ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

コラム

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新築食育や防災時に役立つ学校給食の拠点をZEB化で実現

土佐市立学校給食センターの外観の写真
土佐市立学校給食センターの外観
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高知県土佐市にある「土佐市立学校給食センター」では、新築によって一次エネルギー消費量を55.3%削減(創エネ含まない)、創エネを含むと60.8%削減し、ZEB Readyに認証されました。

「土佐市立学校給食センター」では、エネルギー多消費施設であるため、建物外皮性能を高めるとともに高効率省エネルギー設備を導入し、エネルギー消費の低減化を実現。また高知の恵まれた太陽日射を活かして、再生エネルギーである太陽光・太陽熱を利用した太陽熱利用給湯システム、太陽光発電による創エネで、一層のZEB化を実現しました。

今回は、「土佐市立学校給食センター」のZEB化について、土佐市立学校給食センターの関様(所長)、西森様(次長)、中桐様(前所長)、担当されたZEBプランナーの株式会社オフィス省エネプラン 下村邦夫様(代表取締役/環境カウンセラー)、下村笑様にお話を伺いました。

ZEB化のきっかけは施設、設備の老朽化、
またエネルギー多消費施設だったため、抜本的な省エネ対策が必要だった

(司会者)

エネルギー多消費施設であることがZEB化のきっかけになったと伺いましたが、ZEBに取り組まれた背景や経緯をお聞かせ下さい。

中桐様、土佐市立学校給食センターの関様、西森様、オフィス省エネプラン 下村笑様、下村邦夫様の写真
お話を伺った、左から中桐様、
土佐市立学校給食センターの関様、西森様、
オフィス省エネプラン 下村笑様、下村邦夫様

(関様)

この土佐市立学校給食センターの建て替え前の施設は、昭和49年(1974年)に建てられ、以来、市内の全小中学校に給食を配食してきました。建物の老朽化が進み、建て替えることになりました。学校給食衛生管理基準等に基づいて建て替えると、面積が2倍以上、電気料金が約4倍になることが判明し、設計業者からの提案もあり、省エネ対策としてZEB化に取り組むこととなりました。

(司会者)

土佐市で地球温暖化対策を積極的に推進されているようですが、このことも後押しになりましたか。

(関様)

土佐市では、平成26年に第2次地球温暖化対策実行計画を策定し、 「設備・機器の導入・更新による省エネルギー化」や「再生可能エネルギーの導入」等を積極的に推進していました。建て替え前の給食センターは市内の公共施設の中で4番目に温室効果ガスを多く排出している施設だったので、市の計画に従い、建て替えに当たってCO2の削減に取り組むことにしました。

(司会者)

ZEB化は早い時期から決められたとのことですね。

(関様)

基本設計・実施設計業務を委託契約した設計業者が他市の学校給食センター建設時に経産省ZEB化事業の実績があり、建て替えを進める当初からZEB化の提案があり、基本設計時から目指すことになりました。

当初の単年度事業を2カ年事業にしてZEB化実現へ

(司会者)

当初単年度事業から、2カ年事業へ変更になった背景をお聞かせください。

(中桐様)

当初は平成29年度単年事業として準備を進めていました。建設工事は、最初の段階で建築主体工事、電気設備工事、機械設備工事、厨房機器購入を公示・入札し、ZEB化の電気設備工事、機械設備工事の公示・入札は補助金採択後の予定で進めました。事業はZEB実証事業の補助金含めて計画しているため、補助金が決まるまでは不採択の場合の設備の内容も併行して検討していました。設計や設備計画の見直しや調整を重ねていくうちに、 補助金は2次募集で申請し、採択されました。申請に当たってZEB化工事は2カ年に分けられることを知り、工事日程を組みなおして2カ年事業とへ変更しました。その際に議会への説明やあらためて債務負担の設定等を行いました。

(司会者)

本体工事とZEB化工事との兼ね合いが難しい面もあったそうですね。

(中桐様)

後で決まったZEB化工事については、補助金採択決定から実績報告までの期間が非常に短期間に感じました。新築施設では本体工事の工期もあるので、ZEB化工事の契約をした時点ではかなり進んでいた本体工事一度止めて、全体の工期の調整して、完成までたどり着けました。

◆建設までのスケジュール
年月 内容
平成25年4月 建設計画(基本構想)
平成27年3月 基本計画を策定
平成27年9月~平成28年6月 基本設計
平成28年7月~平成29年1月 実施設計
平成29年3月~平成30年3月 建設工事(建築主体、電気設備、機械設備、厨房機器)
平成29年11月~平成30年7月 ZEB化工事(電気設備、機械設備)

建て替えで施設面積が倍以上に拡大、電気代が4倍以上になる見通しだったが、
ZEB化によって約2.4倍に抑えられた

(司会者)

ZEB化後の省エネ実績をお聞かせください。

(関様)

建て替え前の施設と比べると面積が倍以上になるため、ZEB化しなければ電気代は約4倍になる見通しでしたが、ZEB化に取り組んだことで、約2.4倍に抑えることができました。

(下村様)

建築設計による最適な配置計画、高効率空調やLED照明、太陽熱+ヒートポンプ給湯器によるハイブリッド給湯システム等、パッシブ技術とアクティブ技術を組み合わせた省エネを徹底するとともに、太陽光パネルを設置して創エネを行うことによって一次エネルギー削減率50%以上を達成、ZEB Readyを実現できました。

施設の建て替えとZEB化によって施設設備を利用した食育の取り組みと
職員の労働環境改善につながった

(司会者)

ZEB化によって期待された、食育の推進や職員の労働環境改善についてお聞かせください。

(関様)

まずは食育です。今までも食育には取り組んでいましたが、建て替え前の施設は狭かったため、動画や写真でしか調理の現場を紹介できませんでした。今の時代の食育では、子どもたちが普段食べている給食がどのように作られているかを給食施設で学べることを求められており、それが実現できる施設となりました。また、当センターのZEB化への取り組みを説明することで、環境にやさしい施設であることも学んでもらえます。

調理見学ができる通路の写真
調理見学ができる通路

(司会者)

今回のインタビューさせていただいている部屋でも食育を行う整備をされているようですね。

(中桐様)

この新施設には、調理見学できる通路や調理研修室を設けるなど、食育を推進する施設として整備しました。また、建て替え前の施設では、調理室は湿度も温度も高い中、ピンポイント冷却用のスポットエアコンでしのいでいたり、職員の休憩、着替え、ミーティングをする場所が同じ1つの狭い部屋であったりと、劣悪な労働環境でした。新施設では、調理室には空調を完備し、職員向けの食堂や休憩室、更衣室をそれぞれ整備するなど、労働環境を改善できました。

調理研修室の写真
調理研修室
空調を完備した快適な調理室の写真
空調を完備した快適な調理室

ZEB化で災害時(南海トラフ地震等)に役立つ給食センターに

(中桐様)

そして、もう一つは防災です。議会から建て替えを機に、炊き出しができる等、災害時に役立つ施設、設備にするよう、強く要望されました。議会での事業説明の際、質問の多くが防災関係についてでした。

(司会者)

どのような設備を導入されたのかお聞かせください。

自家発電設備の写真
自家発電設備

(関様)

ZEB化のために整備した太陽光パネル、太陽熱利用給湯システムは災害時も利用できます。電源断絶を想定した重油とガスの2種類の自家発電設備、40トンの受水槽、16トンの給湯設備。ガスは大容量バルクタンクを設置しています。これらの設備で災害時の非常食提供の対応を考えています。実際にはご飯のみを提供を想定した場合、最大で4200食を1日2回、3日間提供可能です。

(西森様)

炊飯設備はガスの直火炊きなので、停電時でも自家発電設備で発電した電気とガスにより炊飯が可能です。

40トンの受水槽の写真
40トンの受水槽
炊飯設備の写真
炊飯設備

◆太陽光発電設備
太陽光発電パネル(270W/台×120台 32.4KW)

太陽光発電パネルの写真

◆太陽熱利用給湯設備
太陽熱+ヒートポンプ給湯器によるハイブリッド給湯システム

・真空2重ガラス管式太陽集熱器(40台)
・ヒートポンプ式給湯器(15KW×5組)
・エコ給湯貯湯器(密閉式10,000リットル)
・太陽熱蓄熱槽(密閉式6,000リットル)

太陽熱利用給湯設備の写真
太陽熱利用給湯設備の写真
太陽熱利用給湯設備の写真
◆設備用途別削減率
設備用途区分 削減率
空調 16.1%
換気 69.2%
照明 69.6%
給湯 54.7%
昇降機 11.1%
設備小計 63.7%
合計(設備小計+太陽光発電) 69%
◆BELS評価結果
ZEBの分類
ZEB Ready
一次エネルギー消費量基準
評価手法 通常の計算法(H28基準)
BEIの値 0.31
削減率 69%
外皮性能基準
外皮性能 適合 BPI=0.42
太陽熱利用給湯設備の写真

太陽光発電した電力を有効利用することが今後の課題のひとつ

(下村様)

太陽光発電の実績値が当初計画設計値を下回りました。これはRPRという逆潮流防止装置の作動が主な原因です。電力会社に余剰電力を送るために送配電網に接続するにあたって、電力供給側が停電等の修復工事中に施設から余剰電力となった太陽光発電が流れ込むと作業員の感電事故が起こることがあります。これを防止するために、施設内の負荷よりも太陽光発電量が多い時に発電を強制停止する装置がRPRです。

(西森様)

電力会社との契約上、RPRで発電を強制停止され、高い発電能力を活かせてないことが課題です。

(下村様)

この施設では土曜日、日祭日や夏休み、春休み、冬休み等の非稼働時にRPRが作動して、太陽光発電が停止されます。1年間トータルで見ると施設全体では計画値に対して実績値は達成していますが、太陽光発電は達成率53.6%となっており、余剰電力を貯めておける蓄電池の設置等の施策が今後の課題だと思います。
もう少しリチウム電池の蓄電池のコストが下がれば導入しやすくなります。現状では強制停止されている非常に多くの太陽光発電の電力を有効利用できるようになります。

(関様)

今後、蓄電設備のコストが下がってきたら導入を考えていきたいですね。

(司会者)

創エネを含む一次エネルギー削減率向上のために蓄電設備の導入は重要ですね。ありがとうございます。

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