環境省
VOLUME.76
2020年4月・5月号

KEY PERSON INTERVIEW - 動物たちの命を守るために今、私たちができること

KEY PERSON - 廣瀬章宏 さん 公益財団法人日本動物愛護協会 理事・事務局長

 私たち日本動物愛護協会は「動物の命を守る、命の大切さを知ってもらう、社会への提言を行う」の三つを柱に、昭和23年から活動を続けている日本で最も歴史のある動物愛護団体です。おかげさまで動物愛護の精神は、国民のみなさんに徐々に浸透しつつあるようで、殺処分される犬猫の数は年々減少しています。しかし、まだまだ安心はできません。殺処分数は確かに減ってはいるものの、これは犬猫の引き取り・譲渡を行う自治体や民間の保護団体の活動が盛んになったためで、虐待されたり遺棄される犬猫の数は、それほど減っていないのではないでしょうか。
 こうした状況を改善するために2019年法改正が行われ、動物の飼育、販売、遺棄や虐待などに関する新たなルールが定められました。とはいえ、いくら立派なお題目を掲げても、それを実行に移さなければ何も変わりません。動物の命を本気で守ろうと思ったら行政だけでなく、事業者、飼い主、すべての国民が一丸となって「人と動物が共生する社会」の実現に向けてアクションを起こしていく必要があります。
 では、動物たちの命を守るために今、私たちは何をすべきなのでしょう? すでにペットを飼っている人たちに心がけてほしいのが、適正飼養・終生飼養(動物の命が終わるまで責任を持って面倒をみること)の徹底です。ペットが高齢になって介護が必要になってくると「世話が大変だから」「医療費がかかりすぎるから」といった理由で処分を希望する飼い主がいますが、最期までペットに寄り添う覚悟のない人には動物を飼ってほしくありません。
 そうはいっても本人の意思とは関係なく、病気や不慮の事故でペットを飼い続けることが困難になる場合もあります。高齢者が体調を崩して入院し、飼っていたペットが動物管理センターに持ち込まれるケースも最近は増えています。こうした不幸な事態を防ぐために「私にもしものことがあったら、この子の世話をお願いします」と、親戚や近所の人に頼んでおくなど、万一の場合に備えた対策をとっておくことも飼い主としての責任です。
 近年は地震や洪水など自然災害が頻発しているため、災害時にペットの命をどう守るかについても飼い主は考えておかねばなりません。「ペット受け入れ可能な避難所とルートを事前に調べておく」「無駄吠えしないようにしつけておく」「ケージに慣れさせておく」「行方不明になっても再会できるようにマイクロチップや迷子札を装着しておく」「いつものフードや薬を1週間分ほど備蓄しておく」など、日ごろから災害時を想定したしつけや準備を心がけておくことが大切です。
 また、これからペットを飼おうと思っている人たちにもお願いしたいことがあります。飼う前に「自分に動物を飼う資格や覚悟が本当にあるのか?」と問いかけてみて、不安に思った場合は飼うのを待ってほしいのです。せっかく飼い始めたのに飼育を途中で放棄してしまうと、小さな命が不幸になってしまいます。愛するがゆえに飼わないという選択肢もあることをぜひ知っておいてください。迷ったときは「飼い主に必要な10の条件」(下記)を見ながら、チェックしてみることをおすすめします。

飼い主に必要な10の条件

  • 1. 住宅がペットを飼える状況にあること
  • 2. ペットを迎えることに家族全員の同意があること
  • 3. 動物アレルギーの心配がないこと
  • 4. そのペットの寿命まで飼育(終生飼養)する覚悟があること
  • 5. 世話する体力があり、その時間をさけること
  • 6. 高齢になったペットの介護をする心構えがあること
  • 7. 経済的負担を考慮すること
  • 8. 必要なしつけと周囲への配慮ができること
  • 9. 引っ越しや転勤の際にも継続飼養する覚悟があること
  • 10. 飼えなくなった場合の受け皿を考えておくこと

飼い主に心がけてほしいこと

[ 頭数を増やしすぎない ]

一人ひとりが幸せにできるペットの数は限られています。無理な頭数を飼育すると多頭飼育崩壊につながり、飼い主もペットも幸せになれません。

[ 猫は室内飼いが原則 ]

飼い猫を外に出すと、虐待や交通事故、他の猫とのけんかや接触によりけがや病気に感染し命を落とすことも。長く安心して暮らすために室内飼いが原則です。

[ 不妊去勢を済ませておく ]

不必要な繁殖を防ぎ、性的な欲求不満へのストレスから解放され、問題行動も予防。さらに健康面でも、生殖器系の病気(炎症や腫瘍)が軽減されます。

[ 体調管理は飼い主の務め ]

ペットの体調は飼い主がしっかり管理し、定期的に健康診断を受けましょう。

KEYNOTE - 動物を飼うときは、最期まで面倒をみるという覚悟が必要です

廣瀬章宏

1965年生まれ。証券会社に勤務していた時代、自宅の前に捨てられていた子猫を保護したことをきっかけに命の大切さについて考えるようになり、ボランティアとして日本動物愛護協会の活動に参加。2012年に日本動物愛護協会入職。最近では、さだまさし氏を起用して話題を呼んだCM「にゃんぱく宣言」の制作を手掛けた。

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