課題名

B-53 都市圏の資源・エネルギー循環と都市構造に係わる温暖化防止対策技術に関する研究

課題代表者名

花木 啓祐 (東京大学工学系研究科都市工学専攻)

研究期間

平成9−11年度

合計予算額

82,168千円(11年度 27,609千円)

研究体制

(1) 都市内分散型エネルギー需給技術の温暖化抑制効果と都市環境影響に関する研究

 ‥垰埓徒系の未利用エネルギー利用技術に関する研究(環境庁国立環境研究所)

◆〔ね莊疹規模エネルギー供給技術に関する研究(通商産業省資源環境技術総合研究所)

(2) 廃棄物リサイクルにともなう温室効果ガスの排出抑制技術に関する研究

(厚生省国立公衆衛生院)

(3) 都市気候モデルによる建築及び市街地の熱特性評価に関する研究

 ‥垰圓稜エネルギーバランスの評価モデル開発(通商産業省資源環境技術総合研究所)

◆‥垰團ャノピー内の熱収支の解明とモデル化に関する研究(運輸省気象研究所)

 建築の熱環境負荷予測モデルの開発(建設省建築研究所)

研究概要

1.序(研究背景等)

 都市では、多種多様な社会経済活動が営まれ、かつ高密度に集積しており、都市活動を支えるために外部から大量のエネルギーと資源が投入され、循環、代謝ののち廃棄されている。この膨大なエネルギーと資源のフローに起因する影響は多岐にわたり、地球温暖化への影響も大きい。また、都市における建築や市街の構造特性が微気象に影響を与え、都市の高温化を加速し、都市内におけるエネルギー効率の悪化や大気汚染を誘発することは良く知られているが、その研究は定性的な現象把握にとどまっている。世界的な人口集中と都市化傾向が加速していることをを鑑みるにその対応は緊急課題である。

 

2.研究目的

 本研究では、以下のサブテーマの分野における都市活動あるいは都市構造を温暖化抑制の観点から変換していくための技術あるいは方策を追求する。さらに、それらの技術を普及させるにあたっての、導入のための指針を明らかにする。

(1)都市内分散型エネルギー需給技術の温暖化抑制効果と都市環境影響に関する研究

 ‥垰埓徒系の未利用エネルギー利用技術に関する研究

 都市の静脈系と言われる廃棄物処理システム、下水システムなどからの廃棄物、廃熱利用技術を調査、研究し、その導入に関する指針を提示する。さらに、小規模分散型のエネルギー供給技術を需要分布とマッチングさせるシステム化手法を開発する。

◆〔ね莊疹規模エネルギー供給技術に関する研究

 地球温暖化抑制の観点から、都市における分散型エネルギー供給技術の利用を評価し、都市の多様なエネルギー需要に適合させる方策を明らかにすることを目的とする。特に、燃料電池、太陽光発電、太陽熱、ごみ発電廃熱など都市内で利用可能なエネルギー利用技術に着目し、その導入による二酸化炭素排出抑制効果を評価する。

 

(2)廃棄物リサイクルにともなう温室効果ガスの排出抑制技術に関する研究

 より持続的かつ環境調和型のリサイクルシステムの構築を支援する情報を提供するため、実際のデータの裏付けのもとに、長期的な視点から各種社会状況に適合した合理的なリサイクル・再利用技術や方式を検索することを目的として、リサイクルや再利用のための処理技術や方式の温室効果ガス排出抑制に対する効果を評価する。

(3)都市気候モデルによる建築及び市街地の熱特性評価に関する研究

 ‥垰圓稜エネルギーバランスの評価モデル開発

 ビル等が密集する都市構造とエネルギー消費、都市気候の関係を観測とコンピューターモデルによって解明し、このモデルを都市づくりプランの評価システムに整備することにより、環境負荷が少なく住み心地のよい、自然と調和した都市構造を創るための指針を確立する。研究は次の三つの作業から成る。第一は市街地熱環境の実態把握のための観測である。第二に、観測結果を踏まえ、また検証データとして利用しながら都市気候の数値モデル化を行う。第三に、都市のエネルギー消費や人工廃熱量の実態を都市構造や都市活動と関連付けるデータの収集である。このデータや改善案を数値モデルに入力し、得られる結果から都市構造の評価を行い、環境負荷の低減を図る。

◆‥垰團ャノピー内の熱収支の解明とモデル化に関する研究

 都市キャノピー内の地表面熱収支過程を観測等によって把握し、これをパラメタライズすることによって局地気象モデルによる都市気象の予測精度向上に資する。

 建築の熱環境負荷予測モデルの開発

 ヒートアイランド現象の緩和による冷房エネルギー消費の抑制に関する検討を行うため、都市大気乱流モデルと連成した形で建物および空調システムが外気に放出する熱量を数値予測するモデルを開発し、建築が都市大気に与える排熱を大気熱環境負荷として定量化する。

 

3.研究の内容・成果

(1)都市内分散型エネルギー需給技術の温暖化抑制効果と都市環境影響に関する研究

 ‥垰埓徒系の未利用エネルギー利用技術に関する研究

 都市活動あるいは都市構造を温暖化抑制の観点から変換していくことを目的に、全国における河川水の温度差エネルギーおよび都市の静脈系と言われる廃棄物処理システム、下水システムなどからの廃熱利用による供給ポテンシャルおよび省エネ効果を存在する技術条件下で求めた。利用可能量は河川水量などの基礎データと環境面などの制約条件から求めた。供給ポテンシャルは配管での熱損失率などの設備効率を考慮して算出した。省エネ効果は通常のシステムと比較することで推定した。未利用エネルギーは都道府県によって存在量が大きくことなり、偏在していた。下水とごみ焼却場による未利用エネルギーは都市部に多く存在した。全国の未利用エネルギーによる省エネ効果の内、ごみ焼却場が69%を占めた。全国の未利用エネルギー利用によるCO2排出削減量は1996年における削減目標に対して10%程度と見積もられた。プラントの立地条件や土地利用およびライフサイクル分析などを考慮したより詳しい解析の必要性が認められた。

 次により正確な未利用エネルギーの評価のために、未利用エネルギー存在地点と需要家地域の距離、未利用エネルギー利用による供給量、需要量および需要の時間的変化を入力条件として、未利用エネルギーの省エネ効果の推定やエネルギーおよびCO2に関するLCALCエネルギー、LCCO2)を実施する手法を開発した。ここで開発した手法は以下の通りである。算定に先立ってまずシステム条件を決定した。すなわち需要地区と熱源に距離がある場合にプラントをどこに設置すべきかを、COP、熱損失などを理論値および文献値をもとに計算して決定した。次いで、需要地区のデータから需要量を算定した。一方同じく地区データから供給可能量を算定した。需要ピーク量と供給可能量を比較して、小さい方の値から設備容量を決定し、この設備容量と需要量をマッチングすることで供給熱量や蓄熱量をもとめた。これらをもとに、需要地区と熱源の距離別に、理論値および文献値に基づいて、システムのエネルギー効率を求めた。一方建設や運用に必要なエネルギーとCO2排出量も求めた。これらからライフサイクルエネルギー分析とライフサイクルCO2分析を行なった。

 この手法を用いて事例調査した結果、未利用エネルギーによる省エネルギー効果は熱源までの距離によって大きく変化し、効果が期待できる限界距離があることが明らかとなった。例えば、新宿副都心においては、未利用エネルギーシステムの標準的な耐用年数である20年以内にペイバックが可能となる距離限界は500mであった。下水については250m、清掃工場が1000mであった。CO2については距離限界は更に短かった。このように開発された手法は、地域データと距離から未利用エネルギー利用の効果を推定することができた。

 さらに東京都23区全域を対象に、GISデータを駆使し、熱・エネルギー需要を推定すると同時に未利用エネルギーの分布を推定し、両者から上記手法を応用して最適な未利用エネルギー利用地域を探索する手法を開発し、省エネルギー効果と二酸化炭素排出削減量の推計を行った。

◆〔ね莊疹規模エネルギー供給技術に関する研究

 燃料電池システムの建設、運用に伴うCO2排出量を算出した。その結果、200kW級リン酸型燃料電池発電システムを1基建設するのに排出されるCO2量は4.86×104kgであり、電極起因のCO2がその2割程度、改質器と触媒起因のCO21割程度になった。リン酸形燃料電池のライフタイムにおいて排出されるCO2量のうち、燃料消費に起因するCO2排出量が圧倒的に大きく、全体の99.6%を占める。燃料電池の寿命を30年間とした場合、単位発電力量あたりのCO2排出量は、0.554kg-CO2/kWhとなる。

 太陽熱給湯システムのライフサイクルインベントリ分析の予備的調査を実施した。エネルギー採算性を示すエネルギー・ペイバック・タイム(EPT)は4年未満となった。また、CO2排出原単位は家庭用システムで13.8g-C/Mcal)、業務用システムで11.4g-C/Mcal)となり、従来の給湯用エネルギー源の主流である都市ガスやLPG、灯油等と比較して単位エネルギー量あたりのCO2排出量が小さいことが示された。

 都市におけるエネルギー消費量の低減を図るため、品川駅を中心とする半径およそ2km以内の地区を選定し、新エネルギーシステムとして住宅には太陽熱、太陽光発電、燃料電池を導入し、地域冷暖房には燃料電池、ガスタービン、ガスエンジン、ディーゼル発電コジェネレーション、ごみ発電廃熱及び下水熱を導入することを想定した際のエネルギー使用量、CO2排出量の削減率を算出するケーススタディーを行った。その結果、新エネルギーシステムの導入によって、都市部でのCO2排出量は10%程度削減可能であることが推測された。

 都市エネルギー消費量の削減を図るため、上項と同じく品川駅を中心とする半径およそ2km地区を選定し、供給システムとして従来のエアコンによる個別供給あるいは地域冷暖房に加えて、住宅には太陽熱、太陽光発電、燃料電池を、事務所にはコジェネレーション、ごみ焼却熱・下水熱を用いる地域冷暖房を導入することを想定し、選定地区全体であるCO2の排出量制約のもとで供給コストを最小にするためのエネルギー供給最適化モデルを作成し、各システム導入量の最適構成とコスト、CO2排出量の関係を検討した。その結果、新エネルギーシステムの導入により、同一のCO2排出量レベルで、供給コストをおよそ20%低減できること、CO2排出量を削減する際の削減率とエネルギー供給コストの関係が明らかになった。

 

(2)廃棄物リサイクルにともなう温室効果ガスの排出抑制技術に関する研究

 リサイクルシステムの計画策定におけるLCIの構築およびLCAシナリオを作成する基礎となる、古紙、ガラス、PRTボトル、スチール缶やアルミ缶等の資源物を処理する技術を中心に、廃棄物処理装置のカタログを収集し、記載されている処理方式、処理能力、対象廃棄物、処理後の産物、使用エネルギー、大きさ、重さ等の情報をデータベース化し、一般に配付またはWeb等で公開することを想定した検索ソフトウエアとしてまとめた。結果として、445のカタログが集められ、延べ1,536の装置またはシステムがデータベースに登録された。処理方式としては分別・選別や粉砕・減容の装置の、処理対象物としてはプラスチック、可燃ごみ、粗大ごみの処理に関するカタログの数が多かった。また、データベースを利用して、各処理方式について、処理能力と消費電力または重量の関係を調べた。処理方式を詳細な処理技術(例えば、粉砕ではシュレッダーや回転衝撃等)で分類すると、処理能力に対する消費電力や重量の間には一定の関係(多くは正の相関)がみられ、ある資源物の処理量を設定すれば、これら装置の運転や製造に係わる消費エネルギーが推定できる可能性が示唆された。さらに、全国の粗大ごみ処理施設の公表データを解析し、エネルギー使用量が焼却施設やし尿処理施設の1/10程度であることを示した。加えて、ある地域の人口マッブデータより、グリッド毎の廃棄物の発生量を推定し、施設への輸送する際の最短距離を検索して、廃棄物の収集輸送量と距離から排出される二酸化炭素量を推定するための、アルゴニズムまたこれを計算する予備的なモデルを開発した。

 資源物について、マテリアルフローと消費されるエネルギー量を、文献や資料を用いてそれぞれのライフステージ毎に整理し、リサイクル過程を経るシステムと焼却や埋立等の他の廃棄物管理システムより排出される二酸化炭素量と比較した。資源物として、容器包装リサイクル法の対象であるスチール缶、アルミ缶、ガラスビン、紙ならびPETボトルを取り上げ、動脈側ならびに静脈側のシステム構成を特定し、それぞれの原料採掘、原料加工、製造、充填(ガラスビンのみ)、リサイクル、廃棄物処理、輸送の各段階に分けて、物量とエネルギー消費量、またそれによる二酸化炭素排出量を整理した。また、システムシナリオとして、バージン材のみをワンウェイで用いる場合、リターナブルとしてリサイクルする場合(ガラスビンのみ)、歩留まり分を除いて全量リサイクル材を用いる場合、また、現状でのバージン材ならびにリサイクル材の比率を用いる場合を想定し、二酸化炭素発生量を推計し、資源物製品トン当りの原単位として表した。

 

(3)都市気候モデルによる建築及び市街地の熱特性評価に関する研究

 ‥垰圓稜エネルギーバランスの評価モデル開発

 市街地における熱環境の実態を把握するため、諸形態のビルを利用して周囲の気象要素を測定した。最初に、東京西新宿の新都心地区高層ビル街において、夏季2週間の観測を実施し、市街地における熱収支構造の実態把握を行った。同時に近隣区域の緑地でも観測を行った。得られたデータから、高層ビル街の中の低層屋上では直達日射のあたる時間帯が限られ、その結果、表面温度の最高値は近隣緑地の地表面と同程度であるが、夜間から翌朝にかけての温度降下はきわめて緩漫であり、ビル材質の蓄熱効果の大きさが示された。昼間の気温は高度とともに低下し、緑地であっても地上は低層ビル屋上より高温になるが、夜間は緑地で地表面温度まで降温するのに対してビル街では蓄熱効果による加熱がある。

 比較のため、翌年の夏はつくば市内の研究所のビルを利用して観測を実施した。前年とはビルのサイズおよびビル周囲敷地の材質が対照的である。同所では前年の早春にも同種の観測を行っていたため、この2年間で街区構造の差異、季節の差異に応じた外的熱環境の特徴を示すデータが得られた。季節差については、意外にも夏季の正味入射量はむしろ春より20%程度小さく、これは路面や建築物が既に高温化した状態でバランスし、その表面からの放射と対流熱伝達によって大気が加熱されていることを示すと考えられた。

 1998年度は、8月以降、旧来の東京都心部に位置するオフィスビル屋上で常時観測を開始し、9912月まで継続した。あわせて同ビルにおけるエネルギー消費データの収集を行った。98年夏に関しては8月以降の冷房期間におけるこれらのデータを用いて、また99年は69月に関して気象とエネルギー消費の関係を解析した。屋上表面温度Tsと気温Tairその他の気象要素間の関係は基本的に両年で変わらず、また、気温と湿度の総合効果である外気エンタルピーとビルの冷熱供給量の間には両年とも高い相関関係が見られた。その半面、その直線関係からの日々のずれは、98年夏には電力消費量との相関関係が見られたのに対して、99年夏には電力消費量にあまり関係しないという差異が出た。とにかくこのビルに関する限り一年間で電力消費も冷熱消費も20%程度の伸びを示しているのが最大の特徴であった。

 9812月から一年分の気象データに注目すると、郊外に比べて弱風・高温低湿なのは既知のとおりであるが、さらに屋上からの熱の発散(顕熱フラックス)が暖候期に大きい傾向が明瞭に見られた。

 数値モデルの開発は、対象領域の異なる3種類のサブモデルを結合する構想によって進めた。都市を取り巻く広域の地形や海陸分布に対応する気象を扱うメソスケール局地気象モデル(MM)は既に数十年の歴史を持ち、かなり確立されたものが存在したが、本研究の一環として、都市構造のような格子サイズ以下の不均一性を考慮したフラックス算定ができるように高度化を行った。

 ビル群をとりまく大気のキャノピー層の熱環境を評価できる街区スケールモデル(CM)に関しては、新たな設計思想による検討を進めた。試験的な設定によってビル群をとりまく大気のキャノピー層の熱環境の評価を試みた結果では、計算された路面やビル壁面、屋上面の温度は合理的な日変化を示した。ビル高さや道路幅を数段階に変えたとき、道路幅がある程度以上狭くなると地上気温が急に高くなるのが特徴的であった。その後、潜熱輸送の計算の組み込み等の高度化を行った。

 さらに第3のモデルとして、街区スケールモデルと密接に結合した形で機能するビルエネルギーモデル(BEM)を開発し、ビル側の構造や熱・エネルギー機器の稼動を詳細に組み込んで、ビル外部の気象条件と連動するシステムを完成した。

 以上の数値モデルをサブモデルとして組合せて活用し、都市高温化と冷房負荷および電力等エネルギー消費の関係、また、種々の高温化対策がエネルギー消費に及ぼす効果を算定し、都市熱環境評価を行うことが可能になった。夏季の東京都心部に対応する検証実験を行い、良好な結果を得た。

◆‥垰團ャノピー内の熱収支の解明とモデル化に関する研究

 都市キャノピー内の熱収支を解明し、これをパラメタライズするために、新宿副都心の高層ビル街において各種気象要素、日射量及びビル壁面の放射温度分布の観測を実施し、ビル壁面における長波放射の反射や射出率の角度依存性による上向き放射の特徴を得た。またこの地上観測と同時に他種類の土地利用形態における地表面温度分布を得るために、一連の航空機観測を実施した。都市気象のシミュレーションの地表面初期値を作成するために、航空機観測によって得た地表面温度分布を国土数値情報の土地利用形態と照合した。都市域における地表面熱収支を量的に把握するために、土地利用カテゴリーを利用した地表面過程のパラメタリゼーションを実施することにより、局地気象モデルの改良を行った。地表面温度分布、都市域の地表面における物理量フラックスの特徴を改良モデルによって把握した。

 建築の熱環境負荷予測モデルの開発

 竣工設備資料から建物の規模ごとに空調設備の種類を調査し、低層、中層の事務所建物、低層の店舗では電動HPビル用マルチ(以降、ビル用マルチと称する)が最も多く、住宅のルームエアコンと同様、個別分散的な空調が行われる傾向があるのに対して高層の事務所や中層の店舗、ホテルになるとガスだき吸収式冷温水発生機(以降、冷温水発生機と称する)が多く用いられており、中央制御方式にシフトしていることを述べた。

 熱源機器のCOPCoefficient of performance)の資料を収集・整理し、ビル用マルチのCOPは低負荷側でピークを持ち、気温の上昇に伴い性能が劣化すること、冷温水発生機のCOPは直だきタイプのためCOPの値はビル用マルチのものと比べて低く部分負荷率の影響はわずかであること、家庭用エアコンのCOPはビル用マルチと同様、気温、部分負荷率の影響が大きいことを指摘するとともに、これらを計算機利用のため温度、部分負荷率の近似関数に整備した。

 冷房負荷の発生と空調用のエネルギー消費、そして排熱に至る空調システムの排熱生成のプロセスをモデル化し、冷却塔の放熱特性や熱源機器のCOP特性、室内の発生熱やシステムの運転方法を考慮した一連の解析を行うことで建築の熱環境負荷を定量的に導く手法を開発した。

 単体建物のモデルを建物群に拡張し空調システムを含めて統合化を行い、建物群の短波、長波の放射収支の算定、建物外壁および地表面の対流熱の算定、空調システムの排熱の算定を行う手法を開発した。

 抗力モデルを都市キャノピー層の解析に応用し計算の効率化を図るとともに、成層大気の拡散特性については渦粘性表現で現れるモデル係数Cμ、乱流プラントル数をフラックスリチャードソン数の関数とすることでレベル2.5相当の改善を施し、都市大気乱流モデルを構築した。

 東京の事務所建物を対象とした夏季解析結果から、ビル用マルチを用いた場合はシステムCOPの値は部分負荷率、気温の影響を大きく受けるが、冷温水発生機の場合はシステムCOPの値はあまり変わらないこと、冷却塔の放熱の大部分は潜熱で賄われており、全熱に占める顕熱の割合は夏季平均で8.5%13.3%であること、ビル用マルチの場合、気温上昇とともに室内の熱負荷が増加しシステムCOPの低下も相まってエネルギー消費量が加速的に増加することを示した。

 均一な建物を配置した街区を想定し都市気温と空調システムに関する連成解析を行った結果から、ビル用マルチを用いた場合、日中の気温上昇によりエネルギー消費量が高まりCOP値が低くなる傾向を明らかにするとともに、冷温水発生機を用いると主に日中の気温が低下すること、屋上緑化を施すと日中、夜間ともに気温の上昇が抑制され、約14%の省エネルギー効果がもたらされることを示した。

4.考察

 都市分散型エネルギーの利用は、それ自身の持つ省エネ効果と二酸化炭素排出量削減効果の他に、導入によってヒートアイランド現象を改善することで、さらに大きな効果をもたらす可能性がある。すなわち、夏期の外気温の上昇が分散型エネルギーの利用により緩和されれば、都市で必要とされる冷熱需要が減少するため、冷房に必要なエネルギーおよびそれに伴い排出される二酸化炭素量が削減される。同時に外気温の低下は冷房機器の効率をあげるため、さらにエネルギーおよびそれに伴い排出される二酸化炭素量が削減される。この点について、各サブグループの連携に基づいて以下のような予備的評価を実施した。

 河川および下水の未利用エネルギー利用を想定して、その廃熱条件を都市高温化評価モデルに入力したところ、中高層業務地区では、1.28度の日平均気温の低下が見られ、これにより日積算の冷房エネルギー需要は5.81%減少した。このように、河川および下水の未利用エネルギーシステムの業務地区への導入は、都市高温化現象の緩和を通じ、都市部の省エネに一定の効果を発揮する可能性が確認された。

 

5.研究者履歴

課題代表者:花木啓祐

1952年生まれ、東京大学工学系研究科博士課程修了、工学博士東北大学、東京大学先端科学技術研究センター教授などを経て、現在東京大学工学系教授

(主要論文)

1) 伊藤武美、花木啓祐、本多博:環境システム研究(全文審査部門)、Vol.24, 250-259 (1996).「二酸化炭素排出抑制技術・システムのニュータウン建設への適用」

2) 一ノ瀬俊明、川原博満、花木啓祐、松尾友矩:土木学会論文集、No. 552/VII-1 (1996/11).

  11-21 (1996)

 「下水熱有効利用可能性解析ツールとしてのGISの開発」

3) 久保田孝幸、花木啓祐、浦野明、粉川大樹、小宮英孝:環境システム研究(全文審査部門)、Vol. 25, 191-199 (1997).

 「微気候からみた街区形態の評価に関する研究」

 

サブテーマ代表者

(1) Э后(殃

1961年生まれ、筑波大学第二学群卒業、農学博士、現在、環境庁国立環境研究所 資源管理研究室主任研究員

(主要論文)

1) 森保文、乙間末広、近藤美則、鮫島良二、森本林:エネルギー・資源、第1573-80 (1994).

 「ごみ発電によるエネルギー回収およびCO2排出量の削減効果の推定」

2) Otoma, S., Y. Mori, T. Aso and R. Sameshima : Resource, Conservation and Recycling 20, 95-117 (1997)."Estimation of energy recovery and reduction of C02 emissions in municipal solid waste power generation"

3) 乙間末広、森保文:エネルギー・資源、第19279-284 (1998).「飲料用自動販売機のエネルギー消費量と二酸化炭素排出量及びその対策に関する評価」

 

   ◆О靈奸‘

1952年生まれ、東京大学工学部卒業、工学博士、現在資源環境技術総合研究所エネルギー

資源部エネルギー評価研究室長

(主要論文)

1) 稲葉敦:エネルギー・資源、16, (5).525-531 (1995).「太陽光発電システムのライフサイクルアセスメント」

2) 匂坂正幸、稲葉敦:資源と素材、111, 975-981 (1995).「国内炭の生産に伴う地球温暖化ガスの排出量評価」

3) 田原聖隆、稲葉敦:Energy Convers. Mgmt. , 38-suppl, s615-s620 (1997). "Evaluation of C02 payback time of power plants by LCA"

 

(2) :渡辺征夫

1944年生まれ、東北大学理学部化学科卒業、理学博士、国立公衆衛生院 公害衛生学部研究員、現在、国立公衆衛生院 地域環境衛生学部 環境評価室長

(主要論文)

1) Watanabe. Y. Matsuzawa, M. Osako. M. Yamada. M. Tanaka : Proceedings of 7th International Workshop on Nitrous Oxide Emissions (Cologne, Germany, April 21-23) 223-230 (1997)

  "Emission of nitrous oxide from processes of night soil treatment."

2) 渡辺征夫:SUT BULETIN1997 (1), 34-39 (1997).「ごみ処理と地球温暖化」

3) 渡辺征夫、竹澤一郎、田子博:分析化学、47, 63-68 (1998).「気相式電気伝導度検出器を用いる揮発性塩素化炭化水素の定量」

 

(3) У般隋〕

1947年生まれ、京都大学理学部卒業理学博士、現在、資源環境技術総合研究所  大気環境予測研究室主任研究官

(主要論文)

1) 吉門洋:J. Applied Meteorology, 29 (9), 878-891 (l990). "Vertical structure of the sea breeze penetrating through a large urban complex" (大都市域に進入する海風の鉛直構造)

2) 吉門洋:J. Applied Meteorology, 31 (10), 1146-1164 (1992). "Numerical study of the daytime urban effect and its interaction with the sea breeze"(昼間の都市効果とその海風との相互作用に関する数値的研究)

3) 吉門洋、土田誠:J. Applied Meteorology, 35 (10), l804-1813 (1996). "High levels of winter air pollution under the influence of the urban heat island along the shore of Tokyo Bay"

 (東京湾岸の都市高温の影響を受けた冬季濃度大気汚染)

 

   ◆Р嵋捨驚

1939年生まれ、京都大学大学院理学研究科修士課程地球物理学専攻、理学博士、

京都大学理学部助手、現在、気象研究所環境・応用気象研究部長

(主要論文)

1) 花房龍男:日本風工学会誌、第63号、21-22 (1995)、「高層ビル屋上での風の乱れのベクトル」

2) 花房龍男:Pap. Met. Geophys., vol. 46, 67-84 (1995)."Wind measurement of doppler sodars over complex terrain"

3) 花房龍男:Atmos. Environ., vol. 30, 2853-2858 (1996). "Wind tunnel simulation of atmospheric turbulent flow over a flat terrain"

 

   :足永靖信

1963年生まれ、北海道大学工学研究科博士後期課程終了、建設省建築研究所第5研究部

居住環境研究室主任研究員

(主要論文)

1) 足永靖信他:空気調和衛生工学会学術講演会論文集、1249-1252 (1997)、「保水性建材を用いた市街地熱環境計画手法の開発(その4空調設備の熱環境負荷)」

2) 足永靖信:日本建築学会計画系論文集、VOL.500, 71-77 (1997).「屋外空間における短波および長波の放射強度の分布に関する実測」

3) Y. ASHIE et. al. : Second International. Conference Buildings and the Environment., 319-325 (1997). " Climate Analysis for Local Planning"