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アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)の設計
2002年7月29日 エコアジアパネルにて承認
M e n u
背景
目的と基本的な考え方
プロジェクトの概要
推進・管理の枠組み
他の関連プロジェクトとの協力
1. 背景
  1992年の地球サミットにおけるアジェンダ21の採択を契機として、世界の国々、国際機関、NGO等は地球環境問題に対する取組を拡充してきた。しかしながら、地球サミットから10年の年月を経た現在、環境悪化と貧困問題の悪循環は深刻化の一途をたどっており、持続可能な開発という理念の実現にはなおほど遠い。現在世界が求めているのは、まさに持続可能な開発を具体的にどう実現していくか、という問いに対する答えである。

 世界人口の約60%を擁し、さらに今後急速な人口増加と経済発展が見込まれるアジア太平洋地域においても、事態は深刻化している。特にアジア太平洋地域においては、様々な発展段階の国が共存しているため、産業公害による健康への影響、開発による自然資源の劣化、モータリゼーションや人口の都市集中に伴う都市生活型公害の激化、温室効果ガス排出量の増加等の問題が同時に顕在化しつつある。

 このような問題を解決するためには、持続可能な開発への道筋を具体的に提示し、その実施計画を明らかにする必要がある。その第一歩として、政策決定者に対して、持続可能な開発に向けた政策の検討に資する科学的な基盤を提供することを目的として、アジア太平洋地域各国の参画のもと、1993年からエコアジア長期展望プロジェクト(LTPP) が実施されてきた。その成果は2001年10月13~14日に東京で開催されたエコアジア2001で報告された。参加者は、長期展望プロジェクト第二フェーズの最終報告書(案)を承認するとともに、アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)が長期展望プロジェクトの成果を継承することへ期待を表明した。

 APEISは、アジア太平洋地域の持続可能な開発に向けて、長期展望プロジェクトの成果を発展させるという期待を込めて、エコアジア2001で提案された。会議の参加者は、新たなイニシアチブへの大きな期待感を表明するとともに、有意義なプロジェクトにするためのいくつかの提案を行った。それらの提案の内容は、行動指向型の研究、情報の透明性及びキャパシティビルディングの必要性、そして特にアジェンダ21の実施に当たって地域のできるだけ多くの国々が参加することの重要性である。包括的な議論の後、エコアジアは、APEISの発足とその調整のためのエコアジア・パネルの設立を歓迎し、これらを了承した。

 APEISの基本的なコンセプトは、2002年8~9月に南アフリカのヨハネスブルグで開かれた「持続可能な開発に関する地球首脳会議」で採択された「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画」の第104段落に示されている。関連部分は次の通りである。

104. あらゆるレベルにおける以下の緊急の行動を含め、国際協力を通じ、開発途上国の環境管理・保全政策の形成及び実施を含む、環境保全に関する諸課題に対処するための途上国の努力に係る開発途上国の能力向上を支援する。
(a) 開発途上国による環境モニタリング、評価モデル、正確なデータベース及び統合された情報システムのための科学技術の利用を改善すること。
(b) 高品質で、正確な、長期的で、一貫し、かつ信頼性の高いデータの収集のための開発途上国の努力を支援する上で、高精度なデータの収集、検証、更新及び航空と地上観測の一層の改良のために、開発途上国による衛星技術の利用を促進し、適切な場合には、これを改善すること。
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2. 目的と基本的な考え方
2.1 本プロジェクトの目的は何か?
APEISの目的は、以下の3つである。
(1) アジア太平洋地域の政策決定者による利用を目的として、持続可能な開発に向けた情報に基づく意思決定の促進に役立つ、科学知識に基づく各種手段と革新的な戦略的政策オプションを、地域の共有財産として開発すること
(2) プロジェクトへの参画と共働を通じて、アジア太平洋地域各国が、開発された科学的手段とオプションを活用しつつ、各国の実状に即した環境管理・保全政策を独自に形成・実施できるよう、地域環境協力とキャパシティビルディングを促進すること
(3) 「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画」を実体化し、実現するための具体的な地域的取組のモデルとして、アジア太平洋地域から世界に向けて提案すること
2.2 本プロジェクトの基本コンセプトは何か?
上記の目的を達成するため、APEISは次のような基本的なコンセプトに沿って設計・実施される。
(1) 地域内の各国・機関とその他利害関係者の参画と共働を最大限確保すること
(2) 科学的活動と政策決定者とが相乗効果を発揮して好影響を与え合う仕組みを構築すること
(3) エコアジア、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)、各種国際共同研究プロジェクト等、地域内における既存の関連活動の共働と調整を図り、これらの資源を最大限活用すること
(4) アジア太平洋諸国における特別なニーズや多様な各国の実状を考慮し、反映すること
2.3 なぜこのプロジェクトは「革新的」か?
APEISの革新性は、以下に示すように、その目的、プロセス、成果、技術的要素にある。
* 目的及びプロセスの革新性: 科学的活動と政策決定者との動的な相互関係を通じて、政策決定者に直接利用可能な科学知識に基づく手段と戦略的政策オプションを地域の共有財産として開発すること
* 成果の革新性: 環境上健全で持続可能な技術や政策統合を含む従来型とは異なる革新的な政策手法と環境戦略オプションを提案すること
* 技術的要素の革新性: 衛星・地上統合モニタリング、環境-経済統合モデル等の革新的な方法論を採用すること

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3. プロジェクトの概要
3.1 プロジェクトの枠組み
APEISは、3つのサブプロジェクト、すなわち統合環境モニタリング・サブプロジェクト(IEM)、統合環境アセスメント・サブプロジェクト(IEA)、及び政策オプション研究・サブプロジェクト(RISPO)から構成される。また、APEISの支援機能として、ネットワーク化とキャパシティビルディング及び情報共有・発信がある。それぞれのサブプロジェクトは、個々に独立した研究プロジェクトとしても機能できるが、3つ合わせて、環境状況の理解、評価及び将来予測、政策オプションの立案という環境政策決定に必要な主要要素をカバーしていることから、サブプロジェクト間の活発な相互連携を通じ、相乗的な効果が大いに期待できる。具体的には、例えば次のような連携効果が期待される。
* 統合環境モニタリングで得られたデータによるシミュレーションモデルの向上と検証
* 環境-経済統合モデルを活用することによる政策オプションが環境と経済に及ぼす効果の定量化
* 統合環境モニタリングの結果に基づいた政策オプション研究の対象項目や対象地域の優先順位の設定
APEIS活動の成果は、アジア太平洋地域の政策決定者が参加する国際フォーラムに報告され、その議論に科学的な基盤を提供するとともに、政策決定者側のニーズを反映させるための政策ガイダンスを得る。
APEISは、相互支援が可能な他の国際的・地域的な活動との連携を推進している。これらの活動には、ミレニアム生態系評価、APN、アジア開発銀行が国際環境計画、国立環境研究所、地球環境戦略研究機関と協働して検討中の「大メコン準地域における国のパフォーマンス評価と準地域の戦略的環境枠組みプロジェクト」がある。APNはネットワーク化及びキャパシティビルディングでのAPEISの強力なパートナーであり、その統合モニタリング及びアセスメントに関する研究活動や研究資源は、APEISへの潜在的な参加者や協力者をもたらすものと期待される。
APEISは、「アジェンダ21実施のためのパートナーシップ/イニシアチブ」の形で、「持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画」の関連部分を具体化する取組のアジア太平洋モデルとして、2002年8-9月に南アフリカで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議において報告され、世界に発信された。
3.2 プロジェクトの主な構成要素
(1) 統合環境モニタリング(IEM)
アジア太平洋地域における急速な農業及び都市開発は、森林減少、砂漠化、塩類化、水資源の枯渇、土壌流出及びその他の深刻な環境問題を引き起こしている。これらの影響は地域の持続可能な開発に対する重大な制約となる。これこれ以上の環境の悪化を防止する手段を講じるためには、自然資源や環境の現状と変化に関する正確で信頼の置けるデータを収集することが、まず何より必要である。
 
IEMサブプロジェクトは、アジア太平洋地域全体をカバーする統合環境モニタリングシステムを開発することを目的としている。このため、EOS(Earth Observing System)―Terra 衛星に搭載されたMODIS(Moderate Resolution Imaging Spectrometer)センサを用いて、地域内各国と共同研究が行われる。本サブプロジェクトには、次の要素が含まれる。
 
* アジア太平洋地域をカバーする衛星データ受信局ネットワークと、MODISデータ解析システムの構築
* アジア太平洋地域で衛星リモートセンシングデータを検証するための、多様な生態系の種類に対応する地上観測ネットワークの整備
* 砂嵐、越境大気汚染、洪水、海洋汚染及び油流出、森林火災等、環境災害の統合モニタリング
* 砂漠化、塩類化及び森林破壊、土地利用及び土地被覆変化等の環境指標及び環境劣化の統合モニタリング
* 流域スケールでの土地-大気プロセスと生態系機能の調査、及びその結果としての水資源と農業生産性のモデリング
   
(2) 統合環境アセスメント(IEA)
アジア太平洋地域の政策決定者は、環境保全と経済成長のトレードオフの間での選択に取り組まなければならないという深刻な問題を抱えている。このトレードオフに対するブレークスルーへの道を探るためには、環境分野に最大限のイノベーションを導入することが不可欠である。このイノベーションには、先端技術の普及、環境産業の促進、環境投資の増加、生産・消費パターンの変更等が挙げられる。しかしこれらのイノベーションは、適用する前に環境と経済の微妙なバランスを適切に考慮しておかなければ、環境保全コストと環境上の悪影響がかえって増大するというリスクをもたらす可能性がある。そのため、経済開発と環境変化の現在及び将来の相互作用を評価し、注意深く定量的、包括的にイノベーションの効果を予測することが不可欠である。
 
IEMサブプロジェクトの目的は、経済開発と環境変化の現在及び将来の相互作用を評価するための環境と経済の統合モデルと戦略的データベースを提供し、戦略的政策オプションの効果を予測することである。本サブプロジェクトには、次の要素が含まれる。
 
* 既存のコンピュータシミュレーションモデル開発プロジェクトであるアジア太平洋統合モデル(AIM)プロジェクトの成果に基づく、環境-経済モデル(AIM/Trend及びAIM/CGE)、生態系/健康影響モデル(AIM/Ecosystem及びAIM/Water)、物質フローモデル(AIM/Material)、エネルギー技術モデル(AIM/Energy)からなる、一連の統合評価モデルの開発
* 相互に体系的に関連し政策形成に直接用いることができる、基本データベース、指標ベース、モデルベース及び戦略オプションベースからなる戦略的データベース及び指標の開発
* 環境と経済の現状と将来変化の評価、及び提案された革新的な戦略的政策オプションの定量的効果とその含意の評価

   
(3) 政策オプション研究(RISPO)
持続可能な開発を達成するためには、経済開発、社会開発及び環境保全の3つの要素を、相互に依存し補強しあう柱として統合する必要がある。そのため、持続可能な開発に導く政策オプションは、これらの3つの柱を同時に改善するために貢献することが期待されている。実用的かつ実行可能な政策オプションは、自然科学と社会科学者の協働関係を改善し、様々な利害関係者との対話を促進し、地元及び原住民の現状調査等の実地調査を行うことで作成される。
 
RISPOサブプロジェクトの目的は、政策決定に十分な情報を提供するための知識ベースの手段として、戦略的政策オプションを提案し、政策インベントリを提供することである。これらは、実地事例調査を通じて収集した成功/不成功事例についての情報を検討することから得られるものである。本サブプロジェクトには、次の要素が含まれる。
 
* いくつかの国において、エコ市場やエコ産業の創設、先端技術の導入、革新的都市システムの開発、地域資源の適切な利用、小規模イノベーションのネットワーク化等の分野において、政策インベントリと戦略的政策オプション候補を作成するための実地事例調査の実施。
* 上記の事例調査やGEFプロジェクト等その他の既存のプロジェクトからのデータを基に、優良事例インベントリと革新的手法インベントリから構成される政策インベントリを開発。
* 政策インベントリにまとめられた事例や手法の分析に基づいた戦略的政策オプションの提案
* 戦略的政策オプションの効果、実行可能性、適用可能性を検討するため、いくつかの問題や地点を選択したパイロットプロジェクトの実施
3.3 政策決定者との相互関係の確保
3つのサブプロジェクトの成果は、エコアジア、エコアジア・パネル等の政策決定者の会合で報告され、アジア太平洋地域における環境管理・保全政策の形成・実施のための検討の材料となる。同時に、政策決定者のニーズをサブプロジェクトの内容に最大限反映すべく、その場で政策的な指導を得る。さらに、より幅広い視野に立った指導を得るため、検討結果は、「アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)」やその他の国際フォーラムでも報告されることが想定される。
このようなプロセスにより、科学的活動と政策決定者の間の動的なフィードバックの仕組みを形成し、両者の密接な相互関係を確保する。
3.4 ネットワーク化、キャパシティビルディングと普及啓発
APEISは、元来革新的な手段と手法に立脚した地域的な研究であるため、関連する科学者と研究機関のネットワーク化と参加が促進されるべきである。同時に、プロジェクトを効果的かつ効率的に実施するため、統合モニタリングと統合アセスメントに関する地域における既存の研究成果を十分に活用すべきである。このため、APNの支援プロジェクトの成果をAPEISに統合することが期待される。
キャパシティビルディングは、APEISにおいて最も優先度の高い活動の一つである。キャパシティビルディング活動においては、国際的な活動に参加し、政策オプションを理解し、統合モニタリングと統合アセスメントを実施し、個々の科学者や研究機関の専門性を高めたいという途上国のニーズに焦点をあてる。APEISの科学的活動への参加は、研究機関にとって研究レベルでのキャパシティビルディングを行う良い機会となる。さらに研究活動の成果は、ワークショップ等を通じて、研究機関その他の機関のキャパシティビルディングのために幅広く提供され、共有される。統合モニタリングとデータ収集及びモデル化等の特定の事項に関する一連の準地域ワークショップをAPNとAPEIS参加機関との共催で実施する。また、科学的活動の成果を政策決定者側に継続的に提供することにより、政策決定者側のキャパシティビルディングが可能となる。
APEISの成功のためにもう一つの重要な点は、関係者の意識向上である。このため、関係者の意識向上もまた優先度の高い課題である。よって、科学的活動の成果を、他のサブプロジェクトに参加する研究者、政策決定者、その他の科学者、一般市民等それぞれの個別ニーズに応じて、適切な時期に効果的に提供できるようにするための情報提供戦略が必要となる。さらに関係者の意識を向上し、プロジェクトの透明性と説明責任を確保するため、情報共有・発信システムを構築する。このため、APEISのインターネットウェブサイトを、エコアジアのウェブサイトの一部として開発・運営する。ウェブサイトでは、プロジェクト設計や実施計画に関する文書、技術文書、技術文書の要約及び全体要約等の研究成果報告書を閲覧できるようにする予定である。
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4. 推進・管理の枠組み
(1) APEISの3つの主要構成要素(サブプロジェクト)のそれぞれは、政府系又は非政府系の研究機関の間の研究協定に基く独立した国際共同研究の形態をとる。 3つのサブプロジェクト相互の連携・調整を促進し、エコアジア・パネルでレビューを受ける研究提案と研究成果要約案を作成するため、研究調整委員会(RCC)が設置されている。研究調整委員会は、各サブプロジェクト代表とAPNの代表からなり、必要に応じてAPEIS活動に関するその他の科学的側面も検討する。
(2) 一方、サブプロジェクトの報告を受け、政策的な指導を与える政策決定者の会合はエコアジアである。ただし必要に応じ、アジア太平洋環境開発フォーラムや、その他の関連する国際環境フォーラムにも結果を報告し、必要な助言を得るものとする。

(3) その機能のひとつとして、エコアジア・パネルが科学的活動と政策決定者との間の調整を図る場として機能する。エコアジア・パネルは、アジア太平洋各国政府高官、APEIS等エコアジアで承認されたプロジェクトの代表者、国際機関、国際プログラム・ネットワークの代表者よりなる。エコアジア・パネルは、エコアジアで了承を受けたプロジェクトに関し、その実施計画のレビューと了承、科学的・政策的側面の調整を行う。
(4) 日本国環境省は、エコアジア・パネルで承認された実施計画について、予算の範囲内で必要な財政的な支援を行う。この際、成果をエコアジアに報告し、その政策的な指導に従って研究を実施することが求められる。
APEISの管理・監督体制の枠組みは下図のとおりである。
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5. 他の関連プロジェクトとの協力
5.1 ミレニアム生態系評価 (MA)
  気候変動枠組条約は気候変動に関する政府間パネルという科学的なアセスメントを実施する組織を持っているが、生物多様性条約、砂漠化防止条約等の他の条約はこのような科学的組織を持っていない。

 ミレニアム生態系評価は、このような国際条約、各国政府、NGO、一般市民等に対して、政策決定に役立つ総合的な生態系情報を提供することにより、生態系管理の改善を目指している。

2001年6月5日に正式発足したミレニアム生態系評価は、今後4年間かけて、全地球規模のアセスメントと地域・地方レベルのアセスメントを同時並行的に実施し、2005年1月に最終報告書を取りまとめることとしている。
(1)
全地球規模のアセスメント
*
食糧、水、健康等一般社会になじみのある観点からの生態系への影響評価
*
生態系の特徴と利用状況の把握、将来シナリオ開発、対策オプションの提案を含む統合アセスメント手法の確立
(2)
地域レベルのアセスメント
*
南部アフリカ、東南アジア、中国西部等10カ所程度を対象とする予定
*
統合アセスメントの手法を実際の地域に活用
APEISが新たな研究を行うプロジェクトであるのに対して、ミレニアム生態系評価は、既存の情報のレビューを中心とするプロジェクトであることから、両者の性格は基本的に異なっている。また、両プロジェクトの対象地域や対象分野も同一ではない。一方、ミレニアム生態系評価においては、生態系の状況、将来シナリオ、政策オプションの評価を行い、政策決定者等のニーズに合った生態系情報を提供することを目指しており、また、現状把握手法として衛星によるリモートセンシングを重視している点で、両プロジェクトは一定の類似点がある。

 このような両プロジェクトの類似点と相違点を踏まえると、両プロジェクトの協力の推進は、以下のような理由から極めて望ましい。
* APEISで得られたアジア太平洋地域の自然資源の状況と推移に関する新たな知見は、このようなデータや情報が当該地域においては極めて限られていることから、ミレニアム生態系評価にとって役立つこと
* ミレニアム生態系評価の成果をAPEISにフィードバックすることにより、世界的な動向を踏まえた手法の採用や世界の他地域との比較等が可能となり、APEISの充実に役立つこと

このような基本的な認識のもと、2001年6月15日にミレニアム生態系評価の地域アセスメントのひとつとして始まった中国西部の生態系評価が、すでにAPEISとミレニアム生態系評価の共同活動として実施されている。これは協働作業の良いモデルとなるとともに、中国の政策決定者に中国西部開発の持続可能な実施にとって重要な情報を提供することが期待されている。

以上のように、APEISは、衛星と地上での観測に基づく統合モニタリングデータとこれに基づく解析結果や、生態系評価モデル等、その成果を提供することにより、ミレニアム生態系評価の地域アセスメントに貢献する。同時に、ミレニアム生態系評価からデータや手法の提供を受けることにより、APEISにとって、科学的能力の向上と世界的動向との調和が可能となる。このような協力を深めることにより、科学的手法の一層の調和(衛星データ処理、生態系のモデル化等)と、科学者の相互交流が期待できる。

5.2 大メコン準地域における国のパフォーマンス評価と準地域の戦略的環境枠組み (GMS)
現在、アジア開発銀行が国際環境計画、国立環境研究所、地球環境戦略研究機関と協働して、地球環境ファシリティに対し、「大メコン準地域における国のパフォーマンス評価と準地域の戦略的環境枠組み」と題するプロジェクトの提案を作成している。このプロジェクトは、大メコン地域における国及び準地域の環境パフォーマンス評価システムと、準地域の戦略的環境枠組みを開発しようというものである。本プロジェクトは、環境の要素を準地域、国及び地方の開発政策・プログラムに統合する過程を支援することにより、持続可能な開発を支えることとしている。

期待される成果としては、次のものが挙げられる。
(1) 環境の現況・推移・影響へのより良い理解を通じて、情報に基づく意思決定の向上を図ること
(2) 効果的かつ効率的な国家環境計画の管理と一般市民に対する説明能力の向上を図ること

(3) 地域規模・地球規模で重要な環境問題に関する環境情報及びパフォーマンス評価に対する、国、準地域及び国際的な要請を満たすこと
APEISとこのプロジェクトは、その対象地域がともにアジア太平洋地域であり、またその目的・内容面においても、共通点が多い。限られた資源を効率的に活用して、持続可能な開発に向けた政策を形成、実施するために不可欠な科学的手段を開発するために、両プロジェクトは緊密な連携のもとで設計されつつあり、今後実施される予定である。
5.3 アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)
APNは、APEISの強力なパートナーである。APNは政府間ネットワークであり、その使命は、アジア太平洋地域における地球環境変動研究を育成し、その研究に対する途上国の参加を促し、科学コミュニティと政策決定者の交流を強化することである。APNの研究、ネットワーク化とキャパシティビルディング活動は、本地域にとって重要な位置を占め、効果的にAPEISに貢献し得る。

APNの既存の出版物と統合化セミナーの成果物を用いて作成される年次報告書は、APEISにとって有用な資源となる。さらには統合モニタリングとアセスメントに関する準地域のワークショップを、APEISの参加研究機関と協働して開催することにより、特に将来的にAPEISとAPNに貢献する可能性のある研究者に対して、キャパシティビルディングのための良い機会を提供する。
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