白神山地

顕著な普遍的価値

(ix) 生態系
東アジアで最大の原生的なブナ林で、世界の他の地域のブナ林よりも多様性に富んでいる

生き残った原生的な森

白神山地には、これまで人為的な開発が入らず、東アジア最大の原生的なブナ林が広がっています。
ブナ林はかつて地球が今よりも温暖だった時代には北極周辺に分布し、今では氷河期の生き残り(遺存種)といわれるアオモリマンテマやツガルミセバヤなど、ブナ以外の多様な植物も生育していました。氷河期に入ると気候の寒冷化に対応してブナ林が南へと移動しましたが、この際、ヨーロッパなど世界の多くの地域ではブナ以外の植物は東西に広がる山岳に妨げられて南下することができず、新しい場所に速やかに進出できるブナだけが南下したため、ブナ林の植生が単純化していきました。しかし、日本では、分布の南下を妨げる山岳がなかったため、北極周辺での植物群落の種組成をほぼ維持したまま南下しました。そのため、白神山地は約3,000万年前に北極周辺に分布していた当時に近い特異なブナ林が維持されています。

生き残った原始の森

森の博物館

白神山地は冬には日本海側の湿った空気を受けるため、世界的に見ても雪が非常に多く、ブナ林の地面には、チシマザサに代表されるような、多雪環境を反映した植生がみられます。また、アオモリマンテマなどの地域固有の植物をはじめ、540 種以上の植物が生育しています。白神山地には、イヌワシやクマゲラをはじめとする希少な鳥類や、カモシカやツキノワグマをはじめ、35 種の哺乳類、94 種の鳥類、約2,200 種の昆虫類などが生息しています。白神山地のブナ林は、我が国の固有種であるブナを中心とした森林生態系の博物館と言えるでしょう。

動画
提供/UNESCO世界遺産センター

森の博物館

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