第3章先頭(3章目次)に戻る平成15年度(2003年度)版 「化学物質と環境」
「調査結果の評価」先頭に戻る第3章 平成14年度モニタリング調査結果

<< [6]ヘプタクロル[8] 有機スズ化合物 >>
   
[7] HCH (ヘキサクロロシクロヘキサン)類 【平成14年度調査媒体:水質、底質、生物
 
調査の経緯及び実施状況

 HCH類は農薬、家庭用殺虫剤、防疫用薬剤、シロアリ駆除剤等として使用された。昭和46年に農薬及び家庭用殺虫剤としては使用禁止されたが、シロアリ駆除剤や木材処理剤としての使用は続いた。

 HCH類には多くの異性体が存在するが、本件調査においてはα、β、γ、δの4種の異性体を調査対象物質として選定し、平成14年度はα、βの2種の異性体を対象にモニタリングを実施した。

 過去の本件調査においては、「生物モニタリング」で昭和53年度から平成8年度までの毎年と平成10, 12, 13年度に生物媒体(魚類、貝類、鳥類)について調査を実施し、「水質・底質モニタリング」で水質は昭和61年度から平成10年度まで、底質は昭和61年度から平成13年度の全期間で調査を実施している。

 
調査結果

 平成14年度のモニタリング調査において、HCH類は全ての環境媒体・地点・検体から検出された(水質:38地点114検体、底質:63地点189検体、魚類:14地点70検体、貝類:8地点38検体、鳥類で2地点10検体)。

 α-HCHの測定結果は、水質で 1.9~6,500pg/L、底質で 2.0~8,200pg/g-dry、魚類で tr(1.9)~590pg/g-wet、貝類で 12~1,100pg/g-wet、鳥類で 93~360pg/g-wetであった(定量下限値:水質 0.09又は 0.9pg/L、底質 1.2pg/g-dry、生物4.2pg/g-wet)。

 β-HCHの測定結果は、水質で 24~1,600pg/L、底質で 3.9~11,000pg/g-dry、魚類で tr(5)~1,800pg/g-wet、貝類で 32~1,700pg/g-wet、鳥類で 1,600~7,300pg/g-wetであった(定量下限値:水質 0.09又は 0.9pg/L、底質 0.9pg/g-dry、生物 12pg/g-wet)。

 
評価

 水質は、α-HCHが0~1地点、β-HCHとも減少傾向にあり、平成6年度以降定量下限値(10,000pg/L)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.09pg/L又は 0.9pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、平成6年度以降の残留状況は定量下限値未満で推移していたと推定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。

 底質は、α-HCH、β-HCHともに過去データにおける数値の変動が大きく残留状況の傾向の判断は困難である。平成14年度は定量下限値α-HCH: 1.2 pg/g-dry β-HCH: 0.9pg/g-dry において全地点・全検体から検出されたことから、依然として広範な地点で残留が認められる。

 魚類及び貝類は、昭和50年代後半から昭和60年代の残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値α-HCH: 4.2pg/g-wet、β-HCH: 12pg/g-wetにおいて全地点・検体から検出されたことから、依然として広範な地点で残留が認められる。

 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は残留状況の変化に傾向は見られず、依然として残留が認められる。

 

 HCH類は、γ体以外の異性体は残留性が高いと言われておりPOPs条約の候補物質となる可能性があり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続しその消長を追跡する必要がある。

 
   ○ 平成14年度α-HCHの検出状況  経年変化図
媒体
( )内は単位
幾何
平均値
中央値

70%値

80%値

90%値

95%値

最大値 定量
下限値
検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
84 76 160 200 250 410 6,500 0.9,
0.09
114/114 38/38
底質
(pg/g-dry)
130 170 300 380 980 1,900 8,200 1.2 189/189 63/63
生物:魚類
(pg/g-wet)
51 56 120 170 350 420 590 4.2 70/70 14/14
生物:貝類
(pg/g-wet)
65 64 85 92 470 870 1,100 4.2 38/38 8/8
生物:鳥類
(pg/g-wet)
160 130 210 230 340 360 360 4.2 10/10 2/2
 
  ○ 平成14年度β-HCHの検出状況  経年変化図
媒体
( )内は単位
幾何
平均値
中央値

70%値

80%値

90%値

95%値

最大値 定量
下限値
検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
210 180 370 520 960 1,100 1,600 0.9,
0.09
114/114 38/38
底質
(pg/g-dry)
200 230 460 770 1,400 3,000 11,000 0.9 189/189 63/63
生物:魚類
(pg/g-wet)
99 120 180 350 610 1,500 1,800 12 70/70 14/14
生物:貝類
(pg/g-wet)
89 62 92 120 850 1,300 1,700 12 38/38 8/8
生物:鳥類
(pg/g-wet)
3,000 3,000 4,100 4,500 6,300 7,300 7,300 12 10/10 2/2
 
 注: 水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採取量30L)、下段が大量採水システム(採取量100L)のものである。
 
[8] 有機スズ化合物へ

目次へ戻る