21世紀にも引き続き人口、産業の著しい増大が見込まれるアジア太平洋地域では、温室効果ガス排出量の増加、 産業公害・都市公害の顕在化、自然環境の劣化等の多様な環境問題が一挙に顕在化しています。技術的、社会的、 政策的観点を含めた環境イノベーションは、環境破壊と貧困の悪循環を断ち切り、アジア太平洋地域における持続 可能な開発を実現する鍵となります。アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)は、実践的な科学的ツールと政策オプションを開発・提供することで、環境イ ノベーションを強化し、当地域における持続可能な開発を 目指しています。環境と開発に関する諸課題については、政策決定者が正確な科学的知見をもとに意思決定をすることが必要であり、その際にこれらのツールとオプションが大 きく貢献します。さらに、APEISはアジア太平洋地域における能力開発と国際協力の推進も目指しています。 2002年4月から2005年3月までの3年間がAPEISの第1フェーズとなります。日本国環境省が主要な資金を拠出し、各国研究機関の参画のもと実施しています。
APEIS(IEA)は、戦略的データベースをより一層利用者に使いやすいように設計するため、次のような手順で政策決定者と共同作業を行うことを提案します。 1)政策決定者に対し、環境や経済変化の暫定的な将来予測を提供、 2)政策決定者に予測の前提条件等の変更について要請、 3)政策決定者から提案された変更を定量化し、シミュレーションを実施、 4)政策決定者に対して改訂された予測を提供、そして、 5)検討している内容について、明確な理解に到達するまでこうしたプロセスを繰り返します。 こうしたプロセスを通して、各国にとっての最善の政策オプションを徹底的に議論することが可能となります。これに加え、それぞれの国独自の目的に応じたIEMモデルの修正、応用を提案します。現在議論されている応用例として、タイの天然資源環境省と共同で、タイにおける教徒議定書の下でのクリーン開発メカニズム(CDM)の社会経済影響と環境影響評価のためのモデルの開発を検討しています。