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第3回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞

チーム美らサンゴ

サンゴ再生プロジェクト
「チーム美らサンゴ」

第3回グッドライフアワードで環境大臣賞最優秀賞を受賞したのは『チーム美らサンゴ』。舞台はビーチリゾートとして知られる沖縄県恩納村の海。海水温上昇で大きなダメージを受けたサンゴの再生に取り組んでいます。ダイビングやシュノーケリングを楽しみつつ、地元漁協と協力して養殖したサンゴを海中に植え付けるイベントを開催。誰でも気軽に参加できる環境保全活動です。


ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)

ビーチリゾートを楽しみながらサンゴを守る!

活動のきっかけは?
世界的な海水温上昇で万座のサンゴも大打撃

『チーム美らサンゴ』の活動の舞台は沖縄県恩納村。人気リゾートでもある万座ビーチ前の海中です。ちなみに「美ら海」と書いて「ちゅらうみ」と読むのはご存じですよね。つまり『美らサンゴ』は「ちゅらさんご」と読みます。

遠浅の美しいサンゴ礁が広がっている万座ビーチ。ところが、1996年にはオニヒトデが大発生。1998年に起こった世界的な海水温上昇で、万座のサンゴも大きな打撃を受けてしまいました。南国の海を彩るサンゴですが、熱すぎてもよくありません。水温が30度以上の日が続くと白くなって死滅してしまうのです。豊かなサンゴ礁は、地元で漁業に携わる人たちにとっても大切な稚魚のゆりかご。恩納村漁業組合では、1999年からサンゴ養殖の取組を始めます。

世界でもあまり前例がなかったサンゴの養殖。技術的なメドが立ち始めた2002年ごろ、現在もチーム美らサンゴの事務局を務める全日空(ANA)が「環境啓発活動として何かお手伝いできることがないか」と恩納村漁協に相談したことがきっかけで、万座の海でダイビングを楽しむ一般のダイバーが、養殖したサンゴを自然の海に植え付ける作業に協力する取組がスタートしたのです。

2004年には正式に『チーム美らサンゴ』が発足。沖縄県下はもちろん、ダイビングやビーチリゾートに関係があったり、環境保全や啓発活動に熱意をもった全国の企業に協力を呼びかけました。現在ではANAを含めた16社が参加する活動へと広がっています。


白化したサンゴ

万座ビーチに近い景勝地「万座毛(まんざもう)」
どんな取り組みを?
一般参加ダイバーが養殖したサンゴを海中に植え付け!

今、『チーム美らサンゴ』では年に4回ほどのペースでサンゴの植え付けプログラム(イベント)を開催しています。恩納村漁協が事前に養殖したサンゴを株分けして植付け用の断片を準備。参加者の手で植え付け用の台に固定した苗を作り、万座湾のなかでサンゴが消えてしまった海域に植えるのです。

2004年から始まった植え付けの活動は2016年で13年目。2006年からはダイビングのライセンスがなくても参加できるノンダイバープログラムが設定されました。2015年までの12年間での参加者はダイバーが1899名、ノンダイバーが739名。2013年からはイベント開催時以外にも地元のダイビングスクールやリゾートホテルのアクティビティとしてサンゴの植え付けが体験できるようになり、植え付けたサンゴの本数は5574本になっています。

イベントは、ただ海に入ってサンゴを植えるだけではありません。参加者は恩納漁港にある村の施設に集合し、まずはサンゴの生態などについて学びます。その後はダイバーとノンダイバーに分かれ、ダイバーチームは養殖場を見学したうえで、サンゴ礁の観察ダイブと、実際にサンゴを植える植え付けダイブを実施します。

ノンダイバーの参加者は、グラスボートで万座ビーチ周辺のサンゴ礁や海の生き物たちを見学し、シュノーケリングでダイバーの参加者がサンゴの植え付けをしている様子を観察します。自分の手でサンゴを植え付けることはできませんが、漁協のサンゴ養殖場で育てられたサンゴの断片を、植え付け用に工夫された台に固定して自由なメッセージを書き込む作業を体験。ノンダイバーでも「自分の手でサンゴ再生に協力した」という実感が得られるように配慮されています。


参加したダイバーがサンゴを植え付け!

専用の台に固定した苗を、あらかじめドリルで空けた岩の穴に植え込みます。


このイベントのために建設された養殖場。
壁の絵も漁協の方が描いたもの。

専用の台に針金でサンゴを固定して
植え付ける苗を作ります。


つくった苗には自由なメッセージなどを
書き込みます。
成功のポイントは?
漁協や地元関係者と、参加者、応援企業が連携

サンゴが危機に瀕している根本的な原因は地球温暖化。沖縄の海のサンゴは、まるで「炭鉱のカナリア」のように海水温上昇の警告を発してくれているようにも思えます。

社会が変わらなければ地球温暖化を食い止めることは不可能です。養殖したサンゴを海中に植え付けるだけなら、漁協が中心となってプロの手で進めるほうが効率は上がるでしょう。でも、それでは社会は変わりません。一般参加者がサンゴの植え付け活動を通じてサンゴ礁や海の生態系再生に関わり、沖縄の海で起きていることを実際に自分の目で確かめて、「美ら海を大切にする心」をより多くの人に広げていくことが『チーム美らサンゴ』の大切な目的です。

恩納村漁協では『チーム美らサンゴ』の発足に向けて、参加者を受け入れられる養殖場を建設。一般ダイバーが植えやすく、植え付け後の定着率が高まる方法を工夫してきました。また、イベントなどダイビング時に使用する船も、恩納村漁協に所属している船が使われます。

地元ダイビングサービスの『Lagoon』や、リゾートアクティビティを提供する万座ビーチリゾートの『ダイビングセンター』は実際のイベント運営にあたるほか、一般ダイバーが植え付けをするために海中の岩にドリルで穴を空ける作業を漁協と一緒に担当したり、植え付けたサンゴの生育状況観察やメンテナンスなどを行っています。

『チーム美らサンゴ』では、応援企業が活動資金を提供したり、一般参加者の募集活動、自治体との交渉や報告などを担当。そして、一般参加者はイベントに参加することで、この取組を支える役割を果たしているのです。『チーム美らサンゴ』を中心に、漁協や地元の関係者、参加者などがそれぞれの役割を果たしながら密接に連携できていることが、この取組が着実に継続し、成功していることのポイントといえるでしょう。


サンゴについて学ぶのも大切なプログラム。

もちろんダイビングも楽しんで!


ノンダイバーはシュノーケリング!

グラスボートで海中見学。
レポート
知ってるようで知らないサンゴの知識

サンゴは1年で数センチしか成長しない、と思い込んでいました。でも、万座ビーチのような浅い海でサンゴ礁を形成する「造礁サンゴ」は、最初の1〜2年はわずかしか成長しないものの、2年目以降はぐんぐん大きくなるのだということを、恩納村漁協でサンゴ養殖を担当する銘苅(めかり)宗和さんの説明(プロモーションムービーでもご紹介しています)で知ることができました。

サンゴは動物。でも、植え付けで再生を目指しているイシサンゴ類は、ポリプ(サンゴ虫)というイソギンチャクのような動物と、褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンが共存していることを、イベント前半のサンゴの説明で知ることができました。

ポリプの出す二酸化炭素や排泄物を使って褐虫藻が光合成をして、その光合成で得られる酸素や栄養をポリプが活用しているそうです。海水温上昇が続くとサンゴの個体から褐虫藻が逃げ出してしまうことで「白化現象」が起こり、褐虫藻を失った期間が長くなると、栄養が不足してポリプも死んでしまうのです。

環境を守っていくために、まず「知る」ことはとても大切。『チーム美らサンゴ』のサンゴ再生プロジェクトでは、サンゴや沖縄の海について、その美しさの理由を知ることができるのがとても有意義だと実感できました。

養殖や植え付けのための台をはじめとする器具などは、恩納村漁協の方々がほとんど手作りで試行錯誤を重ねて改良してきたものです。当初は植え付けても死んでしまうサンゴが少なくなかったそうですが、最近では植え付けたサンゴのほぼ100%が成長するようになったとのこと。恩納村漁協のみなさんからは「今後、恩納村で培ったサンゴ再生の技術を世界に広げていきたい」という思いも伺いました。

ビーチリゾートの楽しさを満喫しつつ、サンゴのことを知り、美しい海を守る心を育てるプロジェクト。サンゴ養殖の技術だけでなく、その環境への思いも含めて、世界に広がっていくといいですね。

<チーム美らサンゴ 公式サイト>
https://www.tyurasango.com/


苗の植え付け方をレクチャー。

シュノーケリングで植え付けを見学。


植え付けを終えた
参加ダイバーのみなさん

締めくくりはBBQパーティ!


かわいい「参加証明書」などがもらえます。

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