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第4回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞

一般社団法人農福連携自然栽培パーティ全国協議会

農福連携自然栽培パーティ

さまざまな社会課題の解決を目標として、障がい者施設が連携して「自然栽培」の農業に挑戦している取組です。2015年に本格的なスタートを切ったばかりですが、参加施設はすでに60カ所を超え、着々と活動の幅を広げています。

ムービーもご覧ください

自然栽培で美味しい米や野菜を作り、社会課題の解決にチャレンジ!

活動のきっかけは?
三つ子が障がいをもって生まれてきたことから福祉を仕事に

一般社団法人『農福連携自然栽培パーティ全国協議会』の代表理事である佐伯康人さんは、ロックバンドのボーカリストとしてメジャーデビューも果たしていた元ミュージシャン。30歳で愛媛県松山市に帰郷して、佐伯さんご夫婦が授かった三つ子は、脳性マヒの障がいをもって生まれてきました。周囲の方々の支えに助けられながら育児に取り組むうちに「障がい者も楽しく暮らせる地域づくり」が大切だという思いを強くして、障がい者福祉の仕事を始めます。それが「農福連携自然栽培パーティ」のスタートでした。

「農福連携」とは、障がい者が農業に取り組む活動で、近年、地域の課題解決方法のひとつとして注目されています。「自然栽培」とは、農薬や化学肥料はもちろん、有機肥料も使わずに、作物を育てます。太陽や水、自然の力だけを頼りに、土の中のバクテリアなどの働きによって、作物が栄養を取り込んで育ちます。自然から授かったいのちの力を、人のいのちに素直につなぐ農法です。

障がい者福祉の仕事を始めて、いくつもの社会的な課題に直面した佐伯さん。その解決方法として着目したのが「農福連携」と「自然栽培」だったのです。


代表理事の佐伯康人さん。

自然栽培の田んぼでは苗は一本植えにします。


それぞれに、得意な仕事が見つかります!

田植えなどのイベントも大盛況!
どんな取組を?
さまざまな社会課題に「農福連携」と「自然栽培」で挑戦する

「農福連携自然栽培パーティ」では、その取組を通じて以下のような社会課題を解決していくことを目指しています。

1) 障がい者の働く場所が少ない。
2) 農薬などが使われた作物への不安。
3) 増えるばかりの耕作放棄地。
4) 地方の衰退と人のつながりの希薄化。

福祉の仕事を始め、障がい者の働く場所が少なく、賃金も低いという問題に直面した佐伯さんは「農業には障がい者の賃金を向上させる可能性と仕事としての魅力があるのではないか」と、松山市内にまずは10坪の土地を借りて農業への取組を始めます。農業にはたくさんの「仕事」があり、障がいをもった人たちにも働く場所を生み出せると考えたのも、農業に着目したポイントです。

農業を始めてみると、いわゆる「慣行農法」では大変な量の農薬を使うことに驚きました。より付加価値の高い作物を生産するために有機栽培に興味を抱いて試行錯誤する中で、佐伯さんは『奇跡のリンゴ』で知られる青森のリンゴ農家、木村秋則さんと出会います。木村さんは、農薬はもちろん有機肥料さえ使わない「自然栽培」の第一人者です。木村さんの考えやノウハウを知った佐伯さんは、「農福連携」で「自然栽培」に取り組むことを目指すことを決意します。

木村さんを師匠と仰ぎながら、自らの工夫も重ねて自然栽培の田んぼや畑を広げていった佐伯さんの元には、全国の福祉施設から「自然栽培を教えて欲しい」という声が届くようになりました。手弁当で全国の施設を巡る活動から、2015年、交流を深めた8つの施設が集まって『自然栽培パーティ』が誕生します。2016年には、この取組が「公益財団法人ヤマト福祉財団」の支援を得られることとなり『一般社団法人 農福連携自然栽培パーティ全国協議会』を設立。全国で40万ヘクタールといわれる耕作放棄地のうち「1万ヘクタールを復活」させることを目指す取組が本格的に始まりました。

障がい者のみなさんが耕す田んぼや畑でたっぷりの収穫を重ねるにつれ、周辺の農家や住民の方々も自然栽培に興味をもってくれるようになり、各地でさまざまな交流が生まれ、「人のつながり」も広がっているそうです。


自然栽培の第一人者、木村秋則さん。

土の力が、豊かな実りをもたらします。


自然栽培で、周囲の農家も驚くような収穫が!

取組を紹介する書籍も出版されました。
成功のポイントは?
第六次産業化でさらに障がい者の「仕事」を生み出す

『農福連携自然栽培パーティ全国協議会』には、本格始動からわずか1年ほどで正会員として60以上の施設が参加。障がい者施設だけでなく、企業や地域のグループなどからも自然栽培に挑戦したいという声が届くようになり、企業の支援による「一反パートナー」という障がい者とともに農業体験をする仕組みがスタートするなど、活動の幅はさらに広がりつつあります。

多彩な人たちが活動に協力していることが、この取組の強みでもあります。取組には東京のデザインや出版を手掛ける会社も参加。家紋のようなシンボルマークがデザインされました。自然栽培で収穫した作物は加工食品にするなど、収益向上への工夫を凝らし、統一感のあるシンボルマークを活用してブランドイメージの向上が図られています。月額の平均賃金5万5000円を達成し、障がい者の自立を支援すること。障がい者施設など1000団体の参加と、競争力のある第六次産業化を通じて、1万人が働く仕事を生み出すことが、『農福連携自然栽培パーティ』の目標です。

障がい者の支援という枠組みだけにとらわれていないのも、この取組の魅力です。サッカー元日本代表選手の高原直泰さんは自らが沖縄で立ち上げたサッカーチーム『沖縄SV(エスファウ)』の事業として『農福連携自然栽培パーティ』に参加。地元の障がい者施設などとも協力して、農業をチームの収益に役立てるチャレンジを始めています。

『農福連携自然栽培パーティ』の田んぼでは、通常の農法では数本をまとめて植える苗を「一本植え」で田植えします。まったく肥料を使っていないので、稲は地中深くまで根を伸ばし、農薬で育った稲よりも、太く、たくましく育つそうです。自然栽培で収穫される作物の力も、この取組が順調に拡大している理由といえるでしょう。



『全国フォーラム』では、全国の参加施設によるさまざまな産品の直売コーナーが設けられていました。


サッカー選手の高原直泰さんも自然栽培に挑戦!

農福連携と自然栽培で、社会課題の解決を目指しています。
レポート
環境に優しい農業で笑顔の輪を広げる!

2017年5月には、福島県郡山市で2回目となる『農福連携自然栽培パーティ』の全国フォーラムが開催されました。自然栽培のカリスマである木村秋則さんが『自然栽培 農福連携が世界を変える。』というテーマで講演。佐伯さんがファシリテーターとなって、全国から集まった参加施設のみなさんが自分たちの取組について報告するパネルトークなどが行われました。

フォーラムの翌日には、郡山市内の参加施設の畑で木村秋則さんの指導によるリンゴの「植樹祭」が行われました。枝や根の剪定方法など、木村さん自らが丁寧に指導。フォーラムに参加した各地のメンバーも手伝って、広い畑にリンゴの苗が植えられました。

晴天に恵まれて、笑顔で作業に汗を流す参加者のみなさんの様子が「やりがい」に満ちているのが印象的でした。木村さんと佐伯さん、そして佐伯さんを中心とした全国の参加者のみなさんの信頼関係が、この取組の原動力となっていることを感じるイベントでした。

『農福連携自然栽培パーティ全国協議会』では、障がい者施設だけに限らず、参加者を募集しています。また、自然栽培に取り組む兼業農家の方や、耕作放棄地を求めています。「農福連携」と「自然栽培」を軸に、ますます活動の幅が広がっている『農福連携自然栽培パーティ』。環境に優しい自然栽培の気持ちよさを教えてくれる取組でした。


2回目の『全国フォーラム』が開催されました。

講演を終えた木村さんに花束贈呈!


植樹時の根や枝の剪定について木村さんが熱血指導!

佐伯さんも指導しながら作業に汗を流します。
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