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第3回グッドライフアワード環境大臣賞グッドライフ特別賞

NPO法人子どもの森づくり推進ネットワーク

JP子どもの森づくり運動
『東北復興グリーンウェイブ』

全国の保育園や幼稚園の子どもたちが参加する、東日本大震災被災地への復興支援の取組です。津波被災地の山で子どもたちが拾ったドングリを全国の保育園などへ送り、2年かけて全国の子どもたちが苗木に育てます。育った苗木は3年目、再び被災地に送られて、豊かな森を作るために子どもたちの手で植樹。苗木とともに、子どもたちの心に自然との共生の心の種を植える取組です。


被災地の森に植樹する園児たち。
保育園などの子どもたちがドングリから苗木を育てています!
ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)
活動のきっかけは?
子どもの森づくり運動が震災復興支援活動に発展

NPO法人子どもの森づくり推進ネットワーク(略称『子森ネット』)の設立は2007年。自然の中での子どもたちの活動をサポートし、木や森、自然への関心、環境問題への関心を育て、持続可能な社会づくりへの参加意識を高めることを目的に設立されました。2008年には特定非営利活動法人の認定を取得し、日本郵政グループの支援を経て『JP子どもの森づくり運動』が始まりました。

2011年3月に東日本大震災が発生。『子森ネット』では、被災地の復興支援に寄与するものとするために、かねてから進めていた『JP子どもの森づくり運動』の取組に加えて、東北の被災地と全国の子どもたちを繋ぐ『東北復興グリーンウェイブ』をスタートさせたのです。

『グリーンウェイブ』活動というのは、国連が定める国際生物多様性の日である5月22日の午前10時に、世界各地の子どもたちがそれぞれの学校や地域などで植樹などを行う世界的な取組です。JP子どもの森づくり運動でも、このグリーンウェイブの活動に参加して、5月22日に毎年植樹を行うことになりました。


被災地の森で、子どもたちがドングリ拾い!

たくさんドングリが集まります!


まずは自分たちで育てるドングリを植えて……。

余ったドングリを全国の参加園に送ります!
どんな取り組みを?
被災地の子どもたちが拾ったドングリを全国へ!

JP子どもの森づくり運動 『東北復興グリーンウェイブ』は、ひとつのドングリを3年間のサイクルで育て絆をはぐくむプロジェクトです。まずは1年目の秋に、岩手県山田町を中心とした被災地の保育園の子どもたちが近くの山などからドングリ(樹種はコナラが中心)を拾い集めます。拾ったドングリは被災地の保育園でもプランターに植えて育てますが、余ったドングリはこの取組に参加する全国でおよそ70園の保育園や幼稚園に送り届けられるのです。

被災地のドングリが届いた全国の保育園などでは子どもたちがドングリをプランターに植えて大切に苗木へと育てます。そして3年目の春、グリーンウェイブの日を前に、全国で育てられた苗木は再び東北に送り返されて、地元の子どもたちの手で被災地の森などに植樹されます。

『東北復興グリーンウェイブ』が本格的にスタートしたのは2012年の秋でした。2014年の5月には岩手県山田町に戻ってきた苗木で、第1回の植樹祭が開催されました。被災地から全国の園に送られるドングリは各20個程度。半分ほどは苗木になって被災地に戻ってきます。全国各地から被災地の苗木を送るときには、この取組を支援している日本郵政グループ(JP)が協力してくれています。

被災地のドングリはいったん全国に送られますが、ドングリを拾った森から遠く離れた場所で植樹されることはありません。種の保全の観点から好ましくないからです。全国各地の参加園では、それぞれに近郊の森で拾ったドングリを育ててそれぞれの場所に植樹する、本来の「子どもの森づくり運動」の活動も行われています。

『子森ネット』代表理事の清水英二さんは、子森ネットを設立する以前から子どもたちの自然の中での活動をサポートする取組などを行ってきた経験がありました。これからの社会では環境への意識や自然との共生の心がより大切になってきます。子どもの頃から森や自然に親しむことはとても大切なことですが「小学校の高学年になってから始めるのでは遅すぎる」ということも実感していたそうです。だからこそ、保育園や幼稚園の園児たちが参加する、子どもの森づくり運動を発想したそうです。


ドングリから苗木まで、3年サイクルの取組です。

全国の保育園などでドングリの
苗は大切に育てられ……。


日本郵政グループの協力で苗木は再び被災地へ。

被災地には全国からたくさんの
苗木が集まります。
成功のポイントは?
被災地との絆を深め、JPの協賛を得て取組が拡大

JP子どもの森づくり運動 『東北復興グリーンウェイブ』に参加している保育園や幼稚園は全国で約70園。2008年以来の「JP子どもの森づくり運動」全体では、全国で約100園が参加しています。全国の保育園をネットワークする組織のキーパーソンと連携することで、多くの園の共感を得ることができてきたそうです。

2008年からこの取組に特別協賛している日本郵政グループの担当者とは、より意義深い活動にするためにコンセプトなども徹底的に話し合いました。

今回の受賞について、「JP子どもの森づくり運動『東北復興グリーンウェイブ』」は、東日本大震災の被災地と全国の幼稚園・保育園児がドングリを育てる活動を通じて一つにつながることを目的にしています。当グループは、郵便局ネットワークを活用した支援も行っており、この活動により被災地の森の再生がなお一層進むことを祈念しています」(日本郵政株式会社 広報部)とコメントをいただきました。

また、被災地である岩手県山田町の保育園や地域の方々と交流し、しっかりとした信頼関係を築けたことも活動が円滑に進んでいる原動力になっています。2014年の植樹祭には山田町の佐藤信逸町長も参加。2015年の植樹祭では、前年は3園だった山田町の参加園が5園に増えて取組の輪が着実に広がっています。

とはいえ、ただ活動への参加園数を多くすることよりも、協力してくれる保育園や幼稚園の人たちの理解を深め、活動を着実に継続して子どもたちの心に「ドングリを育てた思い出」を刻むことに意義があるといえるでしょう。清水さんは「これからも、子どもたちが取組む復興支援活動として、活動を継続していきたいと思っている」と今後への思いを話してくださいました。


第1回植樹祭で挨拶する日本郵政株式会社広報部長の篠原勝則さん。

岩手県山田町の植樹場所。


植樹は5月22日のグリーンウェイブの
日に行われます。

全国の参加園でも近くで拾った
ドングリの苗を植えています。
レポート
三重県鈴鹿市で開催された全国集会に伺いました

今回の取材では、三重県鈴鹿市で開催された『全国集会&研修会2016』の会場へ、グッドライフアワードの益田文和実行委員とともに伺いました。会場には全国各地から参加園の園長先生などが集まり、密度の濃い議論や講習が行われていましたが、議事の合間を縫って、取組のキーパーソンとなっている園長先生と益田実行委員の懇談時間を設けていただきました。

「育てた苗木を東北へ送り返す『見送り会』の席で、子どもたちが自発的に『どんぐりころころ』の合唱を始めたのが印象深い」と話してくれたのは、福井県大野市の大野幼稚園園長の藤兼量さん。「子育ても森づくりもすぐに結果が出るものではありません。園児たちに共生の心を植えていくこの取組は、とても意義深いものだと感じています」と取組への手応えを話してくださいました。

また、福岡県苅田町の青い鳥保育園園長である岡村斉さんは福岡県保育協会の副会長も務めています。「子どもへの環境教育はますます大切な時代になっています。自然の中で生命の大切さを感じ、水が『木のごはん』であることを知り、苗木を育てる喜びを感じられるこの取組は、保育園の子どもたちにとってとても有意義な体験となっています。また、福岡県は被災地と遠く離れていますが、どんぐりと苗木を通じて、被災地の子どもたちと福岡の子どもたちの気持ちが繋がっていることを実感できるのがうれしいですね」と話してくださいました。

益田文和実行委員は「日本はそもそも豊かな森がある国です。『東北復興グリーンウェイブ』は、そこにある自然を愛でる気持ちをもち、自然との共生の自覚や経験を原体験として学べる有意義なプログラムだと感じます」と、この取組が環境大臣賞にふさわしい意義があることを改めて評価して、キーパーソンのみなさんを激励しました。

集会の後は、参加者のみなさんとともに鈴鹿市内の『ほうりん保育園』を訪問。園児たちが地元で拾ったドングリから育てた苗を園庭に植樹し、東北から送られたドングリに水やりする様子などを見学しました。空は晴れていたものの、あいにくの冷たい強風が吹く天候の中。それでも、苗木を植えて、ジョーロで水やりをする子どもたちの元気いっぱいな歓声が印象的でした。

2011年から5年が経ちましたが、東日本大震災被災地の復興はまだ道半ばです。また、被災からの復興というだけでなく、全国の子どもたちに共生の心を植えていくこの取組の意義を、実際に鈴鹿の保育園の子どもたちの笑顔を見て感じることができました。JP子どもの森づくり運動 『東北復興グリーンウェイブ』の取組が、これからも着実に育っていくことを応援しています。


鈴鹿市での全国集会に集まったみなさん。

益田実行委員とNPO理事のみなさんの
懇談時間もありました。

鈴鹿市内の『ほうりん保育園』での活動を見学。

被災地から届いたドングリも
大切に育てられていました。
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