化学物質と環境円卓会議(第23回)議事録

■開催日時:平成21年3月31日(火) 13時00分〜16時00分

■開催場所:主婦会館プラザエフ クラルテ(地下2階)

■出席者:(敬称略)

<スピーカー>
木村 博承 環境省環境保健部環境安全課長
西山 直宏 日本石鹸洗剤工業会 環境・安全専門委員会委員(中谷吉隆代理)
岩本 公宏 (社)日本化学工業協会 広報部部長
<学識経験者>
北野 大 明治大学理工学部教授
原科 幸彦 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
<市民>
新井 智恵子 主婦連合会 環境部(有田芳子代理)
大沢 年一 日本生活協同組合連合会 組織推進本部 環境事業推進室長
後藤 敏彦 環境監査研究会/サステナビリティ・コミュニケーションネットワーク 代表幹事、社会的責任投資フォーラム代表
崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
角田 季美枝 バルディーズ研究会 運営委員
中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長
村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパン シニア・オフィサー
<産業界>
越智 仁 三菱ケミカルホールディングス 執行役員 経営戦略室長
チーフ サスティナビリティ オフィサー 兼 三菱化学 執行役員
経営企画室長
瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会 広報委員会顧問
川口 清二 電機・電子4団体2008年事業所関連化学物質対策専門委員会副委員長 (谷口幸弘代理)
大野 郁宏 日本チェーンストア協会 環境委員会委員
<行政>
山本 佳史 愛知県環境部技監
小栗 邦夫 農林水産省大臣官房審議官
岸田 修一 厚生労働省大臣官房審議官
後藤 芳一 経済産業省製造産業局次長
原 徳壽 環境省環境保健部長
<事務局>
木村 博承 環境省環境保健部環境安全課長
(欠席者)
安井 至 (独)科学技術振興機構 研究開発戦略センター 上席フェロー
三枝 省吾 (社)日本自動車工業会 環境委員会 製品含有化学物質管理分科会 副分科会長

■資料:

○事務局が配布した資料

資料1-1 環境省における身近な化学物質に関するリスクコミュニケーションの推進〜かんたん化学物質ガイドを例に〜(木村さん発表資料)[PDF(266KB)]
資料1-2 冊子「かんたん化学物質ガイド」[HTML]
木村さん参考資料1 パンフレット「化学物質アドバイザーパンフレット」[PDF(2.7MB)]
木村さん参考資料2 冊子「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック〜化学物質による環境リスクを減らすために〜平成19年度集計結果から〜」[HTML]
資料2 洗剤の安全性と環境(西山さん発表資料)[PDF(348KB)]
西山さん参考資料 冊子「暮らしの中の石けん・洗剤」(会場のみ配布)(参考:日本石鹸洗剤工業会のページへ)
資料3 「化学製品の安全・安心のために 産業界が発信するメッセージ(例)」(岩本さん発表資料)[PDF(31KB)]
岩本さん参考資料1 冊子「もっと知ってほしい食品添加物のあれこれ」(日本食品添加物協会のページへ)
岩本さん参考資料2 冊子「食べものと農薬」(会場のみ配布)(参考:農薬工業会のページへ)

○事務局が配布した参考資料

参考資料1 第22回化学物質と環境円卓会議 議事録 [HTML]
参考資料2 化学物質と環境円卓会議メンバー一覧 [PDF(16KB)]

○円卓会議メンバーが配布した参考資料

原科さん参考資料 リスクアセスメントに関する国際会議お知らせ〔英文〕(会場のみ配布)

■議事録

1.開会

(事務局)  本日は年度末の大変お忙しい時期にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。定刻となりましたので、第23回化学物質と環境円卓会議を開催させていただきたいと思います。
  この化学物質と環境円卓会議は、化学物質の環境リスクに関する情報を市民、産業、行政、学識経験者間で共有し、相互理解を進めるために、平成13年に設置されたものです。本日は北野さんに司会をお願いしておりますので、今後の進行につきましては北野さんにお願い申し上げます。なお、当会議のメンバーの取決めにより、会議に出席されている方々には「さん」付けで呼ばせていただくことになっていますので、よろしくお願い申し上げます。

(北野)  ただいまから第23回化学物質と環境円卓会議を開催いたします。今回は「身近な化学物質」をテーマに、まずは環境省と産業界において、化学物質によるリスク削減の取組をどのように行っているかについて御紹介をいただき、その後に意見交換をしたいと思います。
  情報を提供していただく4人の方を最初に御紹介します。環境省環境保健部環境安全課長の木村博承さん。次に、日本石鹸洗剤工業会環境・安全専門委員会委員、花王株式会社安全性評価研究所室長の西山直宏さん。3人目は日本化学工業協会広報部部長の岩本公宏さん。そして最後に、東京工業大学大学院総合理工学研究科 原科幸彦さんです。まずこの4人の方に情報提供をいただき、その後休憩を挟み、そして議論に入りたいと思っています。
  それでは、議事に入ります前に、事務局より資料の確認等をお願いします。

(事務局)  事務局から資料の確認と本日のメンバーの出席状況について御報告いたします。まずメンバーについて交代等の方々がおられますので御紹介いたします。
  産業界より、日本化学工業協会の甲賀国男さんから越智仁さんに、日本自動車工業会の八谷道紀さんから三枝省吾さんに代わられました。本日、三枝さんは御欠席です。
  次に行政側ですが、まず厚生労働省の黒川達夫さんから岸田修一さんに、農林水産省の佐々木昭博さんから小栗邦夫さんに、経済産業省の照井恵光さんから後藤芳一さんに、そして、環境省の石塚正敏さんから原徳壽さんに交代されました。
  本日は代理出席の方が若干名おられます。市民側の主婦連合会の有田芳子さんの代理として新井智恵子さん、産業界の方では、日本石鹸洗剤工業会の中谷吉隆さんの代理として西山直宏さん、電機・電子4団体の谷口幸弘さんの代わりに川口清二さんに御出席いただいています。それから産業界の三枝省吾さん、学識経験者の安井至さんから御欠席の御連絡を受けています。なお、本日まだお見えになってない方がおられますが、後刻こちらの方に到着する予定と聞いております。
  次に資料の確認に入りたいと思います。まず資料1−1は木村さんの発表資料です。資料1−2は「かんたん化学物質ガイド」で全5種類ございます。こちらは、メンバーにのみ配布しています。続いて、木村さんの参考資料1「化学物質アドバイザーパンフレット」、参考資料2「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」です。西山さんからは資料2の「洗剤の安全性と環境」と参考資料「暮らしの中の石けん・洗剤」です。資料3は岩本さんの発表資料で、参考資料1「もっと知ってほしい食品添加物のあれこれ」と参考資料2「食べものと農薬」もございます。また、事務局からの参考資料1として前回の化学物質と円卓会議議事録、参考資料2としてメンバー一覧がございます。最後に、原科さんから、参考資料として国際会議の資料がございます。資料については以上ですが、万一お手元に今御説明しました資料がないようでしたら事務局へお申し付けください。
  最後に、傍聴の方々にはアンケート用紙をお配りしています。皆様方の本日の感想を御記入いただき、受付にお渡しいただければ幸いです。事務局からは以上です。

(北野)  それでは早速議論に入りたいと思います。今回の議題は、先ほど申し上げましたように「身近な化学物質」です。身近な化学物質について、産業界や行政においてどのような取組をしているか、その点についてまずお話をお伺いし、その後議論を展開していきたいと思います。木村さん、西山さん、岩本さん、原科さんの順にお話をいただきます。この時間は非常に眠い時間帯です。スピーカーの方には、聴衆を眠らせないような講演を、できれば寝た子を起こすような講演を期待していますので、時間厳守の上、お願いできればと思っています。では最初に木村さんからお願いします。

(木村)

木村さん写真  私からは「環境省における身近な化学物質に関するリスクコミュニケーションの推進」ということで、環境省において推進しておりますリスクコミュニケーションの具体的な内容の一端をお示しさせていただきたいと思います。特に本日は、もしかすると御存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、一般の方々向けに、化学物質についての理解と普及・啓発という観点から作成し、広範囲に配付しています「かんたん化学物質ガイド」を中心に御説明したいと思います。


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  「はじめに」に続きまして、「かんたん化学物質ガイド」の御紹介をし、それから今後の取組という流れで話をさせていただきたいと思います。


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  まずは身の回りの化学物質の例です。皆様御承知のように、私どもの身の回りには多くの化学物質を使った製品があふれています。また、これらの製品によって、便益を被っている部分が非常に多いわけですが、一方、その使い方や量等を誤った時には人や環境への影響が出てくる場合もあるため、それらに対する対策等を取っています。
  まず、日常、家庭では、お風呂、洗面所、化粧台のようなところで石けんをはじめ、スプレー等の多くのものが使用されています。また、食事を通じて食品添加物等の化学物質が取り込まれています。さらに、洗濯する際には合成洗剤が中心に使われ、掃除をする場合には、用途に応じて、カビ取り剤、トイレの洗浄剤等化学物質を使った製品が使用されています。さらに、私たちが屋外に出て活動する場合には、車、バイク等で使われるガソリン由来の排気ガス等とも遭遇することになります。
  また、疾病あるいは少し体調が悪くなった時に服用する医薬品にもやはり化学物質が使われていますし、家の中に害虫等が入ってきた場合には、虫対策ということでそれに適した化学物質が使われています。


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  しかしながら、身の回りのものが非常に多くの化学物質から作られているにも関わらず、化学物質によるリスク等について考える機会は少ないのではないでしょうか。従って、化学物質の安全性に対して、いま一度関心を持っていくことが重要であろうと思われます。


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  現在の化学物質対策としての法的な規制の概要を示した模式図です。非常に多くの法律から成り立っています。例えば、ばく露では、労働環境であれば労働安全衛生法(注、労働災害防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的な対策を推進する法律)を中心としたようなもの、それから環境経由であれば毒劇法(注、毒物及び劇物取締法;毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする法律)化審法(注、化学物質審査規制法;化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)化管法(注、化学物質排出把握管理促進法;特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)、工場等であれば大気汚染防止法(注、ばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、自動車排出ガスの許容限度を定め、また健康被害が生じた場合の事業者の損害賠償責任について定めている法律)水質汚濁防止法(注、工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する汚水を規制する法律)といったものがございます。また、消費者と特に関わりの深い法律としては、食品衛生法(注、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制等の措置を図る法律)薬事法(注、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医療品及び医療機器の研究開発の促進を図る法律)有害家庭用品規制法(注、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律;有害物質を含有する家庭用品について保健衛生上の見地から必要な規制を行なうことを目的とする法律)建築基準法(注、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定める法律)農薬取締法(注、農薬の規格や製造、販売、使用等の規制を定める法律)といったものが関わってきます。


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  いずれにしても化学物質が大量に生産されるようになってきて、環境中にも放出されることが多くなり、国民の間にはこれに対する不安や関心がございます。このためリスクコミュニケーションを通じて少しでも化学物質についての情報共有を図る必要があります。


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  その取組としては、市民、産業、行政等の全ての関係者が情報を共有し、そこからお互いの意見を出し合っていくことが、第一歩ではないかと考えています。


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  このような取組については、平成18年に閣議決定されました第3次環境基本計画の中にも、「リスクコミュニケーションの推進」が重点取組事項の一つとしてしっかりと組み込まれています。この中では、単に行政だけが取り組むわけではなく第三者による情報の評価や双方向のコミュニケーション、研究者の方々のネットワークの構築や、人材の育成、データベースの構築といったことも進めていくことが謳われています。


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  このような流れの中で、各省庁ではリスクコミュニケーションを進めているわけですが、私ども環境省におきましては、まずは情報の提供のためのインフラ整備、対話を推進していくためのツール、今回のこのような場の提供の3本柱で進めているところです。


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  それを模式図にしますと、情報の提供、対話の推進、場の提供が最終的には一体となります。一般市民の方々に対して情報を的確に、中立的な立場で供給することが、このコミュニケーションの一番大きな意義ではないかと思っています。


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  本日はその一環としてお手元に資料1−2を配布しています。これは環境省が作成した「かんたん化学物質ガイド」です。「わたしたちの生活と化学物質」や「乗り物と化学物質」等、これまで5冊をシリーズものとして作らせていただき、広く一般の方々に提供しています。本日は、この中身に若干触れながら説明したいと思いますが、その前に他の取組についても御紹介いたします。


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  もう少し専門的なもので「化学物質ファクトシート」がございます。少し厚めの冊子になっています。化管法で指定されている化学物質のうち、現在259物質についての情報がまとめられています。それぞれの化学物質の用途、特性、現行でのばく露、毒性といったものが、それぞれの物質ごとにコンパクトに簡潔にまとめられています。これらの情報はインターネット上でも御覧いただけるようになっています。


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  また、化学物質アドバイザー(注、化学物質に関する専門知識や、化学物質について的確に説明する能力等を有する人材であり、中立的な立場で化学物質に関する客観的な情報提供やアドバイスを行う)の派遣・育成を実施しています。これは、環境省が実施する化学物質に関する試験に合格し、中立的な立場で行動していただく方を登録する制度で、現在45名の化学物質アドバイザーがいます。アドバイザーの方々には、対話集会等に参加をして、正確な情報を提供するという役割を果たしていただいています。


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  さらにインターネット上でも「E−ラーニング」と称し、小学生をはじめとする子供を対象に、化学物質に関する問題をクイズ形式で出題し、遊びながら化学物質に関する知識や理解を深めてもらうためのサイトを展開しています。その際にも、「かんたん化学物質ガイド」の情報を活用しています。


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  本日は化学物質と環境円卓会議を開催していますが、このような会議については、単に国だけが行うということではなく、各市町村、あるいは各産業界や一般の市民の方々にも、この会議を一つの参考にしていただき、各地で実施していただきたいという思いで行っているものです。その一番の推進役になるのが化学物質と環境円卓会議であると認識しています。


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  これは、「かんたん化学物質ガイド」の配付実績を示しています。配布以外にも、ホームページからダウンロードしていただいているケースが多数ございます。本日その数字を用意することができませんでしたが、これよりもはるかに多い利用状況になっていると考えられます。


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  まず一つ目の「私たちの生活と化学物質」につきまして、お手元の冊子もざっと見ていただければと思います。まず、2〜5ページでは、身の回りのものが化学物質でできていることや、化学物質には自然界にある化学物質と人工的に人間が作った化学物質の両方があるということを説明しています。それから6〜7ページでは、化学物質の性質について、9ページでは具体例として、塗料を取り上げ、塗料とシンナーの関係や品質表示等について説明しています。12ページ以降は、「ヒトや動植物にどんな影響があるの?」というタイトルで、有害性の程度と体に取り込む量で環境リスクが決まってくるという、リスク評価に関する基本的な考え方等を分かりやすく提示させていただいています。


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  二つ目は「乗り物と化学物質」です。2〜3ページでは自動車がいかにたくさんの種類の化学物質で作られているかを説明しています。また、4〜5ページでは、乗り物等に使われる資源に当たる鉄、アルミニウム、ゴムが逆にどのような製品に応用されているかを説明しています。そして、8〜9ページは乗り物を動かす時に使われている化学物質について、さらに、排出ガスの中に含まれる化学物質については10〜11ページで詳しく示させていただいています。12〜13ページでは、排出ガスがどのように環境に影響しているのかということを東京都の例を用いて示しています。また、これらを踏まえた対応というものを考えさせるような内容になっています。


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  次は「洗剤と化学物質」です。4ページでは、界面活性剤の仕組みについて、6〜9ページでは石けんと合成洗剤の違いについて、また、界面活性剤以外に洗剤にはどのような化学物質が入っているかについて説明しています。10〜13ページまでは、「洗剤が環境へ流れ出ても、心配ないの?」というタイトルで、生物への影響の有無について、特にLAS(注、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩。界面活性剤の一種)という合成洗剤を例に用いて示しています。最後に18〜19ページでは、洗剤の安全性の調べ方等について、先ほど申しましたリスク評価につながるような考え方を述べ、このような問題について考えていただけるような構成になっています。


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  次は「殺虫剤と化学物質」です。特に害虫用に使われる家庭用殺虫剤や、農薬として使われる殺虫剤、また、衣類用に防虫剤として使われるもの等いろいろな殺虫剤がございますが、それぞれについて、それがどのように作られてきたかを4ページで説明しています。6ページでは、合成化学物質の種類を示しています。7ページでは、殺虫剤のラベル表示について説明しています。このような形で殺虫剤や化学物質について考えていただく機会を提供しています。


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  最後の「塗料・接着剤と化学物質」について、4ページでは、たくさんある塗料の中でどのようなものがどれだけ使われているかといったことを説明しています。5ページでは、接着剤にもいろいろなタイプと用途があることを説明しています。特に、ベニヤ・合板をはじめとする建築関係の用途に約半分が使われていることが分かります。
  6ページ以降では、塗料・接着剤はそもそも何からできているのかということを説明しており、7ページでは塗料の成分である樹脂そのものと添加剤、顔料、溶剤等という揮発性のもので中身が固まっていく仕組みを説明しています。9ページでは、塗料の種類と生産量に関して、時代とともに有機溶剤型の塗料が少なくなり、水性塗料が増えているといった統計も示しています。これらの記述によって理解を深めていただけるようになっています。
  11ページからは、接着剤について、水性接着剤、ホルムアルデヒド(注、HCHO;常温では無色の可燃性の刺激性気体)型の接着剤、有機溶剤(注、物を溶かす性質のある物質のうち、主に炭素や水素から成る有機性の化合物で構成されている物質)型の接着剤の増減について示しています。12ページ以降では、特に揮発性の有機溶剤VOC(注、Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)について記し、14ページでは、その影響例について記しています。17ページでは、VOCの光化学スモッグの関係について分かりやすく提示しています。最後に21ページでは、製品に付けられる表示について示しています。


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  これら5種類の冊子は、企業や消費者の方々が実施される勉強会等において、資料として活用されています。日常生活であまり馴染みの少ない化学物質について、分かりやすく解説して書かせていただいていますので、人気があるのではないかと思っています。


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  最後にまとめです。化学物質によるリスクを低減するには、化学物質に関する知識の普及や関心の喚起が必要だということで、環境省では、身近な化学物質対策として今御説明したような冊子をはじめ、先ほど申し上げましたリスクコミュニケーションの3本柱のそれぞれを推進しています。今後ともこのリスクコミュニケーションの推進を重視しながら身近な化学物質に関する対応をしてまいりたいと考えています。


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  私のからの話題提供は以上です。


(北野)  どうもありがとうございました。化学物質対策についての環境省の取組を御説明いただきました。先ほど申し上げましたように、質疑は4人の報告が終わってから一括して行いますので、それまでお待ちください。
  次は日本石鹸洗剤工業会環境・安全専門委員会委員、花王株式会社安全性評価研究所室長の西山さんからご発表いただきます。よろしくお願いします。

(西山)

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西山さん写真  私は花王株式会社の研究開発部門の中にございます安全性評価研究所におきまして、製品や原料の安全性、ヒトの健康に対する安全性評価、それから環境影響に対する評価を担当しています。いわば花王製品が世の中に出ていく際に、すべての安全性面のチェックを行う番人のような役割を社内で担っている者です。また、私は日本石鹸洗剤工業会の委員も務めていますので、本日は、その委員の立場で「洗剤の安全性と環境」について25分間話題提供をさせていただきます。


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  これは昨年の洗剤類の販売統計を表した数字です。私たちの身の回りには衣料用、台所用、住宅用、身体洗浄用等いろいろな洗剤類があり、トータルで毎年220万t使われています。もちろん製品の中には相当量の水が入っている製品等もありますので、これが全て合成された化学物質ということではありませんが、製品の総量として220万t出ているということになります。それから、その大部分がいわゆる洗濯用の粉末、あるいは液体洗剤で、合計でだいたい77万tぐらいになり、全体の3分の1程度を洗濯用洗剤が占めることになります。
  この資料では、私たちの身の回りでは多様な洗剤類が使われているということと、まさに身近な化学物質の代表的な製品の一つであるということを確認していただきたいと思います。


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  続きまして、石鹸洗剤工業会の紹介をさせていただきます。今日ここに参加させていただいていることもそうですが、工業会は、外部との窓口としての機能を持っており、行政、消費者、あるいは、他の経済団体等とコミュニケーションを行っています。また、もし安全性や環境の問題に関する問題等が生じたときには、この工業会の中でその問題に対応するという機能も併せ持っています。工業会は1950年設立ですので、50年以上の歴史を持っています。


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  皆様御存じのことかと思いますが、洗剤の歴史というのは、環境問題、あるいは人体への有害説等が提起されたこともあり、この40年はコミュニケーションあるいはリスクマネジメントの歴史だったのではないかと思われます。
  この資料は衣料用洗剤の最近50年余りの変化を図にまとめたものです。縦軸が販売数量、横軸が1945年から2000年までの年月を示しています。見ていただきたいのは1960年です。この辺りは高度成長期ですが、この時期に洗剤についても洗濯機の普及に伴い、非常に便利で使いやすいということから、販売数量が急速に増えていき、その後50〜60万tぐらいのところで推移しています。
  この間に私たちの業界は二つの問題に遭遇しています。一つは、当時、環境中の微生物によって生分解を受けにくい界面活性剤を使用していたことによる河川等での泡立ちの問題です。これが1960年代後半から70年代辺りの出来事です。もちろん難分解性のものを使っていたからというだけではありません。使用量が増えたことや、人口が密集していた割に当時はまだ下水道の普及もそれほど進んでいなかったということも合わさり、泡立ちの問題が起きました。この問題を受け、当工業会ではより生分解性のよい直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸(LAS)の界面活性剤に切り替えることにより、この泡立ちの問題、簡単に言うと環境中での残留の問題を解消してまいりました。
  その後、この問題が完結するかしないかという時期であったと思いますが、例えば、琵琶湖の富栄養化の問題、あるいは東京湾、瀬戸内でも同様の閉鎖性水域(注、湖沼・内湾・内海等水の出入りが少ない水域のこと)の富栄養化の問題に絡み、洗剤の中に補助成分として配合していましたリン(注、窒素族元素の1つ)ポリリン酸(注、あらゆる生物種の細胞内および組織内に普遍的に存在している生体分子)という成分の使用に対するプレッシャーがありました。それに対して、私どもの工業会では、いわゆる無リン洗剤という形で対応してきたわけです。このような歴史を持っています。


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  これは多摩川の二子橋での泡立ちの様子です。1973年にはこのような状況でした。私も見に行きましたが、最近は泡が立っていないという状態でした。これは生分解性のよいLASという界面活性剤に切り替えたことによる効果が大きいと考えています。


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  このLASといわれる界面活性剤は、現在衣料用の洗剤に汎用されている最も代表的な界面活性剤の一つです。これに関して、私ども工業会では、東京都のある下水処理場の御協力をいただき、下水処理場に流れ込む下水の中とそこから放流される水の中の界面活性剤の濃度を2回測定しました。
  こちらは2001年1月31日に測定した事例です。下水の中に3500μg/L、言い換えると3.5ppmあったものが下水処理を受けることによってほとんどなくなっているという状況であり、下水処理によって生分解を受け、きちんと取り除けていると言うことが確認できます。


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  皆様も御存じのことかと思いますが、下水道の普及はずいぶんと進んでいます。ちょうど私が生まれたときには、普及率は10%にも満たなかったわけですが、それが今や下水道だけで72%、それ以外の合併浄化槽やコミュニティプラント(注、地方自治体や公社、民間事業者の開発行為による住宅団地等で、し尿や生活排水を合わせて処理する施設)の処理場等を合わせますと既に84%で、欧米に匹敵するぐらいの水準になってきています。従って、私どもが今使っているような生分解性のよい界面活性剤を使っていけば、下水処理できちんと取り除かれ、良好な環境を維持することができると考えています。


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  ここからは、洗剤の安全性確保の考え方や、工業会で行っているいくつかの環境に対する取組についてお話ししたいと思います。それは例えば、「コンパクト化」や「スプーンを使っての計量のお願い」や「容器に使われるプラスチックの削減」等についてです。そして最後に、日本の界面活性剤濃度の状況について、私どもでは独自の環境モニタリングによる実態把握とリスク評価を行っていますので、その話を進めていきたいと思います。


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  冒頭お話ししましたように、私の仕事は製品を世に送り出す前にそれが安全に使えるかどうかを確認することであり、絶対に事故を起こすことはできないと強く考えています。そういう中で安全性確保をどのように考えているのかということについて、アウトラインを少しお話しさせていただきます。
  ここにお集まりの皆様には申し上げるまでもありませんが、どういう化学物質でも、使い方を間違えれば有害性が発現してしまうことがあります。よって、私たちは実使用場面でその洗剤が安全に使用できるものなのかどうか、そのように設計されているのかどうかということをあらかじめ調べ、確認したものを世に出していくという考え方で仕事をしています。
  そのために、まずその洗剤が台所用か衣料用かというような用途あるいは使い方の確認をして、それを本来使っていただきたい方法で使われた場合にどういうことが起きるのか、あるいは、これまでの事故例から考えて予見されるような事故にはどのようなものがあるのかということをあらかじめ考え、私たちが考えるべき安全性確保の範囲というものをまず規定します。最近、詰替用の製品をよく見かけられるかと思いますが、それを詰め替える時にどういうことが起きるかということを皆で考え、想定し、そこで事故が起きにくいような商品づくりをしています。
  次に洗剤の中の成分がヒトの健康や環境に対してどういう有害性を持つのかということについて、科学的な評価を行い、その製品の有害性のポテンシャルを見ていきます。その上で、その製品の実使用の場面において、それが安全に使用できるのかどうかということをアセスメントし、その商品が安全に使えるかどうかの判断をしていきます。
  そこで、もし必要であれば、容器の口の形や持ち手の部分等に工夫を加え、より安全に使用できるものにします。あるいは、内容物をより安全なものにした方が良い場合には、そのような工夫を加えるというプロセスを踏みます。そして最後に、当然使い方を誤れば事故になる可能性があるわけですから、そういう場面をできるだけ避けるための注意について表示等を通じて消費者に伝達します。そのため、その文言や字の大きさ、商品のどの部分にそれを表示するのか等々を検討していきます。こういう経過をたどって私どもの洗剤の安全性を確保しています。


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  今のお話の中の安全性の評価の部分だけ少し切り出して御説明します。通常の使用時、例えば、洗剤ではスプーンで計量して洗濯機の中に入れ、蓋を閉めてボタンを押しますが、そういう使い方をしている範囲で洗剤が皮膚に付くかもしれない。あるいは毎日毎日それを使うわけですから、もしかしたら皮膚から吸収したものが全身に回るかもしれない。また、環境に排出されるわけですから、その環境への影響を見なければいけません。皮膚に対する刺激性、あるいは皮膚のアレルギー性、全身への影響という観点から、反復投与毒性(注、動物に物質を繰り返し投与したときに現れる有害な変化)や、遺伝毒性(注、放射線や化学物質が遺伝形質情報を担うDNAや染色体に作用し、形質の変化(DNA遺伝子の突然変異)や染色体の異常を誘発させる能力)、環境の場合では、水生生物毒性や環境中での残留性を見るための生分解性というようなところでの評価をしてまいります。
  さらに、例えば、詰め替えの際に間違って目に飛び込んでしまう商品も可能性としてはあり得るため、その場合の危険性を評価するために、目に対する刺激性も評価します。今は細胞を使った代替法で実施しますが、目に対する刺激性や皮膚に対する刺激性、急性毒性等の評価を私どもの工業会では行っています。


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  製品の内容物について、私どもでは安全性評価を通じて、実使用に耐え得る安全性を備えていると自信をもって判断しているわけですが、商品を年間何千万個と世の中に出していく過程ではいろいろなことが起こり得ます。そのことを前提に商品に注意表示をしています。
  例1はトリガーと言い、手でキュッキュッと握って先からスプレー状に噴射する製品の表示の例です。例えば、手を伸ばして壁の上部に洗剤を付けようとスプレーを噴射した場合、噴射したものが全て壁に付いてくれる場合は良いのですが、跳ね返って落ちてくるものもあります。それは想定することができますので、そういうことから、「目より高いところに使う場合はスポンジや布に付けてお使いください」や、「ミストが跳ね返ってきますから、環境をよくしてお使いください」というような表示をこのような製品には付けています。
  例2は、粉末の弱アルカリ性の製品の例です。この場合は、「使用後は手を水でよく洗ってください」や、「荒れ性の方や長時間使う場合、また洗剤をブラシに付けて洗う時は炊事用手袋をお使いください」というような形で、より安全に使っていただけるような表示をしています。つまり、トータルで安心してお使いいただけるような製品づくりを心がけています。
  また、直接商品に表示するだけではなく、CM等の媒体を経由した情報伝達があります。テレビで見ていただいたことがあるかと思いますが、浴室内のカビ取り剤の宣伝等で、女性が眼鏡をして、マスクをして、手袋をして製品を使っている映像が流れています。これは以前から流れているCMです。家庭用の製品にそこまで必要か、という見方があるかもしれませんが、安全にお使いいただくためにはそこまで必要だということで、そのようなCMにしています。


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  次は最近の取組についてです。


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  最近といっても1987年以降ですので20年以上経っていますが、1987年にコンパクト洗剤の代名詞となるような新しい洗剤が開発されました。それは従来のものに比べて3分の1や4分の1サイズの洗剤で、洗剤技術の大きな革新がございました。その中身は濃縮化技術と洗浄力を向上させるための酵素の配合です。その商品が出たのを皮切りに、国内のほとんどの製品がコンパクト化されましたし、海外に行かれて製品を見られた方がいらっしゃるかもしれませんが、世界中にコンパクト化の流れが広がり、今では世界中の洗剤が基本的にはコンパクトに代わってきています。
  コンパクトにすることの意義は、環境に排出される製品の内容物の量を減らせることはもちろんですが、私どもの視点から言うと、工場で作った製品を各小売店まで配荷する際、1回のトラックに積み込める個数が増えるため、配荷にかかるエネルギーを減らすことができることです。今振り返るとCO2を減らす商品作りの先駆けであったのではないかと思います。


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  コンパクト化をしただけではなく、この時、製品に小さなスプーンを入れ、適正使用をお願いする活動を行いました。界面活性剤というのは、たくさん入れれば入れるほど汚れが落ちるというものではございません。細かい話は抜きにしますが、必要な量が入っていれば十分ですので、例えば、30Lの水に対して25g入っていればよい。汚れのひどいものであってもその10%増くらいの量を入れていただけばいいわけですので、このスプーンを使っていただくことにより、無駄に多量に使い過ぎるようなことのないような活動を行ってまいりました。1987年からその活動は始まっていますが、2000年に当工業会で調べましたところ、93%の方がその表示を参考にして洗剤を使ってくださっていたことが分かっています。


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  続きまして包装容器の話です。洗剤には液体のものも少なくありませんので、プラスチックを使った容器がどうしても必要です。しかしながら、その容器に関してもできる限りプラスチックの使用量を減らそうということで、コンパクト化や詰替製品、あるは付替製品という形で樹脂量をできるだけ減らす活動をやってまいりました。2007年度の原単位としての使用量は、95年に比べ30%以上減らすことができています。純分でいいましても10%以上減らすことができています。こういう活動も併せて私どもの工業会では行ってまいりました。


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  最後になりましたが、当工業会におきまして独自に取り組んでいます界面活性剤の環境モニタリングのプログラムについてお話をさせていただきます。


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  これは改正前の化管法の対象になっている代表的な界面活性剤4種です。LAS、非イオン界面活性剤のAE(注、ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル)、台所用洗剤等によく用いられますAO(注、N,N-ジメチルラウリルアミン=N-オキシド)、柔軟仕上げ剤によく用いられますDADMAC(注、ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウム=クロリド)です。この4つの界面活性剤につきまして、関東と関西の4つの河川の7カ所(多摩川・荒川・江戸川・淀川に複数箇所ずつ)に調査ポイントを決め、そこで年間4回の調査を1998年から進めてまいりました。


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  本日は学会ではありませんので細かな話はいたしませんが、このような調査を継続的に行っています。自画自賛になってしまいますが、10年以上このような調査を行っている例は世界中に私の知る限り一つもありません。多摩川を例にとって、田園調布の堰のところで言いますと、LASについては、4〜38ppb程度、AEという非イオン界面活性剤は検出されないか、検出されたとしても4.9ppb程度、DADMACやAOに関しても同じような状況で、場所によって、あるいは界面活性剤によって、あるいは川の水をくんでくる時期によって濃度は変わっています。このようなデータを10年間、年4回ずっと繰り返し収集してきた結果として、例えばLASの場合、最高濃度として81ppb程度ということが分かってまいりました。


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  それに付け加えまして、同じ調査をずっと行っているわけですから、年度の間で時間が経つとどのように濃度が変わっていくのかということも見えてまいります。もともとLASというのは国内で6万tから10万tぐらい使われていますがその割には環境濃度が低く、それがさらに最近ではずっと減少傾向にあるということが見て取れると思います。この減少理由としては、下水道整備の推進という国の投資の結果として、界面活性剤の濃度も下がってきているということが言えます。同時に、他の生活排水由来の汚濁物質の濃度も下がってきている。つまり、環境が改善してきていることをこの数値が示しているのではないかと考えます。


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  これはリスクアセスメントです。実態を把握し、今のリスクがどのような状況かを知るためにリスクアセスメントを行っています。リスクアセスメントは、環境濃度と無影響濃度を比較して、無影響だと思われる濃度に比べ環境濃度が高いか低いかということを考察していきます。


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  LASの場合の特徴です。洗剤に対して世の中の御批判をいろいろいただいた結果として、LASについては非常にたくさんの毒性試験データとして利用できるものを私どもは持っています。それらを総動員すると、普通はできないようなリスクアセスメントができます。普通は限られたデータしかありませんので、そのデータを使って不確実さを勘案しながら無影響濃度を推し量っていくわけですが、私どもでは、長期の毒性、環境の慢性毒性データだけでも15種以上のものを持っていますので、種による感受性の分布を解析することにより、より信頼性の高い無影響濃度を出すことができると考えています。また、モデル生態系のデータを持っていますので、そういうものも使えるのではないかと考えています。


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  LASについては、プロットが15個ありますが、慢性毒性試験といわれる長期の毒性試験をいろいろな生物種について行ったデータがあります。このデータから環境中で無影響なレベルを推し量り、不確実係数を用いないリスク評価を行っています。こういうことはLASのようにデータが十分にあるものについてはできると考えています。


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  これはP&G(注、プロクター・アンド・ギャンブル。アメリカ合衆国に本拠を置く洗剤・トイレタリー等の一般消費財を扱うメーカー)のアメリカのラボの写真ですが、外の川の水を実験室の中に引っ張り込んできて、幅70cmぐらいの川に8週間、あらかじめ流しておきます。そうしますと、ここにモデル生態系が出来上がるわけです。例えば、1の部分にはLASを1ppm流す。2は2ppm流すというように濃度を変えていき、どこの濃度から影響が出てくるかということを多面的に見るような実験データも持っています。


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  そういったデータを十分に活用して無影響濃度を求めますと、先ほど説明しました最初の方も後の方もどちらもほぼ同じ530〜550ppbというレベルまでは影響が起きないのではないかという濃度が見積もられます。この濃度を先ほどの調査結果と比較し、今の我が国のLASによる環境リスクがどういうものかということを考え、把握し、対策が必要であれば対策を講じるというようなことをしています。


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  家庭用洗剤は衛生的で、快適な生活を送るためには不可欠な製品群であり、私たちの身近なところで使われている化学製品の一つです。そういうものに関しては、当然、安全に使えるものでなければならないと思いますし、洗剤は基本的には環境排出型の製品ですので、環境に対して影響を及ぼしてはいけないと考えています。今のような私が紹介させていただいたような考え方、あるいは工業会の活動を通し、安全性を確保するように努めています。御清聴ありがとうございました。


(北野)  どうもありがとうございました。石鹸洗剤工業会の活動、そして、そのリスク評価について御講演いただきました。
  次は日本化学工業協会広報部長の岩本さんにお願いします。

(岩本)

岩本さん写真  冒頭木村さんから、化学物質の安全・安心のための非常に優れたパンフレットについて御紹介いただきました。私ども化学産業界でも安心して皆様に製品をお使いいただくための情報発信をしています。ごく簡単に10分程度の時間で御紹介します。


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  一般消費者の方々は、化学物質の安全性に関する情報の大部分をマスメディア、新聞・テレビ等から得ていることが環境省や経済産業省のアンケート調査等で分かっています。ただ、先ほど西山さんから御説明がありましたように、膨大な安全性の試験、あるいは使用上の試験を経て製品が世の中に出ているということですので、「化学物質を使っていて心配だ」と思うことがあった場合には、これから御紹介する情報にぜひアクセスしていただき、まずは御自身で納得していただく。悪いものは悪い、良いもの良いということをまず御自身の判断で納得していただきたいと思っています。


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  身近な化学製品で「ガンの心配があるもの」というテーマで消費者にアンケートを取りますと、だいたい「農薬」と「食品添加物」が挙がります。では、農薬工業会はどういう情報を出しているのかと言いますと、農薬工業会のホームページにアクセスしていただくと、「農薬Q&A」(農薬工業会のページへ)という項目があります。ここでは、農薬の安全性について、あるいは環境に対する農薬の影響、農薬が効くメカニズム等、消費者のごく自然な懸念材料について触れています。それらについて、毒性は大丈夫なのか、体内に蓄積していくのではないか、アトピー性皮膚炎の原因になっているのではないか、農作物に残留しているのではないか、といった消費者の質問に対して、それぞれ丁寧に科学的な見解が示されています。
  また、農薬がミツバチや天敵の昆虫に対してまでも影響があるのではないか、あるいは鳥や魚への影響はどうか、農地に残っているのではないか、空中散布したときに周囲に危険性があるのではないか、ということについても一つひとつきちんと丁寧に答えてあります。
  それから、完全装備で農薬を撒いている姿を見るとやはり作物の安全が心配である、と思われる方が多いと思うのですが、こういったことについてもきちんと書かれています。また、本当に農家の方が登録どおりに使ってくれているのだろうか、それはどうやってチェックしているのか、という農薬の安全性以外に農薬の正しい使い方がどう管理されているのかということについても触れています。
  その他、農業の専門家向けの「農薬をご使用になる方へ」(農薬工業会のページへ)というものや、「農薬ラベルに関するQ&A」(農薬工業会のページへ)等があります。パソコンの前にお座りになって1時間ぐらいざっと眺めていただくと、相当な農薬通になれると思います。今日はパンフレットを用意させていただきました。このパンフレットもさることながら、こちらにアクセスしていただきますと、動画も出てまいりますので、より分かりやすい情報が得られるかと思います。


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  また、そうは言ってもなかなかパソコンで調べて勉強する気になれないという人もいらっしゃいますので、「農薬ゼミ」(農薬工業会のページへ)というものがあちこちで開催されています。主に主婦を対象とした一般消費者向けに、農薬の働きや環境への影響、安全性の確認の仕組み等を説明し、主婦の方から率直な質疑を受け取るという形で、昨年度は札幌、金沢、山形、甲府、神戸の5カ所で開催されました。北野さんにもこの会に1度参加していただいたと聞いています。200〜300人が集まり、なかなか活発な会になっているようです。


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  ガンの心配をされるときに真っ先に挙がるものとして食品添加物があります。お手元にパンフレットをお配りしていますが、日本食品添加物協会のホームページにアクセスしていただきますと、「よくわかる食品添加物」(日本食品添加物協会のページへ)というページがあります。ここでは食品添加物のキャラクターの「テンカちゃん」が出てきます。まず、この女の子が「エッヘン!私が生まれたのは、昔むかしのことです」と言って説明がはじまります。古代エジプトの時代から、防腐剤、あるいは味付けのための添加剤が使われていました。それから、豆腐、アイスクリーム、コーラ・サイダー、魚や肉をテーマに、添加剤がどのように使われているのかということも、ここに分かりやすく書いています。
  また、「動物を使って安全を確かめるために科学的な試験が行われます」ということで、どのような試験が行われているのかということについても詳しく書かれています。余談ですが、農薬、あるいは食品添加物、後で出てくる殺虫剤も、こういった試験を一つひとつクリアにするため、開発までに膨大な年月がかかっています。例えば、農薬で言いますと、製品として市場に出るまでに約10年の年月がかかります。また、開発してから実際に市場に登場するまで、ごく限られた数の製品しか市場に出てきません。
  「これなら毎日食べ続けても安心ですね」ということで、毎日食べ続けても安心な理由がいろいろと説明されています。また、「世界中の科学者さんが安全性をチェックしています」ということで、WHO(注、World Health Organization;世界保健機関)FAO(注、Food and Agriculture Organization;国連食糧農業機関)等の活動も紹介されています。
  「テンカちゃんの名札はわかりやすく工夫されています」では、食品の裏側に小さなラベルが貼ってあり、どういう添加剤が使われているかが書かれています。分かりやすくというのは、片仮名の化学物質名だけでなく、それをうまくまとめたよう形で書いてあるという意味です。また、ここにも「食品添加物Q&A」(日本食品添加物協会のページへ)というものがあり、消費者の御心配にお答えしています。


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  同じく食品添加物協会が出している例ですが、メディアの方々を対象に「メディアフォーラム」(日本食品添加物協会のページへ)を開催しています。消費者の方々は、テレビや新聞で多くの情報を得ています。例えば、「納豆が……」と紹介されますと、アッと言う間に市場から納豆が消えてなくなることもあります。そういうこともあり、メディアの方々に正しい形で、また、いろいろな角度から製品の安全性に焦点を当てた報道をしてもらうために、メディアの方々を対象に東京・大阪で年に2〜3回ずつフォーラムを開催しています。


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    先ほど西山さんが御説明された石鹸・洗剤についてですが、これについても工業会のホームページにアクセスしますと、安全と環境ということで、先ほど御紹介のありました工業会が実施した調査結果や安全性の評価について情報が出されています。また、ここはぜひ見ていただきたいのですが、基礎知識の他に「役立つ情報」(日本石鹸洗剤工業会のページへ)というのがあります。ここには「きれいにする小技・裏技」という項目があり、プロの方がどうしたらきれいに掃除ができるのかというノウハウを書かれておられます。もう一つは、「お洗濯119番」ということで、消費者の方々から寄せられた失敗事例や、なぜそういう失敗が起きたのかということについても書かれています。主婦の方がこのサイトにアクセスされますと、なかなか有用なプロの情報が得られるのではないかと思います。このように消費者への配慮がなされています。


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  殺虫剤の安全性については、医薬品、医薬部外品という形で、厚生労働省の審査・承認をきちんと得ていることや、薬事法に基づきこのような安全性の試験を行っていることを示しています。特に「殺虫剤の使い方と種類」(日本家庭用殺虫剤工業会のページへ)ということで、殺虫剤の種類ごとに、どういう点に気をつけて使ってほしいか、ということを示しています。優れた機能を持つだけに、消費者にも賢く使っていただくために、殺虫剤ごとに正しい使い方を漫画で示したようなページがあります。これから暖かくなって殺虫剤を使う機会が増えると思いますので、こういった工業会のホームページにもぜひアクセスしていただきたいと思います。


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  最後にシックハウス対策について、塗料工業会や、化学産業ではありませんが住宅生産団体連合会が情報提供を行っています。塗料工業会では、「製品と環境」(日本塗料工業会のページへ)ということで、特にホルムアルデヒドの自主管理と等級表示について説明されています。ミシュランの三つ星ではありませんが、四つ星が一番ホルムアルデヒドの量が少なく、普通の部屋の中で無制限に使っていいといった等級表示の決め方を紹介しています。
  また、住宅生産団体連合会では、住宅の安全性について、「住宅性能評価制度」(住宅生産団体連合会のページへ)というのがあるそうですが、その中に耐震性、対火災、対省エネということと並んで、シックハウス対策の項目があります。ホルムアルデヒド対策評価や、場合によっては、室内化学物質濃度測定も可能になっているということです。こちらも、パソコンの前に1時間ほど座っていただく等、皆様がクエスチョンマークを感じられたことについては、ぜひ御自身でアプローチしていただき、いろいろな情報を集め、納得できる優れた性能を持つ化学製品を安全に使っていただきたいと思います。以上、事例の一端を御紹介させていただきました。どうもありがとうございました。


(北野)  どうもありがとうございました。種々の工業会のホームページの内容等についてご説明いただきました。
  最後に原科さんから参考資料の御説明をお願いします。

(原科)  お三方から「身近な化学物質」ということで御紹介いただきましたが、全体を通じて化学物質について一般市民があまりよく理解していないため、十分なコミュニケーションを図らなくてはいけないということで今日の話題になったと思います。
  お三方について少し感想を申し上げてから参考資料の紹介をします。
  最初の木村さんのお話では、「はじめに」のところで説明された中身は「リスクコミュニケーションとは何か」と言うような内容であり、その上で対策の話に移られたと思います。西山さんのお話では、具体的な対策を講じられていることを御紹介いただきました。特に科学の立場で、リスクの分析、リスクアセスメントという大変重要な部分について、いろいろとデータを蓄積され、成果が出ているということを御紹介いただき、大変心強く思いました。岩本さんのお話では、コミュニケーションを具体的に現在どのようにやっておられるかについて、実際のものを御紹介いただきましたので大変参考になりました。
  いずれを通じましても「アセスメント」という概念が重要かと思います。特にコミュニケーションということが重要なキーワードであるということでお話しいただいたと思います。そこで、今日私が紹介したいと思い持ってまいりましたのは、そういった問題にかかわる国際学会の紹介です。「原科さん参考資料」というのが最後に付いています。これは実際には分厚いプログラムであり、何十ページにもわたる冊子になっていますのでそのポイントだけコピーしたものを用意していただきました。
  IAIAとありますが、これはInternational Association for Impact Assessmentの略です。インパクトアセスメントですから、中身にはいろいろな分野がございます。例えば、今日議論のあるリスクアセスメントもこの分野で大変重要な領域です。インパクトアセスメントと言う場合、世界で一番よく使われますのがEnvironmental Impact Assessment(環境アセスメント)です。それからリスクアセスメントや、古くはテクノロジーアセスメントというものがございます。最近はライフサイクルアセスメントというのもございます。
  特に近頃注目されてきたものにヘルスインパクトアセスメントがあります。健康影響のアセスメントですが、これなどは化学物質の管理等と大変重要な関係があると思いますし、こういう問題が最近は特に注目されています。その他、ソーシャルインパクトアセスメント(社会影響評価)や、環境アセスメント分野で新しい領域としては、戦略的環境アセスメントと訳すStrategic Environmental Assessmentというものがあります。英語を直訳しただけなのですが、ただ、戦略的と言うと人によっては危険な感じを持たないでもありません。これは「計画段階や政策段階での意思決定の上流段階での環境配慮」という意味で使っていますが、このようなアセスメントもございます。そういうものをすべてカバーする大きな領域で、この学会がございます。
  このIAIAという学会は、世界の100以上の国と地域からメンバーが参加しており、数ある国際学会の中でも特に大きな権威のある学会です。国連でも特別に認定されている学術団体で、いろいろな機会に発言の機会が与えられています。この国際学会の会議が今年はアフリカのガーナで行われます。世界中から会員が集まり、これまでも、各国で開催されています。昨年はオーストラリアのパースで、来年はスイスのジュネーブで開かれる予定です。今年はアフリカのガーナということで途上国ですが、まさにこういう地域こそ化学物質をこれからどんどん使っていくわけですから、居住環境、生活の中での環境における影響は十分考えなければいけないと思います。その意味では、我々先進国が今日御紹介いただいたようないろいろな経験がありますので、そのような情報を提供していくことに大きな意味があるのではないかという気がしています。
  この学会では幅広くインパクトアセスメントの議論をします。どのようなものかということを御紹介します。まず、「Ways to Participate(参加の方法)」とあります。2枚目はA3判裏表になっていますが、「Invitation to Attend(参加への招待)」とあります。一番上の部分は、ガーナの環境省の方が書かれています。この学会は大きな国際学会ですので、毎年、各国の政府機関が全面支援をしてくれます。今年度はガーナ政府です。また、国連機関が中心になってサポートしてくれます。
  最後に下のほうに「Please accept my invitation」とあり、私の写真が出ていますが、実は私は日本人で初めてこの学会の会長になりました。そういうこともあり、日本からもたくさん参加していただきたいと思います。既に15、16名の参加が決まっており、発表も10題以上あると思います。インパクトアセスメント分野の研究について、世界がどのようになっているのか情報を集めるにはいい機会ですので、ぜひお越しいただきたいと思います。IAIAのホームページでは、詳細なプログラム等も見ることができますので、御確認いただきたいと思います。最後に、大きな国際学会は1週間ぐらいかけて開かれますが、この学会では、研究発表、ディスカッション以外に大会の前のほうで特別なトレーニングコースがあり、そこでいろいろなことを勉強します。例えば、ヘルスインパクト等のトレーニングコースが10項目ほど用意してありますし、Technical Visitsや現地を見学する機会もございます。
  以上ですが、このように国際的な視点からもこの問題をお考えいただければありがたいと思っています。

(北野)  どうもありがとうございました。めったにガーナ等には行けませんからチャンスかとは思います。

(原科)  先方の政府がしっかりサポートしてくれますので、こういう機会に行かれるとけっこう行きやすいと思います。

(北野)  相当暑いのではないかと心配ですが、大丈夫ですか。

(原科)  そうですね。暑いことは暑いです。殺虫剤は必要でしょうね(笑)。

(北野)  4人の方々ご報告どうもありがとうございました。それではこれより10分間の休憩をはさみ、2時半から議論を進めたいと思います。

――休憩――

(北野)  それでは時間になりましたので、後半のディスカッションを始めたいと思います。進め方ですが、前半で4人の方々から情報を提供していただきましたので、最初は情報提供いただいた内容についての質疑を行い、きちんと理解した上で、今回のこのテーマをどう考えていくかという議論に入りたいと思います。そこで、取組について説明をされた3人の方について質問がありましたら、まずお受けしたいと思います。

(瀬田)  最初に木村さんに三点お伺いします。木村さんから非常に的確なお話しいただきました。また、資料1−2のパンフレット5冊を今回のこの機会に読み直してみましたが、非常によくできていると思います。ただ、木村さんからもあまり御存知ないかもしれない、というお話がありましたように、それも含め、より広く見ていただくために今後どうしたら良いか。これは結局、最後は化学物質やサイエンスに対するリテラシー(注、literacy;本来「文字の読み書き能力」を指すが、人間の資質や能力を示す概念として用いられている)の問題にも関係すると思いますので、特に子供を含めそういう取組の方向について御説明いただきたいというのが一点です。
  二点目は、リスクコミュニケーションというものを環境省としてどのように考えていくべきなのか、また、我々はそれにどう協力していくべきなのか、ということです。
  三点目は、化学物質アドバイザーについて、実際の活動について御説明いただければと思います。

(北野)  最初の二つの質問ですが、こういう情報をいかに普及させるか、リスコミはどうあるべきか。これらについては最後の議論にしたいと思いますので、まずは三つ目の御質問の化学物質アドバイザーの現状についてだけ木村さんからお答えいただきたいと思いますが、よろしいですか。

(瀬田)  結構です。

(北野)  では、木村さん、三つ目の質問に対する答えをお願いします。

(木村)  分かりました。お手元に参考資料1として化学物質アドバイザーの資料を配布させていただいています。化学物質アドバイザーとして、現在45名の方が登録されており、毎年数十回の活用があります。特に大都市で好評をいただいています。昨年度までは24名でやってまいりました。ただ、中都市から派遣の御要望をいただいた場合、なかなか出向いていけない、東京から出掛けていくにも距離があるというようなこともございました。そこで、中都市部での御要望にお応えするため、今年度新たにほぼ倍増するような形で21名の方を増やし、現在45名で展開しております。
  化学物質アドバイザーは、化学物質の詳細について非常に詳しく、過去に工業会で活躍されていた方や、大学教授で化学物質を専門にされている方、医師や歯科医師といった国家資格を持って日頃からリスク評価にも携わってこられた方等がいらっしゃいます。非常にレベルの高い専門的な試験や法令等の試験を経て、選ばれています。実際の現場では中立的な立場をとっていただいています。決して会議自体を誘導するのではなく、会議等で問題が混乱したときに正確な情報を提供するという形で展開しています。ただ、このような会議におきましては、会議自体を主導するいわゆるファシリテーター(注、コミュニケーションの場が円滑に進行するように、議論を整理したり、進行方法を提案したりする、いわば司会進行役を務める人。リスクコミュニケーションにおいて必要な人材であり、中立的な立場から議論を整理する司会の役割をする人のこと)という機能も、今後求められるのではないかということがございますので、今後の化学物質アドバイザーの進め方として、ファシリテーション能力をお持ちの方々にも御活躍いただくことを現在検討しています。ファシリテーター協会とも共同作業ができないか検討しているところです。
  いずれにしましても、私どもはこのような化学物質アドバイザーをなるべく広めていくことを目指しております。アドバイザーを増やすときには、報道機関等にも鋭意情報提供をして、進めるよう考えているところです。

(北野)  確かアドバイザーになるためには一定の試験がありましたよね。環境省の試験を受けないとなれないということで、結構難しい試験だと思います。意外と我々は誰も受けていませんね。落ちたら格好悪いというのがあるものですから。難しいということはそれだけきちんとした方々がなっているということだと思います。
  では、大沢さんどうぞ。

(大沢)  西山さんに質問です。洗剤の安全性や下水道での分解の評価については私も同じように思っています。ただ、一つ気になりますのは使用量の問題です。スライドの4ページ目の部分で、コンパクト化されて1回当たりの使用量が減った場合、そのまま家庭での使用量に移行していけば、この使用量の総量はもっとガクンと減っていると思います。コンパクト化して3分の2や半分ぐらいの量にはなった。ただ、日本全体の使用量そのものは減っていないのはどうしてでしょうか。
  下水道で分解できるから良いのだということではなく、下水処理場の負荷を下げるためにも、流入量が減ったほうが良いわけです。そういう点で洗濯機が大きくなったとか、全自動になったとか、いろいろな要因はあると思いますが、コンパクト化したことが使用量総量の減少になかなか結び付いていない。それは家庭でのきれい好きの問題なのか、適正な量に使っているつもりでも実は少し多めに使ってしまっているのか等理由をお聞かせ願えますでしょうか。日本全体の洗剤の使用量をもっと減らすことについてどのようにお考えでしょうか。メーカーの立場からすると逆のことを言っているかもしれませんが。

(西山)  今の大沢さんの御質問に対し、私自身がきちんと証拠をもって説明しきれるかどうか自信がありませんが、私の理解しているところで回答させていただきます。
  まず、コンパクト化したにも関わらず量が減っていないという点についてです。スライドの4枚目では、確かに半減とか、ドラスティック(注、drastic;徹底的な、思い切った)な減少にはつながっていないということは、統計的にも読み取れると思います。私の理解しているところでは、まずコンパクト化自身が全商品一気に1年間で置き換わったわけではなく、ある商品が先行して置き換わり、その後何年間もかけ、徐々にすべての製品がコンパクト化してまいりました。そういう意味でガクンと大幅に落ちるような統計的なトレンドというのは出てこないのではないかと思います。
  一方、1980年代後半からだと理解していますが、洗濯の回数が増えてきていることも要因の一つではないかと思います。1回当たりの使用量という観点でいきますと、確かに30Lの水、あるいは一定量の衣類に対する使用量は減ったと思いますが、洗濯の回数が増えているということの結果として、統計は下がっていない。ほぼフラットという状況になっているのではないかと考えます。お答えになっていますでしょうか。

(北野)  いかがでしょうか。経時的にコンパクト化してきたことや、洗濯の回数が増えたのではないかという御回答でした。

(新井)  今の話と少しつながるかと思いますが、私はその時代ぐらいから20年間ほど、手に湿疹が出ていました。それが合成洗剤から粉石せんに替えると本当になくなりました。以前、洗剤は手が荒れると言われましたが、本当に自分の手で実験したようなもので、指紋もなくなったりしていました。LASの影響が下水処理によってうまくいったとしても、皮膚に与える影響に関してはまだ問題が残っているのではないかという不安があります。その辺についてはどうしたら良いでしょうか。また、洗剤が増えている原因を考えてみますと、例えば、新聞を講読する際に新聞販売店の方が合成洗剤を10個ぐらい一度に持って来られることがありますが、それは20年ぐらい変わりません。「この新聞でいいから持って来なくても良い」といつも断るのですが、「どなたかに差し上げてもいいじゃないですか」と言って10個から20個も置いていかれます。ですから、減らすどころかどんどん増えているように思います。その辺はどうお考えですか。工業会の関係なのか、新聞販売店の関係なのか。誠に申し訳ないのですが、こういうところでお話しをしないとそういう現状が伝わらないかと思いますので、つなげてお話ししました。

(北野)  最初の部分は、使用時の肌の荒れの話でした。環境上は一応分解して問題はなくなっているだろうということでしたが。もう一つは、洗剤の量が増えることについて、新聞販売店の問題なのか、メーカーの問題なのか、西山さんの御担当ではないような気がしますが、もし何か御意見があればお願いします。

(西山)  二つ目の御質問に関してはお答えのしようがないので保留にさせてください。一つ目のお話はどういう洗剤の話でしょうか。

(新井)  1990年前後に主に合成洗剤を使っていたと思います。その中身がどう変わったかは分かりませんが、湿疹等へはどのように対処していらっしゃるのでしょうか。西山さん参考資料にもそこが心配だということが書いてあったかと思います。

(西山)  洗濯用の洗剤でしょうか。

(新井)  そうです。洗濯洗剤で手が荒れました。

(西山)  もみ洗いをされましたか。

(新井)  その当時もみ洗いはしていません。全自動洗濯機ではなく、洗濯物を入れたり出したりしていたときかもしれません。

(西山)  LASというか、いわゆる合成洗剤につきましては、もちろん商品を出す前に使い方を考えた上で安全性を確認しています。皮膚に対する刺激が実使用上問題なく使えるようなものであるかどうかというテストはしています。だからといって、お使いになるときの状態には違いがありますので、全ての方に絶対に起きないとは言えません。洗浄力があるということは皮膚の表面の皮脂を取り除くこともありますので、それは手袋をお使いいただく等の対応していただきたいというのが一つです。
  もう一つは、では、粉石けんで湿疹は起きないのかということですが、私も学生の頃に環境関係のことをやっていたものですから、粉の石けんを6年間使っていましたが、私自身は粉の石けんでも少しひび割れが出るようなことがありました。どちらが良い悪いではなく、どちらについても洗浄力がありますので、表面の皮脂を奪ってしまいますので、そうならないように注意をする、あるいは、なったときにはよく洗った後でクリーム等でお手入れをしていただくという形で安全に使っていただきたいと考えています。

(北野)  木村さん、西山さんの後に岩本さんからも御発表いただきました。発表内容についての質問がありましたら、もう少しお受けしたいと思います。

(中下)  西山さんと岩本さんにお伺いしたいことがあります。西山さんの方は、先ほどソフト化(生分解性のよいLASへの切り替え)と無リン化のところで、環境中に少し負荷を与えたことがあったというお話がありましたが、そのことについて工業会としてどのようにお考えになり、今後の製品開発等の戦略を立てる上で、その点をお考えに入れておられるのでしょうか。
  もう一つは、表示の点で、例えば、今GHS(注、Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals;化学品の分類および表示に関する世界調和システム)が導入されています。消費者製品にはまだ付いていませんが、労働安全の分野では一応付けるようになってきています。もちろん法制化はされていませんが自主的にGHSを製品に付けていかれるかどうかについて検討はされていますか。この2点について伺いたいと思います。
  岩本さんには、化学工業会でいろいろと取組をされていることはよく存じています。これは法制度の問題もあるのかもしれませんが、自主表示のものが依然としてたくさんございます。例えば芳香剤です。1度調査をしたことがあったのですが、今、テレビ等でもよくコマーシャルされているような芳香剤は、なかなか成分表示がないものですから、どういうものが使われているのかが分からない。消費者が使い方を気にしなければいけないのか、そういうことすらなかかなか分からない状況になっています。自主表示の部分も自主的に全成分表示と有害性データについて分かりやすく情報提供していただくような取組をしていただけないものでしょうか。この点を伺いたいと思います。

(北野)  それではまず西山さんから2点の質問についてお願いします。

(西山)  まず過去の歴史の中でABS(注、分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩)という界面活性剤を使っていたときに泡立ちが起こったため、LASへ切り替えました。その後、有リン洗剤を使っていたときに富栄養化の関係で無リン化を行いました。一つ振り返りますと、まず界面活性剤につきましては、当時、我々は十分な知識がなかった結果として、ABSは当然使えると思って事業をしていたわけですが、問題が起き、社会の要請に応えるため、生分解性の良好なLASに切り替えたと認識しています。私も当時はまだ仕事をしていませんでしたがそのように私は理解しています。
  リンの方は少し状況が違うかと思います。私どもの考え方としては、リンに関して、洗剤が環境の閉鎖系水域の富栄養化に及ぼす影響因子の一つであるということは確かにそうだと思いますが、全体の閉鎖水域に及ぼすリンや窒素のような可溶成分の大きさという意味では、比較的寄与は大きくなかった。当時確か7%ぐらいだったかと思います。ただ、そういう中にあっても社会が無リン化を望んでいる状況にあっては、私たちは消費財を作っているわけですから、それに応えて変えていくべきだと考えました。これは科学的に納得したということでなく、要請に応えて変えていくべきだということで最終決断をしたと理解しています。
  では、その上で今後どうしていくのかということですが、これに関しては申し訳ありませんが工業会としてこうしていくべきとか、こうしますという見解は現在持っていません。私の考え方ということでお断りして発言しますが、今、こうしてリスクの考え方が広く浸透してきたわけですので、まずは、科学的にリスク解析を私たちの立場できちんと行い、その上で対策を講じるべきポイントを見い出した時には、それに対してより良い素材を自ら開発して使っていく。そのときには、環境適合性という観点で製造の段階から廃棄までをトータルで考えていく。水生生物毒性が弱かったらいいというのではなく、そこでどんどんエネルギーを使いながら作っていても意味がありませんので、トータルのライフサイクルで考え、資源の問題も含め、より良い素材であることが確認できた上で、そういうものに切り替えていく、という考え方でやっていきたいと考えています。
  それからGHSに関しては、私ども石鹸洗剤工業会で従来から取り組んでいます。ただ、GHSは消費者製品になじみにくい側面を持っていると思います。従来、もともと消費者製品には様々な表示を行ってきました。「混ぜるのは危険である」や、いろいろな表示や注意の文言を提示してきました。それで今は一定の消費者への情報発信や提供がある程度できているのではないかと考えています。そこにGHSという新しい概念を入れていきますので、消費者の皆様に理解していただき、誤解なきように情報を紹介していくことが大事だと思っています。そのための活動を今行っています。消費者製品に表示をするためのガイドライン作りや、表示をしたときに消費者にどういう受け止められ方をされるかといった調査に取り組んでいます。実際に表示を製品に付けていくかどうかについては、現段階では日程は決まっていません。いずれ必要になるのだろうとは思っていますが、日程までは決まっていない状況です。

(北野)  今検討中ということですね。

(岩本)  私は芳香剤について口出しする立場ではありませんので、あくまで一般論という形で、また、私自身も消費者の1人ですので、そういう立場でお答えさせていただきます。やはり安心して安全に使うためにはライフサイクル、要するに、「捨てる」というところまで含めた情報をきちんと提供するということが非常に大切なことだと思います。そういう意味では自主表示と言いましょうか、規制がどうのこうのではなく、安心して安全に使っていただくために必要な情報を提供することは、メーカーとしては、製品を提供すると同時に必須のことだと思っています。
  ただ、そのときに「どういう情報の出し方をすれば一番よく分かっていただけるのか」、という問題があります。ここでは情報のリテラシーも絡めた議論が必要かと思いますが、私が一消費者として今回インターネットでいろいろ調べてみたのですが、「この製品はどういう試験を経て世の中に出ているのか」という点が書いてあることが非常に分かりやすいと思いました。例えば、こういった項目についてこれだけの試験をしているということを示す。何が入っているかということではありません。我々は片仮名で成分名が書かれていても、それは一体何なのか、ということになってしまいますので、業界団体としては、こういう情報をきちんと押さえて製品を出している、必要な試験をしたうえで出しているといったことが情報発信されていることが、消費者にとっては非常に分かりやすいのではないかと思います。
  今は化粧品等でも成分名が片仮名でたくさん並んでいますが、たぶんあれを見てお分かりになる方は少ないのではないかと思います。そうすると、化粧品について言えば、「こういった検査をしていますが、それでも人間の皮膚は千差万別なので、異常があったら直ちに使用をやめてください」ということになるのだろうと思います。それぞれのニーズと同時に、一般の消費者がどういう情報なら安心できるのかという「情報の出し方」をこのような場でどんどん議論していきたいと思っています。

(北野)  質問があればお願いします。

(原科)  「テンカちゃん」のところで気になったことを質問します。今のお話のポイントでもありますが、試験を企業で行うことは非常に大事なことです。ただ、やはり何と言ってもクロスチェックが重要ですね。つまり、他の機関もチェックをすることが大変重要です。それについては日本ではどのような仕組みになっているのか、もう少し御説明いただけるとありがたいと思います。岩本さんの資料を見ますと、「世界中の科学者さんが安全性をチェックしています」とありますが、それがどのようなシステムで実施されているか。市民としては、確かに試験はやっているけれど、本当に客観的に確認しているのか、という疑問が湧くわけです。それに対してどのような進め方をされているのか伺いたいと思います。

(北野)  要するに、データの精度と質の問題でしょうか。

(原科)  質というか、クロスチェック、つまり客観的なチェックです。

(北野)  岸田さん、お願いできますか。

(岸田)  食品添加物の安全性評価のことだと思います。今世界での英知を集めて評価をしているという発言がありましたが、各国がそれぞれの毒性試験を行い、評価をしていることは確かです。各国がそれぞれにバラバラで実施するというのも非常に非効率的なところもありますし、食品というのは、添加物を含め、世界中で流通するものですから、その評価というのは世界で統一的にやったほうが良いという観点もあると思います。先ほど少し紹介がありましたWHOとFAOにエキスパートコミッティというのがあり、そこが毒性データを見ています。つまり、複数の専門家がそこで評価をして、ここでADI(注、Acceptable Daily Intake;人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響をおよぼさないと判断される量。一日当たりの体重1kgに対するmg数(mg/体重kg/日)で表される)をどれぐらいに設定するかといったようなことを決めています。

(岩本)  先ほどのクロスチェックについてですが、例えば、農薬や食品添加物は、食品安全委員会(注、食品を摂取することによる健康への悪影響について、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行う機関)(食品安全委員会のページへ)がリスク評価を行うことになっています。そこに産業界として実施したリスク評価の結果を出していくわけですから、そういう意味では、産業界として行ったリスク評価を公的な委員会でクロスチェックしていただくという形で安全が確保されているのではないか、あるいは客観性が確保されているのではないかと考えています。

(原科)  その質が大変大事だと思います。アセスメントの世界ではときどきクロスチェックがなく一方的な評価で終わる場合があります。このような場合、一般市民に大きな疑問が残るのは当たり前です。これは大変重要なことだと思います。社会のシステムとして、あり方として、さらに良い方向に進めていただきたいと思います。

(大沢)  今の添加物に関して、評価は非常に一生懸命やられていると思っていますが、食品安全委員会で改めて再評価をきちんとするということをもっと頑張ってやっていただきたいと思っています。非常に古い、昔の評価がそのまま生きたままになっているもの等もあります。それから、世界の評価と日本の評価と違っているものがある場合は、日本としてもきちんと評価し直すことを進めていただかないといけないのではないかと思っています。

(大野)  私どもの店頭で販売する商品の中にも、食器用洗剤や洗濯用洗剤などが昔に比べて環境に対して良いということがいろいろ書かれている物があるかと思います。その一つとして、エコマーク(注、様々な製品及びサービスの中で、生産から廃棄にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベル。1989年に始まり(財)日本環境協会が審査・認定を行う)(日本環境協会のページへ)がありますね。以前、別の場で洗剤類はエコマークの基準をつくるのが非常に難しいということをお伺いしたことがありますが、それは本当なのでしょうか。メーカーさんの主張もそうですが、個々の化学物質のことよりも、第三者にこれは環境に良いということを簡単なマークの中で謳っていただけると、消費者にとっては、「第三者が保証してくれた」という意味で分かりやすいコミュニケーションになるかと思います。

(北野)  それではエコマークの現状について、木村さん、御意見いただけますか。どういう形になっているのでしょうか。

(木村)  エコマークは、財団法人日本環境協会という協会が運営しています。広い意味での業界基準という形にはなりますが、その中身を審査、あるいは評価するに当たって、既存のJIS規格(注、Japanese Industrial Standards;日本工業規格)JAS規格(注、Japanese Agricultural Standard;日本農林規格)等の確立されたものを準用して対応していると聞いています。そういう意味では、かなり客観的なものではないかと思います。

(山本)  西山さんに質問が集中してしまい大変恐縮ですが、非常に初歩的なことで一つ教えてください。先ほど、界面活性剤の環境モニタリングを10年続けられているというお話がありました。下水処理区域で下水道の普及によって濃度が大分下がってきたというお話があったかと思います。活性剤LASの関係ですと、いわゆる合併浄化槽などでの処理効率はどうでしょうか。また、下水道も二次処理でなく、三次処理等の高度処理が導入されたから下がってきたのか。その辺りをお教えいただければと思います。

(西山)  LASが下水処理の工程によって取り除かれるわけですが、まず、合併浄化槽では、通常の下水処理場と同等の処理効率を示していましたので、正常に機能し管理されている合併浄化槽については、これらの界面活性剤も十分に取り除く能力があると解釈しています。

(北野)  三次処理の話はいかがですか。

(西山)  三次処理については、申し訳ありませんが十分な評価ができていません。ただ、基本的には下水道につながっているかどうかということが一番大事なポイントだと思います。下水道に続いて通常の標準活性汚泥処理で十分に除去できますので、この工程で例えば、99%以上除去、つまり1/100以下に落とすということのほうが界面活性剤に関してはより大事です。二次処理を行うことによりそれがいくらかアップするかもしれませんが、全体に対するリスク低減という意味では、私の感じでは特に大きな意味を持たないのではないかと思います。もちろん窒素やリンの除去効率についてはとても有効な手段だということは承知しています。

(北野)  ありがとうございました。今日は身近な化学物質について行政、そして産業界の取組ということで、木村さんから行政の取組について、西山さん、岩本さんから各工業会の活動について御説明いただきました。これでだいたい質問が終わったと思いますので、まずは、行政や産業界の活動について、こういう点はこうするべきではないかとかといった提言や御意見をいただければと思います。

(後藤(敏))  岩本さんに集中するつもりはありませんので、どなたからでも結構です。「リテラシー」という話が出ました。そのとおりだろうとは思いますが、ただ、どちらかと言うと、産業界から一般市民に求めるリテラシーのレベルが高すぎるのではないかと思います。本来、日本で通常の市民に求められるリテラシーのレベルを中学卒業程度とすると、化学物質については、むしろ高校での教育レベルが求められており、少しレベルが高すぎるのではないかという気がします。何か問題が起こると、「市民のリテラシーが足りないから」と言われ、リスクコミュニケーションでは常に「リテラシーが足りないから」という話になりますが、そもそもの要求水準が高すぎるのではないのかという感想を持っています。これは岩本さんというより環境省に対する感想なのかもしれません。それから、先ほど岩本さんが「廃棄段階まで」とおっしゃいましたが、全くそのとおりだと思います。ただ、廃棄段階までを考えますと、一つひとつの製品の安全性等に関しては非常に一生懸命やっておられますが、現実に最後にはいろいろなものが全部集まってきます。7万種、10万種と言われる第二次世界大戦後に出てきた化学物質が、最後の廃棄段階になったときにどうなるかということの研究や安全性の検討などは、これから必要ではないかと思っています。現実に、三重県で爆発事故が起きました。様々なものが複合的に集められ保存するために積み上げられることによって圧がかかり、熱が発生し、一種の化学反応を起こして爆発につながったのだろうと思います。
  一つひとつの製品の安全性は一生懸命やられていても、やはり今後はそういうところにもかなり力を入れていかないとなかなか難しいのではないかという感触を持っています。
  最後に、昨今、カーボンフットプリント(注、資源採掘から製造,販売,廃棄に至るまで,商品のライフサイクル全般にわたって排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算して表したもの)の問題があります。洗剤は最終製品であまり関係ないと思いますし、むしろ洗剤の表示に何グラムと付けるということのほうが課題かと思いますが、化学物質は必ずしも最終製品ではなく、中間製品として極めて大きな役割を果たしているので、これについてはどのような取組を考えておられるのか。プロダクトカテゴリールール(注、同一商品種ごとに定められた共通のCO2排出量の算定基準)等いろいろあったと思いますが、その辺りについて化学工業会で何か取組をされていましたら教えていただきたいと思います。以上、感想と質問です。

(北野)  三つの質問というか意見がありました。最初のリテラシーの問題について、要求レベルが高すぎるのではないかという意見ですが、いかがでしょうか。これは行政側も産業界側も皆さんに共通する問題だと思います。リテラシーのレベルが高すぎて難しいのではないかということについて。標準も含めて考えなければいけないのでしょうが、どうあるべきかをそれぞれのお立場からお答えいただけますか。

(瀬田)  リスクコミュニケーションについて5年ほど前にいろいろ勉強してみて分かったのですが、リスクコミュニケーションをどう定義するかでいくつかの展開があると思います。そのときにリテラシーの問題が確かに出ました。つまり、情報を出すほうも受け手のほうの立場を意識して出さなければいけないし、受け手のほうも自分のリテラシーを高くしなければいけない。学問的な立場、社会的、心理学的な立場で言うと、そういった意見が多いのです。ただ、そんなことを言ってもなかなかできないわけで、産業界としても高いリテラシーを求めたということはあまりないのではないかと思います。中学卒業レベルというのは確かにそうだと思います。高校に入りますと、今は理系・文系の問題があり、大学で文系に進む場合は理科の実験をする必要がない場合もあります。そうなると勉強をどんどんしなくなってしまう。高校を出ていても理科の知識というのは中学レベルで止まっているというのが現状のようです。私も詳しくは分かりませんが、読んだ本の中にそう書かれていました。したがって、「分かりやすく」ということを考えた場合、先ほど木村さんが御紹介された冊子が一つのレベルなのではないか、そういう意味で私は非常によくできているのではないかと思います。
  ですから、リテラシーを高めていくということはリスコミの中の一つの考え方ではありますが、リスコミの精神としては、相手が分かるか分からないかを議論するのではなく、むしろ、とにかく分かりやすいということを前提にして情報を出す。また、何らかの合意を形成する場ではないということも当時勉強した覚えがあります。
  今おっしゃったように、リテラシーを上げなければいけない、一方ではそれを求めることは無理など、いろいろな意見があると思います。御指摘としては分かりますが、今の話には誰も答えきれないのではないかと思います。

(岩本)  私が「リテラシー」という言葉を使ったのですが、一般常識としてまず情報を正しく読むということが出発点だろうと思います。「安心」だけは強要できないことだと思っています。その人のレベルによって心配だと思われる方がいてもそれは仕方がない話です。あとはどうやって分かりやすい情報をもっと出していくか、という次のステップの話かと思っています。
  私は決して、あるレベルでなければいけないというつもりはありません。Aという情報とBという情報があり、「分かりません」とおっしゃれば、もっと分かりやすい情報を出す。それでも「分かりません、心配です」と言われれば、これはもう仕方のない話で、もっと分かりやすい情報を出す。この繰り返しではないかと思います。とにかく「安心」だけは強要できないと思っています。安全については、今の技術レベルから見て、「これは安全である」と言えますが、安心していただけるかどうかというのは、その人のものの考え方によるものだと思っています。

(北野)  私もよく言っていますが、きちんとした正しい知識に基づいて理解した上での判断であればいいわけですが、得てして正しくない知識に基づいて安心できないというのは困ったことだと思います。
  いずれにしても、リテラシーも広く情報と考えれば、「必要な情報がない」ということと、「情報はあるがアクセスできない」ということの二つがありますね。もう一つは「理解できない」ということで、その三つぐらいになるのでしょうか。その辺もこれから考えていく必要があるかと思います。

(岩本)  そういう意味で今日は「こういうところに情報がありますよ」という話をさせていただきました。「テレビがこう言った」ではなく、「心配だと思ったら、いろいろ調べてみよう」と。それぐらいは今のインターネット社会であればできるのではないでしょうか。それをどう判断するかは個人個人の判断に任せるしかないと思っています。

(中下)  全くおっしゃるとおりですが、それでも出ない情報があることを申し上げます。例えば、樹脂表示については、企業秘密を理由にお答えいだたけません。そういう意味で、これは産業界だけに申し上げることではありません。経済産業省、厚生労働省の方にもお聞きしたいのですが、「家庭用品品質表示法」と「家庭用品規制法」を管轄しておられますが、その中で今の樹脂表示の部分は入っているのでしょうか。
  消費者が使うような情報については、先ほど岩本さんが原則だと言われた通り、有害性も含めて中身がちゃんと分かるというものでなければいけません。それが分かった上で安全に使ってもらうことが最低限必要なことだろうと思います。それについて情報表示の義務付けがなされていません。製品ごとに違うわけです。洗剤はありますが、先ほど言った芳香剤や抗菌剤、抗菌グッズはありません。世の中に家庭用品がたくさんあるにも関わらずみんな義務づけられていないというのは一体どういう理由なのでしょうか。しかも、表示は経済産業省が、リスク評価については厚生労働省がやっておられるので、「家庭用品品質表示法」と「家庭用品規制法」は所管が違います。こんなややこしいことが行われているというのは、私としては理解ができないという感じです。
  やはり化学物質について、まず消費者にまで分かりやすい形で情報を伝えるという戦略を、各省庁が共有しなければ話が始まらないと思います。そういう基本的な理念や基本戦略をきちんと作るという意味で、本当は基本法がどこの領域でもあるはずなのに、化学物質の領域だけ基本法がありません。そのために省庁ごとに対応がバラバラになっている。
  先ほど農薬の話も出ましたが、シロアリ駆除剤は、農薬でも薬事法でも規制がかかりません。そのために被害が出ていると私どもは現実に相談を受けています。そのようなすき間がないように対策を講じていくということは、避けて通れない課題ではないかと思います。ですので、省庁間できちんと戦略を練る。とはいっても各省庁で行うのはなかなか難しいと思いますので、今の食品安全委員会のような仕組みの中で、データを透明化していったり、戦略を立てるといった枠組みをつくる必要があるのではないでしょうか。この辺を省庁の方にぜひお答えいただきたいと思います。

(村田)  そのことに関連してお答えいただければと思います。いま「情報」がテーマになっていますが、国際的に製品中に含まれる化学物質情報をどう伝えるかということが大きなテーマになっています。以前の円卓会議でも議題になったSAICM(注、Strategic Approach to International Chemicals Management;国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ)ですが、5月に行われる第2回国際化学物質管理会議(注:SAICMの実施状況のレビューやナノ材料の安全性等の新規の課題への対応等について検討される予定)の中で一つの大きなテーマとして取り上げられることになっています。
  GHSはいわゆる化学品についての表示ですが、ここで議論になると思われるのは、製品、いわゆるREACH(注、Registration, Evaluation and Authorization and Restriction of Chemicals;欧州における化学物質の登録・評価・認可・制限の新たな規則。2003年に欧州委員会が提案し、2006年に成立。2008年12月までに予備登録が実施される等の実質的な規制が始まっている)で言えば、アーティクル(注、成型品)ですね。自動車なり、コンピューターなり、こういうものの中にどういう化学物質が入っているかという情報をどう伝えるかということが間違いなくこれからの大きなテーマになると思います。そういうことに関して行政側はどのようなお考えをお持ちでしょうか。また、成形品を作っていらっしゃるメーカーの川口さんや、流通の大野さんも本日いらっしゃいますので、それぞれに製品の化学物質の情報伝達についてのお考えをお聞かせいただければと思います。

(北野)  製品によって情報開示が義務づけられているものとそうでないものがあるという点について、行政としてどう考えているかということと、そういう化学物質を使った製品を作っているメーカー等がどう考えるか、また、どのような情報を出すのが良いかという御意見だったかと思います。最初はまず、現在どうお考えになっていらっしゃるかということからお伺いしましょう。これにつきましては、は岸田さん、後藤(芳)さんよろしいですか。

(岸田)  先ほど有害物質の家庭用品規制法の話が出ましたが、有害なものについて、言うなれば基準を設け、そういったものが有害でないようなものにするというのが基本的な考えですので、そういった観点からの規制はちゃんと行っています。また、どういう化学物質についてどういう毒性があるのかという情報をそれぞれの省庁も含め共有すべきではないかという御意見がありましたが、新しい組織をどんどんつくるというのでなく、それぞれの省庁がそれぞれの役割を情報共有しながら、それぞれの法律を最大限に活用していくということなのではないでしょうか。そのための環境づくりはしっかりやっていかなければいけないのだと感じました。

(北野)  後藤(芳)さん、いかがですか。

(後藤(芳))  だいたい今お答えいただいたとおりかと思いますが、具体的に弊害や有害性があれば、その表示をきちんと行っていくことが非常に大事だと思いますので、情報をいただきながら表示もしていくように努めていくことが大事ではないかと思います。

(岩本)  先ほど後藤(敏)さんからも中間製品の話がございました。今の話に全て関係していると思いますが、化学物質というのは、最終製品をつくる過程でいろいろな使い方がされます。例えば、パソコンを見て化学製品だと思う人はいませんが、実際はほとんど化学物質の塊となっています。問題はどういう情報を本当に消費者が求めているのかということだと思います。また、サプライチェーン、産業界のつながりの中で相互に情報を出しながら、まずは安全に使い、安全に廃棄される製品をつくっていくことが産業界の大きな課題だろうと思っています。問題は、そのときにどういう物質が入っているのかという情報をどれだけの人が望んでいるのかということです。もちろん一部の方が望んでおられるのは分かっています。ただ、製品に付ける情報として、例えば、このパソコンにはこんな化学物質が使われていますという情報を出したところで、まず九十数パーセントの人は関心がないだろうと私は思っています。少なくとも私には関心はありません。しかし、一部の人はそういうことも追いかけてみたいと思われる。それはそれで別の対応ルールがあるのではないか。それは法律で規制をつくる云々という話ではなく、やはり情報を開示していくという前提の中で、機密保持に関わらない範囲で情報のやりとりをしていく。そういった情報をすべて消費者に出して、消費者が満足するのかどうか。先ほどリテラシーの話がありましたが、このような情報を出しても、消費者は混乱するばかりだと思います。そういうことで、情報というのは、質と何が求められているかということで考えるべきではないかと思います。

(北野)  サプライチェーンを通した情報提供というのは、今度の化審法の改正の中で入ってきていますね。

(中下)  厚生労働省の方に少し申し上げたいのですが、有害なものは規制しているとおっしゃいましたが、規制物質は20物質しかありません。消費者製品に使われている化学物質の中で有害物質はわずか20物質なのでしょうか。PRTR物質でもものすごい数があります。消費者製品にもしそれが含まれているなら、なぜ表示がされないのでしょうか。そういうところの共通した戦略がないのではないでかと言うことを申し上げたいと思います。消費者が自分でリスクマネジメントをしなさいと言われても、これではリテラシー以前の問題で、情報がないように思いますので、その点をよくお考えいただきたいと思います。

(北野)  岸田さん、御意見はありますか。

(岸田)  化学物質が入っているから有害だというふうに決めつけるわけにもいかないのだろうと思います。いろいろな入り具合や、人体との接触の具合、口の中に入るのか、皮膚に触れるのかといった問題もあるでしょう。私どもが考えていますのは、そういう人体への影響についての情報を収集して有害だろうと考えた場合は規制をする。そのためには、例えば、病院からのモニター報告等を集め、それを評価していかなければいけません。そういう有害性の情報をどうやって集めるのかというのが我が省庁に課せられた課題かとは思っています。

(中下)  省庁間で連携していただきたいと思います。情報はたくさんあるのですから。企業が持っておられる情報もあると思いますので、そこはもう少し工夫して、20物質ではなく、もっと多数の物質について表示をしていただきたいと思います。

(北野)  今のは御意見ということで伺いました。

(川口)  今の御質問の件について、電機・電子の代表ということで回答させていただきます。法律への対応は当然のことなのですが、先ほど山本さんがおっしゃられたように、我々は最終的には製品を供給しお客様に提供させていただく立場ですので、モノを加工するため、材料の川上のメーカー様と当然協力をしなければなりません。それについても業界として、共通の枠組みで情報を入手して提供するということを行っています。ですので、一つはそれで共通的な対応ができているのではないかと思います。ただし、情報を受け取られる側の方にとっては、一つの情報には見方がいろいろあるため、ある程度の基本的なとなるところまでになるかと思います。それ以上については、先ほどのお話の情報に対するアプローチがあったときにどのように個別に応えられるかというところだと思いますので、今のところ、業界としての対応はそういうレベルになってしまうと思っています。

(大野)  サプライチェーンの一番末端を担う者としましては、商品であれ、我々の売り場であれ、情報を提供するスペースというのは限られています。それから買いにいらっしゃるお客様にも山本さんがおっしゃるように千差万別いる中で、その方がどういう情報を望んでいるかという部分について、何を提供するかというのは非常に難しいと思います。最近では、二次元バーコード(注、長方形のバー・スペース、又は、正方形のセルを二次元的に配列することにより情報をコード化したシンボル。情報量が大きく、また、データが少ない場合は小さく表示することが可能)で情報を携帯電話から読みとるといったことがありますので、世の中全体として求める人にはきちんと情報が流れるような仕組みづくりというものが必要なのかと思います。そのときには我々も対応させていただけるのではないかと思います。

(北野)  いずれにしても情報が大事だということは間違いないのですが、どういう場で、どういう情報を出すのかという辺りが、これから検討されなければいけない部分だと思います。MSDS(注、Material Safety Data Sheet;化学物質安全データシート)を付ければいいというものでもないでしょうし、そこのところは消費者が何を望んでいるのか、どういう情報を望んでいるのか、ということをもちろん考えなければいけない。そういう意味で、先ほどお話に出ましたように、物質名だけ載せるのがいいのか、それともこういう試験をやっていますよ、ということを載せたほうがいいのか。そういう議論もいろいろあると思います。いずれにしても情報が基本になることは間違いありません。

(角田)  今までのお話には私も賛成ですが、化学物質がどんどん多くなってきて、用途もたくさんあって、恐らく法律の体系整備のほうが遅く、追い付かないという部分があるため、法律や法体系を整備し直すということも必要だと思います。また、産業界の人も行政の人も自主的にシステムをつくり、なるべく使い手、情報がなかなか理解できない人たちに、使いやすい情報の仕組みをつくってもらえるといいと思います。
  もう一つ、情報の出し方という点ではまだまだ議論ができるかと思います。この辺りは瀬田さんのコメントと似たコメントになりますが、今、サイエンスコミュニケーションの世界では、「欠如モデル」ではもうだめだと言われています。御存じの方もおられると思いますが、科学者、あるいは行政、企業はたくさんの正確な知識を持っていますが、それに対して消費者や市民は知識を持っていない。そういったことを前提に考え情報を与えるというのを「欠如モデル」と言うそうです。そういうモデルですと、受け手の側のリテラシーの問題で、行動に結び付くような情報発信ができていないということです。そこで、「正しい情報だから与える」といった考え方でないコミュニケーションの仕方というものが、今、サイエンスコミュニケーションの世界で試みられています。
  例えば、西山さんから御紹介いただいた下水道のLASの非処理性のところで、「下水道で99.5%以上取り除くことができます」で終わるのではなく、実際に下水道処理場に連れていき、下水道処理場ではどのような仕事をしているのかということを感じてもらう。その情報を自分の中に落としていくことができると、また少し違ってくるのではないでしょうか。小学校からの科学教育のあり方という点において、日本は世界の他の国に比べると、正しい知識を伝えることにものすごく熱心な国と言われています。しかし、知識さえ提供すれば科学的リテラシーが身につくというわけではありません。身近な自分の暮らしの中で化学物質や化学がどのように活きているのかということを伝え、学んでいくことができれば、また違ってくるかと思います。そこで何を教えるのか、出ていない情報は出してほしい、という意見もありますが、それをどのように伝えていくか、誰が伝えていくかといったようなところで、化学物質アドバイザーの役割や、NGOの役割、自治体の役割がそれぞれ出てくるのかと思います。できれば次年度以降の会議では、どのような考え方で情報を伝えるのが良いのかといった議論ができれば良いと思います。

(北野)  その辺は、最後のところで、どのようにしたらいのか、どのような情報を提供するのが良いのかという議論をしたいと思います。先ほど後藤さんが三つの御指摘をされました。最初の指摘は「情報リテラシー」です。二つ目は、化学物質の廃棄の段階における科学的検討がなされていないという点です。私も学校の教員の1人ですが、廃棄の研究というのはなかなか難しいところがあります。化学物質ばかりでなく、複雑なものを扱っているものですから、わけの分からないものを扱わなくてはいけないということで、非常に難しい。もちろん大事なことは分かっていますが。私と同じ研究者である原科さんはどうお考えでしょうか。

(原科)  おっしゃるとおりです。むしろ北野さんが御専門ですので、私は、うまくは答えられませんが。情報の問題で少し前に戻りますと、行政と産業界の間では情報のやりとりが相当行われています。問題は行政が把握した情報が国民にどれだけ公開されるかです。ここにはなかなか難しい問題があります。企業との間で約束をしたので公開できないという場合が結構あります。しかし、そればかり言っていると、結局行政の判断に使った情報が何をベースにされたものなのかが分からなくなってしまいます。行政の判断の根拠として情報は公開していただかないと困るわけです。そのため、行政文書管理、あるいは公文書管理等が必要だと思います。今、ちょうど公文書管理法案(注、公文書などの作成から管理・保管および公文書館への移管、保存、公開に至る統一的な法制)が国会に出ていますが、こういう切り口からも考えたほうがいいかと思います。ですから、産業界から提供された情報を積極的に蓄積し、しっかり管理をして、必要なものは出していく。これには国民のためのものという意味があります。そして、出すときには、先ほど山本さんがおっしゃったように、不特定多数というばかりでなく、特定の形でもいいと思います。ただ大事なことは、行政と産業界の間だけでなく、他の主体のしかるべき判断ができる人、あるいはある部分では守秘義務が守れるような人のチェックを受けることです。そのこともあって先ほどクロスチェックのことを申し上げました。これも広い意味でのクロスチェックになると思います。ある一部の主体だけの判断ではなく、社会にはいろいろなステークホルダーがいますから、それぞれがある条件を守りながら、きちんと情報をチェックしていく。このような仕組みがあれば、社会全体で安定した判断ができると思います。そういった問題があることを一つ提起しておきたいと思います。

(北野)  ありがとうございました。二つ目の問題に戻りますが、現状では、廃棄の仕方の政令については一応MSDSに記載する欄はあります。確かに今度PRTR法(注、正式名称は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」。化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)を定めた法律)が改正されます。ライフサイクル全体を通して考えれば、廃棄のところもかなり大事なことであるし、事業者側にはその辺のところでも努力していただきたいと思います。

(崎田)  今の廃棄の話について、特に身近な家庭の中での化学物質を使った製品を考えた場合、棚を開けると使いきれない様々なクリーナーや農薬類、殺虫剤等が非常に多くあります。そういったものをどう処分すべきか、いろいろなところで皆さんが感じていらっしゃいます。そこで、例えば、こういったものをお店で店頭回収することはできないのでしょうか。本当はそれが一番分かりやすいのではないかと思います。ただ、店頭で回収するのが大変だということであれば、例えば、スウェーデンに取材に行ったときに、ガソリンスタンドの横に危険物回収ボックスが置いてあり、そこにペンキ等の使い切れないようなものを入れて一緒に持っていくような形で整備されていたのですが、そういう形でもいいと思います。
  産業界の皆さんと地域社会とみんなで連携しながら、そういうものをきちんと回収していく。そして、そこから適正処理をしていく。そういったことを考えていくこと自体、重要だとかなり以前から思っています。そのような機運を発信することは大変重要ではないかと思います。

(北野)  電池が一つの例ですね。その辺について、産業界の方はどのようにお考えですか。いきなり言っても難しいかも分かりませんが。

(岩本)  廃棄の世界というのは、不特定多数から情報を出しても、情報の網の目をかいくぐって様々なものが入ってきます。以前、私がプラスチックのリサイクルを行った際、プラスチックで油をつくろうと思い回収しますと、だいたい3割ほどプラスチックでないものが混じってきました。いかにきちんとした形でモノを集めることが大変かということを身にしみて感じました。これは個人的な意見ですが、廃棄物をいろいろ加工しようとするのは大変です。加工できるのはペットボトルや発泡スチロール、塩ビのパック等のごく限られたものであり、あとはいろいろな手を加えないで焼却処理をする、エネルギー回収をする等、できるだけ単純に扱うほうが事故が少ないように思います。これは個人的な考えです。そこに手を入れようとすると問題がどうしても起きてくる。どういうものが飛び込んでくるかなかなか分からない。最後は個人個人の家庭から出てきたり、いろいろなところから出てくるものですから、百点満点はあり得ないと思います。

(原科)  私も今62になり、あと3年で定年になります。定年になると私の大学では化学の先生が皆いろいろな実験の試薬の処理に困ってしまう。まじめに処理をすると本当にコストがかかってしまうため、そのコストをどうするかというのが我々としても大問題です。我が東京工業大学でも実際のところ困っています。そういうことを考えると、社会全体で見てもおっしゃるとおりで、廃棄物の処理にコストがかかりすぎると社会全体がどうなるかという問題は確かにあます。その辺を考えますと、私は今おっしゃったような方法というのは、実際には現実性があるのかと感じます。それを社会でどう理解するかですね。確かに危険なものはしっかり対応しなければいけないが、千差万別ですから、すべて同じようにはできないという感じは実感として持っています。こんなことを言うと怒られるかもしれませんが。

(北野)  一番恐ろしいのは、安易に水に流してしまったり、一般廃棄物に混ぜて捨ててしまうといったことでしょう。そういう不法なことをしないためにどういう制度があるかということです。回収するということは決して再利用するという意味でなく、適正に処理するという理解で良いと思います。
  では、時間がなくなってきましたので、三つ目はカーボンフットプリントの話をして、最後に情報のあり方にもう一度戻って終わりにしたいと思います。
  三つ目の指摘ですが、カーボンフットプリントが最近話題になっていますが、化学工業会としてどう考えているかと言う質問でした。恐らく工業会としては議論をしていないと思いますが、ここは個人の意見を出す場でもありますし、いつも言っていますが、ここは何かを決める場でもありませんので、化学工業会代表ということでなく、化学工業に携わっている立場として、現在の温暖化問題を踏まえてどうお考えかをお聞かせいただけますか。

(越智)  三菱ケミカルの越智です。実際問題として、化学工業会は炭酸ガスをたくさん出していますので、削減に向け一生懸命考えています。工場全体で90年度比のCO2量を減らすということでいろいろ行ってきています。これからは個々の製品群についても、エネルギー負荷を下げていくことが重要で、その製品群の中でカーボンエミッションがどのくらい出ているのかということを検討し、下げていこうとする努力の段階に入ってきています。経済産業省でもトライアルに入っていますが、我々もどんどんやっていくことになっていくのだと私個人では思っています。私も社内でチーフサステナビリティオフィサーという役割を担っているものですから、そういう面では環境問題に企業としても取り組んでいこうという動きは出てきていると思っています。

(西山)  石鹸洗剤工業会としては、この問題に本格的に取り組んでいないと思いますが、昨年12月に東京で開催されましたエコプロダクツ展において、カーボンフットプリントの取組を我々の業界の中の数社が報告させていただきました。取組としては、消費者がお使いになる製品の場合、どこにどのくらいエネルギーが使われているのかということを明らかにして、対応するべきポイントを発見することに価値があるのではないかと思います。
  例えば、私どもが今回取り組んだのはシャンプーでしたが、そのとき、実際にどこに一番負荷がかかっていたかと言いますとお湯です。製品の製造や輸送の段階ではなくお湯なのです。カーボンフットプリントはそういう使い方ができる有効な手段だと思って取り組んでいます。

(北野)  あと15分ぐらいになってしまったのですが、今日は行政側の取組と、石鹸洗剤工業会や農薬工業会、食品添加物協会等の取組を御紹介いただきました。それぞれ一生懸命やっていらっしゃることはよく分かるのですが、ただ、食品添加物なり農薬に対して、なんとなく嫌だなという感情を持っていらっしゃる方がいることも事実ですよね。現実に「無添加」とか、「無農薬」、「減農薬」といったものが志向される傾向があることも事実です。
  今日は化学物質を賢く使おうということで、そのために必要な情報は何か、どういうときにどういう情報をどんな形で出すのがいいのかという議論になってきたと思います。広く言えば、情報リテラシーだと思います。最後の15分ぐらいをそれに割いて議論したいと思います。現実には情報ギャップの話ですね。情報ギャップを含めたリスクコミュニケーションも一つの手段でしょうし、ここにある「かんたん化学物質ガイド」も一つの手段でしょう。また、ホームページや、製品にラベルを張ることも一つの手段でしょう。いろいろなやり方があるかと思いますが、その辺を踏まえてどうしたらよいのか、ということについて、それぞれ御意見をいただければと思います。

(村田)  今までの議論の中で少し気になった点があります。一般消費者は物質名が羅列したものを情報としてもらっても分からないのではないかという意見には一理あります。しかし、製品中の化学物質の情報がきちんと入手できたり、公開されていたりすることと、それらが分かりやすく情報提供されているかということとは、区別して議論すべきことです。

(北野)  二つ意見がありました。岩本さんの意見ですと、物質名を羅列して記述するよりも、どういう安全性試験が行われているのかという情報のほうが大事ではないかという御話と、それとは別に、どういうものが入っているのかという物質名も出すべきだと言う御意見です。その辺はそれぞれのお考えでそういう二つの意見があるということでよいと思います。後藤(敏)さん、いかがですか。

(後藤(敏))  今村田さんがおっしゃったように、一般市民が全部知る必要はないし、分からない。それはそのとおりですが、要は情報が取れるか取れないかです。私も一応NGO・市民という立場で出席していますが、残念ながら日本では、NGOは力がありません。これは歴史的な背景等がいろいろあります。ただ例えば、欧州では電機・電子分野では、グリーンピース(注、気候変動やエネルギー問題、海洋生態系の保護等への活動を行う国際環境保護団体/NGO)が、電気製品に対し、化学物質の何が入っていて、何が入っていないということを表にし、緑や黄色、赤を用いて評価を行っています。これを公表されると大変だということで、日本の電機・電子機器メーカーさんも非常にナーバスになり、製品中の含有化学物質を猛烈に減らそうとする等努力されています。私もよく聞いて分かっているつもりです。要は、そういう情報を得て評価をする機関が市民サイドにある社会と、日本のようになかなかそれができないという社会の違いというものがあると言うことです。昔はそこを行政がある程度やっていたと思うのですが、すべて行政にやっていただくという時代ではもちろんありませんし、不可能な部分もある。その辺のところがこれからの大きな課題だろうと思っています。残念ながら現在は、そういう情報をむしろ輸入して使っているという状態に近いのではないかと思っています。

(崎田)  今後藤さんが口火を切ってくださったのですが、身近な化学物質のリスクを削減するためには、使える情報をかなり整備していただくことが大事なのではないかと思っています。もちろんGHSや製品そのものの表示はきちんとやっていただきつつ、その上で使える情報を提供することが大事だと思います。同じような機能を持ったいろいろな製品の比較情報等がきちんと発信されるようなところがあると良いと思います。例えば、環境性能と本来そのものが持っている性能の両方を含めて評価するようなものを、例えば、消費者庁(注、消費者行政を統一的・一元的に推進するため設置が検討されている行政機関)辺りでどんどん出していただくとか、NGOの視点で環境性能に関する情報を出すなど、製品の比較情報を出していただく。今は構図の話をしましたが、何を基準にして比較をするかということを明確にした上で情報を出すということをしっかりやっていただきたいと思います。違う評価軸を持っているような団体がそれぞれ情報を出すとなると、製品チェックにものすごく費用がかかるので、いくつもの制度をつくるというよりは、第三者機関的な形にしていただき、環境性能と製品性能を合わせたような製品の比較情報を様々な製品について定期的に出していただくような機関ができれば良いと思います。そうすれば、多くの消費者も関心を持ち、また、それを定期的に見ることで、頑張っている企業の製品が分かり、それが消費行動にも反映できるのではないかという感じがしています。

(北野)  具体的に言えば、例えば、家電製品でのCO2、エネルギー消費量のような性能を表示していくということですね。

(崎田)  エアコンや冷蔵庫等の家電の省エネ性能については今かなり情報が出ていますよね。そういう意味で化学物質を使っている製品に関しても冷静な比較情報やテスト情報が消費者のキャッチしやすい場所にあるともっと関心が出てくるのではないかと思います。

(北野)  新井さん、お願いします。

(新井)  今日いただいた環境省の冊子はすごくいいと思います。小さな子供のときに興味を持つと、ものを知りたいと思う気持ちは大人になってもずっと育まれていくものと思います。先ほどのEラーニングもすごく良いと思いました。学校教育の中でこういったものを入れていくような方法を考えてはいかがでしょうか。
  例えば、一般のお母さんたちはテレビ等で消臭剤の製品を見ますと「除菌をしなくてはいけないものだ」という気持ちになってしまいます。ですから、小さいときからの教育に少しでもこういう情報が入っていれば良いなということをつくづく感じました。

(北野)  そうですね。最近調べてびっくりしたのですが、教科書には検定(注、教科書検定制度。1947年に制定された学校教育法に基づく制度で、民間で著作・編集された図書について、文部科学大臣が教科書として適切か否かを審査し、これに合格したものを教科書として使用することを認める制度)がありますが、副読本には検定がありません。家庭科の副読本等を見ていますと、私から見ても偏った表現だなと思う記述が結構あります。あれは検定がなくそのまま出てくるためであり、そういう教育を中学、高校で受けてくると、ずっとそのように思ってしまうのではないかと思います。その辺りも考えないといけないのではないかと思いました。

(岩本)  私は高等学校のときに先生から情報というのは情けをもって相手に知らせるものだと教わりました。先ほど「消費者には」と言いましたが、要するに、必要な人に必要な情報が届くということが大事なのです。SAICMが2006年に制定された中で、大きな柱として発展途上国におけるキャパシティビルディング(注、能力開発)と、もう一つは、情報にすべての人がアプローチできるようにする、ということがあったと思います。そういう意味では、必要なところには必要な情報があることが大事です。何も日用製品にベタベタと情報を張り付ける必要はありません。ところが、きちんと解析したいというニーズがあったときには、その情報にたどり着けることができる仕組みが必要だろうと思っています。その代わり、それは正しい考え方のもとに使っていかなければいけないわけであり、そういう意味では、情報というのはいろいろな種類の出し方があっていいのではないかという気がします。トータルでどういう情報の出し方が望ましいのかというのは、今後いろいろ議論していく必要があると思います。日用製品には本当に消費者が望んでいる最低限の情報が必要です。今回、インターネットで調べると殺虫剤ごとに成分が分かり、こんなことまで載っているのかと思いました。ちょっと調べればすぐ分かるわけです。ニーズがあれば当然そういうシステムが出来上がってくると思います。一律の仕組みではなくても良いので、程度に応じたいろいろな仕組み、あるいは情報ツールがあっていいのではないかと言うのが私の考えです。

(原科)  岩本さんのおっしゃったことはほぼトータルでagree with youです。ただ一つだけ違うのは、確かに一律でなくていいのですが、きちんとやるためにはやはり法的枠組みがないと自主的な対応ではできません。これはもうアセスメントの世界で山ほど経験しています。そういうことを実現するためには、やはり法的枠組みをしっかりつくる。その上で、情報へのアクセスは多様性があるというのはおっしゃるとおりだと思います。

(北野)  最後に中下さんお願いします。

(中下)  原科さんが大分おっしゃってくださったのですが、そういう意味で最低限必要な情報、つまり、成分の中に含まれている化学物質が分かるようにする。そのようなことは法的にきちんと義務づけていかないと入手できたり、できなかったりするようになると思います。岩本さんがおっしゃるように、ニーズに応じた情報の出し方をすれば良いので、何も全部表示しろと私も言っているわけではありません。そこにはいろいろな工夫があっても良いと思います。しかし、例えば、ある団体がPRTRに指定されているいわゆる界面活性剤がどんな製品に使われているのかということを調べるような取組をした際のことです。PRTRというのは、基本的に指定物質をできるだけ減らしていこうという考え方ですから、消費者として、それを知った上で情報を皆さんに提供して減らしていこうというような取組を行おうとしました。しかし、結局、物質名がCASナンバー(注、化学物質を特定するための番号)や、正式名、通称名で表示されるなどその方法がバラバラで、しかも、通称名と正式名では、素人には同じ名前とはとても思えないような表示の仕方がなされているものがありました。また、それが製品によっていくつも違うということが分かりました。そのようなことは、行政が変換表をきちんとつくるなどして対応していただかないと分かるものではありません。
  それから、せっかく化管理法をつくっているのですから、それが消費者製品に含まれているものについては、ちゃんと表示をして、PRTR指定物質であることを伝えるべきです。減らそうという目的が分かるように政策連動していただきたいと思います。厚生労働省、経済産業省、環境省は、化審法を3省共管でやっておられますので、是非政策連動、いただきたいと思います。

(北野)  ありがとうございました。先ほどから言っていますように、ここは一定の結論を得る場ではありませんので、議長としてあえて総括する必要はないのでしょうが、最後に岩本さん、原科さん、中下さんがおっしゃられたように、必要な人に必要な情報がきちんと伝わる。そして、それらの情報は消費者が評価できるような情報でなくてはいけないと言う崎田さんの意見もあったと思います。その辺りが今日の全体の意見かと思います。
  長時間に渡る議論をどうもありがとうございました。今後円卓会議をどう進めるかにつきましては、この後のビューロー会合において議論したいと思います。最後に事務局からお願いします。

(事務局)  本日は長時間にわたり活発な御議論をいただきましてありがとうございました。本日の会議の配付資料、議論の内容につきましては、後日、環境省のホームページにおきまして公表させていただきたいと思います。
  また、メンバーの方々におかれましては、北野さんからお話がありましたように、ビューロー会合を16時10分から8階「パンジー」にて開催させていただきたいと思いますので、お時間のある方は御移動のほど、何卒よろしくお願いします。傍聴の方におかれましては、アンケート用紙に御意見、御感想等をご自由にお書きいただきまして、お帰りの際に受付にお渡しいただければと思います。
  それでは本日の会議はこれで閉会にさせていただきたいと思います。誠にありがとうございました。