全国会議

第二回全国会議レポート

平成21年9月28日、29日の2日間にわたり第2回全国会議が開催されました。 本事業に関わる自治体担当者や選定された設計者、環境省担当者、環境省専門家、事務局担当者などが 一堂に会し、中間報告として各自治体発表や今後の協議などが行われました。

●1日目(9月28日)
20の自治体の各提案の発表では、高山市と飯田市が 基本設計の内容の発表とそれに対する環境省専門家 等からのレビューを行い、その他18自治体は提案の発 表と環境省専門家との意見交換が行われました。
環境省専門家からは、エコハウス事業の3つのテーマである
・環境基本性能の確保
・自然・再生可能エネルギー活用
・エコライフスタイルと住まい方
のほか、地域らしさの表現や、エコハウスの性能や効果についての検証、アピール等に関する要望が出されました。

◇設計のレビュー

■ 高山市     発表者:脇本敏雄(脇本設計)
【評価】 東側の窓から自然採光、日のあたる東側に家庭 菜園を設けるなど、太陽光の当たり方に合わせた建物配置 やレイアウト。
【提案】 ペレットストーブによる熱を床下の蓄熱層に貯める 方式の全館暖房が計画されており、暖気のデザインを目に見える形で展示してはどうか。
【課題】 街並みを考慮した車庫入口のシャッターのデザインなど、ファサードデザインにも力を入れて地域らしさを出すこと、ペレットストーブ利用の蓄熱暖房、軒先融雪システムのエネルギー計測の実施。

■ 飯田市     発表者:新井 優(新井建築工房+設計同人NEXT)
【評価】 建物を分節して小さく見せたり、裏界線のコーナーに広場を設けているなどプランが考慮されている点。
【課題】 メイン通りの交差点に人を誘い込む仕掛けの必要性 、高気密高断熱、OMソーラーと太陽光発電だけではなく、地元の顔になるようなエコハウスとはどんなものかというプロモーション。

設計の発表のようす

会場のようす

◇設計の発表に対する環境省専門家の意見

■ 下川町     発表者:櫻井百子(アトリエmomo)
【評価】 木質断熱材でQ値0.86を目指す提案であること。
【課題】 地中熱利用ヒートポンプの効果の検証と高断熱に ついて宿泊体験等でのアピール。

■ 美幌町     発表者:堀尾 浩(堀尾浩建築設計事務所)
【評価】 4世代が暮らすという多世代型住宅の提案。
【課題】 サステナビリティーとして、4世代の移り変わりのストー リーを見せる工夫。

■ 飯舘村     発表者:豊田善幸(豊田設計事務所)
【評価】 敷地を大きく捉えた、農家住宅らしいチャレンジ。
【課題】 排水処理の有効性の確認、床下等を利用した換気システムの検討、半農半Xのライフスタイルが素敵であるという認識を導くアピールの必要性。

■ 矢板市     発表者:永田英雄((株)フケタ設計)
【評価】 車庫から個室までつながっている土間が特徴的。
【課題】 ファンの選定、ダクトの径を太くする等、普及の可能性の追求。地域に根付いた良い家の実現。

■ 太田市     発表者:須田睿一((株)須田建築計画工房)
【課題】 敷地の高低差を利用した半地下空間に蓄熱、調湿機能を持たせるなど、実験的試みの有効性の検証。

■ 山形県     発表者:水戸部裕行((株)羽田設計事務所)
【課題】 ペレットボイラーについて、普及可能なシステムの模索と原単位(共通の単位)での効果算定を行うこと。テラスに木陰や水場など人が集まる仕掛けの導入。

■ 石川県     発表者:藤島弘美((株)金沢計画研究所)
【課題】 リビング・ダイニングの西日対策。φ200のクールチュー ブの結露対策として、釜場や熱湯消毒可能な仕掛けの検討。地元企業の技術成果を検証しながら、作業を進めて欲しい。

■ 都留市     発表者:奥村一利((株)馬場設計)
【評価】 戸別にエネルギー生産できる点。
【課題】 住宅用水力発電の可能性の追求、太陽熱温水パネルと併用する給湯器をヒートポンプ式とすること。溶岩はサイディングだけではなく、ボリュームを生かした利用の検討。

■ 山梨市     発表者:星野正男((有)メイ建築工房)
【課題】 自然風の利用という提案に、夜でも安心して開けておける防犯対策の検討。

■ 浜松市     発表者:藤田昌弘((有)住環境研究所)
【課題】 提案されたソーラーシステムが、どの程度採熱できるのかの予測。給湯は厳格な評価基準があるので、それに沿った評 価検討を行うこと。

■ 近江八幡市  発表者:片淵 良((株)片淵建築事務所)
【課題】 湧き水の建築的な利用、水のポテンシャルの目で見える形での表現。土間空間は地下水のみで冷却するだけでなく、日射遮蔽材の使用検討について。

■ 豊岡市     発表者:吉村雅夫((株)いるか設計集団)
【課題】 基礎コンクリートに蓄熱する計画は、木炭が断熱材として効いてくる恐れがある、木炭の効果と土間コンクリートの蓄熱効果のバランスを見極めること。空気の流れ等を精査して欲しい。

■ 備前市     発表者:岸本泰三(岸本泰三建築設計室)
【評価】 きれいな田の字プラン。
【課題】 駐車場が木陰になるような配慮、玄関の日射遮蔽、トップライト、小屋裏通気、室内排気の納まりについての検討。

■ 高知県     発表者:細木 茂((株)細木建築研究所)
【課題】 屋根と床の断熱のバランスの再考、高床式の涼しい空気の取り込み方の工夫、南国の住まいのあり方の提案、採光(光のみ)、日照(直射光・全天光)、日射(直射光)の違いを明確にすること。設備システムの整理。

■ 北九州市    発表者:牧 敦司((株)醇建築まちづくり研究所)
【評価】 南の真ん中設けられた階段は、空気の流れを調整し、家族の交流を促進する仕掛けになる。
【課題】 空気の流れ、気温、換気の状況などの見える化、ミュージアムとは異なるアプローチ、エネルギーが削減できるというだけでなく、身をもって体感できる仕掛けの設置、西日対策等。

■ 水俣市     発表者:古川 保(すまい塾古川設計室(有))
【評価】 暑苦しくなく、すがすがしい空間であり、ユニークな屋根断熱材にカンナクズの利用や冬の浴室の湿気を居室内に呼び込む試み等。
【課題】 夏場に昼間室内温度が30℃を超えず、エアコンなしで過ごせる住まいになること。

■ 豊後高田市その1  発表者:徳永敬之(徳永敬之設計工房)
【課題】 自然の森を維持する樹木間隔での15m植栽、床の表面温度の維持(理想は22~23℃)、給湯システムの単純化、池の前の壁に風穴を開けて低い位置で通風を得る工夫。

■ 豊後高田市その2  発表者:安藤 剛(安藤剛設計室)
【評価】 小さな環境世界のなかで、自給自足の生活を目指し、基本性能が練られている。
【課題】 アプローチ空間の太陽の照り返しを防ぐ施し、空気の流れを工夫したエアコンのない家の実現。

■ 宮古島市  発表者:伊志嶺敏子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
【評価】 住まい手へのメッセージ性、作り手も新しいことにチャレンジしている理想的なプロジェクトである点。
【課題】 広くアピールすること、これからの沖縄地方の住まい方を提 案できるエコハウスになること。屋外テラス上部のフラット屋根の断熱が遮熱塗料だけでは不十分、耐風性能は建物だけなく防風林などの措置などの検討。

●2日目(9月29日)
2日目は午前に、環境省、地域窓口を含めた事務局、 自治体関係者の間で事業推進上の相談、環境省へ の相談、事務局への相談が行われ、第2回目の全国 会議は終了となりました。

基本設計レビュー(高山市、飯田市)
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設計の発表(下川町、美幌町、山形県、飯舘村、矢板市、太田市、石川県、都留市、山梨市)
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設計の発表(浜松市、近江八幡市、豊岡市、備前市、高知県、北九州市、水俣市、豊後高田市、宮古島市)
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第一回全国会議レポート

平成21年5月20日、21日の二日間にわたり、環境省エコハウスモデル事業のキックオフイベントとして、第一回全国会議が開催されました。会議では、本事業に取り組むことになった参加自治体が一堂に会し、事業の方向性や内容の確認を行いました。

●1日目(5月20日)
◇地域選定審査結果の報告
20の自治体の選定にあたった地域選定審査委員の中から、三井所清典氏、中村勉氏、真部保良氏が出席し、地域選定の報告が行われました。北は北海道下川町から南は沖縄県宮古島市まで、それぞれの地域の選定理由と、今後のエコハウス建設に向けてのアドバイスが述べられました。
主な地域選定の理由としては、地域特有の自然エネルギーの活用や素材、工法の活用など、エコハウスになくてはならない地域性がある提案や、環境教育に力を入れて取り組む試み、地域の大学との連携、エコハウスの継続的な更新など、継続という視点が謳われている提案が高く評価されたことが挙げられました。
また、エコハウスは、省エネルギーや自然エネルギーを活用することを基本とした上で、地域の特色をもったものでなければならないこと、エコハウスが地域に根付くためには、多くの地域の人が関わり、取組を続けていくことが大切であることが語られました。

地域選定審査の報告
中村勉氏によるレクチャー

◇エコハウスの基本に関するレクチャー
続いて、地域選定審査委員及び本事業の事務局を務めるJIA環境行動ラボの代表の中村勉氏より、エコハウスの基本についてのレクチャーがありました。家庭部門からのCO2排出量が増え続けている中で、本事業の社会的背景とそれに対する様々な取り組みや、住宅の環境性能の評価方法について説明が行われました。また、本事業の3つのテーマである「環境基本性能の確保」をベースとし「自然・再生可能エネルギー活用」を取り入れ「エコライフスタイルと住まい方」を考えるといった、エコハウスの構想の組み立てについて語られました。

◇事務局からのレクチャー
次のレクチャーにおいては、事務局より事業の流れ、勉強会、設計者選定、施工者選定などについての説明が行われました。その中で、この事業の特徴として、設計者選定に関しては、環境配慮型プロポーザル方式(21世紀環境共生型モデル住宅に係る技術提案を求め、設計者の実施体制等を総合的に勘案して最も優れた技術提案を行ったものを選定する方式)によることとし、提案の評価は価格ではなく、
・「地域性」と「省エネ性」の両輪が備わっているかどうか
・「地域性」は気候・風土、敷地周辺の微気候をどのように解釈して、快適で長寿命の住宅に結び付けようとしているか
・「省エネ性」の実現では、事業の3つのテーマに沿った具体的な内容となっているか
を問うという姿勢が説明されました。 また、施工者選定に関しては、可能な限り総合評価落札方式(環境に配慮した施工に係る技術提案及び価格を総合的に評価して選定する方式)を選択するよう提案があり、その選定方式のための具体的方法の説明がなされました。

●2日目(5月21日)
◇自立循環型住宅セミナー
2日目には、本事業で行われる勉強会の中の2本柱である「省エネ性」と「地域性」のうち、「省エネ性」の基本を学ぶことを目的として、自立循環型住宅セミナーが自治体の担当者を対象に行われました。
自立循環型住宅とは、与えられた敷地や家族形態などの条件のもとで極力自然エネルギーを活用し、居住性や利便性を向上させつつ、居住時のエネルギー消費量(二酸化炭素排出量)を、2000年頃の標準的な住宅と比較して半減することが可能な住宅をいいます。2010年までに十分実用化できる住宅として、国土技術政策総合研究所と独立行政法人建築研究所により、平成13年度から自立循環型住宅の研究・開発プロジェクトとして進められてきたものです。

自立循環型住宅は、
●自然風の利用 ●昼光利用 ●太陽光発電
●日射熱の利用 ●太陽熱給湯 ●断熱外皮計画
●日射遮蔽手法 ●暖冷房設備計画 ●換気設備計画
●給湯設備計画 ●照明設備計画
●高効率家電機器の導入 ●水と生ゴミの処理と効率的利用
の13の要素技術が相互に関係し合うことで、期待される省エネルギー性を十分に発揮させることができるという内容です。
セミナーでは、これらの相互関係と、関連する設計上の注意事項などが解説され、エコハウスの基本事項の共通イメージを自治体間で共有することができる場となりました。 今後、多くの地域における第1回勉強会として、この自立循環型住宅セミナーが行われる予定です。

自立循環型住宅セミナー
個別面談

◇勉強会のガイダンス、窓口担当者との個別面談
次に勉強会についてのガイダンスが行われました。エコハウスのモデルハウスを設計・施工・活用する過程で、エコハウスに対する知識や地域性を生かす設計・技術を地域で共有し、快適で省エネ性に優れた住宅のメリットを体験・体感することにより、普及体制を強化することが本事業の趣旨・目的となっていることが、再度確認されました。
最後に各自治体担当者と事務局の窓口担当者が、今後の事業の進め方について個別の面談をして、第一回全国会議は終了となりました。


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