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第3回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞

認定NPO法人 共存の森ネットワーク

共存の森プロジェクト
〜農山漁村に憧れる高校生・大学生集まれ!! 〜

認定NPO法人『共存の森ネットワーク』の拠点は東京都世田谷区。でも、その活動は全国各地で行われています。2002年に始まった『聞き書き甲子園』というプロジェクトに参加した高校生たちが、大学に進学し、さらには就職してからも「自分にできること」を実践するために参加する。『共存の森プロジェクト』は地域の問題解決に取り組みながら、活動に参加する若い人たちが、自身の生き方を考えるきっかけになっています。


全国各地でさまざまな取組を行っています。
ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)
地域の人たちと相談しながら「できること」をやっていく!
活動のきっかけは?
『聞き書き甲子園』の経験が継続的な取組に進化した!

『共存の森プロジェクト』の取組が始まったのは2003年のこと。その前年から始まった『聞き書き甲子園』がきっかけでした。『聞き書き甲子園』とは、毎年100人の高校生たちが全国各地の森や海、川の「名人」たちの仕事場を訪ねて話を聞いて、レポートにまとめる取組です。

炭焼きや木こり、漁師や海女など、『聞き書き甲子園』では地域の自然環境と関わりの深い仕事をする「名人」に、高校生たちが話を聞いてレポートをまとめます。身近なところに存在している森や海。そして、そこにある自然と暮らしとのつながりを、高校生たちは名人の話から学んでいきます。

「聞き書き」を体験した一期生と二期生が「この体験を一年限りのレポートだけで終わらせないために何かできないか」と話し合い、『共存の森プロジェクト』がスタートしたのです。さっそく、『聞き書き甲子園』で生まれた人脈を活用して「地域」とのネットワークを構築し、2004年から本格的な活動が始まりました。






どんな取り組みを?
全国7地域でさまざまな活動を展開

『共存の森プロジェクト』では、全国の7地域でそれぞれの地域の実情に合わせた活動に取り組んでいます。どんな場所で、どんな活動を行っているのでしょうか。

●千葉県市原市『里地里山の魅力を発信!』
「鶴舞創造の森」という場所を拠点に、近くの山小川(やまこがわ)地区の方々と連携して里山保全などの活動を行いながら、新たな里山の活用方法やライフスタイルの発信に取り組んでいます。

●愛知県豊田市『日本の原風景を守りたい』
椿立(つばきだち)地区の方々とともに、竹林整備や棚田の復元など、里地里山の景観を保全する活動を行っています。

●新潟県村上市『人と人が助け合う、未来のふるさと』
高根地区の方々と連携してブナの植樹林の管理を行ったり、民間企業の協働で棚田の保全活動などに取り組んでいます。

●滋賀県大津市『大学と地域・世代をつなぐ』
堂町地区に隣接する大学の教員や学生と協力して、ソバ栽培による耕作放棄地の活用などに取り組んでいます。

●奈良県川上村『過疎化が進む山村地域を応援』
吉野杉などで知られる豊かな森がある高原地区の方と連携して、山村地域の暮らしを応援するための情報発信などにチャレンジしています。

●岡山県備前市『豊かな海を再生し、伝える』
日生(ひなせ)町漁業協同組合の方と協力し、アマモ(海草の一種)場の再生活動を実施。地元中学校の総合学習として、中学生たちと一緒に学ぶ活動も行っています。

●福岡県八女市『森を愛する地域とともに』
2012年に始まった取組です。樹木や森に関する絵や作文を募る『世界子ども愛樹祭コンクール』を実施している矢部村という地域で、森の自然と共存する暮らしを守るためにできることを模索しています。

2004年には千葉県市原市など数カ所で取組がスタート。その後、全国各地で連携できる地域ができて、活動のネットワークが広がってきています。取組がスタートしたきっかけは『聞き書き甲子園』に参加した高校生たちの思いでしたが、高校生たちは数年で大学生、社会人へと成長していきます。また、活動を通じて知り合った友人などに声をかけることで、各地での取組に協力し、参加する人たちの輪も次第に大きくなってきたのです。


新潟県村上市でのブナの植樹。

岡山県備前市でのアマモ場再生。

千葉県市原市。山小川地区のみなさんと。

滋賀県大津市での取組では
地元のお祭りにも参加。
成功のポイントは?
「何をやるか」は地域の人と話し合って決める

各地区では2カ月に一度くらいのペースで10人前後のメンバーが参加してさまざまな活動を行っています。地域が抱える問題解決に向けた取組に対して、高校生や大学生を中心とした若いメンバーたちに「救世主」のような働きができるわけではありません。

各地域における『共存の森プロジェクト』の活動は、地域の方々と出会い、話を聞くことから始まります。地域で暮らすお年寄りや「名人」から自然と寄り添う暮らしや地域の伝統についての話を聞き、集落や周辺の森、海などを実際に歩くことで、まずは地域への理解を深めます。さらにそうした暮らしに必要なさまざまな作業をお手伝いすることで、自然と共生することの豊かさや厳しさを実感します。参加する若者たちが「人と自然が共存する暮らしとは何か」を考えながら、実際の地域の暮らしを体験し、学んでいくのです。

ただし学ばせてもらうだけではなく、地域のために何ができるかを若者たち自身が考えて、少しでも「お返し」するための活動を実践します。それぞれの地域で「何をやるか」ということは、集まったメンバーが地域の協力者の方々と話し合って決めていきます。全国の各地域では、それぞれの地域の特徴や問題点を反映した取組が行われています。

2007年に『共存の森』の取組が始まった新潟県村上市には、『聞き書き甲子園』の卒業生同士が移住して結婚しました。地区では2人のために30年ぶりに集落の伝統的な結婚式が復活しました。今では2人は、地域での活動のキーパーソンになっているそうです。『聞き書き甲子園』から『共存の森プロジェクト』へとつながった活動から、自然と社会の共生のあり方を体感し、ソーシャルな活動に結びつけるノウハウを学んだ「人材」が次々と生まれていく。そんな可能性の広がりこそが、このプロジェクトの真価といえそうです。


まずは、お話しを聞くことがスタートです。

地域の暮らしを学び、できることを考えます。


地元の方と協力して作業を進めます。

愛知県豊田市での竹林整備作業風景。


『聞き書き甲子園』の卒業生が
地区に入って挙げた伝統の結婚式。
レポート
やるべきことを見つけて実行する力!

取材では、東京都世田谷区内にある拠点へ、活動地域である千葉県市原市山小川地区のガイドブックの内容を決めるミーティングにお邪魔してきました。この日集まっていたメンバーは高校生、大学生、社会人などの6人。12月に開催されたグッドライフアワードのシンポジウムでのプレゼンで寸劇を披露してくれた大学生の峯川大(みねがわひろし)さんと、高校生の山本薫(やまもとかおる)さんも参加していました。

司会進行役を務めていたのは、NPO法人の副理事長でもある峯川さん。制作予定のガイドブックに盛り込む内容について、参加しているみんなが思い思いの意見をぶつけあっている真剣な議論の様子が印象的でした。

峯川さんはこの時大学4年生。すでに就職も決まっていて、2016年の春からは新社会人として羽ばたきます。高校2年生の時に学校のポスターで『聞き書き甲子園』を知り参加。大学受験でいったん活動から離れたものの、大学生になって『共存の森プロジェクト』の取組に再び参加するようになり、イベント出展の責任者を任される経験などを通じて「コミュニケーションにおける笑顔の大切さ」などを学び、活動に深く関わるようになっていったそうです。

就職先に食品関係の会社を選んだのも「地域の特産品をビジネスに活かすノウハウを学びたいから」というのが大きな理由。社会人としてキャリアを積んで、将来は特産品をビジネスにする具体的な場所として「道の駅」をプロデュースしたいという目標をもっていると話してくれました。

結婚して村上市に移住した方だけでなく、各地の活動には『聞き書き甲子園』の卒業生たちが深く関わっています。『共存の森プロジェクト』を通じて学べるのは、やるべきことを見つけて実行するための方法や、そうした活動が前進することの喜びです。これからも多彩な人材が育ち、それぞれの夢をカタチにしていってくれることでしょう。10年後、20年後、この活動がどんな実を結んでいるか楽しみです。


関東チームのミーティング風景。

この日は地域のガイドブックの内容を
決める会議でした。
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