小笠原諸島

保護管理

小笠原諸島では、生態系に関する課題を解決するための具体的な行動計画を示した「生態系保全アクションプラン」を国、東京都、小笠原村が作成して、保全管理を進めています。
小笠原諸島はその固有種の多さが世界的に評価されていますが、小笠原固有の生物の多くは、後から小笠原に人為的に導入された生物(外来生物)から身を守る方法を知らず、外来生物に食べられたり、生活の場を奪われ、急激にその数を減らしています。
小笠原諸島の世界遺産としての価値を維持するためには、外来種対策や固有種等の希少種の保護を進めることが、極めて重要です。このため、科学委員会の助言のもとで、動植物の相互のかかわりを考えて現状を評価し、随時、対策を見直す管理(順応的管理)が行われています。

世界遺産登録区域内の保護地域の面積
小笠原国立公園
特別保護地区: 4,934 ha
特別地域: 996 ha
  南硫黄島原生自然環境保全地域: 355 ha
(環境省所管の保護地域)

取り組み事例

グリーンアノール(外来種)

オガサワラシジミ

固有の昆虫類の回復のための対策

特定外来生物であるグリーンアノールは、父島や母島の全域に分布しており、オガサワラシジミなどの希少昆虫を減少させるなど、捕食により固有の昆虫類に甚大な影響を及ぼしています。2013 年には在来昆虫相が数多く残る兄島でも侵入が確認され、オガサワラハンミョウなどの固有の昆虫類への影響が懸念されています。
世界自然遺産の生態系を守るため、母島の新夕日ヶ丘では、アノールの侵入防止柵を設置し、柵内部でのアノールの集中的な防除を進めた結果、昆虫相の回復が見られています。また、兄島では、島を横断するアノール柵の設置や粘着トラップによる捕獲を実施してアノールの生息域の拡大を抑止するとともに、アノールの侵入状況や昆虫類の生息状況をモニタリングして、固有の昆虫類を保全してゆくことを目指しています。

アカギ(外来種)

ノヤギ侵入防止柵

在来植生回復のための外来種対策

外来植物対策

モクマオウやギンネム、アカギなどの外来植物の繁茂により、日当たりや風当りなどの林内環境が変化するため、在来植物の成長が抑制されてしまいます。また、落ち葉の堆積や日当たりなどの固有昆虫類の生息環境が変化することで、その生息にも影響を与えています。そこで、小笠原諸島では、幹に薬剤を投入して駆除するなどの外来植物除去に向けた取組が実施されています。

ノヤギ対策

ノヤギは固有種を含む植物を食べ、土壌を裸地化させるなど生態系に大きな影響を与えていました。小笠原諸島の無人島では、ノヤギの根絶が達成され、固有の植生の回復が見られているところもあります。現在、ノヤギは父島のみに生息していて、特に希少な固有植物の宝庫である東平地区では、ノヤギの侵入防止柵を設置しています。

ニューギニアヤリガタリクウズムシ(外来種)

泥落としマット

固有陸産貝類の保全対策

小笠原諸島に生息する固有の陸産貝類は、クマネズミ等の外来ネズミ類や外来プラナリア類の食害等により、生息状況が著しく悪化し、絶滅の危機に瀕しています。 これまで、対策として殺鼠剤を用いたクマネズミの排除やプラナリアの侵入防止柵の設置、またプラナリアの拡散防止のための来島者や島民へ靴底洗浄の呼び掛け等が行われてきました。
さらに、環境省では陸産貝類の保全のため、2011 年より父島において室内や屋外飼育施設での飼育(域外保全)を実施しています。2020 年には父島属島の巽島(たつみじま)において、個体群再生のために飼育個体のチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイの野生復帰を行いました。

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