環境基本法における位置づけ
環境基本計画は、環境基本法(リンク:e-Gov法令データ提供システム)第15条に基づき、政府全体の環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱を定めるものです。
参考
環境基本法(平成五年十一月十九日法律第九十一号)
第十五条 政府は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
環境基本計画策定の流れ
環境基本法第15条第3項では、環境大臣が、中央環境審議会の意見を聴いて案を作成し、閣議決定を求めることとされています。また、同条第4項では、閣議決定後は遅滞なく公表することとしています。また、変更の場合も同様の手続きとなります。そこで、環境基本計画は次のような流れで策定されています。
- 環境大臣から中央環境審議会に諮問
- 中央環境審議会から環境大臣に答申
- 中央環境審議会の答申を踏まえて環境大臣が案を作成
- 政府の計画として閣議決定
また、この過程の中で国民・各種団体からの意見募集など様々な機会を通じた 幅広い議論を経て策定されています。ご関心のある方は第五次環境基本計画の策定経緯もご覧下さい。
環境基本計画の歴史
環境基本計画の歴史は環境基本法の制定により始まりました。
環境基本法の制定(平成5年11月19日施行)
環境基本法は、平成4年6月にブラジルで開催された地球サミットの成果を踏まえ、環境政策の枠組を再構築することに向け、平成4年7月以降具体的な法制のあり方について検討が進められました。法案提出後、平成5年6月の衆議院解散に伴い一旦廃案となりましたが、その後の臨時国会において両議院とも全会一致で可決され、11月12日に成立し、11月19日に公布・施行されました。
環境基本法の制定以前にも、国レベルにおける環境行政の総合化のための枠組として、環境庁(当時)が単独で定めた「環境保全長期計画」(昭和52年)及び「環境保全長期構想」(昭和61年)がありましたが、環境基本法の制定によりはじめて、政府全体の環境の保全に関する施策の基本的方向を示す計画が定められることとなりました。また、環境基本計画には、政府の取組の方向を示すのみならず、地方公共団体、事業者、国民のあらゆる主体の自主的、積極的取組を効果的に全体として促す役割も期待されています。
第一次環境基本計画の策定(平成6年12月16日閣議決定)
第一次環境基本計画では、
- 「循環」、「共生」、「参加」及び「国際的取組」が実現される社会を構築することを長期的な目標として掲げました。これは環境への負荷の少ない循環を基調とする経済社会システムが実現されるよう、人間が多様な自然・生物と共に生きることができるよう、また、そのために、あらゆる人々が環境保全の行動に参加し、国際的に取り組んでいくこととなるよう意図したものです。
- また、長期的な目標の実現のための施策の大綱、各主体の役割、政策手段の在り方などを定めました。
第一次計画のフォローアップの総括(平成11年3月8日)
平成11年度が環境基本計画見直しの年にあたることを踏まえ、それまでの点検結果や審議会での議論を踏まえ、企画政策部会長が環境基本計画の見直しを行う上での論点を整理して部会に報告しました。
この中で、環境基本計画をめぐる諸情勢と基本認識として環境基本計画をめぐる諸情勢と環境基本計画の役割に関する基本認識が示されました。また、計画見直しの基本的方向として、理念から実行への展開、持続可能な経済社会の具体像とそこに至る道筋の提示、計画全体に係る見直し、計画の構造の重層性の確保、各主体の参加の確保、国際的視野に立った見直し、現行計画の実施状況を踏まえた見直しが示されました。さらに、具体的事項として、環境基本計画の実効性の確保に係る事項などが示されました。
→資料「環境基本計画のフォローアップの総括について」 [PDF 25KB]
第二次環境基本計画の策定(平成12年12月22日閣議決定)
第二次環境基本計画は、「理念から実行への展開」と「計画の実効性の確保」という2つの点に特に留意して策定されました。第二次計画では、
- 「理念から実行への展開」の点からは、地球温暖化対策など重点的に取り組むべき11の分野について戦略的プログラムを設定し、現状と課題、これに対応するための施策の基本的方向と重点的取組事項を提示しました。
- 「計画の実効性の確保」の点からは、政府全体の取組体制を強化するため、推進体制の強化(各府省による環境配慮の方針の作成など)や、進捗状況の点検の強化をすることとしました。
- 第一次計画で正面から取り上げていなかった化学物質による土壌汚染やPCBなどの環境上の「負の遺産」の解消やIT等を活用した環境投資の推進なども盛り込まれました。
- 「環境の世紀への道しるべ」という副題が付けられました。
第二次計画のフォローアップの総括(平成16年12月22日)
これまでの点検結果や審議会での議論を踏まえ、現行計画の成果や課題、見直しに当たっての基本的な視点を盛り込んだ資料が、総合政策部会長から発表されました。
この中で、第二次環境基本計画をめぐる諸情勢と基本認識として、環境問題の現状、第二次環境基本計画の課題、内外の社会経済の変化が示されました。また、計画見直しの基本的方向として、「環境と経済の好循環」の提示、数量的目標・指標の導入による実効性の確保、国民など多様な主体の参加の促進、国際的な環境問題への積極的貢献、戦略的プログラムの継続が示されました。
→資料「第二次環境基本計画のフォローアップの総括について」 [PDF 15KB]
第三次環境基本計画(平成18年4月7日閣議決定)
第三次環境基本計画では、
- 今後の環境政策の展開の方向として、環境と経済の好循環を提示し、さらに社会的な側面も一体的な向上を目指す「環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上」などを提示しています。
- 10の重点的分野に政策プログラムを定めるとともに、各プログラムにおいて市民、企業など各主体へのメッセージを明確化しています。
- 2050年を見据えた超長期ビジョンの策定を提示しています。
- 可能な限り定量的な目標・指標による進行管理を定めています。
- 「環境から拓く 新たなゆたかさへの道」という副題が付けられています。
第四次環境基本計画(平成24年4月27日閣議決定)
第四次環境基本計画では、
- 環境基本計画は、以下のような環境政策の方向性などを示しました。
(1) 環境行政の究極目標である持続可能な社会を、「低炭素」・「循環」・「自然共生」の各分野を統合的に達成することに加え、「安全」がその基盤として確保される社会であると位置づけました。
(2) 持続可能な社会を実現する上で重視すべき方向として、以下の4点を設定しました。
[1] 政策領域の統合による持続可能な社会の構築
[2] 国際情勢に的確に対応した戦略をもった取組の強化
[3] 持続可能な社会の基盤となる国土・自然の維持・形成
[4] 地域をはじめ様々な場における多様な主体による行動と参画・協働の推進
(3)「社会・経済のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進」、「国際情勢に的確に対応した戦略的取組の推進」、「持続可能な社会を実現するための地域づくり・人づくり、基盤整備の推進」の他6つの事象面で分けた重点分野からなる9つの優先的に取り組む重点分野を定めたほか、東日本大震災からの復旧・復興に係る施策及び放射性物質による環境汚染対策について、それぞれ「章」として取り上げました。