環境省自然環境・生物多様性渡り鳥関連情報

ハクチョウ・カモ類の飛来経路及び移動状況について


ハクチョウ・カモ類の渡りについては、これまで繁殖地と越冬地はわかっているものの、繁殖地からどのような経路を通って越冬地に飛来しているのか、について明らかになっておりませんでした。部分的に、鳥類標識調査により、越冬地である我が国で足環を付けられた個体がロシアなどで捕獲されたことにより、渡りの途中で通過する地点がわかることがある程度でした。

このような中、最近の技術の発展により、人工衛星の送信機を鳥類に装着し経路を把握することができるようになりました(人工衛星を利用した調査)。 環境省は、H17年度から冬鳥を代表するカモ類に送信機を付け飛来経路を追跡することを始め、個体数は限られるものの、我が国で越冬しているカモ類がどのような経路を通って繁殖地へ渡っているか、また、繁殖地からどのような経路で越冬地へ南下するか、が明らかになってきました。

平成23年8月30日、農林水産省高病原性鳥インフルエンザ疫学調査チームの「平成22年度高病原性鳥インフルエンザの発生に係る疫学調査の中間取りまとめ」が発表され、「北方から我が国への渡りの初期(10月)に北海道稚内市で、カモ類の糞からウイルスが分離されていること、家きんでの初発事例が、渡り鳥が多く飛来する湖に面する農場で起こったこと、渡り鳥などの野鳥の感染事例が多いこと等を考慮すると、渡り鳥等の野鳥によって日本へウイルスが持ち込まれた可能性が高い。」と記述されており、渡り鳥の飛来経路への関心が高まってきております。また、我が国における高病原性鳥インフルエンザの発生時期はこれまで秋季から春季であり、渡り鳥の中でも冬鳥の渡りの飛来経路が注目されています。

これらのことから、高病原性鳥インフルエンザの感染経路に関する関連情報として、冬鳥を代表するハクチョウ類及びカモ類の飛来経路の情報を提示することとしています。なお、もちろんのことですが、ここで経路を示すカモ類が高病原性鳥インフルエンザウイルスを運んでいるということを意味するものではありません。

平成23年の移動状況

1.北海道で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況

 北海道で送信機を装着したオオハクチョウ3羽の移動状況を図示しています。
 3羽は2011年4月下旬に越冬地を出発しました。1羽はサハリン、2羽はサハリンとアムール川を経由してそれぞれオホーツク海を越え、ロシア東部に上陸しました。その後、内陸部を北上し、5月上旬から6月上旬にかけてコリマ川流域の湿地帯に到着して春の渡りを終えました。3羽は9月下旬から10月上旬にかけて秋の渡りを開始し、オホーツク海を縦断後、1羽はサハリン、2羽はアムール川河口付近とサハリンを経由してそれぞれ10月中旬に捕獲地に戻ってきました。10月31日の時点で、3羽すべてが捕獲地に滞在しています。


図 北海道で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況(平成23年10月31日現在)

北海道で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況(拡大)図をクリックすると拡大された図が表示されます

※環境省事業「渡り鳥の飛来経路の解明事業」請負者東京大学生物多様性科学研究室より情報提供
※無断転用不可

2.宮城県で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況

 宮城県で送信機を装着したオオハクチョウ1羽の移動状況を図示しています。
 本個体は3月上旬に越冬地を出発して北海道へ渡りました。道東で1ヶ月ほど過ごした後、サハリンを経由して、アムール川下流域まで北上しました。この地域に短期間滞在したのちオホーツク海を越え、ロシア東部に上陸しました。内陸部を北上して5月中旬にインディギルカ川流域の湿地帯に到着して春の渡りを終えました。9月下旬から10月上旬の間に秋の渡りを開始し、オホーツク海を縦断後、10月9日にアムール川河口付近に達しました。10月31日の時点で同地に滞在しています。

図 宮城県で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況(平成23年10月31日現在)

宮城県で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況(拡大)図をクリックすると拡大された図が表示されます

※環境省事業「渡り鳥の飛来経路の解明事業」請負者東京大学生物多様性科学研究室より情報提供
※無断転用不可

3.北海道で送信機を装着したコハクチョウの移動状況

 北海道で送信機を装着したコハクチョウ3羽の移動状況を図示しています。
 新潟県で越冬していた1羽は3月中旬から下旬の間に越冬地を出発して北海道に渡りました。サハリンを経由後オホーツク海を越え、5月中旬にロシア東部に上陸しました。内陸部を北上して6月上旬にロシア北東部の湿地帯に到着して春の渡りを終えました。本個体は9月下旬に秋の渡りを開始し、オホーツク海を縦断後アムール川河口付近を経て、10月下旬に捕獲地に到着しました。10月30日の時点で同地に滞在しています。
 北海道で越冬していた2羽は4月下旬から5月上旬にかけて春の渡りを開始しました。1羽はサハリン、1羽はサハリンとアムール川中流部を経てオホーツク海を縦断しました。サハリン経由の1羽は5月中旬、アムール川経由の1羽は6月上旬にそれぞれロシア・マガダン州に上陸しました。その後内陸部を北上し、6月上旬から下旬にかけてコリマ川河口付近の湿地帯に到着して春の渡りを終えました。2羽は9月下旬から10月上旬にかけて秋の渡りを開始し、10月30日の時点で、1羽はサハリン北東部沿岸、もう1羽はアムール川河口まで南下してきています。


図 北海道で送信機を装着したコハクチョウの移動状況(平成23年10月30日現在)

北海道で送信機を装着したコハクチョウの移動状況(拡大)図をクリックすると拡大された図が表示されます

※環境省事業「渡り鳥の飛来経路の解明事業」請負者東京大学生物多様性科学研究室より情報提供
※無断転用不可

4.千葉県で送信機を装着したオナガガモの移動状況

 千葉県で送信機を装着したオナガガモ1羽の移動状況を図示しています。
 本個体は3月中旬に越冬地を出発しました。福島県北西部を経て4月上旬に北海道に渡り、6月下旬まで風蓮湖周辺で過ごしました。まもなく移動を再開してオホーツク海を越え、カムチャッカ半島西岸を経由して7月中旬にロシア・マガダン州の沿岸部に到着して渡りを終えました。本個体は9月下旬に秋の渡りを開始し、沿岸部でしばらく滞在したあと、10月下旬にサハリン北東部沿岸に到達しました。10月31日の時点で、この付近に滞在しています。


図 千葉県で送信機を装着したオナガガモの移動状況(平成23年10月31日現在)

千葉県で送信機を装着したオナガガモの移動状況(拡大)図をクリックすると拡大された図が表示されます

※環境省事業「渡り鳥の飛来経路の解明事業」請負者東京大学生物多様性科学研究室より情報提供
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平成21年~平成22年の移動状況

平成20年~平成21年の移動状況

平成19年の移動状況