環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第6章>第2節 経済・社会のグリーン化の推進

第2節 経済・社会のグリーン化の推進

1 税制上の措置等

 平成28年度税制改正において、[1]地球温暖化対策のための税の着実な実施、[2]車体課税のグリーン化(自動車税・軽自動車税における環境性能割の導入)、[3]特定廃棄物最終処分場における特定災害防止準備金の損金算入等の特例措置の延長(法人税、所得税、個人住民税、法人住民税、事業税)、[4]公害防止用設備(廃棄物処理施設)に係る特例措置の延長(固定資産税)、[5]被災自動車等に係る特例措置の延長(自動車重量税・自動車取得税・自動車税・軽自動車税)、[6]環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)の延長(法人税、所得税、法人住民税、事業税)、[7]再生可能エネルギー発電設備に係る特例措置の拡充・延長(固定資産税)、[8]省エネ改修が行われた既存住宅に係る特例措置の延長(固定資産税)、[9]認定長期優良住宅に係る特例措置の延長(登録免許税、不動産取得税、固定資産税)、[10]認定低炭素住宅に係る特例措置の延長(登録免許税)、[11]再生可能エネルギー発電設備を主たる投資対象資産とする投資法人に係る特例措置の拡充(法人税)、[12]公害防止用設備(汚水・廃液処理施設)に係る特例措置の延長(固定資産税)等の措置を講じています。

2 環境配慮型製品の普及等

(1)グリーン購入

 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)に基づく基本方針(平成28年2月2日閣議決定。以下「グリーン購入法に基づく基本方針」という。)では、国等が重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類(以下「特定調達品目」という。)及びその判断基準を定めており、その特定調達品目の拡充及び基準について、適宜検討を行い、制度の充実を図ります。

 また、国及び独立行政法人等の各機関は、グリーン購入法に基づく基本方針に則して、特定調達品目ごとの具体的な調達目標等を定めた環境物品等の調達の推進を図るための方針を作成・公表し、これに基づく環境物品等の優先的調達を推進するとともに、年度終了後にはその調達実績の概要を公表します。

 このほか、国際的なグリーン購入の取組を推進するため、国連環境計画(UNEP)等が主導する国際プログラムへの積極的な参画等を行います。

(2)環境配慮契約

 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づく基本方針(平成26年2月4日閣議決定。以下「環境配慮契約に基づく基本方針」という。)では、温室効果ガス等の排出削減に重点的に配慮すべき契約等を定めており、その具体的な環境配慮の方法や手続について適宜追加・見直しを行い、制度の充実を図ります。

 また、国及び独立行政法人等の各機関は、環境配慮契約に基づく基本方針に従い環境配慮契約に取り組むとともに、年度終了後にはその契約の締結実績を公表します。

(3)環境ラベリング

 購入者が、製品やサービスに関連する適切な環境情報を入手できるよう、環境ラベル等の状況を引き続き整理・分析して提供します。

 また、国際的な動向を踏まえながら、環境ラベル制度の相互認証に向けた取組について調査・検討を進めます。

(4)ライフサイクルアセスメント(LCA)

 ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を活用した環境負荷の「見える化」に関する国内外の最新動向を調査するとともに、国際会議やワークショップ等を通じて我が国の産業界の取組や事業活動の実態等を踏まえたLCA手法等の発信を行い、我が国の環境配慮製品が適切に評価されるための環境づくりに貢献します。

3 事業活動への環境配慮の組込みの推進

(1)環境マネジメントシステム

 サプライチェーン全体で環境負荷を低減する動きが一層高まっており、事業者の環境管理へのニーズは一層高まりつつあります。そこで、幅広い事業者へ環境マネジメントシステムの普及促進を引き続き行うとともに、「エコアクション21ガイドライン」の改訂作業を本格的に実施します。

 同時に、環境管理のノウハウが不足している中堅・中小事業者を中心に、環境経営体制構築の専門家を事業者へ直接派遣する事業を本格化させます。

(2)環境会計

 環境会計の一層の普及促進を図るとともに、事業者が行う環境保全活動をより効率的かつ効果的に測定評価できるよう、最新の国際的な評価手法等も参考としつつ、現行の「環境会計ガイドライン2005年版」の改訂に向けた検討を引き続き行います。

(3)環境報告書

 環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号)に沿って、環境報告書の作成・公表の更なる普及促進と事業者・国民による利用促進のための施策を引き続き推進します。

 具体的には、環境報告書等の作成に当たっての実質的な手引である「環境報告ガイドライン」について、その活用・普及に努め、情報開示の促進と質の向上に向けた取組を進めます。あわせて、国際的な開示フレームワークの動向を見据えつつ、環境報告の在り方についての調査・研究を実施します。また、「環境報告書プラザ」(https://www.ecosearch.jp/ja/(別ウィンドウ))や環境報告書に関するポータルサイト(http://www.env.go.jp/policy/keiei_portal/(別ウィンドウ))による情報発信や、優れた環境報告書の表彰等を通じて、質の高い環境報告書の作成・公表を促します。

 また、環境情報が投資判断の一要素として活用されつつあることを踏まえ、主として投資家等が利用することを前提とした「環境情報開示基盤」の実証的運用を行います。

(4)効果的な公害防止の取組の促進

 平成22年1月の中央環境審議会答申「今後の効果的な公害防止の取組促進方策の在り方について」を踏まえ、事業者や地方公共団体が公害防止を促進するための方策等を引き続き検討、実施します。

4 環境金融の促進

 低炭素社会を始めとする持続可能な社会を構築するためには巨額の追加投資が必要であり、1,600兆円を超える我が国の個人金融資産も有効に活用しつつ、資金が環境分野に十分に供給されるようにしていくことが不可欠です。そのため、以下に掲げる取組を行っていきます。

(1)環境関連事業への投融資の促進

 地域低炭素投資促進ファンドからの出資によって、民間資金を呼び込み、再生可能エネルギー事業等の低炭素化プロジェクトの実現を引き続き支援します。その際、地域の「目利き力」を活用して優良なプロジェクトに対する支援を展開するため、地域金融機関等と連携してサブファンドの組成の拡大を図ります。また、低炭素機器をリースで導入した場合のリース事業者に対するリース料の助成事業等を引き続き実施するほか、再生可能エネルギー事業等に係る地方公共団体と地域金融機関との連携促進、地域金融機関における事業性評価の能力向上の支援を行います。さらに、機関投資家や個人を含めた幅広い投資家による環境投資を促進するため、グリーンボンド等の更なる方策の検討や、国内金融機関に対する諸外国の「グリーン投資銀行(GIBs)」の知見の共有等を行います。

 また、株式会社日本政策金融公庫においては、大気汚染対策や水質汚濁対策、廃棄物の処理・排出抑制・有効利用、温室効果ガス排出削減、省エネ等の環境対策に係る融資施策を引き続き実施します。

(2)金融市場を通じた環境配慮の織り込み

 金融機関が企業の環境配慮の取組全体を評価し、その評価結果に応じて低利融資を行う環境格付融資や、事業に伴う環境リスクについて融資先に調査等を求める環境リスク調査融資を促進するとともに、温暖化対策に資する設備投資を加速するため、利子補給事業を引き続き実施します。また、我が国のESG投融資(環境・社会・企業統治という非財務項目を投資分析や意思決定に反映させる投融資)の実態調査・課題整理・有効性に関する実証分析等を通じた普及促進を行います。このほか、融資先の環境経営の取組度と信用力等に関する検討等を行い、環境等の非財務情報を考慮した投融資の促進に引き続き取り組みます。

(3)環境金融の普及に向けた基盤的な取組

 金融機関が、本業を通して環境等に配慮する旨をうたう「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」の運営支援を通じ、金融機関全体における持続可能性に配慮した投融資等への意識の向上と取組推進を図ります。また、環境情報の投資家等における利用を促進し、市場の中で企業の環境配慮等の取組が適切に評価されるよう支援します。

5 社会経済の主要な分野での取組

(1)農林水産業における取組

 持続可能な農業生産を支える取組の推進を図るため、化学肥料、化学合成農薬の使用を原則5割以上低減する取組と併せて行う地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に対する直接支援を引き続き行います。

 また、環境と調和の取れた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着や持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の普及推進、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づく有機農業の推進に関する基本的な方針に則し、産地の販売企画力、生産技術力強化、販路拡大、栽培技術の体系化の取組等の支援、施設等の整備に関する支援を引き続き行います。

 森林・林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備による多様で健全な森林への誘導や、計画的な保安林の配備の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全を図るとともに、多様な主体による森林づくり活動の促進に努めるほか、木材利用の促進を図ります。

 水産業においては、持続的な漁業生産等を図るため、適地での種苗放流等による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理措置等を内容とする資源管理計画に基づく取組を支援します。さらに、沿岸域の藻場・干潟の造成等生育環境の改善を実施します。また、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進します。

(2)運輸・交通

 次世代自動車を取得する際の低利融資、車両導入に対する各種補助並びに自動車税のグリーン化及び自動車重量税・自動車取得税の免除・軽減措置等を活用し、次世代自動車等の更なる普及促進を図ります。

 また、中重量車について、産学官の適切な連携により、低炭素化に資する電動路線バスを実現できるバッテリー技術等の技術開発を促進しつつ、実用性の評価等を行います。さらに、燃料電池フォークリフトや燃料電池ごみ収集車等、早期の社会実装を目指したエネルギー起源二酸化炭素(CO2)の排出を抑制する技術の開発及び実証事業を実施します。

 このほか、都市鉄道新線の整備、在来幹線鉄道の活性化、次世代型路面電車システム(LRT)の整備、駅のバリアフリー化、高速輸送バスシステム(BRT)の整備、交通系ICカードの導入等に対する支援等を通じて環境負荷の小さい公共交通機関の利用促進を図ります。加えて、マイカーから公共交通機関への利用転換を推進するエコ通勤優良事業所認証制度の普及・促進を図ります。