研究成果報告書 J95B1310.HTM

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[B−13 地球温暖化による人類の生存環境と環境リスクに関する研究]

(1)暑熱による生体防御系と代謝解毒系の変動と疾病発生に関する研究


[研究代表者]

国立環境研究所地域環境研究グループ  ●安藤 満

[環境庁 国立環境研究所]

 地域環境研究グループ健康影響国際共同研究チーム

●安藤 満・山元昭二

 環境健康部環境疫学研究室

●田村憲治

福岡女子大学

●若松國光

日本農村医学研究所

●浅沼信治

松本歯科大学

●川原一祐

(委託先)

山梨医科大学

●入來正躬

 

東北大学

●佐藤 洋・渡辺知保


[平成5〜7年度合計予算額]

32,891千円

(平成7年度予算額 11,212千円)


[要旨]

 日本および中国における疫学調査の結果、因果関係の明確な熱中症に関して気温と熱中症搬送者数の間に明確な相関関係が見いだされた。この回帰式から東京都では1日の平均気温約25℃、最高気温約29℃から熱中症搬送者が出始め、平均気温30℃以上、最高気温34℃以上では、10人以上の熱中症搬送者が発生すると見込まれる。
 また中国南京市・武漢市における夏期の暑熱による健康影響に関する日中共同調査によると、平均気温が31℃、最高気温が35℃を超えはじめると熱射病患者の発生が観察される。特に数日連続して32℃を超える猛暑の時期には、著しい熱射病患者の発生と熱射病患者の死亡の急増が観察されている。これらの調査結果は、同じく温帯地方に位置する日本の東京と中国の南京市・武漢市の気温と熱射病患者発生動向とは類似していることを示しており、技術的対応と身体的適応の面を踏まえた詳細な解析が必要がある。
 このように熱中症の発生や予防対策を考えるとき、救急搬送データは死亡データ以上に有効な指標である。このため熱射病の発生動向の解析に基づき、地球温暖化により夏期の気温が1〜4℃上昇した際の、東京における熱射病の広がりを予測した。この予測は今後の研究により精度向上と適用範囲の拡大をはかる必要がある。今後、地球温暖化による地域毎の夏期の暑熱の増加と、その影響予測が確立できるようになると、気温上昇に備えた予防対策が可能となると考えられる。
 一方これまでの研究の中で人においては、暑熱に対する感受性が著しく異なることが明らかになっている。人の感受性は各組織や細胞レベルでも大きく異なり、その違いが最終的に個体差となって現れている可能性がある。標的組織や細胞レベルの影響指標は、動物を用いた実験的研究に依存せざるを得ない。気温と湿度を制御できるシミュレーターにおいて、動物に熱ストレスを加え、生体防御系と代謝解毒系の変動を疾病発生との関連において検討した結果、熱ストレスにより代謝解毒能、生体防御能が暑熱暴露によって低下することが明らかとなった。


[キーワード]

熱ストレス、熱中症、生体防御、免疫、抗体、ラジカル