課題名

B-12 地球温暖化による都市環境の影響評価及び対策に関する研究

課題代表者名

松尾 友矩 (東京大学工学部都市工学科)

研究期間

平成2−4年度

合計予算額

67,572千円

研究体制

(1) 都市環境への影響の評価システムの開発と総合評価に関する研究

(環境庁国立環境研究所、東京農工大学工学部)

(2) 都市エネルギーシステムヘの影響評価及び対策に関する研究(東京大学工学部)

(3) 都市水利用・循環システムヘの影響評価及び対策に関する研究(京都大学工学部)

(4) 都市大気環境への影響及び対策に関する研究(北海道大学工学部)

(5) 防災・都市基盤施設システムヘの影響評価及び対策に関する研究(九州大学工学部)

研究概要

 地球の温暖化は、地球の人間活動による温室効果ガスの排出と蓄積によってもたらされる。都市は巨大な人間活動を集積させることによって、その存在意義を示すともいえるが、そのことにより都市は地球温暖化の進行にとって重要な責任を負うことになっている。一方、現代の都市、特に巨大都市にあっては、自然の条件の変化に対して影響されやすい体質を持っている。現代の社会が保有する資産の多くは都市に存在しており、そこに居住する人々の割合も大きく、地球温暖化などの影響が都市活動の諸側面に現れるとすれば、その影響を正しく評価しておくことが必要である。また都市は温室効果ガスの発生源でもあるので特にそのエネルギー消費構造を基本的に省エネ的なものへ変えていくという根元的対策を立てていくことが求められる。

 本研究においては、以上のような問題を総合的に検討していくために前記研究体制を組み、それぞれの研究を行った。

研究成果

1.地球温暖化の都市に及ぼす影響は、たとえ個々の影響が小さくともその波及的効果は大きい。大量のデータを体系化して評価に持ち込むための知識ベースシステムを開発した。

2.廃棄物最終処分場ガス抜き井戸からのメタン放出量と気象条件との関係では短期的には、気圧の上昇及び下降変化に対応してそれぞれメタン放出量が減少及び増加することがわかった。

3.都市におけるエネルギー消費構造の国際的・地域的な多様性が認められた。とりわけ中国における石炭依存型・物質生産依存型の消費構造やアメリカにおける消費量原単位の大きいこと地域的一様性が強いことが注目された。

4.燃料種毎に暖房デグリーマンスと家庭部門の人口1人当たり消費原単位との関係が明らかにされ、日本の灯油並びに中国の石炭において高い正の相関が得られた。気温上昇時のインパクトは国によって異なり、日本では寒冷な都市ほどインパクトは大きい。

5.都市代謝シミュレーションシステムを開発し、都市の未利用エネルギーの適正利用のための対策モデルを提示した。東京都区部をフィールドとした解析を行った。

6.都市水利用・循環システムヘの温暖化の影響の要因・要素の関連図を作成した。

7.気温上昇と湖沼の表層水温との関係は、琵琶湖南湖および北湖、その他の日本の26湖沼、ならびに世界の117湖沼を対象に相関分析を行い、気温が1℃上昇すると湖沼の表層水温も1℃程度上昇することが示された。

8.この湖沼水温の上昇により、富栄養化湖沼の有機物濃度の上昇および水温成層の長期化をもたらし、平均気温3℃の上昇で底層水の溶存酸素濃度は枯渇する可能性が大きくなることが、データ解析および生態系モデルでのシミュレーションにより示された。

9.平均気温上昇は生物反応を加速し、水使用量を増大させ、海面上昇は下水中硫酸塩濃度を増大させコンクリート構造物の劣化を促進することの実例が提示された。

10.地球温暖化に伴い、都市大気中のオゾン(光化学スモッグ)濃度が増加することが予想される。札幌においてこのオゾンの生成に大きく寄与するPAN濃度変動調査と変動要因の感度解析を行い、特に高温時におけるPANの影響が重要であることを明らかにした。

11.雲が存在する場合の対流圏光化学反応モデル、および北緯30-60度の緯度帯を対象として積雲による鉛直輸送過程を考慮したモデルを作成した。

12.地球温暖化の社会基盤施設に及ぼす影響を社会的リスクとして評価する方法として、人間活動や生産活動への障害などを考察した。

13.都市の洪水災害に関し、都市における雨水排除システムの安全度と都市域における浸水被害の制御手法に関する検討を行い、浸水被害のリスク評価手法を示した。