2013年10月17日

(再掲)皇居外苑濠の水質と新濠水浄化施設について

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 皇居外苑濠の水質改善は、皇居外苑にとって以前からの大きな課題です。これについては、近年東京都などと連携を図りアオコとの大量発生を解消する取組を進めています。特に、この4月からはこの取組のなかで重要な役割を担う新しい濠水浄化施設の運用が始まりました。
 ここでは、お濠の水質と水質改善の取り組みについて紹介したいと思います。(図面は、クリックすると拡大できます)


1.皇居外苑濠の概要
 旧江戸城には、本丸を中心に幾重にも濠が巡らされていました。皇居外苑には、それらのうち12の濠があり、その中には、皇居を見渡す眺望の美しい桜田濠、サクラの名所として知られる千鳥ケ淵なども含まれています。(写真1参照)


写真1 桜田濠

 かつて外苑濠には、玉川上水からの水が供給されていましたが、昭和40年にはその水供給が停止され、以降は水源をもっぱら雨水に頼る状況になりました。
 一方で、外苑濠には長年にわたり周囲からの落葉等が流れ込むとともに、一定の雨が降ると東京都の合流式下水道から下水が雨水とともに濠に流入する状況が続いてきました。このような中で、外苑濠の水質は徐々に悪化し、夏から秋にかけてアオコの大量発生が見られるようになっています。


写真2 千鳥ケ淵のアオコ


2 これまでの水質対策
 環境省は、以上のような状況を受け、アオコの大量発生の解消を目標として
、濠水質の定期的調査、東京駅地下工事中の湧水の導水(工事実施時に一時的実施)、首都高速からの雨水補給(継続)、発生したアオコの回収などの取組を行ってきました。
 それらの中でも中心的な取組として、平成7年度には、濠水を浄化、循環させる濠水浄化施設を稼働させました。
 この施設は、プラスチック製の特殊な濾過材によってアオコを除去する「循環濾過処理方式」という方式で、一日最大14000トン(実績値)の水を処理する能力があります。


写真3 既設の濠水浄化施設

 外苑濠は、皇居西側の半蔵門付近を分水嶺として、桜田壕→桔梗濠・凱旋濠→日比谷濠の系統と半蔵濠→千鳥ケ淵→大手濠→日比谷濠の系統の2系統に別れています。
 濠水浄化施設は、最下流の日比谷濠付近に設置され、濠から取水し、浄化した水をポンプで上流に送り、桜田壕と半蔵濠に放流しています。放流した水は、そこから下流の濠を巡り、再び日比谷濠に戻ってくることになります。(図1参照)
 既存の浄化施設は、平成7年から平成24年までの18年間、概ね4月から11月の間、運転されてきました。


図1皇居外苑濠の位置及び濠水の系統


3.外苑濠の水質の現状
 濠水浄化施設の稼働により、外苑濠の水質は一定の改善を見せています。
 以下の表1は、既存の濠水浄化施設の稼働(H7)の前後18年間の濠の平均水質を比較したものですが、透明度、COD、クロロフィルa、全窒素、全リンのいずれも改善傾向を示しています。
 また、ここ5年間(H20~24)では、COD、クロロフィルa、全リンが改善を示しているのに対して、全窒素については、水質の悪化が見られます。
 
表1 皇居外苑濠の水質の状況 (※1)



※数値は、8濠(桜田濠、日比谷濠、蛤濠、桔梗濠、清水濠、牛ヶ淵、千鳥ケ淵、半蔵濠)に対して、年4回(2月、5月、8月、11月)実施した水質調査の結果を平均である。
※2 クロロフィルaについては、S56~H6のデータ


 各濠の状況を詳しく見ると、桜田濠、蛤濠などについては水質が改善されアオコの大量発生はほぼ解消されました。
 その一方で、千鳥ケ淵、その下流にある清水濠、大手濠等では水質の改善傾向は見られるものの、依然としてアオコの大量発生が見られる状況が続いています。これは、千鳥ケ淵へ雨天時の合流式下水道からの越流が影響していると考えられています。

 現在の外苑濠の水質については、以下もご覧下さい。

各濠における主要な水質項目の平均値(H20~24年度)



各濠における水質の推移(H20~24年度)





4 新濠水浄化施設について
 環境省は、依然としてアオコの大量発生が見られる状況を改善し、濠の計画的管理を進めるために、平成22年に皇居外苑濠管理方針及び水質改善計画を策定しました。これは、東京都が下水道から濠への越流を平成27年までに原則防止する対策を進めていることを受けたもので、計画に基づき当面実施する対策と下水道対策の効果と併せて平成27年度から数年程度でアオコの大量発生を解消し、その後も必要に応じて中長期的な対策を実施していくこととしています。 
 この当面実施する対策の中でも中心的な対策となるのが、新しい濠水浄化施設の整備です。
 既存の浄化施設は平成7年度から運用され、一定の水質改善を果たしましたが、近年は設備の老朽化等のために機能を充分発揮できない状況が見られました。
 このため、後継となる新しい浄化施設を整備することとし、平成22年度に基本計画を作成、平成24年度末に竣工し、平成25年4月から運転を開始しています。(写真4参照)
 新しい浄化施設は、既存の施設の隣に整備し、濠からの取水、浄化した水の濠への送水などは既存の施設を使用しています。


写真4 新濠水浄化施設


 新しい浄化施設は、高速凝集沈殿方式という方式を採用しています。
 これは、アオコなどの汚れを、凝集剤という薬品でフロックと呼ばれる塊を形成し、それを細かい砂と一緒に沈降させて、きれいな水と分離するという方法です(図2 参照)
 新しい施設は、既存の浄化施設に比べ設備がコンパクトになり、一方で、浄化性能が高く、一日あたり2万tの濠水を浄化することができます。これは、これまでの施設に比べて約40%の向上となっています。
 環境省では、今後、濠水浄化施設の効率的、効果的な運用方法を検討、実施し、都の下水道対策、また、その後の中長期的な対策と併せて濠水質浄化に取り組んでいきます。


図2 新しい濠水浄化施設の仕組み


※本記事は平成25年9月4日に当ホームページに掲載した記事を同内容で再掲したものです。