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世界湿地の日

ポイント!

毎年2月2日は、湿地の保全・回復を呼びかける「世界湿地の日」と国連が定めていて、多くの生き物のすみかとなる湿地を守るキャンペーンが全世界で行われます。2024年は「湿地と人間の幸福(Wetlands and human wellbeing)」をテーマに、講演会や観察会などが開催される予定です。

湿地とは、通年または特定の季節に水に覆われている土地のこと。干潟やマングローブ林といったものが代表的ですが、干潮時に水深が6m以下になる海も含まれるので、サンゴ礁も湿地の一つです。ラムサール条約においては、ダム湖やため池、水田などの人工的な湿地も含まれています。

湿地には全生物のうち40%もの種が生息・生育するといわれていて、湿地を保護することは生物多様性の維持において重要な取り組みです。また、湿地には水を貯め込むことで水害を防ぐといった防災・減災面での機能や、湿地に自生する植物類が炭素を吸収する、自然ろ過された水や食糧となる動植物を供給するなど、さまざまな恩恵があげられます。豊かな湿地生態系は地域住民の憩いや自然学習の場になり、観光客に地域固有の自然を楽しんでもらうなどエコツーリズムに活用することもできます。このように、湿地は人間の生活に不可欠であり、人間の歴史と湿地は密接に関わってきました。つまり、湿地を保全することは、人間の生活の質を向上させることに繋がるのです。

湿地

日本各地で湿地を利用した産業は多く見られます。山形県の大山上池・下池には、夏には池一面に咲くハスの花を目的に、冬には飛来する渡り鳥の観察を目的に多くの人が訪れます。熊本県の荒尾干潟では古くからアサリ漁やノリの養殖が盛んで、名産品として親しまれています。また、絶滅危惧種やレッドリストに掲載された渡り鳥が越冬する場所でもあります。いずれの湿地もボランティア活動や学生の課外活動等によってさまざまな保全の取り組みが行われています。

山形県の大山上池・下池

湿地がもたらすさまざまな恩恵を保全し、持続可能に利用していくため、1971年2月2日に「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」が採択されました。また、1996年にはラムサール条約事務局によって、2月2日が「世界湿地の日」と定められました。しかし、これらの取り組みにも関わらず1970年~2015年の45年の間に世界の湿地の約35%が失われ、今もなお面積が減少しつつあります。このため、2021年8月30日に国連総会によって、改めて2月2日を「世界湿地の日」とする決議が行われ、国際社会においても、湿地保全は重要な取り組みであることが示されました。

「世界湿地の日」には、湿地を保全していくことの大切さを知ってもらうため毎年テーマが選定されており、2023年は「今こそ湿地を再生する時」をテーマに、世界78か国で1,817件、日本国内では23件のイベントが開催されました。2024年は「湿地と人間の幸福(Wetlands and human wellbeing)」をテーマとして、日本国内でもさまざまな講演会や観察会などが開催される予定です。我々の生活に大きな恵みを与える湿地について考え、行動する機会としてみてはいかがでしょうか。

湿地と人間の幸福

湿地は限られた地域にある特別な場所というわけではなく、皆さんの周りにもあります。全国に11箇所ある環境省の水鳥・湿地観察センターなどの拠点施設では、通年でボランティア活動や生き物観察会などを実施しています。ぜひ近くの施設に足を運び、「身近にある湿地」を体験してみてください。

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