課題名

B-13 地球温暖化による人類の生存環境と環境リスクに関する研究

課題代表者名

安藤 満 (環境庁国立環境研究所)

研究期間

平成5−7年度

合計予算額

84,161千円 (うち7年度 28,052千円)

研究体制

(1) 暑熱による生体防御系と代謝解毒系の変動と疾病発生に関する研究(環境庁国立環境研究所)

(2) 東アジア地域におけるマラリア及び媒介蚊の地理的分布とその規定要因の解明に関する研究

(環境庁国立環境研究所)

(3) 地球温暖化による健康影響と健康リスク評価に関する研究(厚生省国立公衆衛生院)

研究概要

 人類を取り巻く生存環境と生活環境に対する温暖化影響の中で、IPCCWHOなどの国際的な評価のために、健康リスクとして反映すると予測される重要な課題について研究を実施する必要がある。この研究においてはその課題の中から、暑熱と人の熱射病発生との関連の研究、疾病発生に強く関与する生体防御系・免疫系に対する暑熱の影響の研究、人の死亡に及ぼす暑熱の影響の研究、熱帯病マラリア拡大に及ぼす温暖化の影響の研究を行うこととしている。

(1)国際共同調査により暑熱による疾病発生過程の解析を行うとともに、生体防御系と免疫系を中心に熱ストレスの影響を検討する。調査と実験を総合し、地球温暖化のシナリオに基づき、暑熱の増強に伴う人の健康リスクの予測と評価を行う。

(2)動物媒介性感染症のマラリアについて、熱帯、亜熱帯の東アジア地域を対象に、マラリア及び媒介蚊と気象条件との関係を把握する。流行モデルのパラメータに基づき、東アジア地域気候変動シナリオによるマラリアの流行域の拡大を予測する。

(3)人口動態統計等の既存衛生統計資料を用いて、暑熱と死亡に関する影響予測研究を行うとともに、居住環境における生活温度を把握する。衛生統計に関する既存データ及び新規データを再構築し、データベース化の可能性を検討する。

研究成果

(1)地球温暖化による直接的健康影響の評価のため、中国中南部の武漢と東京において夏期の猛暑と熱射病の発生の関連について疫学調査を行うとともに、生体防御系・免疫系への影響について研究し、温暖化に伴う暑熱増強による免疫系の抑制機構の解明と疾病発生に及ぼす影響について解析した。調査と実験を総合し、IPCCの温暖化のシナリオに基づき、夏期の暑熱の増強に伴うリスクについて、予測と評価を行った。

(2)温暖化によるマラリアの拡大を予測するため、マラリア患者発生数、住民のマラリア原虫に対する抗体価の測定及び、媒介蚊の分布と地理的気象条件等のデータを収集するため中国雲南省における疫学調査を実施するとともに、沖縄県石垣島において媒介蚊の生態調査を実施し、温暖化の影響を検討した。流行モデルのパラメータに基づき、東アジア地域気候変動シナリオによるマラリアの流行域の拡大を予測した。

(3)温暖化による健康影響を予測するために既存の衛生統計資料について解析し、気温と65歳以上の総死亡との関連について検討した。地域毎に観測される65歳以上の総死亡に及ぼす日最高気温の影響について、温暖化との関連において解析した。同時に新しいデータベース構築のための検討を行った。