第8節 社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

1 経済的措置

(1)経済的助成

 ア 政府関係機関等の助成

 政府関係機関等による環境保全事業の助成については、表7−8−1のとおりでした。


表7−8−1 政府関係機関等による環境保全事業の助成

 イ 税制上の措置等

 平成19年度税制改正において、[1]低公害車の取得に係る自動車取得税の軽減措置について軽減対象を重点化した上で延長、[2]低公害車用燃料供給設備に係る固定資産税の特例措置の延長、[3]公害防止用設備の特別償却制度について対象設備の見直し等を行った上で延長、[4]再商品化設備等の特別償却制度について対象設備の見直しなどの措置を講じました。


(2)経済的負担

 ア 基本的考え方

 環境への負荷の低減を図るために経済的負担を課す措置については、その具体的措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、廃棄物の抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響及び諸外国の活用事例等につき、調査・研究を進めました。

 平成19年度においては、経済的措置の検討が深められた事例として以下のようなものがあります。

 (ア)環境税の検討状況

 地球温暖化防止のための環境税について、環境省は、平成16年、17年、18年に引き続き、19年も創設要望を提出しました。

 これを受けて、税制改正論議において活発な議論が行われ、政府税制調査会では、平成19年11月の「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」において、「環境税については、国・地方の温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や国際競争力に与える影響、既存エネルギー関係諸税との関係等を十分に踏まえ、総合的に検討していくべき課題である。」と答申しました。

 また、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画において、「地球温暖化防止のための環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題である。」とされています。

 (イ)地方公共団体における環境関連税制の導入の動き

 地方公共団体において、環境関連税の導入の検討が進められています。例えば、産業廃棄物の排出量又は処分量を課税標準とする税について、平成20年3月末現在、28の地方公共団体で条例が制定され施行されました。税収は、主に産業廃棄物の発生抑制、再生、減量、その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てられています。

 また、森林整備等を目的とする税が23県において導入され、今後さらに6県において導入が予定されています。例えば、高知県では、県民税均等割の額に500円を加算し、その税収を森林整備等に充てるために森林環境保全基金を条例により創設するなど、実質的に目的税の性格を持たせたものとなっています。

2 環境配慮型製品の普及等

(1)グリーン購入の推進

 グリーン購入法(図7−8−1)に基づき、国等の各機関では、基本方針に即して平成19年度の環境物品等の調達方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。また、18年度の調達実績を取りまとめ、公表しました。


図7−8−1 グリーン購入法の仕組み

 基本方針に定められた、国等の各機関が特に重点的に環境物品等を調達することにより、環境物品等への市場の転換を推進すべき品目である特定調達品目及びその判断の基準等については、その開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて適宜品目の追加・見直しを行っていくこととしています。平成19年度においても20年2月に基本方針の変更(変更後、特定調達品目は18分野237品目)について閣議決定しました。

 地方公共団体については、すべての都道府県、政令指定都市が調達の方針を作成してグリーン購入に取り組んでいます。その取組をさらに促すため、基本方針の変更について、地方公共団体を対象とした説明会を全国10か所において開催しました。

 グリーン購入の推進のためには、各地域において行政、地元の事業者、住民等によるネットワークが組織されることが重要です。そこで、グリーン購入地域ネットワークの構築を推進するために、地方公共団体、消費者、事業者等に対し、情報提供や啓発のためのセミナーを開催しました。また、環境物品等の情報を購入者に提供するため、製造者等によるグリーン購入法の特定調達物品(基本方針の判断の基準を満たす物品)に関する情報の提供の場として「グリーン購入法特定調達物品情報提供システム」を運用し、定期的に更新しました。さらに、各主体のグリーン購入への取組を推進するため、様々な団体のグリーン購入に関する情報を紹介する「グリーン購入取組事例データベース」を運用し、定期的に更新しました。


(2)環境配慮契約(グリーン契約)

 製品やサービスを購入する際に環境負荷ができるだけ少なくなるようにする契約である環境配慮契約を推進するため、国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号。以下「環境配慮契約法」という)(図7−8−2)が11月に施行されました。環境配慮契約法は、国の各機関や独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体などの公的機関を対象とし、価格だけでなく環境負荷をも考慮した契約を推進するものです。


図7−8−2 環境配慮契約法の構造

 平成19年12月に閣議決定された基本方針では、電力、自動車、ESCO(省エネルギー改修)、建築の4分野における契約について、具体的な環境配慮の仕方や手続について定めています。国及び独立行政法人等は、この基本方針に従って環境配慮契約に取り組む義務があり、機関ごとに契約の締結実績を公表することになります。

 環境配慮契約法及び基本方針の内容について国の地方支分部局、地方公共団体などを対象とした説明会を全国47都道府県で開催しました。


(3)環境ラベリング

 消費者が環境負荷の低い製品を選択する際に適切な情報を入手できるように、環境ラベルその他の手法による情報提供を進めました。日本唯一のタイプI環境ラベル(ISO14024準拠)であるエコマーク制度では、ライフサイクルを考慮した指標に基づく新しい商品類型を整備しており、平成20年3月末現在、エコマーク対象商品類型数は47、認定商品数は5,239となっています。

 事業者の自己宣言による環境主張であるタイプII環境ラベルや民間団体が行う環境ラベル等の情報提供制度を整理、分析して提供する「環境ラベル等データベース」を運用し、定期的に更新しました。また、環境表示を行う事業者及び事業者団体、又は、事業者以外の認定(認証)制度を運用する第三者機関を対象に、グリーン購入を促進させる上で必要な情報提供の在り方等についてまとめた「環境表示ガイドライン」を作成・公表しました。

 購入者に対して製品やサービスの環境情報を定量的に開示するタイプIII環境ラベル(ISO14025準拠)であるエコリーフの普及を進めました。平成20年3月末現在のラベル公開数は、441件となっています。

 さらに、タイプIII環境ラベルのISO14025を基にしたJIS原案を作成しました。

 また、環境物品を国際的に流通させてグリーン購入の取組を推進するためには、各国の環境ラベル制度における基準の共通化等が必要であるため、我が国のエコマークを中心に、各国環境ラベル間の相互認証に関する調査・分析を行いました。


(4)標準化の推進

 日本工業標準調査会(JISC)は、平成19年度、「環境マネジメント−環境コミュニケーション−指針及びその事例」「電気・電子機器の資源再利用指標などの算定及び表示の方法」などの環境JIS制定・改正を行いました。また、環境関連法令等の中での環境JISの位置づけを確認しながら自治体・企業・消費者のグリーン購入における環境JIS活用状況の調査・検討を行いました。


(5)ライフサイクルアセスメント(LCA)

 製品やサービスに関するライフサイクルアセスメントの手法について、投入される資源、エネルギー量と生産される製品及び排出物のデータ収集、定量化などを行うインベントリ分析や、インベントリ分析の結果を各種環境影響カテゴリーに分類し、それを使用して環境影響の大きさと重要度を分析するインパクト評価の手法などの調査・研究の成果を、データベースの運用などにより普及を進めるとともに、全国6か所に地域拠点機関を設け、LCA手法を活用して、企業における環境配慮設計の導入を支援し、環境配慮製品(エコプロダクツ)の開発・市場拡大を促進しました。

3 事業活動への環境配慮の組込みの推進

(1)環境マネジメントシステム

 環境マネジメントシステムについて、情報提供等を行い、幅広い事業者への普及を図りました。特に、取組が遅れている中小企業者への普及を図るため、中小企業者向けに策定された「エコアクション21」(環境活動評価プログラム)について認証取得者へのアンケート調査や意見交換会を行いました。要求事項を定めた国際規格であるISO14001及びこれを翻訳した日本工業規格JISQ14001について、この情報提供等を行うとともに中小企業への環境マネジメントシステムの普及を図るため、環境マネジメントシステムの認証登録を要件とする低利融資制度により、事業者のISO14001認証取得及びそれに伴う環境対策投資の支援等を実施しました。平成20年3月末現在、環境マネジメントシステムISO14001の審査登録件数は約2万件、エコアクション21の審査登録件数は約2千件です。


(2)環境会計

 事業者による効率的かつ効果的な環境保全活動の推進に資する環境会計手法の確立に向けて、環境会計におけるストック概念についての検討を行いました。また、諸外国における環境会計を含めた環境情報開示の動向についての調査を実施しました。このほか、企業経営に役立つ環境管理会計の一手法である、廃棄物削減と生産性向上を同時に実現するマテリアルフローコスト会計を大企業・中小企業へ普及・促進させるため、普及事業の拠点となる事業者団体等におけるセミナー、シンポジウム、研修会の開催、導入実証事業と同会計の普及指導を担う人材育成のためのインターンシップ事業を実施しました。さらに、マテリアルフローコスト会計を国際標準規格とするよう、国際標準化機構(ISO)のTC207(環境マネジメント)に対し、正式に新業務項目提案を行い、平成20年3月、加盟国の投票の結果、同会計の規格化作業の開始が採択されました。


(3)環境報告書

 様々な事業者による環境報告書の作成、公表を促進するため、環境報告書の作成者、利用者、有識者等からなる検討会を開催し、ガイドライン改訂に向けた検討を行い、従来の「環境報告書ガイドライン(2003年版)」と環境関連のデータの集計方法を示した「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン―2002年版―」を統合した「環境報告ガイドライン2007年版 〜持続可能な社会を目指して〜」を策定・公表しました。このほか、環境コミュニケーション大賞による表彰や環境コミュニケーションシンポジウムの開催などにより、環境報告書への取組支援を実施しました。

 また、環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号。以下「環境配慮促進法」という。)に基づいて、環境報告書を作成・公表する義務のある一定の要件を満たした法人(以下「特定事業者」という。)が環境報告書で公表している環境情報をインターネット上に開設している「環境報告書データベース」で容易に比較、検索できるようにしました。また中小企業者が積極的に環境情報を公表できるように、データベースの機能改善を図りました。

 さらに、環境報告ガイドラインの改定に伴い、環境報告書の記載事項について解説した「環境報告書の記載事項等に関する手引き」や、自己評価を行うための「環境報告書の自己評価に関する手引き」を見直し、環境報告書の信頼性の向上に努めました(図7−8−3)。


図7−8−3 環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律の概要


(4)公害防止管理者制度

 工場における公害防止体制を整備するため、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和46年法律第107号)によって一定規模の工場に公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する公害防止管理者等の選任が義務付けられており、約2万の特定工場において公害防止組織の整備が図られています。

 同法に基づく公害防止管理者等の資格取得のために国家試験が、昭和46年度以降毎年実施されており、平成19年度の合格者数は3,132人、これまでの延べ合格者数は30万7,929人です。

 また、国家試験のほかに、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者が公害防止管理者等の資格を取得するには、資格認定講習を修了する方法があり、平成18年度の修了者数は2,452人、これまでの修了者数は24万8,844人です。


(5)公害防止体制の促進

 平成19年3月に取りまとめた「公害防止に関する環境管理の在り方」に示した、公害防止に資する環境管理を事業者が実効ある形で実践するための行動指針である「公害防止ガイドライン」に関して、普及啓発及び産業界の取組状況のフォローアップを行いました。


(6)温室効果ガスの排出量等の定量化等に関する標準化

 温室効果ガスの排出量・除去量の定量化等に関する国際規格(ISO14064-1〜3)が、平成18年3月1日付けで発行されました。事業活動における温室効果ガスの排出量・除去量の定量化等の適正化のため、これらの国際規格を基にしたJIS原案を、19年度に作成しました。


(7)環境コミュニケーションに関する標準化

 各組織が顧客や地域住民等に対して責任のあるパートナーとしての役割を果たすための環境に係るコミュニケーションのプロセスを確実に構築するため、環境コミュニケーションについての国際規格(ISO14063)を基にしたJIS Q 14063を、平成19年6月に制定しました。

4 環境に配慮した投融資の促進

(1)金融のグリーン化

 企業の社会的責任という観点から環境への取組をとらえる傾向が高まっていることを受けて、金融のグリーン化の促進を目的として、環境に配慮した投融資の実態を把握すべく調査を行い、有識者による検討会を開催し、今後の環境に配慮した投融資の普及のための検討を行いました。


(2)政府関係機関による支援

 環境に配慮した事業活動を行う事業者を支援するため、環境配慮型経営促進事業を日本政策投資銀行の投融資項目とし、環境面からのスクリーニング手法を用いた低利融資を引き続き実施しました。

5 その他環境に配慮した事業活動の促進

 環境保全に資する製品やサービスを提供する環境ビジネスの振興は、環境への負荷の少ない持続可能な社会の実現を目指す上で、極めて重要な役割を果たすものであると同時に、経済の活性化、国際競争力の強化や雇用の確保を図る上でも大きな役割を果たすものです。

 我が国の環境ビジネスの市場・雇用規模について、環境省がOECDの環境分類に基づき調査、推計しています。その結果、平成18年の市場規模は約45兆2千億円、雇用規模は約102万人となっています。

 また、省エネ家電やエコファンドなど、環境保全を考えた消費者の行動が需要を誘発するビジネスも上記の環境ビジネスに加えた、環境誘発型ビジネスの市場・雇用規模については、平成18年の市場規模は約65兆7千億円、雇用規模は約144万人となっています(表7−8−2)。


表7−8−2 環境ビジネス及び環境誘発型ビジネスの市場規模及び雇用規模の現状

 地域における企業、NPO、市民等が連携した環境に配慮したまちづくりに資する「環境コミュニティ・ビジネス」、企業がこれまで製品としていたものをサービス化して提供する「グリーン・サービサイジング事業」を発掘し、その展開を支援しました。

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)物の生産・販売・消費・廃棄

 ア 農林水産業における取組

 環境と調和のとれた農業生産活動を推進するため、農業者が環境保全に向けて最低限取り組むべき農業環境規範の普及・定着を引き続き推進しました。さらに、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)に対する金融上の支援措置や、環境と調和のとれた持続的な農業生産を推進するために必要な共同利用機械・施設、土壌・土層改良等の整備に関する支援を引き続き行いました。

 また、地域でまとまって化学肥料・化学合成農薬の使用を大幅に低減する等の先進的な営農活動への支援に取り組むとともに、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)に基づき、有機農業の推進に関する基本的な方針を策定し、有機農業者等の支援、技術開発等を実施しました。

 畜産業において発生する家畜排せつ物からの環境負荷を低減するため、たい肥化施設等の施設整備を推進し、家畜排せつ物法に基づく適正な管理を確保するとともに、たい肥化による農業利用やエネルギー利用等の一層の推進を図りました。

 森林・林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を推進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理、二酸化炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材利用の推進に引き続き努めました。

 水産業においては、持続的な漁業生産等を図るため、適地での種苗放流による効率的な増殖の取組を支援するとともに、漁業管理制度の的確な運用に加え、漁業者による水産資源の自主的な管理や資源回復計画に基づく取組を支援しました。また、沿岸域の藻場干潟の造成等、生育環境の改善を実施しました。養殖業については、持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)に基づく漁協等による養殖漁場の漁場改善計画の作成を推進するとともに、養殖による環境負荷低減技術の開発を進めました。


 イ 製造・流通業における取組

 製造・流通業に対しては、適切な指導を行ったほか、省資源・再資源化推進のための環境整備を行いました。また、中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援しました。

 食品産業に対しては、環境情報の提供を行うとともに、自主行動計画の策定を推進しました。また、容器包装リサイクル対策を行うとともに、改正食品リサイクル法制度の普及啓発、食品廃棄物を含むバイオマス利活用推進を図ろうとする地域に対する食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入を図りました。

 また、建築物の居住性(室内環境)の向上と省エネルギー対策を始めとする環境負荷の低減等を、総合的な環境性能として一体的に評価を行い、結果を分かりやすい指標として提示する建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)について、建築物のライフサイクルに対応した評価ツールや戸建住宅の環境性能評価システム等の開発・普及を推進しました。


(2)エネルギーの供給と消費

 環境への負荷の少ないエネルギー供給構造を形成するため、発電部門、都市ガス製造部門等のエネルギー転換事業部門におけるエネルギー効率の向上や、環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を積極的に進め、次のような取組を実施しました。

 産業用ボイラー等の燃料を石油・石炭等から環境負荷の少ない天然ガスへ転換する事業者への支援策を講じました。太陽光や風力、バイオマス等の新エネルギーの低コスト化・高効率化のための技術開発・実証試験や、民間事業者や地方公共団体等が新エネルギー設備を設置する際の補助を通じて導入促進等の支援措置を講じました。また、将来の水素社会の実現に向けて、革新的なエネルギー高度利用技術である燃料電池や水素エネルギー利用技術関連の研究開発と併せて、規制の見直しの検討や基準・標準の設備に向けた研究を行いました。さらに、電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定量以上利用することを義務付けるRPS法の着実な運用等を通じて電力分野における新エネルギー導入の拡大に努めました。

 原子力については、供給安定性等エネルギー政策の観点のみならず、発電過程でCO2を排出することがなく、地球温暖化対策に資することから、エネルギー基本計画においても、安全の確保を大前提に、国民の理解を得つつ、核燃料サイクルを含め、原子力発電を基幹電源として推進することとしています。また、世界的にも原子力発電を見直す「原子力ルネッサンス」の動きが拡大しています。こうした中、原子力に逆風が吹く厳しい時代も着実に原子力発電所の建設を実施してきた日本に、世界的な原子力平和利用拡大への貢献が求められています。

 平成17年に閣議決定された「原子力政策大綱」では、エネルギー安定供給や地球温暖化対策に貢献している原子力発電について、2030年以降も総発電電力量の30〜40%程度以上を担うことを目指す等の基本方針が示されています。その実現に向けた政策枠組みと具体的なアクションとして、18年8月に、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会において、核燃料サイクルを含む原子力発電の推進を、エネルギー安全保障の確立と地球環境問題を一体的に解決する要と位置付けた「原子力立国計画」を策定し、19年3月に改訂された「エネルギー基本計画」の一部として位置付けられ、閣議決定されました。

 具体的には、平成18年4月には、30年振りに原子力発電所建設再開の方針に転じたアメリカとの間で、「日米原子力エネルギー共同行動計画」を締結しました。また、「国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)」の閣僚級会合が19年5月及び9月に開催され、高速炉や中小型炉、サイクル技術を含む技術協力等について議論しました。また、原子力の安全で平和的な利用拡大を目的に、原子力導入予定国(ベトナム、インドネシア、カザフスタン)に対し、原子炉導入基盤整備支援を行いました。4月末には、甘利経済産業大臣を始めとした総勢約150名の官民使節団でカザフスタンを訪問し、日本のウラン需要の3〜4割の権益を獲得するなど、日本型の資源外交を実施しました。さらに、次世代軽水炉開発のフィージビリティ・スタディ、高速増殖炉技術や核燃料サイクル技術の着実な進展、原子力人材の育成、放射性廃棄物対策の強化等を実施しました。

 省エネルギー対策については、重点的な取組として、以下のような施策を講じました。

 石油ショック以降、エネルギー消費増加の著しい業務・家庭部門の省エネルギー対策を強化するため、総合資源エネルギー調査会において、今後の省エネルギー対策の方向性について取りまとめを行い、また、平成18年4月に施行されたエネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)の一部改正法の着実な運用等を通じてエネルギー管理の徹底を図りました。さらに、産業部門において特に高い省エネルギー効果が期待され、費用対効果が高い省エネルギー設備に対する支援を行うとともに、民生部門については、高効率給湯器等優れた省エネルギー設備機器の導入等への支援を行いました。さらに、自動車や家電等のトップランナー基準の対象機器の拡大・基準の見直し、家電の省エネルギー性能を表す表示制度の普及を行いました。また、家庭部門の省エネルギー推進を促すため経済産業省と環境省の協力の下、家電メーカー、小売事業者及び消費者団体など関係者が連携しながら省エネ家電普及促進フォーラムを設立し、省エネルギー家電の普及を促進すると同時に、省エネルギー性能が高くかつ健康で快適な住宅の普及を図るためにロハスなハウス「ロ・ハウス構想」を経済産業省、国土交通省、環境省の3省で検討するなど、省エネルギーへの取組を国民運動として展開しました。さらに、2030年に向けた「省エネルギー技術戦略2007」の策定等を実施しました。

 さらに、エネルギー等の特別会計のグリーン化を促進し、新エネルギー対策、省エネルギー対策、京都メカニズムの活用等の取組を推進しました。


(3)運輸・交通

 運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス規制の強化を着実に実施しました。自動車NOx・PM法に基づく自動車使用の合理化等の指導を実施しました。また、排出ガス低減性能の高い自動車の普及及び自動車NOx・PM法の対策地域内における同法に基づく排出基準に適合した自動車の使用を促進するため、排出基準に適合している全国のトラック・バス等に対し「自動車NOx・PM法適合車ステッカー」の貼付を開始しました。12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等、大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施しました。

 ア 低公害車の開発等

 次世代低公害車の技術開発としては、ディーゼルエンジンの高い熱効率を維持したまま排出ガスの低減を図ることを目的とした予混合圧縮燃焼エンジン技術、革新的後処理システム技術の開発を進めるとともに、低公害性の抜本的な改良を目指すジメチルエーテル自動車、次世代ハイブリッド自動車、大型CNG自動車、従来の大型ディーゼルエンジンよりも排出ガスを大幅に低減したスーパークリーンディーゼル車さらにLNG、FTD(合成軽油)及び水素を燃料とする自動車の開発を進め、公道走行試験等を実施しました。また、燃料電池自動車について、世界に先駆けた早期実用化を図るため、燃料供給から自動車走行まで一貫した大規模な公道走行実証実験を実施し、航続距離延長に資する高圧水素ステーションの検討を行いました。さらに、自動車税のグリーン化や低公害車に対する自動車取得税の軽減措置等の税制上の特例措置を講じ、低公害車の更なる普及促進を図りました。

 エコドライブについては、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」の6つのアクションの一つに盛り込まれており、その普及を図りました。また、交通の方法に関する教則により、アイドリングストップの普及啓発を図りました。

 イ 交通管理

 新交通管理システムUTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞、旅行時間等の交通情報を迅速かつ的確に提供しました。また、交通公害低減システムEPMS)を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用しました。さらに、3メディア対応型道路交通情報通信システムVICS)車載機の導入・普及等を積極的に推進しました。

 また、都市部を中心に各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システムPTPS)の整備等を推進しました。また、都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制を見直し、平成18年6月1日から施行された新たな駐車対策法制による違法駐車の取締りの強化、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の運用、違法駐車防止条例の制定への協力等のハード・ソフト一体となった駐車対策を推進しました。

 ウ グリーン物流の実現

 効率的で環境にやさしい物流(グリーン物流)の実現を目指すため、平成17年11月に策定された「総合物流施策大綱(2005-2009)」においても、物流に関わるさまざまな関係者が連携して地球環境問題に適切に対応することが重要な課題とされています。

 そのため、「グリーン物流パートナーシップ会議」を活用し、事業者の連携・協働による取組に対して補助金交付等の支援を行い、グリーン物流の実現を図るとともに、これまでの事業のうち、特に優れた取組の事業者に経済産業大臣表彰、国土交通大臣表彰を行いました。

 また、物流の総合的、効率的な実施に対する支援法である流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)に基づき、施行から19年度末までに89件の総合効率化計画を認定しました。

 鉄道においては、二酸化炭素排出量の少ない輸送手段である鉄道貨物輸送へのモーダルシフトを推進するため、輸送需要の多い東京・福岡間について、山陽線に引き続き、北九州・福岡間の輸送力増強事業の推進を図りました。環境負荷低減の取組に対する消費者や企業の意識の向上のために、鉄道貨物輸送による環境負荷低減に積極的に取り組んでいる企業や商品を認定する「エコレールマーク」制度については、19年12月末までに商品17件、企業37件を認定しました。

 エ 公共交通機関利用の促進

 自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進するため、バスを中心としたまちづくりを行うオムニバスタウンの整備推進、バス・鉄道共通ICカードの普及促進、バスロケーションシステムの普及促進、ノンステップバスの導入促進等、バスの利用促進策を講じました。また、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行う一方、三大都市圏における都市鉄道新線の整備、複々線化等の輸送力増強による混雑緩和や、速達性の向上を図りました。さらに、貨物線の旅客線化、駅施設や線路施設の改良などにより既存ストックを有効活用するとともに、乗継円滑化等に対する支援措置を講じることにより利用者利便の向上策を講じました。

 また、「公共交通利用推進等マネジメント協議会」を通じて、低公害バス等の活用による通勤交通の公共交通利用転換、カーシェアリング推進等の交通サービスの需要側における取組を促進しました。

 オ ESTの普及展開

 公共交通機関の利用を促進し、自家用自動車に過度に依存しないなど、環境的に持続可能な交通(EST)の実現を目指す先導的な地域の取組に対して集中的に支援策を講じる「ESTモデル事業」を27地域で実施するとともに、その成果を踏まえ、今後の普及展開の在り方についての検討を進めました。


(4)情報通信の活用

 テレワーク、テレビ会議、高度道路交通システムITS)、電子商取引など、様々な情報通信システムが普及することにより、交通の代替、交通流の円滑化、生産・流通の効率化やペーパーレス化などを通じて大きな環境負荷の低減効果が期待できます。

 テレワークについては、2010年までにテレワーカーを就業者人口の2割とする目標の実現に向けて、平成19年5月に「テレワーク人口倍増アクションプラン」を策定し、政府一体となってテレワークの普及を推進しており、テレワークの普及推進のための実証実験やテレワーク環境整備税制の実施、全国各地で普及啓発セミナーを開催するなど、アクションプランの着実・迅速な実施に取り組みました。また、国家公務員のテレワークについても、アクションプランに沿って、各府省で試行が行われ、総務省においては本省勤務の全職員に対象を拡大するなど本格導入が推進されました。

 また、情報通信技術(ICT)が地球温暖化に与える影響をプラス面、マイナス面の双方から具体化するとともに、国際的なレベルでの地球温暖化問題への対応に資するICT政策について検討するため、平成19年9月から「地球温暖化問題への対応に向けたICT政策に関する研究会」を開催しました。



前ページ 目次 次ページ