化学物質と環境円卓会議(第22回)議事録

■開催日時:平成20年4月10日(木) 14時00分〜17時00分

■開催場所:主婦会館プラザエフ クラルテ

■出席者:(敬称略)

<ゲスト>
遠山 千春 東京大学大学院医学系研究科 教授
鈴木 隆一郎 関西医療技術専門学校 校長
只見 康信 環境省水・大気環境局ダイオキシン対策室 室長補佐
<市民>
有田 芳子 主婦連合会 環境部長
大沢 年一 日本生活協同組合連合会組織推進本部環境事業推進室長
後藤 敏彦 環境監査研究会/サステナビリティ・コミュニケーションネットワーク代表幹事、社会的責任投資フォーラム代表理事事務局長
崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長
NPO法人新宿環境活動ネット代表理事
中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長
<産業界>
岩本 公宏 (社)日本化学工業協会 エンドクリンWG主査
甲賀 国男 (社)日本化学工業協会 LRI 科学タスクフォース委員
瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会 広報委員会顧問
崔 文雄 日本石鹸洗剤工業会 専門職理事(中谷吉隆代理)
池邨 善満 (社)日本電機工業会 (社)電子情報技術産業協会 情報通信ネットワーク産業協会 (社)ビジネス機械・情報システム産業協会 2007年事業所関連化学物質対策専門委員会委員長(谷口幸弘代理)
兼先 伸和 日産自動車(株)環境安全技術渉外部 主担(八谷道紀代理)
大野 郁宏 日本チェーンストア協会 環境委員会委員
<行政>
山本 佳史 愛知県環境部技監
石塚 正敏 環境省環境保健部長(木村 博承 環境省環境保健部環境安全課長に途中交代)
山本 順二 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室長(黒川達夫代理)
佐々木 昭博 農林水産省大臣官房審議官
照井 恵光 経済産業省製造産業局次長
<学識経験者>
北野 大 明治大学理工学部教授
安井 至 (独)科学技術振興機構 研究開発戦略センター 上席フェロー
(事務局)
木村 博承 環境省環境保健部環境安全課長(萩原 辰男 環境省環境保健部環境安全課長補佐に途中交代)
(欠席者)
角田 季美枝 バルディーズ研究会 運営委員
千葉大学大学院人文社会科学研究科公共研究センター リサーチ・アシスタント
村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパン シニア・オフィサー
原科 幸彦 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授

■資料:

○事務局が配布した資料

資料1 ダイオキシンのリスクアセスメントについて(遠山さん発表資料) [PDF(1,878KB)]
遠山さん参考資料1 「ダイオキシンの毒性と健康:「神話」から科学へ」(会場配布のみ)
遠山さん参考資料2 「環境中のダイオキシンへのばく露と健康リスク」(会場配布のみ)
遠山さん参考資料3 「ダイオキシンの耐容摂取量の決定の背景とリスク評価の最近の動向」(会場配布のみ)
資料2 ダイオキシンに関するリスクコミュニケーション(鈴木さん発表資料) [PDF(485KB)]
鈴木さん参考資料1 ダイオキシン類2005(関係省庁共通パンフレット) [PDF]
鈴木さん参考資料2 日本人におけるダイオキシン類の蓄積量について [PDF]
資料3 我が国におけるダイオキシン対策に係る取組(只見さん発表資料) [PDF(3.33MB)]

○事務局が配布した参考資料

参考資料1 第21回化学物質と環境円卓会議議事録(メンバーのみ配布)  [HTML]
参考資料2 化学物質と環境円卓会議リーフレット  [HTML]

■議事録

1.開会

(木村)  本日は大変お忙しい中、皆様方にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。時間がまいりましたので、第22回化学物質と環境円卓会議を開催させていただきます。この化学物質と環境円卓会議につきましては、化学物質の環境リスクに関する情報を市民、産業、行政、そして学識経験者の方々で共有いたしまして、相互理解を深めるために平成13年に設立されたものでございます。幅広い方々にこの円卓会議にご参加いただく機会をつくらせていただき、化学物質に関するリスクコミュニケーションをより推進していくということで、前回は福岡県の福岡市において開催させていただきましたが、今回はまた東京での開催という形になってございます。
  本日は安井さんに司会をお願いしていますので、今後の進行につきましては安井さんにお願いいたします。

(安井)  皆さまよろしくお願いいたします。ただいまから第22回の化学物質と環境円卓会議を開催させていただきます。実は私は、前回参加しておりませんが、前回の会議では「農薬と化学物質のリスク評価等に係る取組について」をご議論いただきました。今回は、ダイオキシン対策をテーマに、そのリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション等々についてご紹介いただきまして、意見交換を行う予定になっています。
  これに当たりましてまず三人のゲストスピーカーから情報提供を行っていただくことになっています。お一人目は、東京大学大学院医学系研究科教授の遠山千春さん、二番目に関西医療技術専門学校校長の鈴木隆一郎さん、三番目に環境省水・大気環境局ダイオキシン対策室室長補佐の只見康信さんです。それぞれの方に質疑応答を含めまして25分という枠を設定しています。できればご発表は20分間で5分間の質疑とさせていただきたいと思います。その後、休憩を挟みましてメンバーで意見交換をしたいと思います。
  それでは議事に入る前に、事務局から本日のメンバーの出席状況、資料の確認等についてお願いします。

(木村)  年度が変わったということもあり、メンバーの交代がございます。産業界から、池邨善満さんから谷口幸弘さんへ、また、小林珠江さんから大野郁宏さんに交代されています。出席状況ですが、本日の代理出席といたしまして、今申し上げました谷口幸弘さんの代理で池邨善満さんが、八谷道紀さんの代理で兼先伸和さんが、また、中谷吉隆さんの代理で崔文雄さんにそれぞれ代理で出席していただいています。行政側につきましても、本日の国会の審議状況によりまして、厚生労働省大臣官房の黒川審議官の代理で医薬食品局の山本室長が出席されています。また、欠席者は、角田季美枝さん、村田幸雄さん、原科幸彦さんの3名です。メンバーの交代、出席状況については以上でございます。
  次に資料の確認をさせていただきます。資料1は、遠山さんの発表資料です。また、遠山さんの参考資料としまして、参考資料1「ダイオキシンの毒性と健康:「神話」から科学へ」、参考資料2「環境中のダイオキシンへのばく露と健康リスク」、参考資料3「ダイオキシンの耐容摂取量の決定の背景とリスク評価の最近の動向」を付けております。資料2は、鈴木さんの発表資料です。鈴木さんの参考資料としまして、参考資料1「ダイオキシン類2005」、参考資料2「日本人におけるダイオキシン類の蓄積量について」をそれぞれ付けております。資料3は只見さんの発表資料です。なお、参考資料1としまして、第21回化学物質と環境円卓会議の議事録がございますが、これにつきましては、本円卓会議メンバーの方々のみに配付しているものですが、既にメンバーの方々にご確認いただきまして、環境省のホームページに掲載済みです。もう一つ、参考資料2としまして、化学物質と環境円卓会議のリーフレットがございます。こちらは、必要に応じて改正しながら配付している最新バージョンのものです。今申し上げた資料に不足がございましたら、事務局にお申出いただければ幸いです。
  もう一つ、補足情報としまして傍聴席の後ろに環境省作成の化学物質等に係るパンフレットをいくつか置いています。具体的には「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」、「化学物質ファクトシート−2006年度版−」、「花粉症保健指導マニュアル−2008年2月改訂版−」です。お帰りの際にはご自由にお持ちいただければと思います。
  なお、傍聴者の方々には、本日の化学物質と環境円卓会議にご参加いただきました感想等をご記入いただくアンケート用紙をお配りしています。こちらにつきましては、会議終了後にご提出していただければ幸いです。事務局からは以上です。

(安井)  それでは早速議論に移りたいと思います。今回の議題は「ダイオキシン対策」です。ダイオキシンに関するリスク評価、あるいはリスク管理、リスクコミュニケーション等に関する取組について、まずはゲストスピーカーの皆さんから話題を提供していただきまして、対策手法、その効果、科学的知見の進展具合、あるいは社会的な反響、コミュニケーションといったさまざまな話題につきまして、議論を展開してまいりたいと思います。3名のゲストスピーカーの方には、ご発表後、簡単な質問をさせていただき、休憩を挟み、メンバーで意見交換をしたいと思います。
  はじめに、東京大学大学院医学系研究科教授の遠山さんからご発表いただきたいと思います。

(遠山)

スライド1

遠山さん写真  ご紹介いただきました東京大学医学系研究科疾患生命工学センター健康・環境医工学部門の遠山です。「ダイオキシンのリスクアセスメントについて・実験研究からのメッセージ」ということで話をさせていただきます。


スライド2
スライド3

  ダイオキシンによる遺伝子の転写活性化のメカニズムですが、ダイオキシンは、ご承知のように、細胞内に入ると、「ダイオキシンレセプター」、「Ahレセプター」というものに付き、細胞の核の中に入り、特定の遺伝子の鎖に結合します。それが機能的に働いている場合には、生体反応や毒性を発現します。塩素の位置と数によって数百種類あります。スライドの一番右端に書いている「2,3,7,8-TCDD」と呼ばれるものが最も毒性が強いダイオキシンの典型と呼ばれるものです。


スライド4

  ダイオキシン類に関する社会的問題の経緯です。個別には申し上げませんが、さまざまな社会的な問題が発生し、リスク評価が行われ、リスクマネジメントに対する施策が行われてきました。


スライド5
スライド6
スライド7

  10年ぐらい前になりますが、環境ホルモンやダイオキシンが社会的な問題になったときに、手元にある、あるいは私が買った本を並べて写真に撮ったものです。何回かの講演で使っていますが、今回改めて見てみますと、安井さんや北野さんの本もあります。中には非常にまじめな本もありますし、危険をあおるだけの本もあります。こうした流れを受けて、最近では、このようにダイオキシン問題をはじめ、その他、地球温暖化、リサイクル等、さまざまな環境問題には嘘があるということや、ダイオキシンに関しては余計なお金を施策に使い過ぎているし、不要な研究にまでお金を費やしているというような論調も見られることは、皆さんご承知だろうと思います。ごく最近になり、『実は危険なダイオキシン』とか、『ダイオキシンは怖くないという嘘』というような、これに反対するような本も出てきています。


スライド8

  ダイオキシンのリスク評価についてです。1998年までは、成獣、つまり大人の動物を用いた発がん性や慢性毒性というものを対象にリスク評価がなされ、10pgI-TEQ/kg/day、体重/日、すなわちコプラナーPCB、ダイオキシン用のPCBを含んでいない値として決められました。その後、1998年のWHO(注、World Health Organization;世界保健機関)のリスク評価の見直しにおいては、胎仔期ばく露による次世代の実験動物における生殖機能・学習機能・免疫機能異常というエンドポイントが着目されてリスク評価が行われてきました。このときの特徴は、dioxin likeの(注、ダイオキシンに(毒性が)似た)PCB、すなわちコプラナーPCBを含むというのが1点と、1998年のWHOのときには1〜4pg-TEQ/kg/dayということで設定され、その後、日本及び2001年のJECFA(注、Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives ;FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)の値ということで若干の変遷がございます。詳細は参考資料をご覧いただければと思います。


スライド9

  ところで、1998年のWHOのリスク評価のときにも問題になった重要な疫学的な研究がオランダのコホート疫学調査です。子どもから血液を取りにくいということがあり、母親の血漿中のコプラナーPCBを含む濃度を横軸に取り、縦軸に子どもが発育する段階の一定の時間ごとに学習・認知機能を調べました。そのときに、このPCB濃度と学習・認知機能との間に一種の負の相関があるということが分かりました。これがすなわち通常のダイオキシン類のばく露によってもSubtle Effect(注、軽微な影響)が起きているのではないかということで、WHOリスク評価の際にも重要な研究の一つとして採用されました。


スライド10

  これはその後になりますが、1976年のイタリア、セベソにおける2,3,7,8-TCDDを含むダイオキシンが出てきた爆発事故で、そのときにばく露した人々が大人になってから子どもを生んだときの疫学コホートの調査です。パオロ・モカレッリ教授が中心となって行いました。このときのデータは出生の比率が女児に偏っているというのが1点、その影響は女親ではなくて男親に含まれる2,3,7,8-TCDDダイオキシンとの間に有意な関係があるというのが2点。第3点は、ばく露時に19歳未満の父親の血液中濃度が80pg/g脂質より大きいと影響が出てくる。このときの値というのは、著者らによれば、動物実験等で使われている生体負荷量の27ng/kg生体負荷量に相当するというのがポイントでした。


スライド11

  これは能勢の廃棄物処理場の労働者における推定ばく露期間と血中ダイオキシンの濃度の相関です。詳細は申し上げませんが、飛灰を浴びるとか、焼却炉の掃除をしている労働者の方々に特に血中のダイオキシン濃度が、ばく露期間に応じて高くなるということです。一部にはクロルアクネ(注、chloracne、塩素挫瘡)や皮膚がんが起きているということで係争になったということはご承知かと思います。


スライド12

  ところで、リスク評価のときにはこうした疫学データそのものではなく、動物実験を用いてリスク評価を行ってまいりました。これは、いろいろな研究者のデータです。あまり詳細は申し上げませんが、妊娠しているネズミやサルなどに1回投与して、そのときの値を推算し、体内負荷量が86ng/kgを基準にしてリスク評価をしようということになり、先ほどお話ししたような4pg/kg/dayという耐容摂取量が決まりました。さまざまなデータのうち86という値が使われ、つまり、このときから、成獣への直接影響ではなく、胎児期ばく露により次の世代への影響が重要であるということになったのです。


スライド13

  今、世界的にもこういう方向で研究が進んでいます。私たちの仕事も含めて紹介します。研究の進め方としては、ダイオキシンの経胎盤・経母乳ばく露、すなわちダイオキシンが、妊娠時期のマウスで12.5日目、ラットで15日目、つまり、器官形成期の直前のときにばく露を1回だけして、経胎盤と経母乳でダイオキシンに子どもがばく露して、成育、成熟した後に生殖器官や内分泌機能、学習機能、記憶機能、脳の性分化、性成熟、免疫機能にどんな影響が出てくるかという試験です。特に、ダイオキシンのばく露後、発育中、性成熟後に生体内(in vivo)で生じる哺乳動物の毒性・生体反応の表現型を決めて、その発症条件を踏まえて具体的にどういうメカニズムで起きるかということを調べて、これがヒトにおいても起きるかどうかということを検討する方向が考えられます。もう一つは、近年、栄養学分野でも問題になっていますが、低栄養で育つと大人になってから成人病になりやすいというバーカー説がありますが、それと類似で、化学物質に最も感受性の高い胎児期にばく露すると、大人になってからその影響が出るのではないかというモデルを想定した研究が、いま重要な課題として取り上げられています。


スライド14

  これは妊娠時期にばく露したラットの場合です。生後、雄の子どもを追いかけて調べてみると、肛門生殖突起間距離(AGD)、専門家の前でいうと怒られるのですが、非常に平たく言うとペニスの長さが短くなるということです。それは、先ほどのJECFAの専門家会合における摂取量の根拠データとして使われて、70pg/kg/month、1日に直すと2pg/kg/dayになります。この頃はマスコミもあまり関心を持っていなかったということもあって、それほど社会的に取り上げられることはありませんでしたが、一応このようなデータも出ています。


スライド15

  肛門生殖突起間距離が妊娠時期に特異的なのかどうかということについてです。妊娠時期の18日目と生後の2日目にダイオキシンを母親もしくは子どもに投与してみたときには、肛門生殖突起間距離や前立腺の重量への影響はない。あるいは男性ホルモンに対する受容体の発現レベルに影響はありませんが、妊娠時期の15日目に投与すると、明らかに影響が出てくるということで、感受性の窓がまさにこの時期に開くということです。


スライド16

  次は脳の性分化にダイオキシンが影響するという話ですが、その前に基礎的な情報をお話しいたします。これはラットの脳です。雄、雌の場合と視床下部のSDN-POAという部位の大きさが違います。雄の方が大きく雌の方が小さいです。ところが、生まれた直後の雌に男性ホルモンであるテストステロンを投与すると、このSDN-POAのところが大きくなるという事実があります。これは1950年ぐらいから知られている事実です。


スライド17

  このデータは簡単に言いますと、雄のネズミと雌のネズミを比べると、正常な状態で雌のネズミの方が甘いサッカリン水を飲む量が多いというものです。つまり、雌のほうが通常では甘いサッカリン水が好きだということです。ところが、200ng/kgという用量のダイオキシンを母親に投与して、その母親から生まれた子どもが大人になってからこの試験をしてみると、200ngの場合には明らかにサッカリン水を飲む量が増えるということ。800ngだとむしろ逆に減るということが分かりました。つまり、低用量のばく露、先ほどの4pg/kg/dayという耐容摂取量を決めた数字と全く同じ投与量ですが、その量で大人になってから初めてこういう影響が出てくる。そのときに先ほどのSDN-POAの大きさを見ると、雌は小さいままですが、雄の場合に200ngで明らかに小さくなる。つまり、雌化するということが分かりました。


スライド18

  そんなことが本当かと皆さんは思われるかもしれません。私もそう思ったわけですが、これについて再度、用量を細かく取って調べたところ、50〜100、200で上がって400で下がってくる。逆U字と言ってもいいような感じで、通常の毒性学の量反応関係とは違うパターンですが、こうしたものが観察されました。それでは先ほどのSDN-POAのサイズはどうかというと、前の実験と全く同じして、特定の用量で初めてぐっと減るということで、明らかに子どものときにダイオキシンにばく露して生まれてきた子どもの雄の場合、脳の性分化に異常が起きているということになります。
※スライドの一部に掲載を控えている箇所があります。


スライド19

  それでは、具体的にヒトにとっても非常に大事な学習・記憶に影響があるかどうかについて、ネズミを使って調べた結果です。ネズミにとっては超難問の学習・記憶試験を確立して行った仕事を少し紹介します。1.5m四方のプラットホームの中に穴が開いています。穴の中に砂が入っていて、そこにチョコレート、チェリー等、6種類の違った味の餌を入れ、においでは分からないように細工をしておきます。つまり、どこに行くとどの味の餌が食べられるかということをネズミに覚えさせるのです。これは掛山正心助教がエジンバラ大学のリチャード・モリス先生のところへ行ってやってきた仕事で、ダイオキシンにばく露したときにどうなるのかという研究です。


スライド20

  この方法を用いて、塩素化のものと臭素化のものの2種類について調べました。まず塩素化ですが、塩素化のダイオキシン、TCDDが200ng/kgのときにこのように学習機能が落ちます。臭素化ジフェニルエーテルのような、カーテンやプラスチックなど難燃剤に入っているものが燃えたときに、結果として臭素化のダイオキシンができるわけですが、臭素化ダイオキシンというのは、リスク評価の対象になっていないため、具体的にTCDDとTBDDのリスクを調べようということで、環境省のリスク評価室の事業で研究をさせていただいたところ、結果の一部で見ますと、TBDDでも同じように、やはり200ngでこのように影響が出てくる。先ほどのサッカリン水と全く同じですが、200ngの低用量のところでこのような形で学習機能にも影響が出てくるということで、高次学習機能、つまり、対連合学習機能が阻害されるということが分かりました。
※スライドの一部に掲載を控えている箇所があります。


スライド21

  TCDDの致死毒性に対する感受性の動物種による違いです。今まで動物の実験をヒトに外挿するわけですが、どのくらいそれが当てはまるのかということです。これはこうした環境汚染物質だけでなく、薬を開発したりするときも動物とヒトとの薬物・毒物に対する感受性というのは、古くて新しい課題です。ヒトでもちろん実験するわけにはいきません。これの横軸は対数ですが、同じラットを使ってみても何倍かの違いがあります。マウスでも何倍かの違いがあります。特に最も感受性の高いギニアピッグとハムスター、あるいはある種の特殊なラット、ハン−ウィンスターラットというスーパーラットですと、数千倍の毒性に対する感受性の違いが出てきます。それではヒトはどのくらいかということです。ご承知のように、ウクライナの大統領候補だったヴィクトル・ユシチェンコさん(注、現ウクライナ大統領)はTCDDの毒を盛られて、我々の血中ダイオキシン濃度の8000倍ぐらいが体内に入っていたと言われます。幸いにして一命を取り留め、現在は執務をされているということですので、ひょっとしたらヒトは比較的ダイオキシンに対して感受性は低いのかもしれません。


スライド22

  どのように調べるかといいますと、感受性の高いマウスと感受性の低いマウスがいます。感受性を決める主要な遺伝子のところにAhR、つまり、ダイオキシンレセプターというものがあります。細胞の絵で示したものですが、その構造は、簡単に申し上げますと、C57BL/6という感受性の高いマウスの場合と低いマウスの場合は、長さが違うのと、アミノ酸の構造の種類が違います。ヒトは、大雑把にいうとDBA/2の方に極めて近い。


スライド23

  そうすると、ヒト型のAhRを感受性の高いC57BL/6のマウスのAhRと完全に置き換える。つまり、ヒト型のマウスをつくって調べてみるわけです。
  これは口蓋ですが、かなり高用量のダイオキシンを母親に投与する。ネズミですから21日で生まれますが、18日ぐらい目に解剖してみると、感受性の高いマウスでは口蓋裂が起きる。つまり、奇形が生じるわけです。生まれてきたマウスの100%に口蓋裂が生じています。一方、DBA/2という感受性の低いマウスでは30%にしか出てこない。それではヒト型のAhRの入っているものはどうかというと、全く口蓋裂は起きません。つまり、この実験から見る限りでは、奇形に関しては、ヒトはダイオキシンに対して比較的低感受性であるということがいえます。これについては、追試もしなければいけないなどいろいろありますが、少なくともこの実験経過からはそういうことになります。そのことから感受性の違いが説明できるということになります。


スライド24

  ラットを使って別の実験をしました。Holtzman系ラットとSD系ラットについて調べました。妊娠中にダイオキシンを1.6μg/kgという量を入れると、13%の胎児が死亡します。そのときに、ダイオキシンにばく露すると、胎盤の血管が収縮して低酸素状態になりますが、そのときにある種の構造学的な異常も起きます。そのとき、SD系の別のネズミですと、10μg/kgでも全く死亡は起きないし、こうした異常は起きません。今まで私の話を聞いてこられて、おそらく皆さんは、AhRの構造がHoltzmanラットの方はダイオキシンに対する親和性が高くて、構造の違いによるのだろうとお考えになると思います。私もそのように考えました。


スライド25

  ところが、AhRのアミノ酸のシークエンス(注、配列)について遺伝子構造を全て調べましたが、Holtzman系のラットとSD系のラットの間には全くAhRのダイオキシンレセプターの構造には違いがないということが分かってきました。


スライド26

  すなわち、動物種間の感受性の違いは、AhR、ダイオキシンレセプターだけからは説明が不可能であるということです。まとめると、マウスの場合の口蓋裂の場合ですが、それはダイオキシンレセプターから説明可能で、ダイオキシンレセプターの活性に応じて毒性も出てくる。ラットの場合ですと、ダイオキシンレセプターからは説明不可能であり、したがって、ダイオキシンレセプターが結合して影響が出てくるところ以外を修飾する別の要因があるだろうということになります。


スライド27

  有害化学物質の影響を考えるときに、環境からダイオキシンをはじめとするさまざまな化学物質が出てきて、体内に取り込まれます。それは当然、直接影響ということも全くないわけではないかもしれませんが、むしろ直接影響というよりは、生物濃縮、あるいは生体濃縮と食物連鎖を通した問題が非常に重要です。当然ながら環境からの排出は削減することが重要です。


スライド28

  まとめですが、疫学や毒性学の知見によると、胎児期、授乳期のダイオキシンへのばく露により、悪影響が次の世代に引き起こされる可能性があります。また、ヒトや野生生物はさまざまな化学物質に同時にばく露しているわけですから、単にダイオキシンだけでなく、実際には他の化合物からの複合的な影響も考慮する必要があります。ダイオキシンの毒性に関する研究に基づいて設定された環境基準によって、環境中に放出されるダイオキシンを減らすことができてきました。これは後から只見さんが詳しくお話しになると思うので私は話しませんでしたが、この放出の削減というのは、リスク評価に基づいて作った耐容摂取量に基づいて決められたものです。したがって、それなりのリスク評価に関する研究というものも非常に大きな意味があると考えています。また、こうした環境中への放出を削減するということが、ダイオキシンの食物連鎖を介した食品への蓄積の減少にもつながるだろうと思います。生物という天賦のシステムについて、私たちは知っていることよりも知らないことの方がはるかに多いわけです。したがって、今後も化学物質の次の世代への影響ということを着実に、冷静に研究するということが重要であると私自身は考えています。以上です。


(安井)  ありがとうございました。では、ご質問をお願いします。では、岩本さんどうぞ。

(岩本)  確認の意味で二つ質問させてください。一つは、今先生がおっしゃった次世代の影響というのは、内分泌かく乱作用といったような影響、SPEED'98(注、内分泌かく乱化学物質による環境汚染問題についての環境庁の基本的な考え方及び今後の具体的な対応方針等をまとめたもの「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」)の冒頭の方にダイオキシン、PCBと記載されてありましたが、そういった作用というふうに考えて良いのでしょうか。また、もう一つは、私も企業でダイオキシン問題を担当しましたが、大体単位はピコグラム(pg)が常識でした。ですから、「ng」という単位が出てきて驚きました。先ほど4pg/kg/dayが体内蓄積量86ngに相当するというご説明があったように思うのですが、ということは、毎日毎日ある一定量を取って、代謝ということを考慮して、体の中に残っているものがこれぐらいというように理解してよいのでしょうか。そのような前提で考えますと、あとのラットの試験などで投与量の中にその言葉を使われたところが少し理解できませんでした。その辺のご説明をお願いいたします。

(遠山)  最初のご質問のダイオキシンのさまざまな影響が内分泌かく乱作用に基づくかどうかという点ですが、答えはもちろんイエスです。当然、脳の性分化にしても、さまざまな生殖器官の影響にしても、狭い意味の内分泌だけでなく、炎症性のサイトカインであるなども含め、体内のさまざまなシグナルを伝達する経路が乱された結果出てくるわけですから、関係していると考えるのが当然だろうと思います。
  二つ目のところは誤解があったかもしれません。86ng/kgという生体負荷量をスターティングポイントにして、そこから耐容摂取量という基準を出しましょう、ということで推定しています。ですから、86pgを基にして、そこからこの場合にはいわゆる安全係数、不確実係数を入れ、結果として4pg/kg/dayという値を導いています。ですから、4pg/kg/dayを摂取していることが86ng/kg/dayの生体負荷量に達するという意味ではありません。

(岩本)  そうしますと、先ほどの86ngと4pgというのは2万倍ぐらいの開きがあるわけですね。

(遠山)  ですから、4pg/kg/dayは体内に毎日摂取している値であって、86ng/kgというのは体内に入っている濃度ですから、概念が違います。

(安井)  確か安全係数はこの場合は10しかかかっていないと思います。

(岩本)  そうですね。

(中下)  興味深いご報告をありがとうございました。二点伺います。一つは、先生が冒頭におっしゃったように、ダイオキシン問題に関してはさまざまな意見があります。私どももNGOとしてダイオキシンの削減に向けていろいろ取り組んできました。ダイオキシンというのは騒ぎ過ぎで、そんなに心配することはないのだというような意見が先ほどの本のようにいろいろ出ています。それについて、先生のお話からすると、まだ影響が懸念されるものがあるというご報告だったと思います。そうしますと、そういう意見というのはある意味で間違っているというように考えていいのでしょうか。もう一点は、今のTDIと絡みますが、WHOでは体内負荷量が86ngからということで、1〜4という勧告をし、その後、JECFAでは70pgと改訂がされたように思います。さらに強化をされているのではないかと思われるのですが、日本は依然として4pgのままです。これについて改訂の必要があるのかどうかご見解を伺いたいと思います。

(遠山)  一つ目のご質問については、他のゲストスピーカーからのお話を伺ってから、私が意見を述べた方が良いと思います。二つ目は、月当たりにして体重kg当たり70pgということで、日本でも改訂の必要があるかどうかということですが、これを単純に日にち当たりに計算すると2になるわけです。4を2にするというぐらいのことを、労力をかけてまで検討する必要はないだろうというのが私の見解です。後で只見さんもお話しになると思いますが、この間、環境的な意味での削減がなされてきて、それなりの成果も出てきましたし、4を2にしたからといって、それだけのメリットがあるかどうかというのは、私個人というよりは、もう少し大きなところで議論されるべきだと思います。そこまで今すぐ取り組むよりは、もう少し優先順位の高いものがあるかと思います。

(安井)  遠山さんありがとうございました。続きまして鈴木さんからのご発表をいただきたいと思います。

(鈴木)

スライド1

鈴木さん写真  「ダイオキシンに関するリスクコミュニケーション」というのが私にいただいたテーマなのですが、残念ながら私はリスクコミュニケーションの専門家ではございません。医学部を出た医者で、公衆衛生学教室に入ったご縁でいくつかの経験をしてまいりました。副題に付けましたように、ダイオキシンについての私の経験を申し上げて責めを果たしたいと思います。
  一つお断りしておかなければならないのは、私の肩書が関西医療技術専門学校の校長ということになっていまして、なぜこういう学校の校長がダイオキシンを研究しているのか、皆さん大変疑問に思っておられると思いますので、最初のスライドで私とダイオキシンの関係についてご説明しようと思います。


スライド2

  「ダイオキシンと私」という副題にしましたが、ことは平成9年度から始まりました。私はその頃、大阪府立成人病センターの研究所で第十部長という役職におりました。がんの疫学研究が看板でしたが、実際は市町村と一緒になってがんの第二次予防の研究をしており、大阪府のあちこちで肺がん検診を行っていました。そのときに、大阪府の能勢町、こちらは昭和35年、私が大学の学生だった時分から出入りさせていただいているフィールドで、そこでも肺がん検診をずっとやらせていただいていました。そこで焼却炉の近傍の土壌が高濃度にダイオキシン汚染されているということが起きました。皆さま方もご記憶かと思いますが、気の毒なことになったと思っていました。当時、別途肺がんの件で環境省と一緒にいろいろなことをさせていただいており、その頃、大気保全局とお付き合いがありました。そこでダイオキシン類長期大気ばく露影響調査プロジェクトが立ち上がるというお話を聞きました。そして、どこか適当なところで30人ぐらいの調査をさせてほしいというお話があり、候補地を考えておられるということを耳にしました。そこで私は能勢町の町役場にお勧めし、この際、そのプロジェクトを受けて能勢町でその調査をやっていただいたらどうかと申し上げました。対象は、遠山先生のスライド11でご紹介のあった労働者ではなく、ごく一般の住民の方々です。その方々に影響が及んでいるかどうかを見定めたらどうだろうかとお勧めしたら、3日ほど町役場内でかなり論争があったようなのですが、清水の舞台から飛び降りる決心で環境省にお願いに上がりますという話になりました。私はその担当部長さんと同道して大気保全局に伺い、ご紹介したところ、両者で大変意見が一致しておられたようなので、これで私の役目は終わったと思っていました。ところが、しばらく経ってみて、環境省の方も能勢町の方も、私が現地の主任で調査をすると信じ込んでおられたのでびっくりいたしましたが、もう間に合わず、敢えていい年になっていい勉強をさせていただくことになり、それで平成10年度の調査を行いました。11年度になりますと、私は、大阪府立成人病センターの参事になり、環境省の方もこのプロジェクトがリスク評価室に移り、ダイオキシン類精密ばく露調査というものが3年続きました。その間に和歌山県でも産業廃棄物の処理施設のところで土壌汚染問題が起きまして、環境省のご推薦で、和歌山県の健康調査の委員も引き受けるというようなことをしました。環境省の調査の3年目の平成13年に私は定年になり、もう公職は終わりかと思っていましたら、大阪府立の千里看護専門学校の校長として、看護婦の養成に当たるだけではなく、過剰養成になるから5年かけてこの学校を閉めるために校長をすることになりました。人生最後に退却戦もいいかと思って引き受けました。この間に島根県で工業団地の中の溝川で底質が高濃度でダイオキシン汚染されているということが起こりました。これも環境省のお勧めで健康調査の担当委員に列席させていただきました。ところが、平成14年度から環境省ではもっと全国に広げて、日本人の血中ダイオキシン類の濃度について調べたいということで、かなり大規模な全国調査が始まりました。そのプロジェクトの中で、能勢町の件は継続調査を行うということで、初めの3年間に調査対象となってくださった方の中で、継続調査を希望される方を経年的に調査させていただくこととし、この現地主任をずっと務めさせていただきました。その間、私は大阪市から「あなたは大阪市民だから手伝って欲しい」と言われ、大阪市の焼却施設の建て増しのときに、隣に空いている敷地を買ったところ、そこは以前化学工場があって、そこがまたダイオキシン汚染されているというので、そこの健康調査もいたしました。こういうことをしている間に、平成18年になり、千里看護専門学校も無事閉めることができましたので、もう隠居して暮らすつもりでしたが、先輩から関西医療技術専門学校の校長を務めろという命令に近い話があり、ここで今、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、診療情報管理士という四つの専門職を育てることをしております。長くなりましたが、こういういきさつで今私は皆さん方にダイオキシンの現地のお話をするということになりました。


スライド3

  能勢町を中心にお話しします。これは大阪府の地図です。能勢町というのは北の端にコブのように突き出しているところで、面積は大阪市、堺市に次ぐ大きさを持っているのではないかと思います。人口はおよそ1万3000人といったところです。元来、地の人が1万人ぐらいで、長いこと1万人で推移してきましたが、昭和の終わりに宅地開発が進み、地の方でない方々がそこに宅地を買って三千何百人ぐらい増えています。左側が拡大した地図です。能勢町は戦後の大合併で一つの町になりましたが、東西に分ける山並みがございます。ここには自動車で越える名月峠、逢坂峠があります。ここに人と馬しか越えられないような暮坂峠があり、その峠の南側の出口に、豊能町と一緒になって一部事務組合をつくり、両町のごみを燃やす焼却炉ができました。それが昭和の終わりに稼働しまして、平成9年になって問題が起きました。皆さん方には現地をご覧いただくつもりで見ていただきたいと思います。能勢町というのは兵庫県を通って入り込むのがメインの入口ですが、ここの入口から能勢に入っていきます。


スライド4

  「ようこそ能勢町へ」という看板が立っています。ここが町の境目で同時に大阪府と兵庫県の県境になっています。


スライド5

  このような農山村が典型的な能勢町の見た目です。


スライド6

  秋になると稲穂が垂れます。


スライド7

  栗もなります。栗だけをお見せするわけではありません。ここに白い建物がご覧いただけると思います。これがその焼却炉です。


スライド8

  近寄ったところの写真です。この集落はずっと能勢の土地の方ばかりが住んでいる農村で、家の構えなどを見ると、古い農山村の家だと分かっていただけると思います。ここの集落の家はほとんどこの線、ちょうど焼却炉から2kmぐらいの円の中のぎりぎりのところに入っています。ここから内側にはほんの数軒しかなく、南側からは焼却炉に一番近い家が700mぐらいのところに1軒だけあります。奥のこの辺一帯は、この集落の方々の昔からの共有地です。その共有地を事務組合が借り受けて、ここに土地を造成して焼却炉を建てました。このちょうど切れ目になっているところが暮坂峠です。この峠の裏側がどうなっているかは反対からの写真でお目にかけます。


スライド9

  暮坂峠は少し山の裾が見えているこの向こうにあります。峠の向こう側に焼却炉があります。地図上の直線距離で一番近い家まで400mほどです。ここでご覧になるように、古い農村の家はこの1軒だけです。実はこの写真に写っていないこちら側にもう1軒あるのですが、この小さな川沿いに2軒の農家があって、あと奥は一切人が住んでいない地区でした。ここは昭和の終わりの頃、バブルがはじける前に宅地造成で新しい家ができ、能勢町以外の方々がここへ移り住んでまいりました。洒落た建物の家も何軒かございますが、平均的にはこういう姿がよく見かける家です。メインの道路は上に立ってみますとスキーのジャンプ台に上がったような気持ちがします。北西向きの斜面、急坂に立っている新興住宅地です。世帯数が100軒ぐらいであります。


スライド10

  元来、環境省のプロジェクトは、まず30人ほどの方々の血液中のダイオキシン濃度を調べたいというものでした。この当時は140ccほどバッグで採血しました。さらに、自宅の庭を含めて土壌を調べたい。大気を公有地、自宅の庭、室内空気等、それぞれ同じ時期に1週間連続24時間引っ張りまして、その分析をしたい。食事を3日間、9食分、陰膳調査と我々申しますが、1食多く作っていただいて、それを残らず頂戴し、ダイオキシンを測る。そういうものから、個人のばく露量を土壌経由、大気経由、食事経由から推定したいというのが環境省のオリジナルのプランでした。それを能勢でお願いするに当たり、30人ほどの調査協力者の方々を半々に分けて、近傍(焼却炉から半径2km以内)、周辺(焼却炉から半径2km以上)で見ていく。周辺の方々としては、能勢町はいくつもの谷間から成り立っていまして、常識的に考えてそこの焼却炉の影響など及ばないような谷間がいくつもありますので、そこからの住民の方にお願いするというわけです。私ははじめ、近傍の皆さんはご心配なので、15人ほどは手を挙げていただけると思っていましたが、遠方の方々が17人ボランティアになってくださったのは大変ありがたいと思いました。しかし、現地で手を挙げていただいた方々のお顔を拝見しますと、存じあげている方が多く、町役場から頭を下げて頼まれて、町の状況を理解してボランティアになってくださったのだと私は思いました。よく引き受けてくださり継続していただいたと思います。そういう方々を測定いたしました。


スライド11

  これが血液中のダイオキシンの値です。近傍の方々を赤で示し、周辺の方々をグリーンで示しました。高い方で100ほどの方が1人おられました。あとは90いくつと、周辺の地区でも80ぎりぎりの方がおられました。あとはあまり区別がありません。全体に見てどちら側が顕著に高いということはありませんでした。ちなみに、だいぶ後になって、私自身も実験の一部として測っていただきましたが、私の場合は46ございまして、この中では高いほうです。


スライド12

  これが土壌です。土壌はさすがに高いところ、低いところがありますが、高いといってもこんなところです。農地を調べますと300ぐらいのところが全国的にはいくつもあるようでございます。


スライド13

  大気です。大気は確かに周辺の方は低く、近傍の方に高いところがある結果になっていますが、この調査のときには、すでに焼却炉は止まっています。平成9年に問題が生じたとき以降は、能勢のごみの焼却は大阪府にもっと近い方の大きな焼却炉にお願いして燃やしていますから止まっています。ただ、高いと言っても、値は0.16pgTEQ/m3です。次の只見さんのお話にあると思いますが、環境基準が0.6です。他に地方の都市的なところで測定されたデータを拝見していますが、都市的なところで調査しますと、低い値がこれぐらいで、ここからずっと高い方へ分布していますから、能勢は空気のきれいなところです。


スライド14

  これが食事中のものです。先ほど遠山先生のところで話題になりましたpgTEQ/kg/dayという値で、4.0というのはここです。そこで、ここより低い側だったらいいだろう。高い側だったら問題だというのですが、問題だといってもこれぐらいで、周辺地域の人の方が問題が多い。能勢といっても、今日ではスーパーマーケットがいくつかあるような時代で、我々大阪市内に住んでいる者と違ったものを召し上がるわけではありません。野菜などは自分の家の庭で作りますが、野菜を洗って食べる限りは野菜からは影響は来ないということが分かっています。


スライド15

  環境省の目的の推計ばく露量を見ますと、推計の平均総ばく露量が近隣のほうで体重1kg当たり1日2.1pgでございました。周辺の方が2.8です。これは大した差ではありません。一方、これから得られる知識は、圧倒的に量が食事から来るということです。96%、99%です。大気から来るとか、土壌から来るというのはたかが知れた割合で、能勢は空気がきれいだからこうなのだろうというのですが、先ほど申し上げた表の高い側に分布があるところで大体平均値で5〜6倍ですから、1.3を5倍にしたところで、やはり90%以上は食事から来るということが、私の実感です。こういうことは世間に明らかになっています。私が参考資料として差し上げました環境省のパンフレットでもそれは出ています。


スライド16

  能勢町が目的としました近傍と周辺の血液中の値の比較ですが、これが平成10年の結果です。平均値で申しますと、近傍のほうが37pg-TEQ/血液中脂肪1g当たりです。周辺が35ですから、これは違いとは言わないものだそうです。平成11年度が下がりまして、26、30、平成12年は24、34ということですから、どれも違いがありません。ここにそれぞれの人数が書いてあり、これを横に足しますと、延べで105人になりますが、実人数として54人でございますから、平均2回受けてくださったということです。もちろん3回ともボランティアになってくださった方もいます。


スライド17

  他の地域は結果だけ申し上げます。これが和歌山県です。近傍は大変心配をされておりました。対象者はほとんどが新興宅地の方で156人という大勢でした。平均値は17です。周辺の方については県がご存じの方に協力をお願いしたのだと思いますが、19人で28となっています。島根県は近傍も周辺も大変低くて、8.7と6.3です。血液の測定の精度につきましては、環境研究所の森田昌敏先生が委員になって検討してくださり、正確だろうとおっしゃっていました。日本海寄りの海はきれいで、こちらの方々は低いということであろうと思いました。いずれにしろ工業団地に近いところの方々も遠いところの方々もあまり変わりございません。大阪市の調査は平成15年で、すでにこれまでの各調査から一般の人々については大体分かっているということで、近傍の方々だけ、希望者23人に対して行いました。平均値は21でした。どこで調査させていただいてもあまり結果に大きな違いはございません。日本で暮らしている限り、これぐらいの値がどなたにも出ているのではないか。ここにご出席の方々も、たぶん測ったらこんなところに落ち着くのだろうと思います。


スライド18

  先ほどご案内で申し上げました入口の道標を帰りに裏側をご覧になりますと、「自然を大切にしましょう」と書いてあります。私も全く賛成です。ダイオキシン類のように人工的に作りだしたものはない方がいいとは思いますが、山火事があってもできるそうでございますし、我々の体はどこで誰を調べてもそれぐらいはありますので、ひょっとしたら自然の一部になっているのかとも思います。以上でございます。


(安井)  ありがとうございました。一つぐらいの質問を受けたいと思います。

(崎田)  ご苦労された能勢の研究のお話をありがとうございます。今のお話ですと、近くか遠くかということではあまり変化がなく、どちらかというと食事経由の方が大変ばく露が多く影響があるのではないかということでした。この同じ時期、14年から19年の間に全国調査を環境省がやられています。同じ方法で調査されたかと思いますがどのような結果が出ているのでしょうか。

(鈴木)  参考資料として二つのパンフレットをお出ししています。両方とも環境省のパンフレットですが、お願いしてここに出させていただきました。その参考資料2をご覧いただきますと、「ダイオキシンの人への蓄積量調査」とあります。2002年というのは平成14年でございますから、平成14年から平成18年までの5年間の調査の総まとめになっています。今のご質問に対してパッと見ていただけるのは19ページです。今私がお話しした平成10年、11年、12年の能勢町のデータです。6ページのところに平成14年から18年の全国調査の結果が載っています。先ほどの継続調査の能勢町のところをご覧になって、私がお示しした数字、皆さん方のお手元に配られているのと平均値の数字がかなり違っていて、こちらの方が小さく出ていると思います。あの調査の場合は、WHOの毒性等価換算係数として1998年に定められたものを用いました。ここは前にお断りがあると思いますが、WHOの2006年の新しい毒性等価換算係数で計算をし直しています。私自身の46というのも、この新しい方法で計算しなおすと10低くなって36になります。今のご質問の延長線上でスライドを3枚ほど用意していますのでご説明します。

スライド

  これは私自身のデータではありません。ほかの方のデータから私自身が考えたことでございますが、私自身とも全く無関係というわけではなく、同じ調査委員会でご一緒した方の全国調査です。平成14年度に256名という大勢の方々について、横軸に年齢、縦軸に血中ダイオキシン類の濃度をクロスプロットしたものです。参考資料2の8ページで1300人ほどについてプロットしたものがあるのですが、それでは見にくいので、初年度だけをプロットしました。年齢とともに上がっています。50代で100ほどある方がおられますが、大体中年以降、初老になってからの方々に高い方が多い。本文では、5年の集計では、年齢とともに蓄積されて上がっていくのかどうかはちょっと分からないという解説になっています。


スライド

  これは参考資料1の14ページに掲載されている有名な母乳のデータです。遠山先生がご紹介にならなかったので指摘しておきたいと思います。オリジナルは平成9年頃から3年ぐらいかけて厚生科学研究費で東邦大学の多田裕先生が主任研究者のグループが発表されたデータが根拠になっていると思います。ではなぜ母乳のこのようなことが分かったかと言いますと、これは全て大阪府の公衆衛生研究所でストックされていた過去の母乳があったからです。1973年、昭和48年の頃、大阪府で飲んでいた水は琵琶湖から流れてきたり、京都の盆地から流れてきたり、木津から流れてくるものが淀川となり、その水を飲んでいました。その頃、中性洗剤でPCB汚染が大変問題になりました。それがお母さんの母乳を経由して赤ちゃんにいき、影響を与えるというので、大阪府の保健所の保健婦さんに頼んで調べました。保健所では妊婦教室がありますので、赤ちゃんを生むお母さんが分かっていました。最初の母乳にどっと出ていくということで、第1子を生んだお母さんの出産1か月以内の母乳をいただきました。毎年実施し、かなりのサンプルをいただきました。私もこういう現場で調査を担当する者として心理はよく理解できるのですが、何人もの人が苦労して集めた資料を、当初目的としたPCBの測定を済ませたからとて、残りを捨てるのはもったいない、何に使うという当てもないままに、大事にマイナス80度のディープフリーザーに入れてたくさんストックしてありました。事務局からは電力と場所の無駄遣いと怒られたと思います。しかし、その方々は大事なサンプルだから手放さなかった。それがあったからこそ、さかのぼって全部その平均値を大量に調べられたわけです。もちろんこの時代にダイオキシンを測る技術などは確立されていませんから、この後の時代に振り返ってそれを測りました。それで大変いい知識が得られました。過去はうんと高かった。母乳のダイオキシンの値というのは大体血液中の値と同じだということが分かっていますので、80といった値が平均値だったわけです。また、ありがたいことに、この調査は延伸されて今も続けられているそうですが、現在では、1/5ぐらいに落ちてきて、平均値が15とか、16といった数字になっています。落ちが大きいのは、コプラナーPCBで、ダイオキシンとフランは一緒に計上されていますが、フランの方の落ちが大きい。コプラナーPCB、フラン、ダイオキシンという順番で落ちてくるというお話でした。


スライド

  この二つを比べ合わせると、先ほどの図は鏡対称にしてこのようにプロットするのが正しいのではないかと思っています。もちろん毎年毎年第1子が産んだ母親のデータですから、人物は違います。これはクロスセクショナルなデータですが、私はこの辺で生まれていますから、こういうところで生まれた人間たちが高いのだろうと思います。
  先ほどご質問にあったように、過去に高いものが日本で食品として流通していて、それを私も若い頃大いに食べました。そのために私自身プロットするとこの辺にプロットされますから高い値だと思われます。しかし、じっとしていますとどう考えても2050年ぐらいになったら、この辺の人間は全部行き過ぎてこの図の左へ消えていきます。40〜50年してこういう調査をすると、ずっとこの辺に並んでいるのではないかというのが私の考えでございます。


(安井)  最後に只見さんからご発表をお願いしたいと思います。

(只見)

スライド1

只見さん写真  環境省ダイオキシン対策室の只見でございます。「我が国におけるダイオキシン対策に係る取組」と題しまして、行政の立場から取組の現状をご紹介いたします。


スライド2

  1990年代は、環境の分野でも地球環境問題が大きくクローズアップされるとともに、化学物質のリスクといった考え方が認識されるようになった時期でなかったかと考えています。併せて環境対策に関する新たな対策技術の開発、科学研究の進歩によりダイオキシンのようなごく微量の化学物質のリスクにつきましても、一定の評価、管理が行われるようになってまいりました。さらに化学物質対策を強化すべきという国民的な要請、必ずしも一時的な関心の盛り上がりという意味だけではなく、1992年に開催されましたリオ・サミットの議論などでもございましたとおり、国際的な潮流があり、そうした背景の下、平成11年の7月に、我が国では議員立法という形でダイオキシン類対策特別措置法、いわゆるダイオキシン法が制定されています。なお、化学物質管理法、いわゆるPRTR法も、ダイオキシン法と同じ平成11年に制定されましたことはご案内のとおりです。


スライド3

  それではダイオキシン法の内容をご説明させていただきます。ダイオキシン法には各主体の責務が定められています。国は、ダイオキシン類による環境汚染の防止等に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、実施する責務があるとされています。これを受けまして、環境省は、ダイオキシン類の削減目標を設定しております。政府として、ダイオキシン法制定に先立つ平成11年3月の関係閣僚会議で全国のダイオキシン類排出量を平成9年比約9割削減という目標を設定していましたので、環境省もダイオキシン法に基づく削減目標として、平成9年比9割削減を当初設定いたしました。さらに、大気・水質・土壌といった媒体別の環境基準、施設ごとの排出基準の設定が定められました。次に地方自治体ですが、当該地域の自然的・社会的条件に応じたダイオキシン類による環境汚染の防止等の施策を実施することが責務とされています。具体的には、環境省が定めた環境基準を判断基準といたしまして、大気・水質・土壌の定期的な測定、さらにその結果を公表する義務がございます。それから、ダイオキシン類を排出する企業・事業者に対する規制・指導を自治体が実施しています。もちろん廃棄物焼却炉を有する市町村につきましては、排出事業者として自らダイオキシン対策を実施する責務もございます。その他、土壌関係の地域指定等さまざまな役割を自治体が担っております。さらに、ダイオキシン類を排出される企業・事業者、さらには日常生活で発生するダイオキシン類については国民に広く、環境汚染の防止等に協力する責務が定められています。特定施設・事業場に対しましては、年1回以上のダイオキシン測定が義務づけられており、その結果は地方自治体に報告され、一般に公表されています。もちろん、国が定めた排出基準を遵守していただくことが、企業・事業者に求められます。


スライド4

  ダイオキシン類の排出レベルを規定する法律第8条に基づく排出基準の概要をご説明します。まず、大気中に放出されるダイオキシンの基準ですが、大気汚染防止法と同様に、規制対象となる特定施設を定めて、それぞれの排出削減に係る技術水準等を考慮し排出基準を設定しています。現在の特定施設は、スライドでは4種類ですが、政令上は製鋼用電気炉と銑鉄製造用焼結炉を別に扱っていますので5種類となります。新規施設というのは、原則、排出基準が適用された平成12年の1月15日以降に設置されたもので、廃棄物焼却炉及び製鋼用電気炉につきましては、大気汚染防止法で先行的に規制されていた経緯がございますので、平成9年12月2日以降に設置されたものが新規施設となります。新規施設で見ますと、廃棄物焼却炉で0.1〜5、製鋼用電気炉及び鉄鋼業の焼結施設で0.1〜0.5、亜鉛回収施設とアルミニウム合金製造施設で1といった基準になっています。単位はすべてng-TEQ/m3となります。新規施設以外、つまり既存施設はそれより若干緩めの基準となっております。ちなみに、法施行後の一定期間、既存施設について、さらに緩やかな暫定基準が設定されていたわけですが、現在ではすべてこの暫定基準は撤廃されている状況です。


スライド5

  排出水の基準ですが、19種類の特定施設を設置している工場・事業場から公共用水域への排出水につきまして、一律10pg-TEQ/Lの基準を設定しています。これは水質の環境基準値の10倍に相当しています。なお、大気・水質の排出基準共にこうした排出基準のみでは環境基準を達成することができないといった場合には、地方自治体が上乗せの基準を設定できます。これは他の環境法令の場合と同様です。


スライド6

  こうしたダイオキシン規制の枠組みの下、実際に我が国でダイオキシンの削減がどのように進んできたか、特に1997年、つまり、国がダイオキシン類の削減目標の基準年といたしました平成9年以降の結果をご紹介いたします。


スライド7

  1997年(平成9年)から2006年(平成18年)までのダイオキシン類の年間排出量の推計結果です。水への排出量も内数として表記していますが、排出量のほとんどが大気への排出であることがお分かりいただけるかと思います。なお、この表は、排出インベントリと呼んでいますが、環境への排出が現に認められている発生源、このうち推計可能な量を積み上げ方式で集計しています。一部の発生源につきましては、複数の推計方法を採用している関係で、この数値に幅がございます。実際、小型の廃棄物焼却炉、非常に数がたくさんございますが、ダイオキシン法の規制対象外である1時間当たりの焼却量が定格で50kg未満のものの推計幅が、ほぼ全体の推計幅と等しくなる結果となっています。ご覧のとおり、基準年の1997年(平成9年)に7680〜8135g-TEQだった排出量が、2003年(平成15年)には、372〜400g-TEQに減少しています。これは平成9年に比べて約95%の削減に相当します。国の当初目標の9割削減を達成した結果となっています。その後、平成22年に315〜343g-TEQに削減するという新たな削減目標も設定していますが、2006年(平成18年)、昨年末に発表した数字でございますが、新目標を下回る289〜317g-TEQという推計値になっています。こうした排出インベントリにつきましては、国が計画的に毎年推計することとされていますので、今後とも状況の把握を続けてまいります。


スライド8

  ダイオキシン類排出量の削減を三つの分野ごとに折れ線グラフで示しています。水色が廃棄物処理分野、黄色が産業分野、赤がその他を示しています。平成9年時点では、廃棄物処理、主としてごみ焼却に由来する排出量が全体の約95%を占めています。それが平成18年現在では廃棄物処理が193〜218g-TEQまで下がっていますので、全体の7割弱となっています。産業分野が平成18年で76〜101g-TEQ、全体の約3割、その他が4〜7g-TEQ、全体の1〜2%程度であり、廃棄物処理分野の削減率がこの期間で大きかったことがお分かりいただけます。もちろん各種の産業分野の取組と相まって、トータルとしてこのようなダイオキシン類の排出削減が達成されたものと考えられます。


スライド9

  次にダイオキシン類の排出削減と廃棄物処理の関係をもう少し詳細に見ていただくため、地域レベルのケースとしまして、本年、北海道洞爺湖サミットの開催地でもあります北海道を事例としてご紹介します。北海道は人口約560万人で、総人口約4%の人々が全国の約22%の面積に居住されています。人口、経済規模は北欧一国にも匹敵するといわれています。ただし、少子高齢化による人口減少の影響が全国でも最も急速なテンポで進むと予想されている地域でもあります。上側の折れ線グラフが北海道の平成13年から17年の総排出量の変化を示すものです。これはPRTRデータを基に作成しました。北海道でもダイオキシン類の排出量は平成13年の約94g-TEQ、グラフ上は9万4千mg-TEQと表示していますが、これから平成15年には既に16g-TEQまで83%の減少となっています。同時期の全国が80%の減少ですので、全国並み、あるいは若干それを上回るペースで排出削減が進んだと確認できます。参考までに、下側のグラフに北海道の市町村による一般廃棄物の焼却状況を示しています。折れ線グラフが市町村による直接焼却量、つまり、家庭などから集められたごみをそのまま焼却した量です。北海道では、全国に比べ、焼却の比率が低いといった地域性がございますが、平成17年度実績で全国77%の焼却比率に対して北海道は53%。ただし、直接焼却の総量はほぼ横ばいというようなグラフになっています。下の棒グラフは道内で稼働中の市町村のごみ焼却炉の数です。平成14年12月にダイオキシン法の排出基準が本格施行となったことを受け、基準未達成の焼却炉等が休廃止され、代わりに大型の焼却炉に集約された結果が見受けられます。こうした廃棄物処理方式の変更で北海道のダイオキシン類の排出削減は短期間に進んだと言えるのではないかと考えられます。


スライド10

  次に大都市の事例としまして、約360万人の人口を有する政令指定都市であり、本年は第4回アフリカ開発会議(注、日本が国連(UNDP、OSSA)及び世界銀行との共催で開催するアフリカの開発をテーマとする国際会議(TICADW))が開催される横浜市をご紹介します。上のグラフがPRTRデータを基に作成したダイオキシン類排出量の推移です。横浜市の場合、平成13年ベースですが、PRTR届出排出量の約9割が市のごみ焼却炉に由来しています。そのため、ここでは便宜上、市のごみ焼却炉由来分のみを図に示しています。平成13年の2.9g-TEQ、グラフ上は2千9百mg-TEQになりますが、この排出量が平成15年には0.26g-TEQと91%の削減です。全国平均を上回るペースで排出削減が進んでいます。その後、平成17年には、0.13g-TEQとさらに約半分に下がっています。
  ご参考まで、下の棒グラフは市の人口を示していますが、人口は増加しています。一方、折れ線グラフが市によるごみの処理量でございますが、平成16年以降、ごみ処理量には減量化の効果が顕著に現れています。上下のグラフを合わせますと、横浜市の場合、平成15年時点の大幅なダイオキシン削減は焼却施設の改善効果等によると考えられますし、一般的に申し上げまして、焼却施設の性能、あるいはごみの焼却条件等いろいろな検討項目がございます。この辺はいろいろ複雑ですが、3R等によるごみ減量化の推進は、ダイオキシン対策とも密接な関連を持つといえるのではないでしょうか。


スライド11

  最後に環境中のダイオキシン濃度の推移をご紹介いたします。


スライド12

  ダイオキシン類対策特別措置法第7条の規定により、大気、水質、水底の底質、土壌につきまして、環境省が環境基準をこのように定めています。


スライド13

  この表が、最新の平成18年度のデータですが、全国で実施された環境調査の結果となっています。大気は全国763地点、公共用水域水質で1870地点、公共用水域の底質については1548地点、地下水878地点、土壌1505地点という大規模な調査です。結果として、大気は100%の環境基準を達成、水質・底質は97.9〜99.7%の基準達成、地下水、土壌は一般的状況調査というものですが、環境基準をほぼ達成という状況です。グラフは、全国のダイオキシン類排出量の推移を示す棒グラフと合わせて、継続的に環境調査を実施している地点の濃度を示しています。赤の折れ線グラフが大気、青の折れ線が水質です。ダイオキシン削減の目標基準年であった平成9年以降のデータですが、環境濃度の改善が見られています。こうしたデータから、ダイオキシン類の排出削減の効果が見られています。今後さらにこうした状況把握を続けることにより、適切なリスク評価及び管理を進めていくことが重要だと考えています。以上でございます。


(安井)  ありがとうございました。ご質問はございますか。

(中下)  大気中の濃度、水質濃度等、環境中濃度が非常に低減化されてきているということで、この特別措置法制定に当たっては、私どもNGOとしてもいろいろ活動してまいりましたので、このような成果が得られたことは誠に喜ばしい限りであると思っています。しかし、なお課題があるのではないかと思い、あえて2点質問させていただきます。1点は、汚染サイトの問題です。昨年国際ダイオキシン会議が日本で開催され、そのときにNGOフォーラムを私どもNGOで開催させていただきました。そこでスウェーデンのEPAの方にお越しいただきご講演いただいた折に、スウェーデンでは最近は1次的汚染源よりも2次的汚染源の方に政策の重点がシフトしてきているということでした。その中で4万カ所の汚染場所が確認されていて、そのうち1500カ所について、2050年までに浄化予定であるというようなお話がありました。すごい数字ですので私どもも大変驚いたわけです。この特措法で土壌汚染指定地域になっているのはまだ5カ所程度だと思いますが、土壌汚染について、どの程度お調べいただいているのでしょうか。宮田秀明先生(注、摂南大学薬学部教授)のご報告でBHC(注、ベンゼンヘキサクロリド。有機塩素化合物)の廃棄物が、過去のプラント残渣などとして心配されるのではないかというご懸念の話もあったのですが、そういったものについての調査などはされているのでしょうか。
  もう1点は、食品の問題です。先ほどの両先生のご報告でも、食事経由がダイオキシンの汚染経路としては圧倒的であるということでした。最近の水産庁の魚介類汚染、特に私どもが心配しているのは魚介類です。日本近海の魚介類の汚染データは、漸減傾向にあることは間違いないと思うのですが、なお高いものも相当散見されます。高い濃度というと、クロアチアからのクロマグロや地中海産のクロマグロなどがありますが、そちらについての対策はどうなっているのでしょうか。妊産婦が食べて次世代に与えるダイオキシンによる影響がかなり懸念されているということになりますと、そういうものが重要かと思います。一方、水銀については、勧告をされたりしていますが、ダイオキシンはそういう意味ではありません。こちらの対策が必要ではないかと思います。この2点についていかがでしょうか。

(只見)  1点目は土壌汚染関係についてのご質問だったと思います。18年度の全国調査につきましては、スライドでもご説明しましたとおり、1505地点という全国の自治体にご協力いただいて測定した結果、平成18年度には1000pgを超える地点はなかったという結果になっています。ただし、ご存じかとは思いますが、250pgという、環境基準を下回る数値を指標値としまして、1000を下回っても250を超すようなものが出た場合は、その周辺で1000を超すかもしれないということで、追跡調査を行うという仕組みになっています。これは自治体が自ら発見する場合でございますが、そういう仕組みになっているということです。
  それから、プラント残渣ということでは、廃棄物焼却炉を閉鎖した後の施設の解体や残渣処理というのは、多くの市町村でお困りになっているところでございます。それについては環境省としても市町村を支援することで取り組んでいるところです。ただし、それも一度に壊すのがいいのか、順次、跡地利用のことなどを考えながら適切に進めていくかどうか、こういったことが重要と考えられます。すみませんが、それ以上のことは直ちにお答えできる資料がありません。
  食品に関しては、厚生労働省や農林水産省の方がおられますので、ここでは回答を控えさせていただきます。

(安井)  それでは、食品に関しては、後ほど関係の方からご回答をいただくということで、15分間の休憩に入らせていただきます。

―― 休憩 ――

(安井)  再開いたします。まずは、後藤さんからのご質問です。また、食品関係のご質問についてのお答えを、厚生労働省及び農林水産省の方からいただきたいと思います。

(後藤)  私の質問は極めて簡単で確認です。昨年か一昨年に、五百何十物質の食品に関するポジティブリストが始まったかと思いますが、今日のお話に出た物質、PCBやダイオキシン類が入っていたかどうかお教えください。

(安井)  それでは農林水産省の方からお願いします。

(佐々木)  ポジティブリストの有無は今すぐ確認ができませんので、確認後にお知らせします。農林水産省としては、ダイオキシン類の分析といいますか、実態調査を実施しており、結果は農林水産省のホームページ上に公表しています。平成18年度には、畜産物と水産物について実態調査を実施しました。結果は1月に発表していますが、それによると、水産物の方は246検体を調査し、全体の平均値が1.1pg-TEQ/gでございました。これは湿重量でございますが、通常の摂取ですと、ほぼ問題のないレベルだと考えています。

(山本)  厚生労働省から、食品経由で摂取されたダイオキシン関係のことをお答えしたいと思います。今日の参考資料の中にも出ていますが、現在我々の方で調べたデータも含めて食品からのダイオキシンの摂取量等を見ると、今現在の食品の摂取量でダイオキシンの摂取が直ちに問題になるという状況ではないだろうと理解しています。ただ、ご指摘のように、いろいろな魚を食べるという状況が増えていますし、中には食品中でダイオキシンの高いものが散見されるということがありますから、そういう調査については引き続き注意深くやっていく必要があると思います。重ねて申し上げますと、だからといって魚を食べるのを控えるとか、魚は危ないものだということを認識するのではなく、通常の摂取量であれば問題ないということです。鈴木さん参考資料2にダイオキシンの蓄積量についての資料がありますが、その15ページに魚に含まれる脂肪酸とダイオキシンの関係が示されています。表の下の本文では、確かにダイオキシンと魚に含まれるいくつかの脂肪酸と関連がありそうだという結論ではありますが、「しかしながら、魚に多く含まれる脂肪酸とは、心臓や動脈硬化、高脂血症などのリスクを軽減すると言われています」とあり、俗にいう健康にいいものだということが言われているわけです。今年の4月からメタボ健診(注、平成20年4月から始まった生活習慣病予防のための新しい健診・保健指導)等も始まりましたが、魚は体にいい食品でもありますので、通常のバランスの取れた食事をするということでダイオキシンの摂取量が直ちに増加するという危険はないだろうというように今のところ我々は認識しています。

(安井)  ここでご提案を申し上げたいのですが、先ほど鈴木さんのご説明の補足で最後にご説明されなかったスライドが1枚あります。あの情報は共有した方が良いのではないかと思いますので、鈴木さん、ご説明をお願いします。

(鈴木)

スライド

  これは先ほど時間の関係で省略しましたが、中西準子先生の『環境リスク学−不安の海の羅針盤』(2004年出版)の62ページに出された表です。もちろん実測値ではなく、いろいろ推計をなさったものだと思います。PCPは、ペンタクロロフェノールという水田の除草剤に副産物としてダイオキシンが付いていました。これが1960年からかなりの量使われていまして、kg-TEQ/年という大きな数字で示されています。こういう副産物が付いているということが分かったためでしょうか、製造中止になりました。
  もう一つはクロルニトロフェン(CNP)というもので、これも水田除草剤です。それが使われ出して、これにはそういうものは含まれていないと思われていたのですが、実はこの本を読みますと、中西準子先生とそのグループの方々が、農家の倉庫を探し歩き、この時代に購入されて使われなかった農薬の除草剤の袋を発見されました。そして、やはり副産物として含まれていたダイオキシン類について出荷量等を掛け算したところ、このような値になっていたということです。何年か猶予期間があって、ここの猶予期間の終わり辺りで副産物は除去できました。PCBですが、電柱の上にあったトランスの絶縁体にPCBが使われていて、それの処理がちゃんとなされないで垂れ流されたというので、ちゃんと保管するということになりました。このような経過で、ダイオキシンが問題になった時期では、環境省のおっしゃるとおり、焼却由来からだけになっています。先ほどの只見さんのご説明にありましたように、参考資料にも数字が出ていますが、この図以降はずっと下がり続け、ほとんどペチャンコになっている。
  これは過去のデータの推計でいい資料だと思って用意しました。私のように過去の育ち盛りにものを食べた世代の人間の濃度が高いのは、こういうことからの影響だろうと私は想像しています。


(安井)  ありがとうございました。それでは質問を続けたいと思います。遠山先生どうぞ。

(遠山)  先ほどの中下さんのご質問に対する山本さんと佐々木さんのご回答の関して申し上げます。一つは、水産庁で魚介類に関してかなり網羅的にいろいろ系統的に分析されてきているというのは、貴重なデータで非常に重要だと思います。先ほど中下さんからご指摘のあったクロアチア産のクロマグロの例も出ましたが、18年度にはそれが入っていません。やはりモニタリングをするときは系統的にデータを出さないとよくない。特に高い濃度のデータが入っていないと、意図的にそれだけ出していないのではないかというように思う人も出てくるかもしれません。高い低いは別にして、やはり系統的に測定して、データを出していただくことが大事ではないかと思います。二つ目は、山本さんのご回答で、日常的に満遍なく食べればいいだろうというのは、基本的には正しいことだと思います。いまの鈴木さんのデータとも関連するのですが、只見さんのお話で確かに環境中のダイオキシンの量が減ってきた。それは私が申し上げたように耐容摂取量を決めて、それに基づいて排出基準や環境基準を決めて、その結果として対策を取ってきた成果だろうと思うのですが、一方で大気中のダイオキシンの量を測定するのは年に1回くらいだと思います。

(只見)  大気調査は少なくとも年2回以上です。(参考:特定施設の排出ガス調査は年1回)

(遠山)  抜き打ち検査をなさっているのかどうか知りませんが、お金の問題もありますから、頻繁に測定するのは難しいのですが、ある意味で理想的な焼却条件の下でのデータが出てきている可能性もあるので、そういう点は今後気をつけなければいけませんし、今では簡易測定法というのがありますから、もう少し頻繁に、抜き打ち的というのも含めて測定することがこれからは必要だろうと思います。

(安井)  それでは大野さんどうぞ。

(大野)  今の鈴木先生の最後のグラフですが、今から50年から30年前の排出量だと思います。それは今の時代の中ではどこにいっていると言えるのでしょうか。

(鈴木)  中西先生のご本を拝見しますと、水の中の底質に蓄積されているだろうということでございます。いくつかコアサンプリングなどをされて測っておられますが、泥がたまっていく状況を計算しますと、ほぼこれに見合っているというお話があの本に書いてありました。

(岩本)  化学産業界として農薬を作っていましたので、訂正と言いますか、先ほどのグラフについてお話させていただきます。PCPという農薬は、ダイオキシン問題で中止になったのではなく、魚毒性があり、魚に害があったということで生産停止になりました。CNPという農薬は、これもまた別の理由で疑いがあって生産停止になりました。1995年頃からやっとダイオキシンの分析技術がきちんと確定しまして、1996〜1997年にこういったものにダイオキシンがあるということが判明しました。そういうことから逆算して出荷量と当時入っていたダイオキシンの量を中西先生が推計されて作られたのがこのグラフで、その後、ずいぶん古い農薬を回収してこのデータをいろいろ修正してみたのですが、オーダー的にはそんな大きな間違いはありません。もう1点ですが、今どこにあるかというのは、ご説明にあったとおり底質にあります。底質も少し深いところにあって、上にはわりあいきれいな砂が入ってきて、少し底質を掘り下げると、こういうものが少し高濃度で出てくるというのが現状です。これは私の意見ですが、今一貫してダイオキシンの摂取というのは、食品経由が圧倒的に多いということになっています。そうすると、もちろんダイオキシン対策法、あるいは大気汚染防止法の改正から、ダイオキシン対策法というのは大気環境をきれいにするという意味では非常に効果があったと思うのですが、実際我々が摂取するものとの関係はどうだったのかというのがよく分かりません。さらに、最近の魚のデータを見ますと、これは個体ですからものすごくバラツキがありますが、どうもダイオキシンの比率よりもはるかにコプラナーPCBの比率が多い。特に近海ものでいいますと、コプラナーPCBの比率が80〜85%ぐらい占めている。そうすると、いま我々が日常ばく露している量というのは、リスクという点ではそれほど高いレベルにないと考えているのですが、これからもし調査を行うとすると、どういう点に注目すべきかというのが、データだけからはよく見えないというのが私の実感です。

(安井)  鈴木さんお願いします。

(鈴木)  私は能勢町のデータから90%以上が食品である、食べ物から来ているのだということを申し上げましたが、食べ物の危険性を喚起したつもりではありません。あれぐらいの量ですので、私はむしろ公衆衛生学者としてああいうものを含んでいる青い魚を大いに食べてくださいと勧める立場の人間です。主張は変えていません。恐れるに足らないし、食べたほうが良いと考えています。もう一つ、図にしてお示ししなかったのですが、私たち一般庶民ができる簡単な回避策があります。それはかつて厚生労働省がお勧めになった1日30品目以上取りましょうという運動です。今でも継続されていると思います。あれは大変良い考えです。あの答えを出されたときの研究の主任は、私の大学時代の研究室の大先輩である小町喜男先生です。お話を伺いますと、あれは、完全に保険の危険分散の考え方だということです。食べていると、ときどき当たり外れがあってダイオキシンの高いものを食べるかもしれないが、毎日30品目以上食べるように心がけていたら、それに当たったとしても大したことにならない。それがどれだか分からないということなのです。同じ種類の魚でも高い低いがあるのは厚生労働省のご発表どおりですから、そのように食べてみましょうということです。実は能勢におけるスタディで、先ほど何人か、特にコントロール地域のほうで1日の摂取量が高い方がおられました。あれは食品の摂取量と3日間9食の陰膳調査をしまして、何品目食べたか全部栄養士が計算してチェックしているのです。1日平均何品目食べたかというのと、食事から取ったと思われるダイオキシンの値とクロス集計して、4pgというところに線を引き、30品目というところに線を引いてみますと、そのときの偶然かも知れませんが、4pgを超えた方はみんな30品目以内でした。6人ほどの方が全部そうでした。ですから、たくさんの食品を食べている方は、たまたま観察した数が三十何例という数ですから何とも言えませんが、みんな4pgの内側でした。ですから、厚生労働省が振られている旗は、意外なところでかもしれませんが、大変役に立って、我々庶民が明日からでも取れる対策法だと思います。

(岩本)  消費者の立場としては全く同感です。賛成します。

(遠山)  30品目というのは、リスクを分散するという意味で鈴木さんのおっしゃるとおりですが、最後のところの能勢のデータから中濃度のレベルと30品目以下かどうかということについては、あまりにも数が少ないですし、そこからものを言うのは危険ですので、それは賛成できません。

(鈴木)  たまたまである可能性は多分にあります。

(中下)  厚生労働省と農林水産省にもう一度お願いをしたいと思います。先ほど「一般的平均値としては」というお話がございました。いつもそのように言われるのですが、平均値としてというよりも、やはりどこにホットスポットがあるかを見ていただきたい。ハイリスクグループ、特に胎児には、遠山先生のお話によると微量で影響があるというわけですから、できるだけホットスポットに注目して対策を立てていただきたいのです。その方が効率的な対策ができるかと思いますので、ぜひそこを心がけていただきたいと思います。
  そういう点で言うと、環境省が全国調査をされた中で一番濃度が高かったのが東京湾のアナゴだったと思いますが、アナゴを調べてくださいと私たちも水産庁に申し上げたのですが、何年かたった後に調べていただくようになりました。やはりそういう危険なものは、もう少し継続的に毎年調べていただきたいのです。それから、これは厚生労働省にお願いすることかもしれませんが、マグロやキンメダイの水銀に関しては、あれだけ摂取勧告もしておられるのだから、そういうアドバイスもぜひ出していただきたいと思います。それからTDIの1日摂取量の調査で確かに年々下がってきているのですが、定量下限値をたぶんゼロとして計算しておられると思います。これを1/2の値を入れたら、やはり違ってくるのではないでしょうか。少しは上がると思いますし、さらに最大の方は4pgに限りなく近い。あるいは定量下限値を1/2で算定すると4pgを超えてしまうという方もおられるので、そういった方々にリスクを減らしていただくためにどうするかという対策も真剣に考えていただきたいと思います。

(安井)  何かお答えはございますか。

(佐々木)  ご指摘ありがとうございます。先ほど平均値しか申し上げませんでしたが、もちろん魚種によっても、個体によっても大きく変動するのはご指摘のとおりです。マグロのデータがここにはないので申し上げられませんが、海外産の中では高いものとしてオランダ産のマイワシというのがあります。それから、今調査しているサンプル数というのは、それまで取ってきた魚種の中でも高いものから多く取るという工夫もしていますので、引き続きそういう工夫もさらに加えながら進めていきたいと思います。

(中下)  先ほど平均値でおっしゃいましたが、例えば、アメリカのEPAでは1.2pg以上だと摂食をやめた方がいいというアドバイスが出ています。そんなに平均値が低いわけではありませんのでぜひお願いしたいと思います。

(安井)  厚生労働省は何かございますか。

(山本)  今は平均的な摂取量というので我々も出させていただいていますが、ダイオキシンの影響を受けやすいと考えられる子どもや胎児がいる妊婦の方がどうだとか、さらにきめ細かい調査ができるかどうかというのは、今後、我々も参考に考えていきたいと思っています。

(遠山)  平均値を出されていると言うのですが、平均値というのは、1種類なら1種類の特定の質に関して、その母集団の平均を出すならば意味があるのですけれども、異なる種類の質のものを並べて、それの平均値を出すということは、統計学的にもあまり意味がありません。むしろ誤解を招くことになりますから、そういう表現の仕方はしない方が良いというのが私の意見です。それから、系統的に高いものとおっしゃったのですが、やはりホットスポットの部分中心に規制をすればいいわけであって、例えば、スウェーデンなどでは妊婦に対してウナギや脂っぽい魚に関しては数種類食べないようにというような規制も出しています。これは食品安全の問題かもしれませんが、リスク評価をちゃんとするような方向がひょっとしたら望ましいのではないかと思います。

(崎田)  少し話が広がってもよろしいでしょうか。私はお三方の発表を伺って、大変全体像が整理された素晴らしい話し合いができるのではないかとうれしく思います。なぜならば、先ほど鈴木先生が最後にお見せくださったここ50年間のダイオキシン類を考えると、課題が見つかったときに、きちんとそれなりに対処をしてきて徐々に減ってきているわけです。そういう意味で今回環境省が発表された今の特別措置法で95%減らしているという現実というのは、素晴らしい成果だと思っています。そういうことで、歴史的にどのように減らしてきたかということをちゃんと私たちが共有すること、そして、残された課題として食物に対して私たちはどのようにきちんと多品目を取っていくのかというようなお話が交通整理されて私たち消費者がきちんと知っていくということがまず大変重要だと感じました。なお、専門家の方が残された課題としてはどういうものがあるのかということをご提示いただけるとありがたいと思います。今の食物の話もそうですが、それ以外にこれから研究して、もう少し規制をするような化学物質は残っていないのかや、臭素系の難燃剤の話など、いろいろな話も議論の中に出てきますが、そういうものに対してこれからはどのように研究していくのか。そういう全体像を交通整理して分かっていくと、私たちは大変うれしく思います。もう1点、最後に、例えば、只見さんのご発表で、廃棄物の清掃工場の規制が大変厳しくなって、ダイオキシン値が非常に少なくなったというお話がありました。実は地域の現場でそういう素晴らしい工場などを見学させていただくと、工場の担当者はそこを強調されて、どんなものを燃やしても大丈夫ですといった雰囲気で安心感を伝えてくださります。ただ、そうなってしまうと、今度は市民が「いや違う、社会では今は3Rで資源を大切にして、リサイクルをして、熱回収をして、最後に残ったものを燃やすことにしているのだ」ということで、逆の不安感がまた出てきてしまう。そういうこともありますので、情報は全体像をきちんと提示していただきたいのです。例えば、ごみ行政というか、循環型社会づくり行政も、全体像に対してきちんと進んでいます。そして、最終的に出たごみに対してきちんと責任を持つようにしている、そういう全体像を伝えていただく。そういうことでさまざまなリスクコミュニケーションというか、信頼関係の醸成がますます進むのではないかと感じています。少し広がってしまいましたが、どうぞよろしくお願いします。

(有田)  私が確認したいことは、この場はリスクコミュニケーションというか、要するに、単純に何かをたたくという場ではなかったと思います。だから、中下さんがおっしゃったようなことを今後どのようにしていくのか。検討されるということでしたが、消費者団体は、多くのものを食べてリスクの削減を目指すため、30品目以上を食べるようにしていますが、ただ、はっきり言ってそれはなかなかできないのです。1日30品目食べるなんて難しいことなのですが、一応努力目標として言ってきています。ただし、ダイオキシンの排出がこれだけ減ってきましたというお話を伺って「ああ、よかったな」ということと、非意図的だということがあったとしても高いものをいかに摂取しないかといった情報をどのように出していくか。そういう議論にならないと、このような会議を行っていてもなんとなく意味がないような気がします。中下さんはものすごく問題意識をもって発言されていますので。また、ここではメンバーを「さん」付けで議論するという約束があったと思いますが、最近は「さん」付けでなくなってきているのも気になっています。元の議論の場に戻してキャッチボールができたらと思います。

(安井)  先ほどの中下さんのお話で、「メチル水銀にはあれほど勧告を行っているのに、なぜダイオキシンをやらないの」というご意見に対しては、今後検討します。先ほどの遠山さんの話から、これをリスク・アセスと言うにはまだ時間がかかるという感想がありましたが、そういう現状だから、今のところは、もう少し様子を見て予防的にやるように言われればやるというところですよね。メチル水銀の場合にはかなりいろいろ分かっています。しかも、日本の食事とスウェーデンの食事は違う。したがって、そういうことを全面的に考えていくと、どのぐらいのところがいいのかということをたぶん考えておられるのだろうと思います。

(中下)  水銀は基準値があるからではないでしょうか。ダイオキシンには基準がないから検討されないだけではないでしょうか。基準は設けるべきだと思います。

(安井)  設けるべきだ、とまで思っていないというわけですよね。その辺のリスク評価がまだ十分できているとは思えないということなのでしょう。

(岩本)  リスクに関して話題を代えさせていただきます。遠山先生にもお話もお聞きしたいと思っています。人類はかつてセベソやベトナム戦争のように、比較的高濃度汚染という負の体験をしました。先ほど鈴木先生のご発表にありましたように、かつて母乳中にはかなり高濃度のダイオキシンがあったという事実が分かっています。1990年当時でしょうか。厚生労働科学研究費でおやりになった母乳中の濃度のときには、たぶん1歳児のかなり精密な健診もおやりになって、アレルギーや甲状腺などの影響を見られて、母乳と人工乳の子供で特に有意差がなかったという報告が出されていたというように記憶しています。セベソについては、かつて環境省が主催された環境ホルモンの国際シンポジウムでモカレッリ教授がおいでになり、セベソの現状についてご講演されたと思います。セベソの例で言いますと、1世代目の子どもが生まれ、ダイオキシンに高濃度にばく露した男性が結婚して生まれた子供の場合、女性の割合が高いことから、男性の生殖器に影響があるのではないかという結論が出ているようです。そろそろ第2世代も出ているのではないかと思うのですが、その辺から見て、次世代に与えるリスクとしておおよそのリスクの見当がつくのではないかと思います。学問的にはまだ分かっていないことがたくさんあって必要だと思うのですが、その辺は遠山先生いかがなのでしょうか。

(遠山)  セベソに関しては、先ほどお話ししたように、性比に関しては女児に偏るという傾向が出ています。それが本当かどうかということを動物実験で確認しようということで、私たちの実験ではラットを用いましたが、確認はできませんでした。しかし、一方では、最近別のグループが学会発表レベルですが、やはり同じような結果がラットでも得られているという報告を出したりしていますので、メカニズムの面で明確な結論は出ていないというのが現状です。実際に子宮内膜症などの影響も出ているのではないかということで、疫学データをモッカレリさんとカリフォルニア大学のエスケナージさんのグループが共同でやられていますが、今のところはまだはっきりした結果は出ていないというように了解しています。

(岩本)  確かに性比というのはあったのですが、とにかく第1世代の子どもが生まれ、そろそろ第2世代の子どもが生まれているのだろうと思うのですが、当然そういった追跡の調査がずっとやられているだろうと思うので、その辺で何らかの情報は得られていませんでしょうか。

(遠山)  第2世代の子どもについては、私は情報を持っていません。第1世代は先ほどお話ししたとおりです。

(安井)  要するに、ダイオキシンの場合には、ヒトと実験動物の間に違いなどいろいろあると思います。私も先ほどの遠山さんの話を聞かせていただいて、濃度がよく分かりませんでした。濃度の読み方、200ng/kgというものが大体どのように我々のTDIに換算して読んだらいいのかとか、そういうところがよく分かりません。あるいは、先ほどの鈴木さんにお話しいただいた1973年の中西さんのデータが本当だとすると、1973年、あるいは70年頃に生まれた男が雌化しているわけですよね。先ほどの遠山さんの話をもし人間に当てはめれば。だから、この世の中で本当に安心しようと思ったら、その辺は疫学調査をやるしかないと思うのですが、疫学調査をやろうという話も実はない。そのような状況になっていて、何とも言い難いという状況かと思っています。ただ、多くのここにおられる方々は、ああいったデータをご覧になって、大体ご存じでしょうが、73年頃はそんなにひどいことはなかったのだろうと、たぶん直感ではお考えになっていて、それでそれほど大きな心配はしていないというのが、現実ではないかという気がします。その辺について反対をされるのであればご意見を伺いたいと思います。

(遠山)  反対ではなく補足説明です。発表でもお話ししたように、WHO、あるいは日本のTDIを決めるとき、また、各国がTDIを決めるときの投与量と体内負荷量と、耐容摂取量の4pgもしくは2pgの場合ですが、TDIの数値の4pgのときには200ng/kgという妊娠しているラットに対する投与量が、この4pgを引き出すときの根拠になっています。

(安井)  そういうことで、かなりまだ分からないことが多いということです。後藤さん、お願いします。

(後藤)  確かにご発表いただきましたようにずっと値は抑え込んできている。それは政策が功を奏したということで結構なことだと思います。中国の中央政府が最近ものすごい勢いで環境規制を始めだしていることは重々承知していますが、地方政府は必ずしも言うことを全部聞いているわけではありません。それから、水がものすごく悪くなってきています。去年北京に行ったときに聞いたうわさ話ですから真偽のほども分かりませんし、根拠も何もないのですが、大金持ちは絶対に国産のものは食べないという話を聞かされました。日本はかなり中国から輸入をしています。国産が全部いいと言うつもりはありませんが、食品経由という前提になると、途上国から来るものについてどう考えるか。予防原則的に、次の問題としてあるのではないかというように感じました。

(安井)  なかなかお答えも難しいかと思います。甲賀さん、どうぞ。

(甲賀)  少しピントはずれの質問かもしれませんが、鈴木さんにお尋ねします。何十年か前に母乳を使った人間が年を取ってダイオキシンの血中濃度が上がっているという解析がありました。ここ数日、今日に備えていろいろ資料を読んでみますと、体の中のダイオキシンの半減期というのは7年ぐらいだという記述をどこかで読みました。1973年としても既に35年たっていますから、1/16や1/20ぐらいに減っているだろう。つまり、30年前に母乳から取ったダイオキシンが、今、どれだけ体の中に残っているかというのは、半減期を7年と仮定すれば減っているだろう。そういう解析をあのデータから読むというのは無理でしょうか。私自身についていえば、最近食べるものはイワシが好きになっています。近海物でも遠洋物でも、イワシの中にけっこうダイオキシンが濃縮されるという話もあります。今の嗜好によって変わっているということはないのでしょうか。そういう解析をされたことはないのでしょうか。

(鈴木)  それらについては「分からない」というのが正直なところです。決してコホート的に観察されたわけではないデータです。ただ、母乳は毎年毎年、初めてお子さんを生んだ女性の母乳ですが、毎年毎年違う人なのです。ですから、初めの子を生む年齢のお母さんたちの値がああだということで、ある意味でコホート的な観察もできるデータなのです。しかし、私がお示しした、だからこうだろうなというのは全く想像で、あれはクロスセクショナルなデータをそこに投影しただけの問題ですので、コホート観察ではありません。
  ただ、能勢町におきまして、平成10年から始まって3年間、対象者になってくださった合計54人の方を、ずっと継続調査という形でお願いしていまして、毎年、そのうち30人弱、手を挙げていただいた方を調べています。その中の何人か、毎年参加しておられる方もいます。そういう方のデータの動きを見てみますと、半減期の7年は経っていますが、決して半減していません。変動していますが、高い人は高い人なりに、低い方は低い方なりに変動し、半減などしていません。ですから、ある程度減るというデータの半減期は、パッとばく露された方の現象ではないかと思います。私は労働衛生の方は全く関係していないので、新聞発表ぐらいしか知りませんが、能勢町の焼却炉の労働者よりも、解体作業に関わった方々の中の数人が、大変高濃度に被曝しました。耳学問で伺ったところでは、解体作業のときに、アスベストを使った建物の解体を参考に、労働基準監督署の方がご指導されていたようです。焼却炉を溶断したわけですが、一番先端で作業した方は、潜水夫と同じように外からの空気を引っ張ってきて、陽圧をかけて決して作業中の空気を吸い込まないという装備をされたそうで、その方々は全然被曝していません。その次に、私も子ども心に覚えている世代ですが、戦争中の防毒面のようないかめしいものにフィルターを付けて装備した方々が、意外にも高濃度で数人が被曝された。エッと思うようにびっくりするぐらいの血中の濃度だったのですが、フォローアップされると次はバーンと下がっているのです。ですから、おそらく皆さん方がイメージとしてお持ちの半減期7年というのは、私の想像では、一発被曝なのではないか。それに対しまして、我々一般の住民がある時代に食べたようなものは減ってはいるのだと思いますが、決して半減期は7年と分かるようなことではないのだろうと思います。我々は毎日毎日食べなければならない生きものですから、毎日毎日取り込んでもいる。出入りがあって、なんとなく安定した状態で来ているのではないかというのが、現場を担当した私の実感でございます。scientificな根拠があるわけでもなければ、遠山先生にはまたおしかりを受けるかもしれませんが、現場を担当した人間としては、そういう実感でございます。

(崎田)  1400人規模の疫学調査について、どういう結果が出るのか、かなり期待をしていたものですから、これをまとめられた方に、この中での特徴的なことや課題等をお話しいただけたらと思います。もう1点、後藤さんが先ほどアジアなどの問題を指摘されときにふと思ったのですが、逆に日本の中での問題だけではなく、中国、あるいはアジア各国で、急激に工業化されてきているようなところに対して、日本のこれまでの経験や知見をきちんと伝えていくとか、そういう作業がこれから大変重要になるのではないかと感じました。

(安井)  この質問に何かお答えはありますか。それでは木村さん。

(木村)  石塚さんが急用で出ましたものですから、木村が代理出席させていただいております。今崎田さんがご質問されました鈴木さん参考資料2につきまして、1枚目に全体の調査のまとめを簡潔に示しています。これは2002年度から2006年度までの5か年間の調査結果の取りまとめです。特に日本人の体内中のダイオキシン類の蓄積状況や、経年変化を把握しています。また、食事の調査からも、ダイオキシンの摂取量の把握を目的として併せてやっているということです。「調査対象と方法について」のところにも記載していますように、全国を5ブロックに分け、都道府県の中でも都市・農村・漁村といった特徴的に違いのあると思われるクライテリアに分けて調査しています。年齢は15歳から70歳ぐらいで、居住が長い方を統合してやっています。その方々の血液を採取して、ダイオキシンの採取を行い、一部の方については、3日間の食事調査をして、食事中に含まれているダイオキシンの摂取量というものを算定する。このようなやり方で調査をしてきております。その結果、血液検査については、1400人弱の方々の平均値が20pg-TEQ/kg/fat。fatというのは脂肪に含まれているということですが、このような結果が出ています。違いは、ダイオキシンの場合、都市や農村はほぼ同じですが、漁村のほうがより高い。それから、高年齢層になるほど濃度が高くなってきます。性差については、成人女性の方が成人男性よりもダイオキシン濃度が低い傾向が認められています。これは出産や授乳によってダイオキシンが子どもの方に移行した可能性があるのではないかと考えられています。食事調査等につきましても、400人弱の方々を対象に行いました。耐容摂取量内に大半はあるわけですが、1〜2%ぐらいの方は少しオーバーしてというデータが出てきています。ダイオキシンの有意差ですが、やはり漁村地区が多く、都市と農村部に差は認められなかったというものでございます。こういうことで蓄積量と摂取量との関係については、強い相関関係はなかったということでございますが、今後とも引き続き継続調査をしていくという内容になっています。これは、断片的なある年の調査でございまして、一般に行政的には、先ほどご議論になっていますように、まずは現状がどうなっているのか。基準値の4pgの話もございますが、その中では、いま食に関しても1.33程度で収まっています。ただ、やはりその中で一番感受性の高い胎児期のようなところに、影響があるのではないかということで、詳しく調査していく必要があるということで、私どもは、今年度から、小児環境保健の疫学調査という観点で、大規模にコホート調査を行っています。これは、ある特定の対象を決めて、12年間程度追跡し、その方がどうなっていくかという調査をやっていきます。詳しくはどういうやり方にするか、今、設計している段階でございますが、また、いろいろとアドバイス等がありましたら、よろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

(安井)  遠山さん、どうぞ。

(遠山)  カネミ油症のようなダイオキシン類にばく露した人に対して、厚生労働省が1300人を対象に、調査されると聞いています。今年度から、40年たってからではありますが、実態調査をして、実際に次世代、その孫の世代、曾孫の世代ぐらいまで、どういう影響が起きているのか、起きていないのかも含めて調べていこうということをやっていますので、そういうことも今後リスク評価をする上での参考になるのではないかと思います。

(中下)  先ほど後藤さんからも中国の輸入食品の問題についての懸念が出されたかと思いますが、以前、ダイオキシンに関しては、確かベルギー産の鶏肉について、汚染されているということで輸入をストップしたという経過があったかと思います。そのとき、輸入をストップしていただいたことはもちろん良いことだったのですが、情報がベルギーかどこかから回ってきたおかげで、日本でも水際で止めることができたということではないかと思います。ですから、基準を決めておかないと、入ってくるものについてストップするためには他国任せのような状態になるのではないでしょうか。つい先日だったと思いますが、韓国がアメリカ産の牛肉について韓国レベルのガイドライン値を超えるダイオキシンが検出されたということから、輸入をどうするかという問題が出てきたということが報道されていました。日本もそういうものがあるかもしれませんが、ガイドライン値を考えておられないので、チェックされないのではないかという懸念があります。やはり、もう一度、輸入食品を含めて、食品中のダイオキシンのリスク削減のために、基準値なり、暫定指針値でも結構ですから、そういうものの設定を急いでいただきたいと思います。

(安井)  今のお答え、何かございましたら、先にお願いいたします。

(山本)  ご意見としては承っておきます。今後どういうことができるかについては、厚生労働省としても考えていきたいと思います。

(安井)  確かにそのとおりなのですが、そのときに考えるべきはリスクですね。リスクの高いものから順番にやっていく。ダイオキシンが輸入食品の中でどのくらいのリスクになっているかどうかをしっかり調べてからかという気がします。

(中下)  耐容摂取量が一応決まっているのだから、それをベースにして食品のガイドライン値を決めれば良いのではないでしょうか。

(安井)  すぐに決められるのであればそれで結構だと思います。ただ、濃度が決まっているものですら、全数検査はできていないわけですからね。それでしばしば不合格で送り返されてしまう食品もあるわけです。

(中下)  濃度も基準値も決まっていないのですから、全部スルーしてしまいます。その後の監視体制の問題と基準そのものを作る問題とはまた別だと思います。まずは基準を作っていただかないとチェックのしようがない。

(安井)  ですから、濃度のあるものすら、ちゃんとしたリスクは守れないわけです。

(中下)  それが問題だということです。

(安井)  税金を高くすればいくらでもできますけどね。

(照井)  中下さんや先ほど後藤さんからも国際的な話、特に中国は大丈夫かというお話もありましたが、POPs条約(注、Persistent Organic Pollutants(残留性有機汚染物質)の製造・使用の禁止又は制限、非意図的生成物質の排出削減、在庫・廃棄物の適正管理及び処理、及びこれらの対策に関する国内実施計画の策定などを定めている条約)というのができています。ダイオキシンは当然この国際条約の規制の下にあり、加盟している各国は当然この条約を守るということで努力しているはずです。ただ、先ほど後藤さんが言われましたように、実際に枠組みができても、どこまでできているのかという点ではよく分からないところがあるのではないかということですが、確かにそのとおりで、実際ダイオキシンの分析というのは簡単ではありません。日本では法律の下できちんと測定する能力を持っている人ができるような仕組みがありますが、実際に中国でそういう能力を持った分析の人たちがどのくらいいるかというと、必ずしも十分な人数はいないだろう。
  実際、経済産業省でも技術協力ということで、分析の技術について支援を行っている最中ですから、そういう面で今後ベースとなる分析ができないと、どのくらい入っているかも分からないわけですし、対策も取れない。したがって、そういうところのレベルでの問題も今後の課題としてあるのではないかと思います。それから、クロアチア産の魚といった話であれば、POPs条約の運用というものを、きちんとどういう形で各国でやっているかというのを十分監視をしていくことが重要なのではないかと思います。

(安井)  岩本さん、どうぞ。

(岩本)  今の中下さんの話に対して対案と言いますか、別の意見なのですが、私はダイオキシンのリスクの相場感、つまり、どのくらいリスクが高そうなのかというマクロ的な感覚も必要なのだろうと思います。片方では、ダイオキシンというのは、いま照井さんからお話しがあったように、POPsという枠組みの中で既に動き始めている。我々が摂取する量がものすごく減ってきた。クロアチア産のクロマグロと名前が出ていましたが、個体差がものすごくあります。こんなものを入口で分析してチェックするなんていうのは、まず不可能に近い話だろうと思います。もし精度を上げてやれと言われたら、ではそれだけのリスクに見合う可能性があるのだろうかということになる。むしろ鈴木さんのおっしゃったように、いろいろなものを満遍なく食べていくということが、ごく自然の解決策じゃないかなと思います。中下さん、いかがでしょうか。

(中下)  いくつも種類があるとおっしゃいましたが、魚種や産地によって相当高いところというのがあります。アナゴやウナギはどこのもけっこう濃度が高い。だから、費用がかかるのは分かりますが、リスクの高いところに絞ってかけるべきなのではないでしょうか。やり方はいろいろあると思います。

(安井)  鈴木さん、何かございますか。

(鈴木)  今のお話について、中西準子先生もご本の中で指摘されているのですが、この世界で使う「ハザード」と「リスク」というものがごちゃ混ぜになっているのではないかと思います。現場を担当した私からすると、特に最近では、ダイオキシンのリスクというのは、ご心配になるほど高くないのではなかろうかというのが私の実感です。誰の中にもある程度あり、しかもそのある程度の限度もそんなに高い人はいない。遠山先生の資料にご説明がありましたが、セベソのデータでは、血液中の脂質1g当たり父親が80pg以上の場合に問題だということでした。有名な歌舞伎役者さんで80歳ぐらいになってからお子さんをつくる方もおられますが、それは非常にまれです。お子さんをつくられる常識的な年齢の男性で、そんな高い方は私が経験した範囲ではいませんでした。間接的にもいろいろな会議に連なって拝見しましたがいませんでした。そうすると、こういうリスクというのは、幸いなことに今は大変低くなっているのではないかというのが私の実感です。

(安井)  相場感は人によって違いますからね。

(遠山)  私の発表で使ったデータについてのご発言でしたので申し上げますと、同じように、これは私の計算ではなくて著者の計算ですが、生体負荷量について20ng/kgに相当するということですので、これをもし単純にリスク評価の方に当てはめると、先ほど申し上げたように、86ng/kgを基に4pgを出していますので、これよりも低い値に相当します。ですから、鈴木先生の見解とは相反するデータだということを申し上げておきます。あとは、魚については明らかに検出限界以下になっているようなところを省いて、高いところのホットスポットと言いますか、高いものについて系統的に調べるということで行えばいい話であって、それで先ほどの岩本さんの問題も解決するだろうと思います。

(後藤)  1990年代初頭に、確か環境省はODAでタイやインドネシア、メキシコ人を養成するための1カ所100億円ぐらいするセンターをプレゼントされていたと思います。私は91年にタイやインドネシアに調査に行ったとき、向こうの人々はそれをものすごく喜んでいましたが、いつの間にかタイのセンターはドイツに乗っ取られ、ドイツ人が俺たちはものすごく支援しているぞということを見せつけていました。中国にどういう支援をするのかは別にしても、センターを贈るというのは、もはや中国はそういう対象ではないと思います。しかし、それが食品というテーマの一つに関わってくるとなると、タイなどの国からも入ってくるわけでして、そういう検査をする人を育成するということは素晴らしいことだと思います。税金を使っていますので継続して国益につながる形にしていただきたいと思っています。

(安井)  今日のお話を伺っていて、少なくともダイオキシンのばく露量に関しては、日本の場合は順調に下がっているようですし、体内濃度も下がっているようだということが共有できたのではないかと思います。そこで、これ以上下げることが果たして意味があるかということになると、これは誰にもよく分からないことです。しかし、私は過去の歴史を見て考えると大丈夫なのではないかと思っています。だからといって確実にイエスとは言えませんし、私の答えが正しいとも限りません。ただ、対処をするためにはお金がかかります。先ほど、中下さんはかなり簡単にできるとおっしゃっていましたが、ダイオキシン分析というのは未だに高いです。本当にどのぐらいの投資を行うべきなのか。BSE問題であれだけの投資を行っても皆さん納得されているのですから、確かに魚の値段を高くしても良いということであれば、やれると言えばやれるのだと思います。その辺はまさに皆さんがお決めになることかなというような感想を持ちました。
  それでは、以上で本日の会議は終了させていただきます。最後に事務局からお願いします。

(萩原)  本日は長時間にわたり、活発なご議論をありがとうございました。本日の会議の配付資料、議論の内容につきましては、後日、環境省ホームページにて公表させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。傍聴の皆さま方には、アンケート用紙をお配りしていますので、本日の円卓会議等についてのご意見やご感想をご自由にご記入の上、質問受付箱にお入れください。よろしくお願いいたします。また、メンバーの皆さまには、この後ビューロー会合を開催いたしますので、移動のほどよろしくお願いいたします。
  それでは本日の会議はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。