課題名

B-51 温室効果ガスの人為的な排出源・吸収源に関する研究

課題代表者名

西岡 秀三(環境庁国立環境研究所地球環境研究グループ)

研究期間

平成10年度

合計予算額

113,148千円

研究体制

(1) CO2の排出・吸収に関する研究

‥效詫用変化に伴うCO2収支に関する現地調査(通産省資源環境技術総合研究所)

土地利用変化によるGHG収支に係わる情報データベース(農水省農業環境技術研究所)

E效詫用変化によるGHG収支に係わる情報データベース化手法(農水省農業環境技術研究所)

づ效詫用変化に伴うCO2収支の大気モデルヘの取り込み(通産省資源環境技術総合研究所)

ゲ后Πヾ帯林における炭素蓄積量の計測(農水省森林総合研究所)

森林の炭素固定能力とバイオマス・エネルギーの利用可能性(通産省資源環境技術総合研究所)

Э肯咼札ターの炭素固定能力評価モデルの開発(農水省森林総合研究所)

(2) CH4N2Oの排出・吸収に関する研究

 ̄水、廃棄物のCH4N2O収支に関する現地調査(環境庁国立環境研究所)

熱帯の土地利用変化等に伴うCH4N2O収支に関する現地調査

(農水省農業環境技術研究所、農水省森林総合研究所)

G帯の農耕地からのCH4N2O発生と肥培管理(農水省国際農林水産業研究センター)

ぅ▲献△稜盛銘呂ら発生する窒素酸化物の抑制技術(農水省農業環境技術研究所)

タ∧体を経由する土壌からのCH4N2O輸送機構(農水省国際農林水産業研究センター)

Σ罎国の森林土壌でのCH4N2O収支(農水省農業環境技術研究所)

反芻家畜からのCH4排出(農水省畜産試験場)

草地からのCH4N2O発生と家畜糞尿管理(農水省草地試験場)

(3) GHGの排出・吸収目録作成手法の総合評価に関する研究(環境庁国立環境研究所)

 

研究概要

1.序

 地球温暖化防止対策を効果的に推進するために気候変動枠組条約締約国は条約に基づき自国のGHGGHG)の排出と吸収の目録を条約事務局に提出する責務を有することから、排出・吸収に係る各分野における定量的評価解析を行うことが必要とされている。また、先般の第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)においてはCO2のみならずCH4N2OHFCPFCSF6が削減対象ガスとなり、CO2CH4N2Oに対しては1990年を、HFCPFCSF6については1995年をそれぞれ基準年とし、2008年から2012年の5年間を目標期間とする削減目標が設定された。したがって今後、削減目標達成に向けたアクションプランの作成には各GHGの精度の高い排出量・吸収量推定および将来予測が極めて重要である。特にCH4N2Oについては地球温暖化係数(GWP)がCO2に比べて各々20-30倍、200-300倍あるにも関わらず、未だ各排出源における排出量の推定の精度が低く緊急な対応が要求されている。

 

2.研究目的

 本研究ではCOP3以降のGHGの削減に関する動向を受け、CO2CH4N2OHFCPFCSF6について今後の政策決定に足る、精度の高い排出量・吸収量推定を行うために従来の知見の整理と新たな情報収集を行い、過去のトレンドおよび今回の排出量・吸収量推定を踏まえ、新たな各種の政策・処置の効果を組み込んだ将来予測を行うに資する解析評価を行うこととする。なお、ここではGHGの排出量と吸収量の更なる精度向上には長期にわたる調査解析が必要なものの、特に緊急に必要とされるCO2吸収源としての森林セクターおよび土地利用変化にともなうGHG排出、吸収挙動に着目した人為的GHGの排出量・吸収量の推定およびGHG排出、吸収インベントリーについて精度確保、適切な推計手法などの各事項について国際的にも評価されうる目録改善のために、現状において特に知見が不十分と考えられるガスおよびカテゴリーについて具体的な改善方法の提案を行うことを目的とする。

 

3.研究の内容・成果

(1)CO2の排出・吸収に関する研究

 ‥效詫用変化に伴うCO2収支に関する現地調査

  熱帯アジア地域においては森林の大規模な伐採により土地利用形態が大きく変動していることから伐採後の放置、農耕地化、商業作物のプランテーション等の土地被覆状態の変化による温室効果気体、特にCO2の放出・吸収の変化を現地観測により調べた。

  この場合のCO2の収支の主なる吸収・放出源は土壌と植生である。土壌から大気への二酸化炭素の放出はチャンバを用いて測定する。植生と大気の間の収支は植生の上空でCO2のフラックスを渦相関法で測定する。平成8年度に相手国側のカウンターパート、BIOTROPと協議し、調査対象地域をスマトラ島ジャンビ県パシルマヤンを選定した。1次林、択伐林、皆伐焼却地、ゴム植林にチャンバを3箇所ずつ設置し、30分毎に試料大気を採取し、研究室で計測した濃度の時間変化からフラックスを求めた。渦相関法による測定は観測機器を現地に設置し長期間継続する必要があるが、現地側から警備上、実施は困難であるとの指摘があり再検討し、平成9年度に調査地域としてボルネオ島東カリマンタン県ブキット・スハルトのムルワルマン大学の演習林を候補地とした。しかし、インドネシアヘの観測機材の正規の持ち込みは困難で、携行機材によるCO2濃度の観測を平成92月から現地担当者の協力を得て実施した。

  土壌からのCO2の放出速度は現地担当者の協力により19979月、より月毎に測定を継続している。それによれば、CO2の放出速度は乾季で小さく雨季で大きい。この傾向は4地域について同様に見られ、放出速度の大きな土壌では易分解性画分に富み土壌有機物の窒素安定同位体が低い。皆伐焼却地は土壌が乾燥しやすいためか乾季における放出速度は他に比較して小さい。放出速度は乾季・雨季についてそれぞれ従来の調査で得られた値、熱帯湿地林の500mgm-2hr-1、乾燥林の250mgm-2hr-1と同程度の値である。植生上でのCO2濃度の挙動には顕著な日変動が見られる。これは1次的には植生の光合成活動を反映しているが、19982月から1年間の測定では季節的な変化は見られなかった。これは熱帯雨林の特徴であるとも言えるが、人工衛星から測定した無次元化植生指数には乾季と雨季では相違があり、それとの対応には更に連続した測定が必要である。1997年はエルニーニョによりインドネシア諸島が乾燥し、森林火災が各地で発生し、必ずしも代表的な測定結果が得られている保証は無い。また、気温や雨量等の基本的な気象要因も大きく変化しており、今後の研究継続が必要である。

 

 土地利用変化によるGHG収支に係わる情報データベース

  GHG収支に関する多種情報のデータベース化を行うための装置の開発とデータベース、モデル間のプロトコルを検討するとともに、インドネシアスマトラ島パシルマイヤン地域で土地利用変化の把握と地球温暖化ガス把握に関するデータベースの作成を行った。

  土地利用変化の抽出と現地観測地点の周囲環境条件把握のためにリモートセンシング・データ解析機能を有し、空間情報データベースとして機能させるためにラスタ型とベクタ型両方の地理情報システム機能を有するものとした。地図情報入力のためにディジタイザを装備し、大型スキャナともリンクさせ、分散して存在しているデータを格納し提供するためのデータ・サーバとして自動対応大容量データ蓄積装置と一体化して利用するものとした。データベースとモデル間のプロトコルを検討するため、既存モデルにおける入力パラメータの調査を行い、あらかじめ用意しておくべき入力項目について明らかにした。

  1993年と1995年のLANDSAT/TM画像により、本プロジェクトで現地GHGフラックス測定をしているパシルマイヤン地域での土地利用変化の把握を行い、東西33km・南北20kmを対象として、現地調査炭素存在量およびフラックス量を用いて地上蓄積カーボン量の変化およびGHGフラックス変化を推定した。

  このパシルマイヤン地区での森林の減少が認められ、ゴム林および2次植生地の増加が認められた。地上炭素存在量は土地被覆毎のha当たりの炭素量に該当の土地利用/土地被覆面積を掛け合わせることにより算出した。本地区全体で、1993年には11.0メガトンであったが、1995年においては10.4メガトンの炭素量となった。本プロジェクトおよびBIOTROPで現地観測データを利用し、1993年と1995年のガスフラックス量を算出して比較を行った。1993年および1995年と同一の土地被覆面積でのGHGフラックス量は同じであるとし、土地被覆の変化が温室効果ガスにあたえる影響を評価した。この結果は、CO2及びN2Oの地表面からのガスフラックスは増加し、CH4の吸収は減少していた。

 

 E效詫用変化によるGHG収支に係わる情報データベース化手法

  地図、リモートセンシングデータ、現地測定、統計データ等の種々の情報源を利用し、インドネシアスマトラ島ジャンビ地区の土地利用/土地被覆を中心としたGHG収支に関するディジタルデータセットの開発を行った。このディジタルデータセットは、地理情報システムの汎用パッケージソフトウエアPC-Arc/Infoとリモートセンシング処理プログラムERDASを利用して行った。作成されたデータベースには、土地利用/土地被覆図・地形図・行政界図・土壌図・降雨量図・土地利用計画図・移住地及びプランティション分布図である。1996年と1992年の土地利用/土地被覆図を14タイプに再編集し、本プロジェクトの地上観測データ(他のサブ課題)と結びつけ、地上炭素存在量、CO2CH4N2Oのフラックス量の空間データベースを作成した。

  1986年と1992年のジャンビ地区の土地利用/土地被覆図のデータベースと、BIOTROPで調査した植生タイプ毎の単位面積あたりの地上炭素存在量を用いて、地上部での炭素存在量の変化を明らかにした。地上炭素存在量は土地利用/土地被覆毎のha当たりの炭素量に該当の土地利用/土地被覆面積を掛け合わせることにより算出した。この地区での原生森林の減少が認められ、プランティションの増加が認めらており、ジャンビ地区全体で、1986年には613メガトンであったが、1992年においては557メガトンの炭素量となった

  また、このデータセットを利用し、本プロジェクト(他のサブ課題)、および、BIOTROPで現地観測したフラックスデータを利用し、1986年と1992年のガスフラックス量を算出して比較を行った。1986年および1992年と同一の土地利用/土地被覆面積でのGHGフラックス量は同じであるとし、土地利用/土地被覆の変化がGHGにあたえる影響を評価した。この結果は、二酸化炭素及びN2Oの地表面からのガスフラックスは若干増加傾向にあり、CH4ガスの吸収は減少していた。

 

 づ效詫用変化に伴うCO2収支の大気モデルヘの取り込み(通産省資源環境技術総合研究所)

  土地利用形態の変化、特に大規模な森林の伐採の後の農耕地、牧畜地、プランテーションヘの変化により、CO2等のGHGの収支が従来の平衡状態から大きく変動すると予想される。土地利用変化による温室効果気体の放出・吸収量の地域的な変化の情報データベースから大気への影響を評価するモデルを開発する。

  原型となる大気モデルとして資源環境研究所で開発した全球移流拡散モデル、CTMと地域移流拡散モデル、RTMを用いる。気象条件はヨーロッパ中期予報センタの客観解析データを用いる。計算領域はインドネシア諸島を対象として、CTMでは東経90度から西経150度、南北30度の範囲、RTMでは東経90度から160度まで、南北20度の範囲とした。この範囲のCO2濃度の挙動を調べるために、陸域植物と大気の間のCO2の吸収・発生はFung等が作成した気温と正規化植生指数、NDVIから算出する方式を用いてCTMにより計算した。ボルネオ島は年の前半でNDVI0.5より大きくCO2を吸収、年の後半で0.5より小さくCO2を放出している。このため計算したCO2濃度は年の前半では低く、年の後半では高くなる傾向が見られる。1999年の東カリマンタンのブキット・スハルトでのCO2濃度の測定ではその様な傾向は見られない。これは199798年のエルニーニョによる一時的な現象か検討している。GHGの挙動からモデルの検証を行うのはこの地域での測定が少ないため適当ではない。このため199798年のエルニーニョに伴なって発生した大規模な森林火災によるエアロゾルを指標物質としてモデルの検証を行った。エアロゾルの測定地点と森林火災の発生地域の対応を調べるために前進型と後進型の流跡線解析プログラムを作成した。さらに放出・吸収情報データベースに対応させるため計算の格子間隔を狭めたRTMをこの地域に適用し、ヨーロッパ宇宙機関が打ち上げたERS搭載のATSRで解析した火災発生地点の分布を入力しエアロゾルの分布を計算した。インドネシア気象地球科学局のエアロゾルの連続観測やシンガポール気象局がNOAAの衛星画像から解析した煙霧の分布と良い対応が見られた。

 

 ゲ后Πヾ帯林における炭素蓄積量の計測

  京都議定書において吸収源の評価を排出量削減の目標に組み入れることが定められたのに伴い、吸収量の指標となる炭素ストックの変化量は森林バイオマスの変化量を計測することによって算出されることになった。一方、同議定書は炭素ストックの変化量を計測するにあたって透明かつ検証可能な方法を採用することを要求している。バイオマス量を計測する通常の方法は、幹材積を計測した後に一定のパラメータを掛けてバイオマス量に換算して求めている。この値についてクロスチエックを行えるようなバイオマス計測方法を開発し、得られたデータの検証を行う必要がある。そこで、航空機に搭載した赤外線レーザー測距儀を用いて得られた森林の断面プロフィールから直接かつ広域にバイオマス量を計測する方法を開発し、幹材積にパラメータを掛けて簡易に算出したバイオマス量のクロスチェックを行えるような方法を検討した。具体的にはカナダの亜寒帯林を対象に調査を実施するとともに、バイオマス量の算定プロセスを明らかにした。

  調査対象には、カナダ、アルバータ州からサスカチュワン州北部に至る南北約600kmのトランセクトをとり、この区間で航空に搭載した赤外線レーザー測距による植生断面の測定とその検証のための地上調査を行った。航空レーザー測距システムは新しいリモートセンシング手法で、航空機に搭載したレーザー測距儀により航空機から地表までの対地高度を高頻度で得ることができる。地表面プロフィールには、純然たる地面(地形面)からの反射と植生表面からの反射が混在しているが、前者だけを抽出したうえで連続的な地形面を推定し、これを地表面プロフィールから差し引くことで、植生断面のプロフィールを得た。航空レーザー測距の対照とするため、航跡直下に位置する14の代表的な森林に調査プロットを設け、森林バイオマス量を実測した。プロットは一辺が樹高に等しい正方形とし、各プロットで、すべての立木の胸高直径を測ったうえ、大径木1本、中径木2本、小径木1本の計4本のサンプル木を伐倒し、その樹高、胸高直径、幹材積、枝量および葉重量を測定した。これらのグランドトゥルースデータと森林植生の縦断面プロフィールから、森林バイオマ.ス量を推定できることを明らかにした。

 

 森林の炭素固定能力とバイオマス・エネルギーの利用可能性

  本研究は、IPCC報告書やCOP3議定書で今後の大幅な導入が提唱されたバイオマス・エネルギーについて、その供給と適用の可能性、温暖化への軽減効果評価を試みるものである。平成810年度の3年間でバイオマスエネルギー供給可能量(エネルギー・ポテンシャル)の見積もりを試算し、バイオマスのエネルギーへの変換技術の評価を行い、得られた結果からバイオマスエネルギー利用による炭素固定と削減効果算定を試みた。バイオマス供給可能量見積もりについては、文献調査による植林可能面積算定値は250-1,200Mhaと変動が大きかった。そこでバイオマス供給量をFAOデータに基づく植林可能面積と平均生産量から、全世界のエネルギー・ポテンシャルを求め、△泙親団蠅旅颪砲弔い討蓮衛星データ図解析から求めた土地被覆分類により試算した。FAOデータより試算した植林可能面積は世界合計で1,677Mha(初出データは744Mha)、エネルギーでみた供給量は495EJ/y(初出データは248EJ/y、いずれも生産量中位想定)であった。また、今後の人口増加に伴う食糧需要の増大、余剰地の食糧生産への配分を考慮に入れても、1割程度の減少で約400EJ/y(バイオマス生産量中位)、約200EJ/y(低位)供給でき、この値はIPCCの値(300EJ/y)と比較しても有望であることが示唆された。ただし、今後の食生活が先進国型高カロリー摂取タイプに移行した場合、バイオマスエネルギー・ポテンシャルは0となった。他の手法による試算例として、カンボジアについて土地利用判読済ランドサットTMデータをもとに土地被覆分類を行い、植林可能面積、ならびにエネルギーポテンシャルを求め、FAOデータにより求めた結果と比較したところ、いずれの手法でもポテンシャルが算出できることが示唆された。

  エネルギー変換技術としては燃焼発電、ガス化発電、熱分解液化、エタノール発酵の4種について検討し、発電効率、バイオオイル収率、エタノール収率を調査し、各変換法における化石燃料代替炭素量原単位を計算により求めた。その結果、発電に関してはガス化発電を利用する場合が最もCO2削減量が大きいことが判った。またガソリン代替となるエタノール発酵よりも、電力代替の燃焼、ガス化発電にバイオマスを使用したほうが有効であることが判った。得られた原単位とバイオマス供給量を用いて、世界規模でバイオマスを利用した場合の炭素削減量を計算したところ、IPCCの削減目標については供給量が中位以上で全ての技術で対応が可能であり、COP3の削減目標は全ての条件で達成可能であることが判った。

  さらに、燃焼発電、ガス化発電については、変換技術採用によるCO2削減量だけでなく、バイオマスの植林、輸送によるCO2排出量を試算し、一連のシステムの中でのトータルの削減量を試算したところ、植林、収穫、輪送、前処理の中でCO2排出量が多いのは植林に関するプロセスであるが、これらのプロセスによるCO2放出を考慮してもバイオマス代替による削減効果は大きく、COP3の削減目標は達成可能との結果が得られた。

  以上の結果から、温暖化軽減対策にバイオマスエネルギーの導入が極めて効果のあることが示された。

 

 Э肯咼札ターの炭素固定能力評価モデルの開発

  我が国の森林セクターにおける炭素固定量を4つの政策シナリオの下で評価した。ケース1は現在と同じような経済環境が続くという条件、ケース2ではできるだけ森林の炭素貯蔵量を多くすることを目的として、伐採時期を延長した場合を取り扱う。ケース3は積極的な国産材振興シナリオ、ケース4は国産材振興策を少し緩め国産材の生産量を、中庸に振興する政策シナリオである。各シナリオに基づく今後50年間の森林・住宅部門の炭素固定量の推移をみると、伐採時期を延長することが現状維持に比べ大幅な国産材生産量の低下につながることはなかった。国産材振興策ケース3では2015年の国産材生産量は現在の供給量の65%増になると予想された。ただ、将来は森林の蓄積を減少させ地球温暖化への貢献という点では望ましくない。ケース4は国産材を中庸に振興させようという案であり、現在の木材生産量より38%増加する一方で蓄積を低下させることもなく、国内林業の振興と森林蓄積の増加、双方の妥協案といえることが解った。

  木材分野のうち建築物における炭素ストック量の変化について試算を行った。1996年の着工建築物の木材使用量原単位を木造0.2m3m-2、非木造0.04m3m-2と仮定すると、新規炭素ストック量は炭素換算で652万トンとなる。炭素ストックから消滅した量を同年の消滅建築物面積から試算すると192万トンとなる。従って1996年の建築における炭素ストックの純増加量は460万トンであった。つぎに木材工業の側から建築に投入・固定されたであろう炭素量を1997年のデータから試算した。製材品・合板・木質ボード類について建築部門に出荷された量と加工の歩留まりから計算すると炭素換算では622万トンとなり、前述の652万トンと近い値となった。また、1991年のデータで建築解体廃材のうち1,823万トン(炭素量で456万トン)が無駄に焼棄却されている。そこで、木質ボード類は建築解体廃材のマテリアルリサイクルにおいて重要な意味を持つ。1997年には古材の利用率が40%となっており、今後その比率が更に高まることが予想されている。

 

(2)CH4N2Oの排出・吸収に関する研究

  ̄水、廃棄物のCH4N2O収支に関する現地調査

  GHGの汚水・廃棄物からの人為的排出ポテンシャルを明らかにする上では、生活活動、産業活動に関連する活動量を知る必要がある。食料自給率の低い我が国においては、大量の窒素あるいは有機物を食料あるいは飼料の形で輸入し、それらが、汚水、廃棄物として環境に排出されている。したがって、これら排出される窒素、有機物が排出される過程での処理の運転操作条件および、環境へ排出された後での形態変化によっては汚水、廃棄物系はCH4N2Oの排出ポテンシャルの高い、排出源である可能性が高い。しかし、我が国のCH4N2Oインベントリーでは汚水、廃棄物系の推計範囲および推計精度が極めて低いことが指摘されている。本研究ではこのような状況を鑑み、既設の下水処理場において調査を行い、N2Oの排出実態および、それを基に生成経路について検討した。その結果、N2Oの発生量原単位は人間一人あたり8.3311.2mgN2O-Ncapita-1day-1)、流入水1m3あたり21.229.2mgN2O-Nm-3inflow)となったが、放流水に溶存した形で排出されるN2O-N量が、全体の約半分を占めている場合もあり、放流水に溶存しているN2Oがガス態となって排出される可能性が示唆された。また、NO2-N蓄積速度が大きいほどN2O生成速度も大きくなり、NH4-N濃度がNO2-NまたはNO3-N濃度に対して相対的に高い場合はN2O生成速度は増加し、逆に低い場合にN2O生成速度は減少した。したがって、好気条件下におけるN2O生成のほとんどがNH4+酸化およびNO2還元により、このうちNO2の異化的還元反応が主要な機構であることが示唆された。このような知見は我が国の汚水・廃棄物の生物処理の最適操作条件を確立する上での基盤になるものと考えられる。

 

 熱帯の土地利用変化等に伴うCH4N2O収支に関する現地調査

  熱帯アジアでは、広大な面積を占める熱帯林や泥炭湿地が消失して農耕地やプランテーションなどに移行する土地利用変化が急速に進行しており、その土地利用変化がGHGの発生・吸収に大きな影響を及ぼすと推測されているが、これまで組織的な調査研究がまったく行われていなかった。そこで、インドネシアの研究者と共同研究に関する覚え書きを結び、これらの研究を開始した。

  まず、インドネシアスマトラ島のジャンビ県内の湿潤熱帯林とその周辺の異なる土地利用形態の6地点(1次林(2地点)、択伐林、伐採・焼却地、再植林地、初期ゴム園)で、CH4N2Oの土壌から大気中へのフラックスを、19979月から毎月1回年間を通して測定した。その結果、CH41地点を除くすべての地点で土壌へ吸収されていたが、N2Oはすべての地点で土壌から大気中へ放出されていた。N2Oの発生は、一次林から択伐林そして伐採・焼却されていくと次第に大きくなり、その後植林されると再び小さくなった。一方、CH4の吸収は、一次林から択伐林への移行とともに減少し、伐採・焼却地ではほとんど吸収しなくなったが、その後の植林でふたたび増加した。このような変化は、調査地点で採取した土壌の室内壌養実験によるGHGの発生・吸収ポテンシャルから得られた結果とよく一致しており、熱帯林が伐採・焼失して裸地化することによって、GHGの発生・吸収量が大きく変化することが明らかになった。また、深さ別の土壌培養実験によれば、N2OCO2の生成は表層土壌(05cm)で最大であった。一方、CH4の吸収は深さ10cm以下の土壌のほうが表層土壌より大きかった。この緒果は、調査地点における表層土壌中のGHGの鉛直分布と、対応していた。

  カリマンタン島南部のバンジャルマシン州内の泥炭湿地で、GHGのフラックス測定を1998122月に初めて実施し、CH4の発生量は熱帯のアマゾン地域より少なかったが、N2Oについては非常に大きな放出量を示す地点があることが明らかになった。これから、泥炭湿地の土地利用変化がこれらのGHGの発生・吸収に大きな影響を及ぼしていると推測された。

 

 G帯の農耕地からのCH4N2O発生と肥培管理

  GHG、の1つであるN2Oについて、熱帯農耕地からの発生量の把握と、温帯の農耕地も対象に含めた発生抑制技術の開発を目的として、研究を行った。

  熱帯の農耕地からの発生量把握に関しては、以前よりタイにおいて現地研究者と共同研究を実施しており、今回もタイのコンケンとナコンサワンに試験圃場を設けて、N2Oフラックスを測定した。本研究では、1年間を通じた発生量を高い精度で推定するために、以前の研究でやり残された、雨季開始時から作物栽培を開始するまでの期間における発生と、作物栽培期間中における畝間から発生を中心に、測定を行った。結果は、雨季開始時には大きなフラックスが発生することもあるが、全体としてみれば、その後の作物栽培期間中における窒素無施用土壌からのフラックスと大きな差がなかった。窒素肥料を施用しない畑地土壌からの、雨季を通じた平均フラックスは、コンケンで12.2μg N2O-Nm-2hr-1、ナコンサワンで8.6μg N2O-Nm-2hr-1であった。窒素肥料施用区の畝間からの発生量は、肥料が施用される畝からの発生量よりも少ないが、窒素肥料無施用区の畝からの発生量よりも多かった。

  本研究で得られたデータと、それ以前の研究成果を合わせることで、熱帯サバンナ気候帯の畑地土壌における通年でのN2O発生量が推定できるようになった。

 熱帯サバンナ気候帯の畑地土壌からの通年でのN2O発生量は

 (1) 窒素肥料が投入されたその年の雨季中に、投入された窒素肥料に由来して発生するもの

 (2) (1)を除いて雨季に発生するもの

 (3) 乾季に発生するもの

 の3つに分けてそれぞれ推定することで、精度良く推定できる。

  農耕地からのN2O発生抑制技術の開発については、肥効調節型肥料と硝化抑制剤入り肥料について、N2O発生抑制効果を尿素と比較して調べた。日本の代表的な畑土壌である黒ぼく土壌を1/2000アールワグネルポットに充填し、上記の肥料をそれぞれ施用して、スイートコーン栽培期間中のN2O発生量を比較した。N2O発生量は、尿素を施用した土壌からのものに対して、肥効調節型肥料では45%であり、硝化抑制剤入り肥料では18%であった。硝化抑制剤は作物の有無にかかわらず、硝化に伴うN2O生成比率を小さくした。肥効調節型肥料は、作物の存在する条件下でN2O発生をより抑制した。これらの肥料によって、畑地土壌からのN2O発生を抑制できることが示された。

 

 ぅ▲献△稜盛銘呂ら発生する窒素酸化物の抑制技術

  土壌から大気中へ放出されるN2Oは、温室効果ガスの一つであり、また同時に排出される一酸化窒素(NO)は、やはり温室効果ガスの一つである対流圏オゾンや酸性雨の原因物質の一つである硝酸ガスの、前駆物質である。とくに窒素肥料を施用した土壌はこれらのガスの主要な発生源の一つなので、その発生を抑制する技術を開発することが必要である。しかし、特にNOについては、その発生要因などはよくわかっておらず、また、野外調査では、フラックスのNO/N2Oの比は、土壌水分量と負の相関があることが推測された。このことは、N2ONOの発生がトレードオフの関係にあり、これらのガスを同時に抑制することが困難であることを示唆している。そこでこの関係を明確にするために、次の室内実験を行った。すなわち、3段階の異なる水分条件下(WFPS4070100%)で77日間土壌を一定温度25℃で培養実験し、発生するN2ONOのフラックスを、また、土壌中のNH4+NO3濃度を測定した。なお、土壌は日本の黒ボク土と中国北東部の代表的な褐色土の2種類を用いた。さらに、施用した窒素肥料は、通常の易分解性尿素と緩効性窒素肥料の一つである被覆尿素肥料とを用いた。その結果、黒ボク土では、N2Oのフラックスは土壌水分量が増大するほど増大し、一方、NOは逆に土壌水分量が減少すると増大した。WFPS100%ではNOはまったく発生せず、一方、WFPS40%ではN2Oはわずかしか発生しなかった。またこれらのガスの総窒素発生量は、どちらの尿素肥料でもほとんど同じであった。しかし、WFPS40%のときだけは、NOの総発生量は、被覆尿素肥料のほうが通常の尿素より23%だけ少なかった。これらから、土壌水分量がNON2Oの発生に大きな影響を及ぼすこと、フラックスのNO/N2Oの比は、広い範囲で土壌水分量と負の相関があることが、室内培養実験によって、明らかになった。

 

 タ∧体を経由する土壌からのCH4N2O輸送機構

  地球温暖化に関与する大気中の急激なCH4濃度増加の原因のひとつとして、世界的な水田耕作面積の増加があげられている。水田からのCH4発生を抑制するために、さまざまな方策が提案されているが、CH4発生の少ない水稲品種を選抜することも期待される方策のひとつである。一方、N2Oについても、条件によっては水田から多量に発生することが示されているが、その大気への輸送過程には不明の点が多い。

  本研究では、CH4およびN2O発生の少ない水稲品種を選抜するための基礎的知見を得ることを目的とした。そのために、11種類の水稲品種を水耕栽培し、水稲の分げつ期および成熟期において、水稲の根域に溶存するガスを大気へ輸送するポテンシャル(コンダクタンス)の測定をチャンバー装置において行った。さらに、測定されたCH4およびN2Oのコンダクタンスと水稲の生理・形態的特徴(パラメータ)と比較を行った。計測した水稲の生理・形態パラメータは、光合成速度、茎数、葉面積、地上部バイオマス、茎容量、根重量、根容量、根全周長、および通気組織の容量である。

  その結果、品種により異なったガスコンダクタンスが認められ、CH4については、水稲の分げつ期および成熟期でそれぞれ0.301.21および0.622.55mmo1min-1mM-1N2Oについては0.0290.079mmo1min-1mM-1の範囲にあった。ガスコンダクタンスと水稲の生育との間には正の相関が見られ、ほとんどの品種で、分げつ期におけるガスコンダクタンスよりも成熟期のそれらの値の方が高かった。また、生育の良好な品種ほどガスコンダクタンスが高い傾向にあった。水稲の生育に関する各形態パラメータとガスコンダクタンスの間には、ほとんどの場合、正の相関が見られたが、そのなかでも、根に関係するパラメータ、すなわち、根重量、根容量、根全周長、および通気組織の容量については、きわめて高い相関が認められ、根の生育がガスコンダクタンスに対し最も寄与の大きいことが示された。同一個体について求められた、CH4コンダクタンスとN2Oコンダクタンスについては正の相関が認められたが、CH4コンダクタンスはN2Oコンダクタンスの9.3-19.1倍高く、二つのガスの輸送速度は著しく異なることが示された。その原因として、二つのガスの、1)拡散速度の違い、2)植物細胞膜透過速度の違い、3)ガス化速度の違いが関係しているものと考察された。

 

 Σ罎国の森林土壌でのCH4N2O収支

  自然土壌は温室効果ガスであるN2OCH4の全球的循環に大きな役割を果たす。にもかかわらず調査研究は不足しており、大きな不確実因子となっている。そこで、これまでデータのないアジア地域として、日本の森林土壌におけるN2O放出、CH4吸収フラックスの系統的調査研究を開始した。CH4吸収のフラックスのばらつきを評価するために、同一林分内の斜面上部と斜面下部にそれぞれ9個のチャンバーを設置し、2回の測定をおこなった。その結果、同一林分内であればチャンバー間のばらつきは小さく、3個程度のチャンバーによる測定でその林分のフラックスを推定できることが明らかになった。また、茨城県北茨城市の落葉広葉樹天然林でのフラックス継続調査では約3年間の測定から、尾根部での3年間の平均値は4.9mgCH4m-2d-1、谷頭部では2.5mgCH4m-2d-1であった。夏季に吸収速度は最大になり、冬季に吸収速度は低くなる季節変化を示し、尾根部の値は世界のこれまでの観測例から比較して高い値を示した。

  森林斜面の尾根部、斜面部、谷底部にそれぞれ3つのチャンバーを固定し、月2回の頻度でN2Oフラックスを測定した。いずれの地、点でもN2Oフラックスは明瞭な季節変化を示し、調査地のN2O放出は土壌温度に従って行われていることが判明した。常時より湿潤な条件にあった谷底部では、尾根部や斜面部よりも常時2倍程高い放出速度が認められた。各地形の面積割合を勘案して見積もった調査地全体からの年間放出速度は0.56kgNha-1であり、これまでの温帯林の多くの測定結果より高い範囲にあった。

 

 反芻家畜からのCH4排出

  我が国およびアジアからのCH4発生量推定手法の改善を図るための基礎データを得るために、家畜からのCH4放出の簡易測定手法の開発、放牧時を想定しての生草給与時のCH4発生量について検討した。(1)家畜からのCH4放出の簡易測定手法として、マスク、流量計、ブロア、サンプリングユニット、ガス分析装置(赤外線式)、記録計、パーソナルコンピューターよりなり、一般畜舎において使用が可能な可搬型のシステムを作成した。さらに、その具体的な運用方法を定めるために、CH4発生量の測定精度に及ぼす諸変動要因(個体差、日間差、日内変動)について泌乳牛によるガス代謝試験成績を用いてその諸要因に由来する分散の大きさを比較検討したところ、日内変動がもっとも大きい要因であることが明らかになった。また、CH4発生は給餌パターンに依存していることが示されたので、測定は給餌パターンを勘案して168回、34日間測定することが望ましいものと判断された。この結果に従ってブラーマン種牛および水牛からのCH4発生量を測定したところ、乾物摂取量当たりのCH4、発生量は、それぞれ、2017Lであり、従来の報告に比べて低いものであった。(2)生草給与時のCH4発生量について、ホルスタイン種乾乳牛4頭を供試し、フード式システムを用いて検討した。その結果、給与草の化学成分含量は生育が進むに従ってその総繊維含量が増加し、粗蛋白質含量が低下した。これに対して乾物摂取量あたりのCH4発生量は総繊維と同様のパターンで増加したが、1731Lであり、従来の報告の範囲内であった。また、同一ステージの乾草及び生草給与時の乾物摂取量あたりのCH4発生量について乾乳牛を用いて比較したところ差は認められなかった。

 

 草地からのCH4N2O発生と家畜糞尿管理

  家畜ふん尿の処理利用過程や施肥に伴って草地からの放出されるGHGの動態を解析することで、その発生実態を把握し、地球環境保全に資することを目的とする。

  そこで、9195969798年に通年測定した採草地におけるCH4N2Oフラックスデータ、及び過去数回のスラリー施用時のガスフラックスデータに基づき、環境庁地球環境研究総合推進費B-2-(4)-◆崛霖呂砲ける温室効果微量ガス放出量の解明に関する研究」において作成した排出係数インデックスの改訂を行い、さらに対策技術として検討してきた家畜ふん尿(スラリー)の施用方法や施肥窒素肥料の種類変更に関するインデックスを追加作成した。

  また、平成9年度に完了した環境庁地球環境研究総合推進費B-16(3)「草地における温室効果微量ガスの動態と制御技術」において、牧草収量及び品質の維持、取り扱いの難易等を考慮して計画した、施肥時のN2O放出量の約5割低減化を可能とする施肥管理方法について、コストの比較を行った。その結果、有効とした施肥計画の肥料代は約1751%増となり、最もコスト高となったのはCDUを使用した施肥設計であった。

 

(3)GHGの排出・吸収目録作成手法の総合評価に関する研究

 第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)においてはCO2のみならずCH4N2OHFCPFCSF6が削減対象ガスとなり、今後、削減目標達成に向けたアクションプランの作成のために、各GHGの精度の高い排出量・吸収量推定が極めて重要である。本研究では、特に、我が国におけるGHGの排出吸収目録の中で、京都議定書のニーズヘの対応を重視し、特に改善の方向性を検討すべきガスおよびカテゴリとして1997年通報GHG目録における精度評価において推計精度が低いもの、推計範囲が不完全なもの、京都議定書の規定により、特に新たな対応が必要となったものとして、CH4およびN2O全般、工業プロセス全般、土地利用変化および林業(LUCF)のCO2およびバイオマス燃焼のCO2について、現状において特に知見が不十分と考え、GHGに係るデータを集約し、エミッションファクター、排出・吸収源のアクティビティ、より適切な推計手法などの各事項について改善するための検討を行い、具体的な改善方法の提示とともに来年度以降に集中的に実測・研究して改善すべき事項を明らかにすることを目的に検討を行った。CH4およびN2Oについて推計精度が低いと考えられたカテゴリーについては統計データ等から得られる活動量の精度に間題があるのではなく、個々の排出源における排出係数の精度の低さが大きな原因であることが明らかになり、今後の更なる調査研究が必要であることが明らかにされた。その中でも「燃料の燃焼(固定発生源)」では既存のデータベースを活用することで、「農業:家畜の腸内発酵」については現状の推計手法で充分とは言えないまでも精度の確保が可能であることが明らかになった。しかし、「廃棄物:下水処理」ではカテゴリーで扱う窒素および炭素量からCH4N2Oの排出ポテンシャルが高いと判断されるものの現状の推計範囲および排出係数の精度が極めて低く、今後の可及的かつ重点的な調査研究の必要性が明らかになった。一方、京都議定書により重要な位置づけとなった「LUCF」では、現行方式によるの森林におけるバイオマス量の把握には大きな誤差が内在していること、直接的な吸収量の測定についても林種の豊富な我が国においては、それぞれの林種に対応する吸収原単位を得ることの困難さが指摘された。また、伝統的に木造家屋の多い我が国においては家屋によるストック量の把握、これら家屋解体材の再利用による効果の評価を行う必要性が明らかになった。

 

4.考察

 研究においてこれまでに得られた成果および環境行政、国際的動向、情勢等をふまえた、今後の検討課題等は、以下に示すとおりである。

 1997年通報温室効果ガス目録における精度評価によれば、CH4およびN2Oについては、「工業プロセス」と「有機溶剤および他の製品使用」以外のすべてのカテゴリが、CO2では、「土地利用変化および林業」が推計精度が低いものと判断されている。ただし、現在の精度評価は、我が国独自の基準に従い専門家の判断により評価されているものであり、国際的なルールに則っているわけではないことに注意する必要がある。また、多くのカテゴリーで推計範囲が不十分であることが示された。特に、「廃棄物」のうち「下水処理(Waste water handling)」はCH4N2Oに対して極めて大きな排出ポテンシャルを持つのにもかかわらず、推計範囲が極めて低い事が指摘されている。このように特にガス種としてCH4N2Oにインベントリー的に不備なものがみられたが、CH4N2OについてはCO2と違い、運転操作条件により放出量が大きく影響を受ける可能性があり、削減対象ガスとしてインベントリーの充実は必要不可欠なものの、それと同時に削減対策技術の開発を計る必要がある。つまり、CH4N2Oの放出量が運転操作条件に依存している限りにおいては削減対策技術は表裏一体としたものと考えられ、相補的な研究開発の積極的な推進が強く望まれる。

 また、京都議定書の規定により、いわゆる「京都Forest」として、森林のCO2固定量(吸収量)大きくクローズアップされ、我が国の削減目標達成には特に重要な課題であるが、森林管理の経緯、多様な森林植生等、我が国の森林に固有な問題もあり、現状の推定方法では必ずしも「良い精度」が確保されるものではない。したがって精度の確保のためにはこれまでの研究成果を踏まえて以下のような今後の研究の方向性が示された。

1)バイオマス量直接計測システムの開発

2)天然林の動的変化を表すモデルの開発

3)下層植生、小径木の炭素固定能力評価

4)林地残材の分解速度および分解量の把握

5〉土壌中炭素含有量の評価

6)家屋解体材の量の把握

7)家屋解体材、小径木、林地残材の燃料としての利用率の把握

8)廃材のリサイクルシステムの把握

9)京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)に関連した熱帯地域の森林の炭素固定量の評価

 

 本研究による一連の成果から、京都議定書に対応する上で多くの知見および現状において不十分であり、今後の研究推進が必要な部分が示され、今後の更なる研究開発により、これらを解決し、真のGHG削減に寄与していく必要があるものと考えられた。

 

5.研究者略歴

課題代表者:西岡秀三

1939年生まれ、東京大学工学部卒業 工学博士国立環境研究所地球環境研究グループ統括研究官(19994月より 慶応義塾大学大学院教授)

主要論文:

1) 21世紀の地球の姿 人類生存のための化学 第一章 大日本図書 1998

2) 地球温暖化にどう対応すべきか 日学双書28 日本学術協力財団 1999

3) Fairnes and local environmental concerns in climate policy, Fair Weather, Earthscan l999. London

 

サブテーマ代表者

(1) ‐綸朕晋

1962年生まれ、東京農工大学連合農学研究科卒業、農学博士、資源環境技術総合研究所(19994月より日本大学生物資源科学部)

主要論文:

1) Ueda. S., N. Ogura and E. Wada (1991): Nirtogen stable isotope ratio of groundwater N2O, Geophys. Res. Lett.

2) Ueda, S. N. Ogura and T. Yoshinari (1993): Accumulation of nitrous oxide in aerobic groundwaters. Wat. Res.

3) Ueda. S. and N. Ogura (1999): Mass balance and nitrogen isotopic determination of sources for N2O in an eutrophic river, Jpn. J. Limnol.

 

(1)◆〆愼8橘

1946年生まれ、山形大学農学部部卒業、農学博士、現在、農業環境技術研究所研究所環境管理部計測情報科上席研究官

主要論文:

1) Genya Saito. Nobuyuki Mino, Shigeo Ogawa, Takuhiko Murakami, Min Cong, Marcelina M. Dumayac, Arlene M. Evangelista and Hiroshi Ohkura (1998): The Environmental Monitoring for Mt. Pinatubo Area in the Philippines Using Satellite Optical and SAR Data, Proceedings of the 19th Asian Conference on Remote Sensing, J-8-1-6

2) Genya Saito. Shigeo Ogawa, Nobuyuki Mino, Akira Hirano and Hiroshi Ohkura*: The Environmental Monitoring on Mt. Pinatubo Area in the Philippines Using Remote Sensing Data, Advances in the Astronomical Sciences vol.96 423-432.

3) Genya Saito (1997): Agriculture Studies Using Remote Sensing Data in Semi-arid Area, Proceeding of the first Saudi-Japanese Symposium on Remote Sensing Application, pp217-225

 

(1) 斎藤元也((1)△貌韻検

 

(1)ぁ[咫\宜

1941年生まれ、東京都立大学理学研究科卒業、現在、資源環境技術総合研究所環境影響予測部主任研究官

主要論文:

1) Hayashi et al., (1997): Observational studies on CO2 exchange between the atmosphere and tropical seasonal forest, Proceedings of Comparative studies on CO2 fluxes observed by towers at several forests in the world.

2) Hayashi M. and Taguchi S. (1996): Atmospheric response to biosphere activity, Proceedings of Tropical Forestry in the 21th century.

3) Hayashi M. et a1. (1996): A cese study of the outflow of pollutant in east Asia, Proceedings of International Conference on acid deposition in east Asia.

 

(1)ァ‥渓鄒鞠

1946年生まれ、名古屋大学農学部卒業、農学博士、林業試験場経営部研究員、現在、森林総合研究所林業経営部資源計画科長

主要論文:

1) Amano, M., Incorporating Climate Considerations into the National Forest Basic P1an in Japan, 1997.11, Critical Reviews in Environmental Science: and Technology, Vol. 27, 113-122

2) Amano, M. Land Capability Planning, Forestry and Environmental Protection in Japan, Environmental Management: The Role of Eucalypts and Other Fast Growing Species, Proceedings of the Joint Australian/Japanese Workshop held in Australia, 1996, 131-137

3) Amano, M. Noochdumrong, K. Pragtong. S. Kalyawongsa, T. Lakhaviwattanakul, H. kuboyama Historical Changes of Forested Area in Thailand, Tropical Forestry in 21st Century, 136-146. 1996.ll.

 

 

(1)Α‐木知子(おぎともこ)

1954年生まれ、東京大学理学部化学科卒業、工学博士、通産省・資源環境技術総合研究所、温暖化物質循環制御部バイオマス研究室、現在、バイオマス研究室室長

 

主要論文:

1) 美濃輪智朗、小木知子:バイオマス廃棄物及び未利用バイオマスの油化反応、石油学会誌 vol 41, pp11-21 (1998)

2) 横山伸也、田原聖隆、小島紀徳、稲葉 敦、小木知子:持続的な植林によるバイオマス発電のCO2排出削減量の評価−LCA的検討−、日本エネルギー学会誌、第77巻第5 (1988)

3) 土手 裕、小木知子:森林系バイオマス・エネルギーの供給量予測、資源と環境、vol 6, pp65-70 (1997)

 

(1)А‥渓鄒鞠遏福複院豊イ貌韻検

 

(2) ^霓考平

1947年生まれ、鹿児島大学大学院農学研究科修士課程修了、理学博士、現在、環境庁国立環境研究所地域環境研究グループ総合研究官

主要論文:

1) Inamori, Y., Wu, X. L., Mizuochi, M.: N2O producing capability of N. europaea, N. winogradskyi and A. faecalis, Water Sci, Tech., 36, 65-72, 1997

2) Kimochi, Y., Inamori, Y., Mizuochi, M., Xu, K. Q., and Matsumura, M.: Nitrogen Removal and N2O Emission in a Full-scale Domestic Wastewater Treatment Plant with Intermittent Aeration, Journal of Fermentation and Bioengeneering, 86, 202-206, 1998

3) Mizuochi, M., Sato, K., Inamori, Y. and Matsumura, M.: Emission Characteristics of Greenhouse Gas N2O from Sewage Sludge Incineration Process, Japanese J. Water Treat. Biol., 34, 267-277, 1998

 

(2)◆…疆勅M

1941年生まれ、東京大学理学部卒業、横浜市公害研究所研究員、現在、農業環境技術研究所影響調査研究室長

主要論文:

1) 鶴田治雄、米村祥央、蓑毛康太郎、楊 宗興、赤木 右、和田幸絵、犬伏和之、Abdul Hadi、杉井穂高、木平英一(1999):尾瀬ヶ原におけるメタン発生、「尾瀬の総合研究」尾瀬学術調査団編、192-216

2) Tsuruta, H., Y. Ozaki, Y. Nakajima and H. Akiyama: Methodology for LCA in agricultural systems-Impact assessment of rice paddy fields on atmospheric and aquatic environments--, in Proceedings of the third International Conference on Ecobalance, in Tsukuba, Nov. 25-27 1998, 209-212 (1998)

3) TsurutaH., K. Kanda and T. Hirose: Nitrous oxide emission from a rice pady field in Japan, Nutrient Cycling in Agroecosystems, 49, 51-58 (1997)

 

(2) 渡辺 武

1968年生まれ、東京大学農学部卒業現在、農林水産省国際農林水産業研究センター環境資源部研究員

主要論文:

1) T. Watanabe, T. Osada, M. Yoh and H. Tsuruta,: "N2O and NO emissions from grassland soils after the application of cattle and swine excreta", Nutrient Cycling in Agroecosystems, 49:35-39 (1997)

2) T. Watanabe. P. Chairoj, H. Tsuruta, W. Masarngsan, C. Wongwiwatchai, S. Wonprasaid, W. Cholitkul and K. Minami, : "Nitrous oxide emissions from fertilized upland fields in Thailand". Nutrient Cycling in Agroecosystems. (in press)

3) 渡辺 武、陽 捷行、石川隆之:「肥効調節型肥料および硝酸化成抑制剤入り肥料による亜酸化窒素の発生抑制効果」、日本土壌肥料科学雑誌、(投稿中)

 

(2)ぁ…疆勅M此福複押豊△貌韻検

 

(2)ァ“木一行

1959年生まれ、名古屋大学大気水圏科学研究所修士課程終了、現在、農水省国際農林水産業研究センター環境資源部主任研究官

主要論文:

1) Yagi, K., H. Tsuruta, K. Kanda, and K. Minami: Effect of water management on methane emission from a Japanese rice paddy field: Automated methane monitoring, Global Biogeochemical Cycles, 10, 255-267, 1996

2) Yagi, K., H. Tsuruta, and K. Minami: Possible options for mitigating methane emission from rice cultivation, Nutr. Cycl. Agroecosys., 49, 123-220, 1997

3) Yagi, K., K. Kumagai, H. Tsuruta and K. Minami: Emission, production, and oxidation of methane in a Japanes rice paddy field, in Soil Management and Greenhouse Efect, edited by R. Lal et al., pp.231-243, Lewis, Boca Raton, 1995

 

(2)Α…疆勅M此福複押豊△貌韻検

 

(2)А〇田文典

1955年生まれ、東北大学農学部卒業、現在、農水省畜産試験場栄養部反すう家畜代謝研究室長

主要論文:

1) Shibata, M., F. Terada, M. Kurihara, T. Nishida, K. Iwasakki. Estimation of methane production in ruminants. Anim. Sci. Technol. (Jpn.), 64:790-796, 1993.

2) 寺田文典・栗原光規・西田武弘・塩谷 繁 泌乳牛における窒素排泄量の推定、日本畜産学会報、68:163-168. 1997.

3) M Kurihara, M Shibata, T Nishida, A Purnomoadi and F Teradaet, Methane production and its dietary manipulation in ruminants, Rumen Microbes and Digestive Physiology in Ruminants, 199-208, 1997

 

(2)─―唾 岳

1966年生まれ、明治大学農学部卒業、現在、農林水産省草地試験場環境部土壌物質動態研究室研究員

主要論文:

1) 山本克巳、渋谷 岳:畜産における温室効果ガスの発生制御 第四集、139-1631999)草地からのメタンおよび亜酸化窒素の発生とその制御(b)亜酸化窒素

2) 渋谷 岳、川内郁緒、野中邦彦:草地飼料作研究成果最新情報 14, 71-72 (1999)
硝化抑制剤添加スラリーの土中施用によるメタン及び亜酸化窒素放出量の低減

3) 渋谷 岳、川内郁緒、野中邦彦:草地飼料作研究成果最新情報 14, 73-741999
肥効調節型窒素肥料の利用による採草地からの亜酸化窒素放出の低減(予定)

 

(3)西岡秀三(研究代表者に同じ)