス削減目標を柱とする「日本の約束草案」やパリ協定を踏まえ、平成28年春までに地球温暖化対策計画を策定し、事業者、国民等の各主体が取り組むべき対策や国の施策を明らかにし、着実に取組を進めます。また、政府としても率先して地球温暖化対策に取り組むため、春までに政府実行計画を策定します。国民運動を強化し、多様な主体が連携しつつ、情報発信、意識改革、行動喚起を進めていきます。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収、気候変動の影響への適応等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 産業界の地球温暖化対策の中心的な取組である自主行動計画については、これまで十分に高い成果を上げていると評価されています。平成25年度以降の新たな計画である「低炭素社会実行計画」においては、経済的に利用可能な最善の技術(Best Available Technology、以下「BAT」という。)の最大限の導入等を前提として、国内の事業活動における2020年(平成32年)の二酸化炭素(CO2)排出削減目標を立てるとともに、低炭素製品・サービス等による業務・運輸・家庭等他部門での削減、技術移転等を通じた国際貢献、革新的技術の開発といった取組についても、「削減ポテンシャル」として可能な限り定量的に示して、世界のCO2排出削減に貢献することを促しています。

 また、2020年(平成32年)以降の我が国の自国が決定する貢献案(INDC)の決定に先立って、平成27年4月に一般社団法人日本経済団体連合会が2030年(平成42年)を目標年限とする経団連低炭素社会実行計画(フェーズⅡ)を発表し、政府としても各業界の計画策定を慫慂(しょうよう)してきました。平成28年3月末までに94業種が2030年(平成42年)を目標年限とする計画を策定し、平成24年度の国内のエネルギー起源CO2排出量に占める割合は、産業部門・エネルギー転換部門の8割、日本全体の5割に達しています。産業界における対策の中心的役割として引き続き事業者による自主的取組を進めるとともに、計画の透明性・信頼性・目標達成の蓋然性の向上の観点から、政府としても、関係審議会等による厳格かつ定期的な評価・検証を実施します。また、今後より多くの業種の参加促進や、審議会における事前質問プロセスの活用、開示情報の増強等の改善を図っていきます。

 産業分野を中心として、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャルの診断の実施やCO2削減効果の高い設備への更新等多様な施策を展開することで、企業の積極的な地球温暖化対策を促進します。

 また、部材の軽量化等によるCO2の大幅削減が期待できるセルロースナノファイバー等の次世代素材の早期の社会実装を推進します。このため、メーカー等と連携し、製品等活用時の削減効果検証や製造プロセスの低炭素化の検証等を実施します。

 農林水産分野における温室効果ガス排出削減に貢献するため、温室効果ガス排出削減技術の検証等への支援や施設園芸における省エネ設備の導入支援、施肥の適正化、木質バイオマスの化石燃料代替利用による排出削減、省エネルギー性能に優れた漁業用機器の導入支援等を推進します。

(イ)業務その他部門の取組

 平成28年施行の建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」という。)について、適合義務や届出等の円滑な施行に向け、基準や手続の周知を行い、環境整備を実施します。さらに、建築物省エネ法に基づく表示制度の周知・普及を図ります。また、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)に基づく低炭素建築物の普及促進、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及、省エネ改修促進税制の活用及び省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援により、建築物の省エネ化・低炭素化を促進します。トップランナー制度については、更に個別機器の効率向上を図るため、対象機器の追加を検討するとともに、既に対象となっている機器の基準の見直しについて検討します。また、既存の事業場について、ストック全体の低炭素化のため、CO2削減ポテンシャルの診断の実施や、環境省におけるL2-Techの普及促進、CO2削減効果の高い設備への更新等の多様な施策について、更なる推進を図ります。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、政府の温室効果ガス排出量に大きく関連する、電気の供給契約や、自動車の購入及び賃貸借に係わる契約など6分野を中心に、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を実施します。

(ウ)家庭部門の取組

 平成28年施行の建築物省エネ法に基づく表示制度の周知・普及を図ります。また、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の普及促進や、平成27年6月に改訂された「日本再興戦略」改訂2015において取りまとめられた、省エネ基準適合義務化等の住宅・建築物の低炭素化に向けた推進方策について、住宅・建築物における対策の強化を図っていきます。また、消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、CASBEEや住宅性能表示制度の充実・普及を行います。さらに、ゼロエネルギー住宅の建設に対する支援等を行うほか、既存住宅に係る特定の改修工事(高断熱窓への取替え等の一定の省エネ改修工事等)をした場合の所得税額の特別控除制度を引き続き実施します。また、製造事業者等による省エネルギー性能の品質表示制度を円滑に実施するとともに、その省エネルギー効果について各種媒体を活用した周知徹底を行うこととし、住宅リフォーム時に導入可能な各種省エネ対策について普及啓発を行います。加えて、家庭における着実な省エネ対策等を実行し、低炭素なライフスタイルへの変革を促すため、光熱費の削減以外の便益(Non-Energy Benefit)の知見の充実・普及や家庭エコ診断制度の促進を図ります。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策のみならず、交通流対策、燃料対策、エコドライブ等の自動車利用の効率化対策等も含めた総合的アプローチを推進します。世界最高水準の自動車単体対策の実現を目指すとともに、燃費性能の優れた自動車やクリーンエネルギー自動車の普及等の対策を推進します。あわせて、道路整備に伴って、いわゆる誘発・転換交通が発生する可能性があることを認識しつつ、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、本格的な導入が開始されたETC2.0の活用等による道路を賢く使う取組等の交通流対策やLED道路照明灯の整備を推進します。また、利用環境改善促進等事業により、バリアフリー化されたまちづくりの一環として、地域公共交通の利用環境改善を促進するために、より制約の少ない交通システムである次世代型路面電車システム(LRT)の導入等に対して支援します。

 物流分野に関しては、引き続き、荷主、物流事業者の協働による取組を支援します。さらに、自動車輸送から内航海運又は鉄道による輸送への転換、トラック等による共同輸配送、都市鉄道等の旅客鉄道を利用した新たな物流システムの構築、営業倉庫等の物流施設における低炭素化、港湾の最適な選択による貨物の陸上輸送距離の削減、港湾における総合的な低炭素化等を推進することにより、物流体系全体のグリーン化を促進します。また、トラック輸送の更なる効率化のため、ITを活用した「賢い物流管理」を推進します。

 海運分野については、船舶からのCO2排出規制に関する国際的枠組み作りと民間事業者等が行う先進的な研究開発の支援を一体的に推進し、国際競争力を強化しつつ、CO2排出の大幅な削減対策を実施するとともに、省エネ船舶等の普及促進により、低炭素化を推進します。また、鉄道分野においては、鉄道の更なる省エネ化を図るため、節電、省エネ効果が期待される次世代ハイブリッド車両等の技術開発を推進するとともに、鉄道駅や運転司令所等への先進的な省エネ機器等の導入に係る支援(エコレールラインプロジェクト)を実施し、鉄道の省電力化、低炭素化技術の普及を図ります。さらに、航空分野においては、空港における減エネ・CO2削減対策等を推進させ、航空分野におけるCO2排出削減を図ります。

 輸送用燃料については、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号。以下「エネルギー供給構造高度化法」という。)に基づく、非化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の基準(平成22年経済産業省告示第242号)が平成22年11月に施行されたことにより、石油精製業者には平成23年度以降、各年度の持続可能性基準を満たしたバイオ燃料の利用目標が設定されました。こうした背景も踏まえ、バイオ燃料を全国的に供給できる体制を構築するための事業を推進していきます。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 原子力発電に関しては、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、福島の再生に全力を挙げるとともに、事故の原因や原子炉内の状況を踏まえ、このような事故の再発の防止のための努力を続けていかなければなりません。また、再生可能エネルギーを利用するための設備の導入促進等、必要な施策を講じます。また、ガスコージェネレーションや燃料電池、ヒートポンプ等、エネルギー効率を高める設備等の更なる普及も推進していきます。さらに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向け、技術開発や貯留適地調査等を実施します。

 電気事業分野における地球温暖化対策については、電力業界の自主的枠組みの実効性・透明性の向上等を促すとともに、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ法」という。)やエネルギー供給構造高度化法に基づく基準・運用の強化等により、電力業界全体の取組の実効性を確保していきます。また、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価し、省エネ法等に基づき必要に応じて指導を行うこととしています。また、目標の達成ができないと判断される場合には、施策の見直し等について検討します。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化、下水汚泥の燃焼の高度化等を引き続き推進します。

(3)代替フロン等4ガスに関する対策の推進

 「日本の約束草案」に掲げられた2030年(平成42年)における代替フロン等4ガスの排出量目標である2,890万 CO2トン(2013年(平成25年)比▲25.1%)を達成するため、産業界の計画的な取組の推進、代替物質等の開発等、代替物質を使用した製品等の利用の促進、冷媒として機器に充填(てん)されたHFCの法律に基づく回収等の施策を、引き続き実施します。

 具体的には、事業者の先導的な排出抑制の取組に対する支援、冷凍空調機器や断熱材における温室効果の低いガスを用いた技術開発の早急な推進、代替フロンを含有する製品における「見える化」の推進(二酸化炭素換算表示)、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン排出抑制法」という。)によるフロン類の使用の合理化(ノンフロン・低GWP(温室効果)製品の導入促進等)及び管理の適正化(冷媒フロン類の使用時漏洩(えい)対策、回収の徹底等)、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)及び使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号)に基づくフロン類回収の徹底、冷凍冷蔵機器、発泡断熱材、エアゾール等のノンフロン化を更に推進するための普及啓発等に取り組みます。また、代替物質を使用した製品等の技術開発支援及びその利用を促進するための省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入補助等を更に強化します。

 特に、フロン排出抑制法については、フロン類の製造から使用、回収、再生・破壊に至るライフサイクル全体にわたる排出抑制を目指し、平成25年に法律を改正し、名称を改め、平成27年4月から施行されたもので、都道府県等の関係者と連携し、その確実な運用に努めます。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 森林吸収量(1990年(平成2年)以降に森林経営活動等が行われた森林の吸収量)については、平成27年12月に気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「気候変動枠組条約」という。)に基づき提出された我が国の報告書において、京都議定書第二約束期間の土地利用、土地利用変化及び林業部門(LULUCF)のルールに則して、対象となるLULUCF活動実施による吸収量を活用することとしています。具体的には、2020年度(平成32年度)において、森林経営による吸収量は、約3,800万CO2トン以上(一定の前提を置いて試算)、植生回復による吸収量は約120万CO2トンの確保が目標とされています。また、農地土壌吸収源による純吸収量は約770万CO2トンが見込まれています。

 この目標を達成するため、森林・林業基本計画や平成25年5月に改正した、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成20年法律第32号)等に基づき、年平均52万haの間伐等の森林の適正な整備や保安林等の適切な管理・保全、成長に優れた種苗の確保に向けた生産体制の構築、国民参加の森林づくり、木材及び木質バイオマスの利用拡大、「木づかい運動」等の森林吸収源対策を推進します。

 また、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するよう、国全体としての財源確保を引き続き検討します。

 そのほか、都市における吸収源対策として、引き続き都市公園整備、道路緑化等による新たな緑化空間を創出し、都市緑化等を推進します。

 さらに、農地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能の活用に向けた取組等を実施します。また、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援も行います。

(5)気候変動の影響への適応策の推進

 政府全体として気候変動の影響への適応策を計画的かつ総合的に進めるため、目指すべき社会の姿等の基本的な方針と、基本的な進め方、分野別施策の基本的方向、基盤的施策及び国際的施策を定めた、政府として初の気候変動の影響への適応計画を平成27年11月27日に閣議決定しました。本計画に基づき、引き続き適応の取組を実施します。

 気候変動の影響に対して講じられる適応策は、地域の特性を踏まえるとともに、地域の現場において主体的に検討し、取り組むことが重要となるため、国全体の取組だけでなく、地方公共団体における気候変動影響評価・適応計画策定の支援や気候変動情報プラットフォーム等における地方公共団体が活用しやすい形での情報提供等、地域における適応に関する取組も引き続き支援します。

2 横断的施策

(1)低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)、都市の低炭素化の促進に関する法律等に基づく低炭素都市づくり関連施策の集中投入、「環境モデル都市」や「環境未来都市」における取組を各府省の連携・協力の下で促進するとともに、「環境未来都市」構想推進国際フォーラムや「環境未来都市」構想推進協議会等を通じた成果の情報共有等により、施策の効果の最大化を図るなど、低炭素都市づくりを推進します。

 地方公共団体実行計画(区域施策編)と連携するなどの地域の戦略的な再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入等を支援することで、地域の二酸化炭素排出量削減を後押しします。また、引き続き、低炭素なまちづくりの推進のためのモデル事業や支援を実施します。

 さらに、将来的なトータルでのCO2フリー水素(再生可能エネルギー由来水素等)を活用した水素社会の実現への取組も含め、低炭素社会の実現に向けた様々な取組を進めます。

(2)地方公共団体における対策の促進

 地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画(事務事業編・区域施策編)の策定・実施を一層推進するため、同計画の内容の分析を進めるとともに、地方公共団体の温暖化対策の担当者等を対象としたきめ細やかな研修会を開催又は開催支援を行う予定です。また、「実行計画策定支援サイト」(http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/(別ウィンドウ))や地方公共団体職員向けの掲示板等を活用し、地域の計画推進に役立つ有益な情報を定常的に発信します。

 また、平成26年度から地方公共団体実行計画(区域施策編)に位置付けられた施策の実現に必要な設備導入等の支援に加えて、地方公共団体実行計画(事務事業編)の取組についての企画・実行・評価・改善(カーボン・マネジメント)の強化を促進します。

(3)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者に、毎年度、排出量を国に報告することを義務付け、国がそれを集計して公表しています。当該制度を引き続き着実に実施するとともに、IPCCガイドラインに基づく適切な見直しや、排出量情報等の正確な報告、迅速な集計と公表等により、事業者におけるより積極的な温室効果ガスの排出抑制の促進を図ります。

(4)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法第21条に基づく排出抑制等指針について、未策定の部門についても検討し、早期に策定・公表するとともに、引き続き更なる指針の活用方法等についても検討を行うなど、事業者による温室効果ガスの排出抑制等のための取組を推進していきます。また、既に策定された分野においても、BATの技術動向等を踏まえ、随時見直しを行います。

(5)国民運動の展開

 多様な主体と連携し、省エネ・低炭素型の「製品」、「サービス」、「行動」等、温暖化対策に資する「賢い選択」を促す国民運動「COOL CHOICE」のより一層の展開を図ります。「クールアース・デー」、「クールビズ」、「ウォームビズ」等の様々な広報・イベント等により事業者や国民一人一人の低炭素社会づくりについての関心と理解を深め、ライフスタイル・ビジネススタイルの転換を訴えていきます。さらに、成功事例が共有されるよう、多様な主体が連携して、情報発信、意識改革、行動喚起を進めます。

(6)「見える化」等の推進

 「カーボンフットプリント(CFP)」については、これまでの試行事業の成果をいかして民間事業としてのCFP普及を促進します。具体的には、国際標準化作業への積極的参加やカーボン・オフセット制度との連携を引き続き推進します。また、前述した家庭エコ診断等において、CO2排出量を「見える化」し、家庭の温室効果ガス削減を引き続き進めていく予定です。さらに、事業者に対する削減ポテンシャルの診断や、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の算定等の普及を図ります。

 また、L2-Techに関する体系的な情報を整備・発信し、メーカー・ユーザー双方がL2-Tech情報を利活用しやすい体制を構築し、自発的なL2-Tech導入の拡大によるCO2排出量の大幅削減及び低炭素社会の実現を図ります。

(7)税制のグリーン化

 第6章第2節を参照。

(8)国内排出量取引制度

 「地球温暖化対策の主要3施策について(平成22年12月28日地球温暖化問題に関する閣僚委員会)」に基づき、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組等)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行います。

(9)J-クレジット制度の推進

 国内の多様な主体による省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用等による排出削減対策及び適切な森林管理による吸収源対策を引き続き積極的に推進していくため、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセット等に活用できるクレジットを認証するJ-クレジット制度を着実に実施していきます。J-クレジット制度については、対象となるプロジェクトの拡充や認証プロセスの効率化により、J-クレジット制度の円滑な運営を図るとともに、認証に係る事業者等への支援やクレジットの売り手と買い手のマッチング機会を提供するなど制度活用を促進させるための取組を強化していきます。

(10)カーボン・オフセット、カーボン・ニュートラル

 クレジットを創出する地域社会への資金還流を目的として「環境貢献型の商品開発・販売促進支援事業」を適切に運用し、クレジットを活用した商品・サービスの普及を引き続き図ります。

 また、カーボン・オフセットに関する国内・海外の情報収集や、カーボン・オフセット及びカーボン・ニュートラル制度を着実に運営します。さらに、「カーボンフットプリントを活用したカーボン・オフセット制度」を通じてJ-クレジット等を活用したカーボン・オフセットの取組を推進するとともに、カーボン・オフセットされた製品・サービスの社会への更なる普及を図ります。

(11)金融のグリーン化

 地域低炭素投資促進ファンドから低炭素化プロジェクトへの出資事業につき、地域金融機関等と連携することによりサブファンドの組成の拡大を図りつつ、支援を拡大していくほか、低炭素機器のリース料の助成事業等を引き続き実施するなど、金融のグリーン化に向けた取組を引き続き、実施していきます。

 金融のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)を報告します。また、温室効果ガス排出量・吸収量の更なる精度等の向上に向けた算定方法の改善や情報解析等を行います。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化の防止や地球温暖化への適応に資する技術の高度化、有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池や水素エネルギー、蓄電池、そしてCCS等に関連する技術の開発・実証、普及を促進します。

 また、高効率火力発電(石炭・LNG)について、発電効率の更なる向上を目指します。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略及び農林水産省気候変動適応計画に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を強化します。農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動による農林水産物への影響評価を行うとともに、気候変動に適応する農水産物の品種・育種素材の開発や農畜産物の生産安定技術、山地災害の激甚化や人工林の生育環境の変化等に対応するための技術、気候変動に伴い増加が懸念される有害プランクトンに対応するための迅速診断技術、気候変動に伴い被害の拡大が予想される野生鳥獣被害対策拡大への対応技術の開発を推進します。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化の実態を解明し、科学的知見を踏まえた一層適切な行政施策を講じるため、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究を総合的に推進します。

 地球温暖化分野の観測に関わる関係府省・機関が参加する連携拠点の運営や、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)(第6章第3節2(1)を参照)を用いた全球の温室効果ガス濃度の観測等により、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化するとともに、インドネシア及びモンゴルにおいて効率の良い低炭素システムの設計を推進します。また、平成29年度打ち上げを目指し、平成24年度から着手したGOSATの2号機の開発を引き続き推進します。さらに、平成29年度をめどに3号機の開発の検討に着手し、平成34年度に打ち上げることを目指します。これにより、大都市単位あるいは大規模排出原単位での二酸化炭素等の吸収・排出の把握を行い、気候変動の科学に貢献します。

4 フロン等対策

 フロン類の使用の合理化、管理の適正化の一層の徹底を図り、フロン排出抑制法等により、戦略的にフロン類の排出抑制を推進します。特に、平成28年度から報告が始まるフロン類算定漏洩(えい)量報告・公表制度の確実な運用に努めるとともに、省エネ型自然冷媒機器の導入促進を推進します。

 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号)に基づき、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書に定められた、HCFC等のオゾン層破壊物質の生産規制等を着実に実施するとともに、その排出抑制、使用合理化の一層の促進に努めます。また、オゾン量、オゾン層破壊物質の大気中濃度及び太陽紫外線の観測・監視等を実施します。

 開発途上国におけるフロン等対策を支援するため、同議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した、オゾン層破壊物質からオゾン層を破壊せずかつ温室効果の低い代替物質への転換支援、研修の受入れ等を引き続き推進するなど、開発途上国への技術協力を行います。さらに、オゾン層保護担当官ネットワーク会合等を活用し、日本の技術・取組等の普及促進による開発途上国における議定書遵守対策の加速化、フロン類の回収・再利用・破壊に係る施策実施の促進を図ります。