知床

保護管理

知床については、世界遺産委員会から、エゾシカ対策、観光管理、海域管理計画の策定、サケ類へのダムによる影響とその対策のためのサケ科魚類管理計画の策定などが課題として指摘され、対応を求められています。このため、科学委員会の下に河川工作物アドバイザー会議、海域ワーキンググループ(以下WG)、エゾシカ・陸上生態系WG、適正利用・エコツーリズムWG などを設置して対応の検討を進めています。

遺産地域内の保護地域の面積
知床国立公園
特別保護地区: 23,526 ha
特別地域: 15,110 ha
  遠音別岳原生自然環境保全地域: 1,895 ha
(環境省所管の保護地域)

取り組み事例

エゾシカ対策

エゾシカ対策

近年、遺産地域内ではエゾシカが激増し、植生変化などの生態系への影響が出ています。影響を軽減するために、環境省をはじめとする国と関係する地方自治体は、「知床半島エゾシカ保護管理計画」などに基づき、エゾシカ・陸上生態系WG から助言を得つつ、連携してエゾシカの捕獲によって個体数調整を行っています。個体数調整を実施している地域では、植生が徐々に回復していることが確認されています。

海域の生物多様性の維持と漁業活動の両立

海域の生物多様性の維持と漁業活動の両立

平成19 年に生態系保全と持続的な漁業との共存を目指す「多利用型統合的海域管理計画」が環境省と北海道によって策定されました。この計画によって、「漁業者による自主規制」を遺産地域の管理に組み込み、知床の海の生物多様性を維持しながら地域の生業である漁業を両立させる管理方式が実現されました。この管理方式は、遺産地域の新しい管理手法のモデル「知床方式」として世界的にも高く評価されています。

河川工作物の改良

河川工作物の改良

知床の一部の河川では、人工的に作られた治山ダムなどの河川工作物によってサケ科魚類が産卵のために上流に遡ることができなくなっていました。そこで、河川工作物WG(現在は河川工作物アドバイザー会議)の助言のもと、改良が適当と判断された13 基の河川工作物について魚道の設置などの改良工事が実施されました。その結果、工作物上流での産卵範囲が拡大し、産卵数も増加したことが報告されています。

高架木道と利用調整地区制度

高架木道と利用調整地区制度

知床五湖の遊歩道では、ヒグマ出没による度重なる閉鎖や、混雑に伴う植生への悪影響などの課題がありました。これらを解決するために、平成23 年にヒグマと接触する危険がなく安全に散策できる高架木道を設置しました。また、平成23 年からは自然公園法に基づく利用調整地区制度を適用し、混雑時期には地上歩道への立入を認定制とすることで植生への影響の低減を図り、自然景観や生物多様性を維持しています。

知床エコツーリズム戦略

知床エコツーリズム戦略

知床における観光利用の推進にあたっての将来目標とそれを達成するための方法を遺産地域の全ての関係者が共有することを目的として、平成25 年に知床世界自然遺産地域適正利用・エコツーリズム検討会議が「知床エコツーリズム戦略」を作成しました。この戦略のもとでは、新しい観光利用や新たなルール作りといった提案を誰でも自由に行うことができるようになるため、より一層開かれた地域主導の取り組みが推進されます。

ヒグマと共に生きるために

近年、人を見ても逃げないヒグマが多数見られ、カメラマンなどの異常接近や観光客による餌付けなどによるトラブルが危惧されています。一度人間の与えた餌を食べたヒグマは、どんなに追い払ってもその味を忘れません。写真を撮りに近づく、残飯などのゴミを放置する、餌を与えるなどの行為は厳に慎む必要があります。

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